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◆Prologue ◆
003  /優しさを量る


 シャトレイサも自身の社会的性格が、視野を狭めているのは知っている。
 だが、ヒトには個人における限界もあり、模式図も伸縮するというものだ。
 そんな馬鹿馬鹿しさに反発する復讐心理をも醸す言動は、衝動的に不意をつく言動を誘発して、周囲の反応を楽しむ快感の味を知り得た。
 それで少しは自身の鬱屈したストレスを解放できてるならばいいが……。
(自分に対する言い訳………)
 自覚だってできている―――。
 もし、そんな感じの話をすることができたら、ソトーは理解してくれるだろうか。
 もっと違う、正確で核心的な言葉をもらえるだろうか。
 隣を歩く、少年が嫌いではない。
 少し鬱陶しいときもあるが、 彼はシャトレイサとの距離を無理に詰めるタイプではなかったのが、彼女にとって幸いしていた。
(――君は、優しいの―――?)
 そっと心に思った。
(でも話すには…勇気がいる…)
 愛情の告白にも似た緊張感を伴う。
 それにも増して、他人を受け入れることが何よりも恐ろしい。
(人は、コワイ――)
 サクサクとよく刈り込まれた芝生の上を踏む。
 二人の行く先から別の声がした。
「ソトー!シャトレイサ!」
 どちらかと言うと、ソトーを迎えに来たミレイヤだった。
 伸びやかな肢体を走らせて、彼女が寄ってくる。
「今日、“面談”よ。忘れたの?」
「でもまだ時間があるじゃないか」
「やだぁ。集合時間が変わったの、忘れてるんでしょ」
「いつ言ってたんだよ?」
「昨日のセミナーでよ?いいわ。迎えに来たから」
 満面に笑みを浮かべて、ソトーと話していることの喜びを隠そうとしない。
 そんな少女のあけすけな言動は、シャトレイサには厭らしく感じる。
 女性的な魅力を更に強調したような大げさな仕草と、女であることを否定しない物言いは、いつも嫌悪感をもたらすのだ。
 だからと言ってミレイヤに罪はない。自身も彼女が嫌いではない。
(ただ、これからのことも考えて…この場には不謹慎……)
 どちらかというと、言い訳である。
 感情は、嫉妬と羨望――。
 女としての女性性か。
 白い建物内に入る前、三人は大声で呼ばれた。
「――遅刻ですよ!」
 一喝されて急に思い出す。
「…任務だった…」
 ここは、“学校”ではない。


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