風がなびく…
この景色を見たのも何回目だろうか…
周りは誰もいない事を確認して…
(ガシャ…)
さて…上履きと遺書を下に置いて。
風が強い…
深呼吸して…
(ザリ…)
あと一歩で逝けるんだ…
さよなら親父…お袋…今まで苦労ばかりかけてしまって…本当にごめんなさい。
じゃ、お元気で…
(バタンっ)
「チョット待ったぁ!!」
誰だ?誰だとしても今は邪魔モノに変わりはない。
「来るな!最期は、一人で逝きたいんだ。」
「そんなの…私は許さないっ!」
………。何、言ってんだアンタ?アンタには関係ないのに、何故アンタに自殺するのを止められなきゃならないんだ?
「…アンタが何を言おうと、俺は前々から決めてんだ。今日、この屋上から飛び降りる…ってな。」
「アナタが本当に自殺する気があるなら…私は力づくで阻止するわ。」
フッ…馬鹿な奴。俺を阻止できるわけ………っ?!
「テヤッ!!!」
(バゴッ!!)
「グォッ!!!」
意識が遠のいていく………
「…い、おーい大丈夫ぅ?」
大丈夫…ってか、元はと言えばアンタがやったんだろ?
ここは…保健室か?
「ふぅ…やっと気が付いたみたいね。」
「…何故、止めた?…そういやアンタ、生徒会長の小林 亜弥じゃねぇか。」
「うんっ!だから止めたの。」
…理由になってねぇけど。
フッ…どうせ、自殺者なんか出たらこの学校の評価が下がっちまうから止めたんだろ?下らねぇ!!
「…て、言うのは嘘で。ジャーン!!」
何だ…その紙袋は?
「今日、何の日だか知ってるぅ?」
…今日?さっぱり解んねぇ…。
「んもぅ、じれったいなぁ!こぉれっ!」
薄い板状のモノ…まさか?
「自殺を止めてあげたんだから食べてよネっ!」
お、おい!…って、行っちまったよ。ったく…まさかと思うが、一応開けてみるか。
(ガサゴソ…)
やはり…
そんなかに入っていたモンは…
(薛君、愛してる…)
と、一文だけ書かれた彼女の手作りかもしれないチョコレートが入ってあった。
彼女のチョコじゃなくて…その一文。それで俺は衝撃を受け、自然に目から涙が溢れてきたんだ…
今まで親にも愛されず虐待され続けた俺は、“愛”なんてクソだと思ってた。
けど…これで解った事がある。
生きてる人間は、必ず誰かに愛されてる…という事を。
それを解らせてくれた彼女に悪いと思うようになり、俺は二度と自殺を考えなくなった…。 |