僕にも、ようやく念願の彼女ができました。
付き合うといっても『幼馴染』から『彼氏』という立場に変わっただけである。
いや、幼稚園の頃から立てていた計画が、高校生になってようやく叶ったのは非常に嬉しいことだ。うんうん。
けれど、正直、複雑な気分だ。
付き合い始めた当初は、ただただ幸福だった。
これほど至福な時があっただろうかと思うほど幸せだった。
だが、付き合いだして1ヶ月ほど経った今、『彼女』という立場を自覚しているのだろうかとここ数日思うようになってきたのだ。
なにせ、変わらないのだ、『幼馴染』の時の関係と。
お弁当を一緒に食べ、登下校は一緒に歩き、休日は遊びに行く。
ただ、それだけだ。以前と全く変わらない。
これじゃあ、『幼馴染』の時と何ら変わらないではないか!
彼女の返事は本当に「告白」に対しての返事だったのだろうか。
あるいは、「つきあう」の意味を買い物に付き合うと受け取った、というオチではなかろうか。
思い返せば、告白した時たい焼き食べてたもんなぁ。
僕の告白よりたい焼きを味わう方が大事そうな人だ。
返事を返してくれた時、どこかしらぼーっとしていたのは気のせいだったか。
たい焼きに負けたのか、僕!?
それでも、彼女とやりたいのだ。付き合う、ということを。
もっと、彼氏彼女のようなことをしたい。
お弁当を食べさせあったり、手をつないだり、き、キスをしたり。
付き合う前より、もっと欲求が増えてきたような気がする。
こうゆうことは、『幼馴染』の時にはできない、『彼氏』の特権だ。
ということで、ここはガツンと聞いてみることにした。
たとえ、それでまた『幼馴染』の地位に下がったとしても。
僕なりにケジメをつけようと思ったのだ。
今言わなくては、きっとずっとこの関係のままのような気がしたから。
今、僕の隣には『彼女』がいる。
ちょっと勇ましいことを言ってみたが、やはり少し怖気づいたのか、結局話を持ち出したのは放課後の帰宅途中だった。
そして、今の気持ちをありのままに話した。(ちゅーしたい、とか直接的にではなく、僕たちって付き合ってるよね、みたいな感じで)
で、彼女の反応と言えば「はあ?」と口を開けたまま、しばらく停止し、動き出したかと思えば笑い転げ始めた。
…ちょっ、それはあんまりな反応ではないだろうか。
こっちは告白した時よりもかなり緊張して言ったというのに。
その気持ちが顔に出ていたのか、彼女はようやく笑いを引っ込め、僕と真正面に向き合った。
当たり前じゃない、と言いながら。
「…は?」
「は?、じゃないでしょう。
私たち、『彼氏』と『彼女』でしょ」
それなのに今のあんた、捨てられた子犬みたいな顔して頼りなく言うし…と再度噴き出しそうになる彼女。
や、だけどさ、あまりにも君の態度が『彼女』らしくないというか…。
「だって、あんたの方から彼氏らしくリードしてくれるんじゃないの?
私、それをずっと待ってたんだけど。というか、幼稚園の時から」
え、と目が点になる。
い、今何といいましたか。幼稚園?
「あんたがずっと前から私のこと好きだってことなんか、知ってるわよ。」
はああ?
ずっとわかってた?
「私だって女の子だもん。付き合うってことにも夢があるの。
やっぱり、告白するより、されるほうが素敵じゃない」
それに、と言い置いた後、
「私の一挙一動にいちいち反応するあんたを見るのが大好きなのよね。可愛くて。
だからずっと『幼馴染』でもいいかなって思い始めてたんだけど。
気づいてた?
あんたから行動を起こしたのは、あの告白が初めてだったんだよ?」
さすがにあの時は驚いちゃったなー、と頬を染めながら言う彼女。
なんだ、わかっていたのか僕の気持ち。
というか、幼稚園の頃から分かっていて口に出さないって、性格悪いよ!
僕の16年間の努力は、一体…。
でも、これで勇気が出た。
そして僕は行動する。彼女の手を取り、歩き出す。
彼女は少し驚いた様子だったが、少し照れながら手を絡めつつにんまりと僕の方を見て笑う。
きっと、今の僕は酢だこのような状態の顔になっているのだろう。
少し恥ずかしいが、後悔はない。
絡めた手が、確実に『幼馴染』から『彼氏』『彼女』の関係になってきていることを証明してくれている。
この先彼女の望むようなリードが出来るかどうか不安だが、それでも精一杯頑張ろう。
きっと彼女は、そんな行動に出る僕を見てるのが好きなのだから。
夢のいちゃいちゃ計画はまだ潰えていない。
これからだ。
彼女に求めるだけでなく、自分自身から行動を起こせば、そう遠くはないはずだ。
後日、彼女から「告白するにしたって、たい焼きたべてる時に言うのはやめてほしかったわ。ロマンスも何もないじゃない」と少し怒り気味に言われた。
彼女は僕よりも理想が高いらしい。
もっと精進せねば。 |