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素直になれるその勇気が大切



午後のすま家。
「アイクの馬鹿あああああぁっ!!」
泣きながらそう叫んだロイがリビングを出ていき、そのまま玄関に向かうと勢いよく戸を開け、家を出ていった。
何事かと驚いたマルスとリンクが階段を降り、走り去るロイの背中を見た後、リビングを覗く。
そこではテーブルの近くに座り、頭から湯気を噴いて珍しく怒っているアイクがいた。
「アイクが怒ってる…珍しい……。」
「アイク、どうしたの?ロイとケンカでもした?」
リンクが尋ねると、アイクは不機嫌な顔のまま呟いた。
「…あいつが悪い……。」
それだけ言うと、アイクはプイとそっぽを向いてしまう。
『……………。』
どうしたものかとマルスとリンクは顔を見合わせた。





「ふぇ……ひっく……アイクのバカ……!!」
ぐずぐずと子供の様に泣きじゃくりながら、ロイは道を一人トボトボと歩いていた。
「(確かに僕が悪かったよ……でも、あんなに怒ることないじゃないか………!!でも……アイク、恐かったな……。)」



普段滅多に怒らないアイクが怒鳴った時の顔を思い出し、ロイの目にはジワリと再び涙が浮かぶ。


それを袖で拭っていたその時、『ロイ君?』と前から声をかけられた。


ロイが顔を上げると、そこには両手にスーパーの袋を持ったオリマーと数匹のピクミン達がこちらを見ていた。
「どうしたんですか泣いたりして?誰かにいじめられたんですか?」


「……ぅオリマーさ〜〜〜〜んっ!!」
ブワッと涙を溢れさせ、ロイはしゃがんでオリマーを抱き締めた。
不意のことにオリマーは驚き、ピクミン達も『ミーミー!』と慌てふためいている。
「あわわ〜どうしたんですロイ君?お腹痛いんですか〜?」
「ひっく…うぇ…オリマーさん……!」
泣きじゃくるロイ困り果てつつも、オリマーは彼の頭を優しく撫でていた。





ロイが大分落ち着いたのを確認すると、オリマーは自宅に彼を招いた。
パン屋・『ピクミンの森』は今日は休みで、二人が家に入ると、オリマーと同居しているMr.G&Wがリビングのテーブルをふきんで掃除していた。
「ウォッチさん、ただいま帰りました〜。」
「お邪魔します……。」
「アッ、オ帰リオリマー。ロイ君、イラッシャイ。今オ茶ヲ煎レテキマス。」
G&Wはそう言うと、台所の方へ歩いていく。
「じゃあロイ君、その辺りに座ってください。」
「はい、失礼します…。」
ロイがテーブルの付近に座ると、オリマーの所にいた赤ピクミンがトコトコとこちらに近付いてきた。
「ミ〜。」
「ん?どうしたの?」
すると赤ピクミンは彼の背中によじ登り、肩に座り込む。
「え〜と……。」
「あらら、どうやらロイ君のことを、髪の色のせいで仲間だと思い込んでいるみたいですね〜。」
オリマーがそう言うと、『ミー』と赤ピクミンは返事をするように鳴いた。
「そうかそうか、僕は君の仲間か。」
ロイが指で優しく頭を撫でると、赤ピクミンは『ミ〜…』と気持よさそうな声で鳴く。
「へへ、可愛い……。」
その時、『オ茶デスヨ〜』とG&Wが盆に湯飲みと茶菓子を持って戻ってきた。
「ハイ、ロイ君。」
「あ、ありがとうございます――――わあ……!」
湯飲みと一緒に出された茶菓子を見た途端、ロイは目を輝かせた。



白い皿の上に乗って香ばしい甘い香りを漂わせるそれは、彼の大好きなシュークリームであった。



「このシュークリームは、ウォッチさんが焼いたんですよ。」
「オ菓子作リハ、ナカナカ難シイケド、楽シイデス。自信ハ無イデスケド、ドウゾ召シ上ガレ。」
「はい!いただきます!」
ロイは早速シュークリームに被りつく。
口の中にシューの香ばしさとカスタードクリームの甘さが広がっていく。
「……美味しい!」
「本当デスカ?嬉シイデス。」
真っ黒なため表情は分からないが、おそらく彼は微笑んでいるのだろう。
「ミー。」
「ん?お前も食べたいか?」
「ミ〜!」
「よしよし、ちょっと待てよ……ハイ。」
ロイはシュークリームを少し千切り、赤ピクミンに渡す。
赤ピクミンは『ミ〜』とお礼と言わんばかりに鳴き、モシャモシャとシュークリームを食べ始めた。
ロイも残りのシュークリームを口に入れ、茶を一口飲むと『ふう〜…』と満足気に息を吐く。
「ウォッチさん、ごちそうさまでした。」
「イエイエ、オ粗末様デシタ……トコロデ、ロイ君今日ハドウシタンデスカ?」
「え………?」
「そうだ、さっきはどうして泣いてたんですか?」
「……………。」
するとロイは顔を曇らせ、俯いてしまった。
『ミ〜…』と赤ピクミンは心配そうに鳴く。





「………実は、さっきアイクとケンカしちゃったんです……原因は僕の方にあって、本当に小さいことなんですけど……でも、お互いつまらない意地張り合っちゃって……しまいには家飛び出しちゃって………このまま仲直りできなかったら、どうしよう……。」



段々と声が震えていき、ロイは今にも泣き出しそうだった。
「ミ〜、ミ〜…。」



「……仲直り出来ないなんてこと、ありませんよ。ケンカなんて、いつの間にか終わっちゃうんです。」
オリマーの穏やかな物言いに、ロイは目にうっすらて涙を滲ませたまま顔を上げる。
「そうなんですか……?」
「そうです。僕だってウォッチさんとケンカした時、今の君みたいになっちゃうんですよ?」
「オリマーさんも、ケンカなんてするんですか…?」
「ええ、たまに互いの意見がぶつかって、大ゲンカになったこともあるんです。」
「デモ、最後ニハ仲直リシマス。段々ト時間ガ経ツニツレ、怒ッテイタコトガ馬鹿馬鹿シクナルンデス。」
「そうなのかな……?」
「……ロイ君は今、アイク君のこと怒ってますか?」
オリマーの質問にロイは首を横に振る。
「そうですか。だったらアイク君も、もう怒ってないかもしれませんよ?」
「……でも……アイクと顔会わせにくい………。」
「それがいけないんです、ロイ君。」
「え?」
「ケンカというのは、時間が経つにつれ顔を会わせにくくなるものなんです。そんな状態がいつまでも続くのは嫌でしょう?その相手だって、自分と同じ気持ちなんです。」
「……………。」
「嫌な思いをしたくない、仲直りがしたい。そう思ったら、相手が謝ってくるのを待っていても仕方ありません。本当に大事なのはですね……………





素直に、自分から謝ることなんですよ。」



「オリマーさん……。」


ふと、G&Wがおもむろに立ち上がり、窓の外を眺める。
「………噂ヲスレバ何トヤラ、デスネ。」
「え?」
するとG&Wはこちらに手招きをし、ロイは立ち上がってその場所に移動する。


「あ………!」



そこから見えたのは、何かを探すようにキョロキョロと辺りを見回すアイクの姿であった。



「……ね?彼、もう怒ってなんかいなかったでしょう?」
「………アイク…!」
ロイは『お邪魔しました!』と二人に言うと咄嗟に玄関へと走り、靴を履いて外に出る。そしてアイクのいるその場所へ駆け出した。
「アイク〜!!」
彼の名前を大声で叫ぶと、アイクはこちらを向きロイの存在に気付く。
「…ロイ…?」
「アイク………。」
ロイは足を止め、しばらくモゴモゴとしていたが、意を決したように口を開いた。


「アイク!!………………



―――ごめんなさい!!」


「……………。」
突然頭を下げられアイクはしばらく呆然としていたが、スッと手を伸ばし、彼の頭をワシャワシャと撫でた。
「………アイク?」


「……あれだけのことで怒るなんて、俺もどうかしてた………怒鳴って、すまない……。」


「…アイクゥッ……!!」
泣きそうだった表情がパァッと明るくなり、嬉しさのあまりロイはアイクに抱きついた。彼の肩にいる赤ピクミンも『ミ〜ミ〜!』と嬉しそうに鳴いている。
「良かったですね、ロイ君。」
「仲直リ、良カッタデス。」
ふと前を見ると、G&Wと茶色い紙袋を持ったオリマーがこちらに歩いてきた。
「はい!オリマーさんにウォッチさん、本当にありがとうございました!」
「イエイエ、ソンナ。」
「はい、これお土産です。皆で食べてくださいね。」
そう言ってオリマーが差し出した紙袋を受け取り中身を見ると、先程自分が食べたものと同じシュークリームが沢山入っていた。
「わあ……!ありがとうございます!」
「…すみません、いろいろと……。」
「そんなことないですよ。今度は皆で遊びにきてください………ピクミン、帰りますよ。」
「ミ〜!」
赤ピクミンは首を横に振り、ロイの肩にしがみつく。
「ありゃりゃ………すっかりロイ君に懐いてますね……。」
「ピクミン、また遊びに行くから、それまでは我慢してくれないかな?」
「ミ〜……。」
赤ピクミンは名残惜しそうにスルスルとロイから降り、オリマーの頭に飛び乗った。
「じゃあ二人共、さようなら〜。」
「サヨウナラー。」
手を振りながら家に戻っていくオリマーとG&Wを、ロイとアイクも手を振り返した。


「…俺達も、帰るか…。」
「……うん!」



満点の笑顔で頷いた弟と手を繋ぎ、アイクは二人で夕焼けの道を歩き始めた。





おまけ。

ロイ・アイク・マルスの、家に帰ってからの会話。


「ねえ、結局ケンカの原因って何?」
「……こいつが、俺のショートケーキの苺を食ったんだ……。」
「はあ!?苺!?」
「だって残してたからさ、てっきりいらないのかと思って……。」
「…俺はショートケーキの苺は最後に食べる派なんだ……!」
「だから本当にゴメンって……ほら、ウォッチさんが焼いたシュークリーム食べなよ、すっごく美味しいよ!」
「…そうか…。」
「…………………。」
(↑呆れて何も言えない)






→終わり。
仲の良いすま家兄弟も、たまにはケンカするのです。オリマーは書いてて楽しかったです。G&Wは、いちいちカタカナに変換するのが面倒でした………でも私の中では、彼はこんな喋り方なのです(^-^;


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