誰だって譲れないものはある
今日も穏やかなすま村。
だが、すま家のリビングではマルスとロイが対立を起こしていた。
両者共睨みあい、テーブルではポポとナナ、カービィがクッキーを食べながらその様子を見ている。
「ロイ……本当に譲る気はないの?」
「当たり前、こればっかりは譲れないね!」
バチバチと火花が散る中、洗濯物を畳み終えたダークがリビングに入ってきた。
「お?お前らケンカしてんのか?」
「あっ聞いてよダーク!」
彼の存在に気付いたマルスはこちらを向いて喋り始める。
「僕がさ、5時から始まるドラマ『牡丹と椿』が見たいのに、ロイったら『絶対可憐プリンちゃん』が見たいってゆ〜んだよ〜!」
「だってプリンちゃんが主人公なんだよ!?毎週見てるのに一話でも見逃すだなんて嫌だね!」
『………………。』
あまりにも下らないケンカの原因に、ダークは呆気にとられていた。
「お前らよお……そんなに見たかったらどっちかビデオに録画すりゃあいいじゃねえか?」
「バカ、忘れたの?この間父さんが見事に転倒して、ビデオデッキにお茶こぼして故障しちゃったじゃん。」
「あ、そうか。」
ダークはチラリと時計を見ると、時刻はあと5分で5時になろうとしていた。
「とにかく!ロイは今日くらい僕に譲るべきだね!だいたいプリンちゃんなら学校行けば会えるじゃん!?」
「お生憎様!プリンちゃんはアイドルの仕事で明日から1週間、学校はおろか村にもいないんだよ!だからテレビで見納めとくの!」
「そんなのプリンちゃんの写真でも見てハァハァ言ってりゃいいだろ!」
「僕はそんな変態じゃな〜い!!」
ギャーギャーと二人が言い合っていたその時、『あっ』とダークが声を上げた。
「どうしたの?」
「いっけね!俺も5時から『IQサプリメント』見てえんだった!」
ギロッ!!
その途端、マルスとロイが物凄い目でダークを睨みつけた。
「うおっ!……な、何だよ…?」
「くっ…また新たな敵が増えた……!」
「かくなる上は……とおっ!!」
隙をついたロイはテーブルに置いてあったリモコンを素早くつかんだ。
「ああっ!」
「ハッハッハ!これで僕の勝ち―――――」
「させるかぁ!!とおっ!」
ゴスッとマルスのチョップがロイの頭にヒットする。
「いった〜い!」
思わず頭をおさえるロイの手から、マルスはリモコンを奪い取った。
「あっ、しまった……!」
「へっへ〜!最後に笑うのは、この僕――――」
「やらせねえ!おらっ!」
マルスの背後に回ったダークは、彼の両脇をガシッとつかむ。
「ひゃっ…何すんのさ!?」
「こうするんだよ――――オラオラオラッ!」
コチョコチョコチョ
「いや〜!!アハハハ!!やめてよ!アハハハッ!!くすぐった―――アハッ!アハハハハハ!!」
脇をくすぐられ力の抜けたその拍子に、ダークはマルスの手からリモコンを奪い取った。
「あぁっ!ちょっと!!」
「あ〜リモコンが〜!」
「ヘヘン!悔しかったら取ってみろ〜!」
ダークが悔しがるマルスとロイを挑発していたその時、
ヒョイ
突然、ダークの手からリモコンが消えたかと思うと、パッとテレビがついた。
『ん?』
突然のことに3人は首を傾げる。
テレビで始まったのは、『ママンといっしょ』という子供向け番組。
『……まさか……。』
3人は恐る恐る下を見ると、先程までクッキーを食べていたちみっこ3人がテレビを見ていた。しかも、カービィの手にはリモコンが……。
「…え、何?…もしかして、君達も見たいテレビあったの……?」
「うん!見たかったの〜!」
「……僕達に、譲る気は……?」
「ナナ達、これ見たいの〜。」
「……リモコンよこせピンク玉あああぁっ!!」
ダークがカービィに飛びかかったその時、
「ポヨ……?(ぱくっ)」
カービィはリモコンを口の中へしまった。
『あ〜〜〜〜っ!!』
3人は思わず声を揃えて上げた。
「ど……どうしよ……!!」
ふとロイが時計を見た。
すると、時刻は5時を2分も過ぎている。
「このままじゃまずいよ……!!」
「ああ……もうOPかな……!?」
「畜生……どうしても見てえ……!!」
『(…かくなる上は…!!)』
意思を固めた3人は急いで玄関へと走っていった。
「マルス兄ちゃん達、どこに行くのかな?」
「お隣さん家のテレビで見せてもらうんじゃないかな〜?」
「ペポ〜そっか〜♪」
勝者の栄光を手に入れたちみっこ3人は、心行くまでテレビを堪能した。
→終わり。
番組名を考えるのが楽しかった作品です。マルスとロイ、ダークは結構似た者同士なのです。なのでよく衝突します。
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