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キャラクターメイキングで異世界転生!  作者: 九重 遥
6章 何かを試され、獲得する何か
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自分、異世界人っす

戦闘シーンから始まります。

「ハッ!」


「アポロッ!?」


 リンの戸惑いの声を無視して前へと駆け出す。

 前方、走る先には敵の存在が。

 3匹のレッドゴブリンとその後ろにゴブリン達のボスとみられるハイオークが一匹。


「ゴヒゥ!」


 俺の突撃に驚いて、ゴブリン達の身体は一瞬硬直した。

 しかし、オークがゴブリン達を叱咤したことでその硬直は溶ける。

 

「ガガッ!」


 ゴブリン達が俺目掛けて迫ろうとする。

 だが、遅い。

 一番手前にいるゴブリンが一歩駈け出した時、俺は速度をあげた。

 彼我の距離は一瞬で零に。

 

「ガ!?」

  

 突然目の前に現れた俺にゴブリンは混乱の声をあげる。

 それが奴の最後の言葉だった。

 ゴブリンの首が宙を飛ぶ。


「ガガッ!?」


 胴体だけになったゴブリンは崩れ落ち、仲間のゴブリンは目を大きく開け、俺と死んだゴブリンを見る。

 だが、俺は止まらない。

 返す刀で、もう一匹の首を狩り、回転。


「ハッ!」


 そして、回し蹴り。

 俺の蹴りはゴブリンの胴体に当たり、メキメキッとした音と共に吹き飛ばした。そして、ゴシンと木に当たりゴブリンは倒れた。

 倒れたゴブリンはそのまま起き上がらずに絶命した。


「さてと……」


 残ったオークを見上げる。



「オオオオ!」


 オークは雄叫びをあげて俺に突進してきた。

 2m以上はある巨体、腕は人間とは比べ物にならないほど大きい。

 直撃を受ければ、戦闘不能の可能性がある。

 オークが横薙ぎに腕を振るう。

 邪魔するもの皆排除すると思いを込められた横薙ぎを俺はしゃがみ込み回避する。

 ビュウと鋭い風切り音が耳に届く。

 恐ろしいはずの音なのに、顔がニヤけそうになる。

 不自然なほどの高揚感。しかし、頭は氷のように冷たく冷静に。

 続く、オークのパンチを半身になって回避。

 一瞬前に顔があった場所にオークの拳が通りすぎる。

 頬を撫でる風が心地よく感じる。

 そして、オークが腕を戻した瞬間。

 俺は剣を振るう。

 一撃。

 オークの首が飛んだ。

 そして、遅れて胴体が崩れ落ちる。


「よし!」


 戦闘終了。

 モンスターを全て倒した。


「アポロ!」


「主殿」


 リンとベクトラが駆け寄って来る。


「なんなの、あの動き!?」


 リンが詰め寄って来て、開口一番そんなことを言った。

 凄みのある声。真剣味を帯びた表情で聞いてくるリンだが、


「そう言われてもな……」


 対する俺の返答はまごついていた。

 出来ると思ったからの動きであり、一人で突っ走りすぎたことには反省するしかないが。

 レベルアップ増加でのステータス改変は行っていない。

 なのでステータスの数値的には以前と変わらないはずだ。


「以前とは動きが見違えるようじゃったぞ」


「そうよ! そうよ!」


 だが、仲間達はそう言った。


「…………」


 確かに、以前の俺ならば複数戦ならば単騎で倒そうとはしなかった。

 こちらもパーティーを組んでいるのだ。複数ならば人数を活かし、分担する。せざるを得ないなら仕方がないが、単独で複数に挑むのは危険なのだ。

 数の暴力。

 一つ手筋を間違えれば敵が殺到し負ける。

 だから、安全第一に動いていた。

 まぁ、なし崩し的に複数戦になる場合も多かったが……。

 だが、今回は違う。

 リンとベクトラを置き去りにして、単独でモンスター群に突っ込んだ。

 勇敢というより蛮勇という行為なのだろう。


「あの一戦で覚醒したのですね」


 何か意味深な表情をしながらアルが頷く。


「覚醒って何だ?」


 そう聞くと、


「さぁ?」


 意味深な表情は何処へやら、アルはとぼけた顔で首を捻った。

 言いたかっただけか。


「でも、あの敵との戦いの時のアポロって凄かったもんね。コツでも掴んだのかもね」


 アルの言葉をフォローするようにリンが言った。


「自分では無我夢中だったんで覚えてないが」


 そうなのかとベクトラの方へ振り向くと、


「拙者は知らぬ。主殿に頼まれた任務を遂行中じゃったんでな」


 ベクトラはプイッとそっぽを向いた。


「んん…………?」

 

 その拗ねた態度はベクトラにしては珍しい。

 そして、背後ではアルが声を押し殺して笑っていた。どうやら、アルに原因があるらしい。ついにアルはベクトラまでおもちゃにし始めたのだろうか。後でアルをしめておこう。



 

 昼に出発して、一日ではユエルの塔に到達出来なかった。

 夜になり、野宿をすることに。

 焚き火をし、パチパチと音を立てて燃える火を囲む。


「さてと……」


 俺はベクトラとリンの顔を見ながら話を切り出した。

 火を中心に三角形に座っていたので両者の顔がはっきりと見える。


「どうしたの?」


「…………」


 改まった感じで話を切り出したからか、リンは不思議そうな表情で聞いた。ベクトラは俺が何を話したいのかわかったのか神妙な表情で口をつぐんでいる。


「俺の、隠していたことを、話そうと思う……」


 夜行性の鳥だろうか、何処かで鳥の鳴く声が聞こえた。

 音はそれっきりで、後は焚き火の音だけだった。

  


「いい機会だと思うし、ユエルの塔に登る前に話したいんだ」


「アポロ……」


「主殿……拙者は今で無くてもいいと思うが。聖霊様の代理様にも言われておるのじゃろ」


 ベクトラが口を開いた。

 声音には力が無く、迷っているような気がした。


「聞くなと言われてるのはムラオルさん達だろ。それに、俺が話す分には問題ないと言ってたしな」


 ベクトラの迷いは俺への気遣いだろう。だから、俺はベクトラに笑って答えた。先程言った意味とは又別の大丈夫だとの意味を込めて。

 その返答を正しく受け取ったのだろう。

 ベクトラもぎこちなくだが、笑った。


「拙者はアポロ殿が話してくれるまで待ちたいと思っておる。無理に話す必要はない。まぁ、リン殿は知りたいと言って聞かんのじゃが……」


「そうですね。私達は待つつもりですけど、リンさんは……」


 ベクトラとアルがちらりとリンを見る。


「ちょ、ちょっと、私何も言ってないでしょ!

 おかしい!流れ、おかしい!」

 

 リン。余裕がないのか、最後。片言になってるぞ。

 ベクトラとアルの視線を受け、必死になって首を振るリン。


「いやー、リンさんをおちょくると面白いですね」


 リンの慌てふためきが一段落した後に、アルがポツリと言った。


「うむ。リン殿は稀有な存在じゃ」


「全然褒めてない! というより、シリアスな流れだったじゃない!何で私をいじる流れになるの!」


 俺もそう思うが、アルとベクトラは笑って相手にしなかった。

 でも、このままではいけない。


「さて、んじゃ。話すとしますか」


 和やかな雰囲気のまま、本題に入る。


「いいんですか?」


 最後の確認を込めてアルが聞く。


「ああ。何度か考えたし、これ以上黙ることはリンやベクトラを裏切ることになる。そう思ったんだ」


 何を裏切るのかは説明出来ない。

 信頼か、義理なのか、それとも別なものか。

 しかし、話さないということは自分にある彼女達への思いを裏切ることになる。それだけはわかるのだ。


「アポロ……」


「主殿……」


 リンやベクトラは俺を呼ぶが、それ以上のことは言わなかった。

 

「で、だ……」


 話すと決めたはいいが、心臓が破裂しそうなほど鼓動する。

 手の先は震え、制御を失う。

 それを悟られないように服を摘んでごまかす。

 先程、滑らかに動いていたはずなのに、舌に重りを載せられたかのように躍動感を失う。

 心にあるのは恐怖。

 話さなければ、今の関係が続くはずなのに、話してしまえば崩れてしまうかもしれない。暴挙と言えば暴挙なのかもしれない。恐怖が常に逃げてしまえという選択肢を提示してくる。

 

「アポロさん……」


 心配そうなアルの声が聞こえた。

 ハッとアルを見ると、何かに耐えるように眉根を寄せるアルが俺の目に映った。

 駄目だ。

 俺は何をやっているんだ。

 アルにこんな心配かけるなんて。


「………ふっ」


 自然と笑いが出た。

 突然笑った俺にリン達は訝しむが、気にしない。 

 呪縛は解けた。

 心臓の鼓動は落ち着き、指先の震えは弱まった。

 話そう。

 

「俺は実は…………この世界の住人じゃないんだ」


 俺は、俺の秘密を、ついに明かしたのだ。

 そして、仲間達の返答は。


「…………は?」


「…………うわぁ」


 ベクトラは信じられないと、リンは痛い子を見るように俺を見てきた。   

 まずい。

 話す順番を間違えたか!?

 仲間達の視線が痛い!

 急速にこの状況を打開するために頭を必死に働かせるが、空回りする。何も思い浮かばない。

 えっと、何を言えばいいんだ。前の世界の情報?駄目だ。地球のことを言っても証明出来なければ意味が無い。痛い子扱いだ。

 そうだ。原因。原因になったことを話せば!

 振り返って考えると、それはないだろうと思うが、この時はそれが最善だと思ったんだ。


「神に、神にあったんだ!前の世界で!」


「うわぁ……」


「主殿はお疲れじゃ。お疲れなのじゃ……」


 何で!?

 呆れというか、痛い子を見る目は増々強くなった

 この世界に聖霊がいるなら、神もいるはずだよな!

 必死に説得すること10分。

 どうにか信じて貰えた。



「で、要するにアポロは異世界人で前の世界で死んだからこのアルハザードで第二の人生を始めたと」


「そうだ」


 何処か信じられなさそうに、リンは言う。

 気分は刑事に尋問される犯罪者だ。

 おかしい。

 リン達に話す展開をシミレーションしたことがあるが、もうちょっと違う雰囲気だったのになぁ。 


「主殿は自分で種族を決めたと、それがダンピールであったわけか……」


「うん、そうです……」


「何故、ダンピールを選んだのじゃ?」


「えっと、何となくというか直感で……す、ステータスも良かったし?」


「……………」


 痛い子を見る目が更に増加した!

 直感は話さずにステータスが良かったからにしとけば……。


「えっと、迫害されてるってアポロは知らなかったの?」


 リンが戸惑いながら俺に聞く。


「…………」


 書いてあった。

 迫害されるって書いてあった。

 それを事実のまま言うと更に痛い子扱いされる。

 決めたときはわりと考えてシリアスめでと、決断したのだが他者に話すとなると別な感じになるような。

 言うべきか?

 いや、誰も知らないはずだ。

 自身の尊厳をこれ以上傷つけないため、俺は口を開いた。


「ええと、知らなかっ……」


「あれ?キャラクターメイキングってそこら辺の注意はちゃんと書いてあるはずですよね?」


 アルゥゥゥぅ!

 事情を知ってるアルがバラしてしまった。

 というか、何でそんなことは覚えてるんだよ!

 こちらを笑顔でサムズアップする姿は故意だということを雄弁に物語っていた。


「アポロ……」


「主殿はこう、もうちょっと思慮深く生きるべきかと」


 ベクトラのフォローが痛い。


「まぁ、まぁ。やっちゃったものはいいじゃないですか」


 ニヤニヤとフォローをするアルをネジきりたい。


「うん。そうね。でも、これでアイテムボックスを持ってる理由も納得出来たわね?ん?納得?」


 自分で言っていることに疑問を覚えたようだ。

 リンは首を捻る。


「主殿。異世界転生をした者は全てアイテムボックスを持つのか?」


「いいや、自分達で何を持っていくかは決められてな。そこで運良く見つけたんだ」


 検索出来ると気がついたのはまさしく運のおかげだ。

 あのドタバタの最中に普通気がつかない。


「ふむ。そうなるとアイテムボックスを持ってる人物は少ないのかのう?」


「だと思う。アイテムは沢山あったし、制限時間があったからなぁ」


「一回どんな状況で見たか見てみたいわね」


「うむうむ」


 リンが興味深そうに言った。

 ベクトラも同じ気持なのか何度も頷く。

 しかし、キャラクターメイキングは過去のことだから見せる事はできない。

 

「アポロさん、アポロさん。なら、ステータスを見せればいいじゃないですか」


 と、その時。

 アルがそんなことを言い出した。


「ステータスを?」


「はい。他の人にも見せることが出来ますよね? この世界の人ってギルドカードに載るステータスしか見れないはずですから」


 ね、とアルはリンやベクトラに聞くと二人は頷いた。

 看破のスキルは本人しかわからないらしい。


「なら、見せるか。ステータス」


 ステータスをちょちょいと弄って、リンとベクトラに見えるように可視化して開いた。


暴露話。

シリアスな雰囲気にすべきか迷いましたが、ほのぼのとコメディな感じにしました。


次回は14日前後予定。

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