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キャラクターメイキングで異世界転生!  作者: 九重 遥
5章 エルフのちエルフ、時々エルフ
62/98

いざ温泉へ出発!

 ついにミシェロの町を出る日が来た。

 急な出発のため、慌ただしい準備となったが何とか用意できた。


「リンさんに、ベクトラさんに、アルさんが旅に出るんだって、寂しくなるなぁ」


 門番のケインさんがにこやかに話しかけてくる。

 ナチュラルにケインさんの視覚に俺が入ってないのは何故なのだろうか。


「旅って言っても一月後には帰るわ」


「ですね。我が軍団はミシェロの町を拠点と決めていますから」


「しばしの別れじゃ」


「ケイ……」


「だけど、リンさんやベクトラさんやアルさんのような美人を見れなくなると思うと辛いなぁ。門番の仕事での潤いだよ、君達を見るのは」


 俺の台詞に気が付かずに遮るケインさん、もとい門番。


「ケイン殿は口がうまいのぉ、門番の仕事をしておるのが惜しいくらいじゃ」


「はっ、はっー、俺も膝に矢を受けなければ冒険者でバリバリ活躍してたんだがなぁ」


「ケインさんも大変だったのね」

  

 膝の調子を確かめるためか飛び跳ねながらそう言う門番。

 矢の影響なんてないのではと思うくらいの軽やかなジャンプだ。

 俺は何か疎外感を感じたので、そのまま離れた場所で待機する。

 和やかに会話する一団から離れて立っているのは寂しいな。

 すると、ケインさんと会話してたはずのアルがやってきた。


「ねぇ、アポロさん。ケインさんのあれってツッコミ待ちでしょうか」


 アルはケインさんが飛び跳ねてる姿を指さす。


「知らん」


 そして、リンが。

 

「ねぇ、アポロ。綺麗だって、私。聞いた!?

 これが町の人の正しい認識だからね。私は残念エルフじゃないんだからねっ」


「俺はそんなこと一言も言ってないが」


 何が嬉しいのかリンは上機嫌に笑いながら俺の腕をパンパン叩いてくる。

 リンが残念エルフというのは思ってても言ってないはずだ。まさか、自分でも思ってるのだろうか……。


「主殿、何で離れておるのじゃ?」


 最後に、ベクトラが近づいて俺の腕を引っ張っていった。

 門番の目の前まで。


「待て、なんで俺の腕を取る」


「主殿が逃げたからじゃ」


「逃げないから、腕を掴むな抱き寄せるな当たるから」


「ういのう、ういのう」


「ってリン抓るな、痛い痛い。俺は何も悪くない」


 リンは反対側の腕を抱き寄せ、指で俺の腕をつまみ、ねじり始めた。


「胸がそんなにいいの!アポロのスケベ」

 

「俺は悪くない!」


 そして、アルが俺の頭にのり、髪の毛を操縦棒に見立てて引っ張りだす。


「行けー、アポロロボ一号!自爆だぁ!」


「アル。お前は殺す」


「なんで私だけ本気の声で言うの!?」


「くそが、見せつけやがって」


 初めてケインさんが俺の目を見た。

 視線だけで人が殺せそうに凶悪に、チンピラのように柄が悪い声で。


「聞いてんだぞ、アポロ。

 てめぇはリンさんやベクトラさんとイチャつき旅行行くんだってな。許さねぇ、ぜってぇ許さねぇ。それに、冒険者ギルドのリサさんまで誘おうとしたらしいじゃないか」


「いや、それデマだから」


 リサさんは誘ってないぞ。

 だが、ケインさんは俺の言葉なんか聞いておらず一人でエキサイトしまくる。


「うっせぇ!

 じゃあ、なんだ温泉入るってのは嘘なのか!嘘なんだな、神に誓って言えるのか!って目をそらすな。事実だな。真実なんだな。温泉に入るんだな。両手に華状態で!男一人に女性同伴で温泉浸かるんだな……ようしわかった。アポロ、町に帰ってこれると思うなよ。俺の目が黒いうちは町に入れないようにしてやる」


「かなりの私情ですね」


「最悪だな」


「うっせぇ。モテないものの力をしれ!」


「べ、ベクトラ。なんかケインさん怖いんだけど」


 あまりの豹変ぶりにリンがこわばる。

 俺をつねっていた手を止め、ケインさんから隠れる。


「なに、男同士のじゃれあいじゃ。本気にするだけ損じゃ」


 ベクトラは落ちついた声音でリンを諭す。


「そうなの?」


 ベクトラの泰然自若した様子を見て、リンのこわばった体が緩む。

 しかし、かたや俺の腕を掴みながら後ろにまわり、かたや俺の腕を抱き寄せながら横にいる。


「そうじゃ。それにアポロ殿がうまいことまとめるじゃろう。拙者達は安心して見とればいい」


「そうなんだぁ」


 女衆は俺をはさみながら好き勝手なことを言っているのだ。

 左右の腕をリンとベクトラにとられているから、動けない。

 どうせなら俺から離れてから、話して欲しい。


「膝に矢を受けなければ、俺がその位置にいたんだぞ!リンさんとベクトラさんと一緒に温泉入ってキャッキャウフフしてたんだからな!お前だけの特権と思ったら違うんだぞ!そこんところわかっとけよ」


 鼻の穴を膨らませて、そう吐き捨てるケインさん。

 温泉に入っても、男女別に分かれてるから一緒に入るわけないだろうに。だが、それを言っても今のケインさんには焼け石に水だ。


「一緒になんか入らないわよ。二人とも最低ね」


 巻き添えで俺の評価が下がる。


「のぅ、リン殿。混浴は置いておいて、今の状態でアポロ殿じゃなくケイン殿だったらどう思うのじゃ?」


「今の状態って………!!!」


 自分が男に密着しているのに気がついたのだろう。

 リンがばっと俺の腕を離し、その場から離れる。

 そして、一度ケインさんを見て。


「ない、ない。絶対にない!」


 バッと凄い速度で首を振って、そう断言した。

 そのないというのはどういう意味なのか、それは本人にしかわからないのだろう。

 ケインさんはそのないという意味をそのままの意味で受け取って、地面に片膝を立てうち崩れた。


「行けよ、もう………」


 哀愁ただよう声でケインさんはつぶやく。


「鬼畜ですね、リンさん」


「エェ!いや、あのそう言う意味じゃなくって」


「では、どういう意味なのじゃ。ケイン殿の腕を抱くのはオッケーなのか?」


 その言葉に顔をあげるケインさん。

 それはまるで捨てられた子犬が救世主を見つけたような目だった。

 リンはその眼差しに驚いた後、


「ご、ごめんなさい!」


 頭を下げて謝った。

 再度ケインさんは崩れ落ちた。今度は片膝どころか、地面に倒れ伏している。


「もう行きましょう。これ以上彼を傷つけるのはよくありません」


「えっ、えっ!?」


「アル殿言うとおりじゃ。リン殿も美人なのじゃからもうちょっと断り方を考えるべきじゃ」


「で、でも?謝らなきゃ」


「塩を塗りこむつもりですか!

 立ち去るのが正解なんですよ」


「そうじゃ。それが一番いい」


「えっ?で、でも……?」


 アルとベクトラに連れられ、リンが去っていった。


「あ、あの……」


 そして、逃げ遅れた俺がそこに。

 どうすればいいんだ。


「行けよ。俺なんか気にせずに。それが男ってもんだろう」


 地面から顔をあげずにケインさんは言う。


「ケインさん……じゃ、そういうことで」 


 お言葉に甘えてその場を去る。

 何か待ってくれとか、本当に見捨てるやつはあるかと、叫び声が聞こえるような気がするが、気のせいだろう。疲れてるからなぁ。



「おぉ、主殿。お疲れ様じゃ」


「ベクトラ、お前逃げただろう」


「カッカ。他の男の嫉妬をあしらうのも男の技量じゃ」


 快活に笑うベクトラに反論する気がおきなくなる。

 言ってることには一理あるのかもしれないが、釈然としないのは何故だろう。確かにリンとベクトラは美人だが、今回は俺も被害者な気がする。何もしてないぞ。むしろ、振り回されてただけのような。


「アポロさん。そんな考え方だから敵が増えるのです。いいですか、美人を横に侍らす事自体がギルティなんです」 


「そ、そうなのか……?」


「ええ。美人を横に侍らすのは並の男には出来ないことなんです。それをしてしまう男は必然的に嫉妬されるのです」


「なんか男側損な気がするな」


 人間誰しも友人を持つ。その友人が美人かどうかで批判を受けるなんて。


「税金だと思いましょう。なんだかよくわからないけど、生きてるだけで負担させられる物だと。

 それに、アポロさんがリンさんやベクトラさんの可愛さや美しさに一ミクロンも心が動かされず、ときめかないと言うのなら話は別ですが」


「その言い方は卑怯だ。否定出来ないぞ……」


 考えてもどうしようもないので、頭の隅にこの話を置いておき、馬車へと向かう。

 まずは温泉街へ。

 そこから徒歩でリンの村へ。

 距離的には少し遠回りになるが、このルートが最短の時間でつける計算になる。

 馬車に揺られながら、リンとベクトラ達と会話をする。


「運良く、馬車に乗れたな」


「そうですね。私の行いがいいですからね。アポロさん感謝するといいですよ」


 アルが何かを言っているが、サクッと無視してベクトラやリンに顔を向ける。


「そうじゃのう。それに、温泉も入れるのじゃ。文句なしじゃ。リン殿も顔が緩みっぱなしじゃ」


「緩んでなんかいないわよ!」


「でも、嬉しいのじゃろ」


「ぐっ……」


「温泉に入れるとわかった瞬間のリン殿は見ものじゃった。パッと花咲くと言えばいいのじゃろうな。そんな顔じゃった」


「うぐぐ………そんな顔してないもん」


「王都行きの馬車とは言え、途中まで馬車に乗れ温泉まで入れるのじゃ。拙者達は幸運じゃのう、のうリン殿」


「何度も私に振らないでよ!絶対、うんって言わないわよ!」


「なんということでしょう!リンさんが疑心暗鬼に」


「ベクトラのせいだと思うぞ」


 間違いなくリンをいじっていたベクトラのせいだ。

 だが、ベクトラは悪びれることなくカッカと笑う。


「しかし、リン殿の故郷に行く用事がなければ王都に行くことになったかもしれぬのう。主殿は王都に行く用事はあるのか?」


「いや、ないけど」


「ふむ。なるほど」


 雑談といえば雑談。

 だが、ほんの少し違和感を感じた。


「ベクトラは王都に行きたいのか?」


 俺の言葉にベクトラは目を見開いた。そして、観念するように答えた。


「……ギルドにせっつかれてのう、いずれ王都に行かねばならぬのじゃ」


「ギルドに?」


 ギルドからベクトラ個人に王都に行けとお願いされている。もしや、指名依頼なのだろうか。ベクトラは神聖魔法の使い手。回復魔法が貴重な世界なのだ。ベクトラを指名する仕事もあるのだろうか。


「実はの、拙者はCランクなのじゃが、Bランクへ昇格出来るのじゃ。それをな、ちーーーとばっかし無視してたのじゃ」


 少し恥ずかしそうにベクトラは肩をすぼめる。


「少しってどのぐらいですか?」


「……数年じゃ」


「長くないか?」


「少しじゃないわよね」


「待て、エルフは長寿なのじゃ。人間と同じ時と考えては駄目なのじゃ」


「とベクトラさんが言ってますが、どうなんですかリンさん?」


「別に一緒と考えていいわよ」


 情け容赦無く、リンが断言する。


「うわぁ」


「違うのじゃ。オルケニアの腕輪とか虎徹のために死に物狂いで頑張ってたのじゃ。それで行く機会がなかったのじゃ」


 その答えにどこか違和感を感じる。

 確かにベクトラには目的があって頑張っているのかもしれないが、焦っている様子はない。そもそも俺達とパーティーを組んでいるのに俺の方針に文句を言わずついてきてくれる。自分の目的を二の次にしてまで。


「本音は?」


「面倒じゃったからじゃ」


 諦めたのか、悪びれもせずベクトラは言い放つ。


「駄目だろ、それは」


「ま、まぁ。Bランクの昇格は確かに面倒よね」


 かわいそうに思ったのかリンが助け舟を出す。


「そ、そうじゃろ!リン殿もそう思うのじゃ。

 そもそも昇格するのは個人の自由のはずじゃ。それをギルドは事あるごとに昇格しろ、昇格しろとうるさいのじゃ。王都にいかねばBランクになれぬし!」


 味方が現れたことに、我が意を得たりとベクトラが饒舌になる。


「はぁ、そこまで面倒なのですね」


「でも、特典も凄いのだから取ればいいのに」


「特典ってなんです?」


「Bランクになればギルドから保証されるの。わかりやすく言えば、ギルドが後ろ盾になるのね。Bランクを取ればギルドカードがそのまま身分の証明書になるし、ギルドの影響力の強い店なら割引やツケがきくわ。それに受けられるクエストも増えるし、個人宛ての指名依頼も来るわ。そして、Bランクになればギルドに留まらず、頑張れば国の騎士に取りたてて貰えるわ」


「へぇ、確かに凄いですね。ツケがきくなら、リンさん借金し放題じゃないですか」


「しないわよッ!ええ、するもんですか!」


 否定するよりも、自分に言い聞かせるような反論だった。

 アルはリンの言葉を流し、ベクトラに問いかける。

 

「なら、ベクトラさんも取ればいいじゃないですか。面倒って何があるんです?」


 ちょっと、聞きなさいよとのリンの声をBGMにしながら、ベクトラは苦虫を噛み潰した顔で説明する。


「まずは試験じゃ。Bランクにあがる実力があるかどうかクエストを出されて、それをクリアせねばならぬ。試験監督も随行するのでクエスト中の行動が全てチェックされる。そして、そのクエストをクリアしても終わりではないのじゃ。筆記試験を出されるのじゃ。内容は冒険関係だけではなく計算や法律も含まれるのじゃ。筆記試験にしても一日と言わぬが半日はかかるのじゃぞ!」


 そこで一息ついて、どうじゃ大変じゃろうと言いたげな顔でこちらを見る。


「…………まぁ」


「…………大変ですね」


 アルと顔を見合わせて、そう答える。

 思ったより普通というか。高校入試とか試験に半日かかったので別に驚くようなことではない。

 俺達の反応にヤバイと思ったのか、矢継ぎ早に言葉を足す。


「そ、それにギルドで面接があるのじゃ。ギルドが保証する人物足るかどうか性格、能力を検査されるのじゃ。百戦錬磨の対人コミュニケーションと看破のスキルでどんな人物も丸裸じゃ!喋らず首を振って答えただけなのに、その人物の性格が暴かれたり、隠蔽スキルを使った人物さえ自分の持っているスキル等がギルドに発覚されたという恐ろしい話もあるのじゃ!拙者なぞ、ギルドに神聖魔法のレベルを低く申告しとるから、それがバレたら面倒な仕事をまわされるかもしれないのじゃ。侍になりたいのに、教会扱いされるのじゃ!」


「………それは……面倒だな」


「そうじゃろう。きっと主殿はそういうと思っておったのじゃ。拙者は良き主君を持てて幸せじゃ」


 ベクトラが何かを言っているのを聞き流しながら考える。

 俺とベクトラの面倒の意味する所は違う。

 ベクトラは言った。『隠蔽スキルを使った人物さえ発覚された』と。それは、俺の持っているスキルが通用しないということだ。俺は隠蔽スキルを使い、自分のスキル構成や種族、能力値をごまかしている。それがバレるということだ。

 もしかしたら、看破のスキルレベルが俺の隠蔽スキルレベルより低ければごまかすことが出来るかもしれないが、それを試すにはリスクがありすぎる。


「なぁ、ベクトラ……」


 より情報を集める為にベクトラに声をかけた時だった。


「モンスターだ!!」


 御者から悲鳴が聞こえた。






作者すら忘れかけている現在のステータス


============================

名前:アポロ(新城響)

種族:吸血鬼とのハーフ

残りポイント0


レベル15

HP225/225

MP126/126

STR:70

DEF:60

INT:38

AGL:55

DEX:55


スキル

剣術3 調教1 鑑定3 分析2 隠蔽4 

索敵3 詠唱破棄1 火魔法4 精霊魔法1 

精神異常耐性2 直感7 吸血1 


装備

黒鉄剣、ブラックウルフレザージャケット、ブラックウルフのズボン


仲間

アルテミス(契約)

リン・エスタード

ベクトラ・レイライン

=============================





============================

名前:アルテミス


種族:妖精


レベル15

HP39/39

MP22/22

STR:10

DEF:12

INT:8

AGL:8

DEX:10


スキル

オラクル 

直感


装備

============================

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