日常が帰ってきた!
おまたせしました。
再建が長くなったのでそこで1個の章に分けました。
今回から新章ということで。
迷える羊の再建も終わり、日常が戻ってきた。
早朝に起きて、訓練をしてその後クエストを漁る毎日。
「ねぇ、迷える羊は大丈夫なの?」
クエストを漁るためにギルドに向かう途中、リンが聞いてきた。
通りには多くの人が歩いている。
買い物途中の主婦だったり、同業者と思える装備をしたむさい男やこれから仕事に向かう衛兵。
これらに混じって俺達も進んでいる。
「大丈夫だと思うぞ。
予約以外お断りしたので従業員のキャパシティーを超えるお客は来ないはずだ」
リンの横顔をチラッと見て、そう答える。
うん、もう大丈夫なはずだ。
一時は自分が冒険者ということを忘れ、メイドとして生きていこうとしたリンだったが、俺とアルの命をかけた説得により自分を取り戻した。
迷える羊の再建と同じくらいの懸命さだったかもしれない。
もしメイドとして生きることとなったら、リンの人生を変えてしまったことになる。リンのメイド化は必要な手段であって、目的ではないのだ。リンの人生変更という烙印を背負って生きていかねばならないのは辛すぎる。
「でも、リンさんをメイド化することにもメリットがありますよ。
メイドですから、朝は優しく起こしてくれて、クエストから帰ってきた時にはお帰りなさいと微笑んでくれて、合法的にセクハラやらお仕置きが出来ますよ?」
アルがこそっと耳元に近づいて来て囁いてきた。
「色々とツッコミたいところはあるが、何で俺の考えてることがわかるんだ?」
「そりゃもう、以心伝心ですからね。アポロさんの考えていることなんてわかりますよ」
胸を張ってアルは答える。
「じゃあ、今俺の考えていることはわかるか?」
「勿論。健気にアポロさんに尽くしているアルさんに何の褒美を与えよう………って何で私の首を掴んでいるのです?」
「何でだと思う?」
「労りの意味をこめて首のこりを……ね?」
一縷の希望を託すようにアルはこちらを見る。それに対し笑顔を返し、指先に力を入れようとしたところで、
「これこれ、主殿、アル殿。仲がいいことは結構なことじゃが、注目を浴びているのじゃ」
隣、リンとは逆側にいるベクトラにたしなめられた。
周りを見ると、確かに歩行者の一部は足を止めこちらを見ていた。
こちらに注目しているのは冒険者らしきものが多い。ギルドに近づいてきたこともあるのだろう。冒険者ギルドではアルは人生相談をしているので、信者というかファンや味方が多い。アルの飼い主ということで俺に対するアルファンの評価はややいい。羨ましがられることはあっても、蔑まれることはない。不思議と言えば不思議な評価だが、悪い評価を与えられてないので良しとしよう。
だが、公衆の面前でアルをいじめるのはあまりよろしいとは言えない。
「ちっ、命拾いしたな」
アルの首から手を放す。
折るのはまた次の機会だ。
「それ仲間に言うセリフじゃないですよね!」
「夜道を歩く時は気をつけておけよ」
「アポロさん、さっきから小物臭がする悪役みたいですよ!?」
「もう、何を二人で遊んでるのよ。
さっさとギルドに行くわよ」
ベクトラだけではなくリンにもたしなめられた。
恥ずかしいとばかりに俺の腕を掴み、歩いて行く。
リンに引っ張られるように進んでいく。
そのまま歩いて行くと思われたが、途中で止まってこちらを振り返った。
「ねぇ、本当に迷える羊は大丈夫なの?
私達がいなくなって困らない?メイドが必要なんでしょ?」
腕を掴んでいた手の力が抜けて、離される。
制御の失った俺の腕はだらりと力なく元の位置へと戻った。
その動きがひどくゆっくりとしたように俺は感じられた。
「ああ………。
さっき言った通りにお客の人数は調節してるし、ホールスタッフは新しい人を入れたからな」
「でも、新しい人はメイドとして技量が足りてないのでしょ?」
どこか責めるようにリンは聞いてくる。
洗脳は解いたはずだが、完璧とはいかないみたいだ。
「だからこそなんだ」
「どういう意味?」
少しぼかした言い方をする。
すると、虚をつかれたのか責める気配が薄れた。
「オオッとこれはアポロさんの手ですよ、ベクトラさん。
相手の意表をついて、怒りの矛先を逸らす手口です。
チョロインの素質があるリンさんなら効果はばつぐんだ!」
「なるほどのう。アル殿が主殿を女たらしと言ってる理由が段々とわかってきたのじゃ」
「のほほんとしていられるのも今のうちですよ、ベクトラさん。
今にアポロさんの毒牙がベクトラさんに振りかかるかもしれませんよ」
「いやいや、拙者は大丈夫じゃ。
胸に侍の心を秘めているのでな。リン殿のようには簡単になびかぬのじゃ!」
外野うっせーーー。
狙ってやってるんじゃねぇよと声を大にして言いたいのだが、リンの相手をするのが先だ。
ベクトラとアルの会話に意識が向きかけてるのを修正するために、リンの頬を両手で捉え、真正面に視線が合うように固定する。
「あ、アポロ!?」
リンは驚きの声をあげる。
「敵のことは構うな、聞け!」
それにかぶせるように力強く、大声を出す。
「…………う、うん」
視線を若干彷徨わせた後、リンは俺の目を見つめた。
「キスだ!そのままキスだ!」
「接吻じゃ!生の接吻じゃ!きゃー」
外野はまだうるさいが、気にしないことにする。虫の羽音と思えばいい。
リンも羽音が気になるのか顔に赤みがかかってきている。
だが、そちらに意識を向けないように両手に力を込める。
アルの方に向こうとした首の動きを正面の俺にしか向かないように固定する。
手からリンの肌の温度や感触が伝わってくる。
温かくて柔らかい。
いつまでも触っていたいと思ってしまう。
「新しいホールスタッフを入れたが、働きの質はメイドと雲泥の差だ。
だからこそ、新人達にはメイド服を渡さない。
メイド服はメイドたる者のみに与えられた証明だからな。技量や心構えがない者には許されざるものだ。だからこそ、新人達は一流のメイドになろうと並々ならぬ熱意を持って仕事やしごきを耐えられるんだ。
そして、その熱意はメイドにも好影響を与え、結果店は今問題が起こるどころか、はっきりいってかなり良い状況だ」
「そうなの?」
リンの両目に映るのは微かな不安か?
「勿論、リン達の役目がなくなったわけじゃない。
暇になればリンが新人達を教えればいい。リンのメイドが必要じゃなくなったわけじゃないんだ。冒険者としてのリンが俺にとって必要なんだ」
「アポロは私が必要なの……?」
「ああ。必要だ。
なくてはならない存在だ!」
力強く答える。
リンの瞳は一瞬迷うように揺れた後、しっかり真っ直ぐと俺の目を見つめ返した。
「なら、頑張るわ。冒険者のリン・エスタードとしてね。
アポロのためにね」
俺はその言葉を聞き、手をゆっくりとリンの顔から離す。
力を入れて触っていたせいだろう。上気した頬は少し赤く染まっていたが、青空を思わせる晴れやかな笑顔をリンは浮かべていた。
それはまるで憑き物が落ちたような…………。
「やりましたね、アポロさん。任務完了です」
「さらっと味方面してくるアルに驚きだよ。
待ってろ。処刑道具だすから」
「さらっと処刑と言うアポロさんの方が驚きですよ!」
「しかし、主殿。周囲からますます注目を浴びてるのじゃが……いいのじゃろうか?」
「処刑することに関してはどうでもいいの!?」
「え、え!? なんでこんなに注目浴びてるの!?」
リンが驚きの声をあげる。
確かに、周りを見てみると歩行者は足を止めこちらを見ているばかりか、露天で買ったであろうジュースやパンを飲んだり食べたりしながらこちらを見ている人もいる。
「はぁー、まぁ、そりゃ、天下の往来でいちゃつけばねぇ」
アルが驚き慌てているリンを見ながら呆れ果てたようにため息をつく。
「なに、悪いことはしてないのじゃ。堂々としてても問題はないのじゃ。
拙者は当事者じゃないしのう」
ベクトラがフォローになっているようでなっていないフォローをする。
後半部分は本音のように聞こえるぞ。
しかし、町中というのは理解していたが、リンの洗脳を解くことを優先したため周囲の状況はどうでもよくなって考慮に入れなかった。
今思い返したら、結構やばいことしてた気がする。
「あ………あぁ……あぁぁぁあ」
リンも自分が何をされ、周囲にどのように見られていたか考えたのだろう。
自分の頬に手を当てて、わなわな震えながら声にならない言葉を発していた。
「こんだけ注目をあびるなら見物料を取ればよかったですね」
「しかし、集めても二束三文じゃないかのう」
「甘いですね、ベクトラさん。ちりも積もれば山となるのですよ。
小さなことからコツコツと稼ぐことによって金持ちになるのです。金持ちほどお金にシビアにならないといけないのです。つかう時はドサッと使い。普段は守銭奴のように金を集めるのです」
「ふむ。深いのう。アル殿の見識には驚くばかりじゃ」
「はっはー」
アルとベクトラはリンの様子を気にせず、和やかに会話を続ける。
「もう終わり?」
「結局、キスしねーのか」
「明日するんじゃない?」
「明日いつやるの?」
「さぁ。でも見物料いるかもしれないってさ」
その間も、野次馬は動かないどころか好き勝手なことを言い張る。
見世物じゃない。帰れと言いたい。
その野次馬の声が引き金になったのだろう。
「もぅ、帰るぅぅぅぅ!」
大きな声をあげながら、リンが走り去っていった。
「ちょっ、待てよ、リン」
その声も虚しく、リンの逃走を止めることが出来なかった。米粒のように小さくなり、やがてリンの姿は見えなくなった。
ポンと肩を叩かれ、その叩かれた方向を見るとアルがいた。
「アポロさん、そのモノマネ似てませんね」
「やってねぇよ!」
「大丈夫じゃ、主殿。
リン殿のことじゃ、お腹が空いたら帰ってくるじゃろう」
「いや、これからギルド行くんだけど」
リンは子どもか。
「大丈夫ですよ、アポロさん。
私達がピンチになったら、『助けに来たわよ!』って颯爽と現れますから」
「どこの部分に大丈夫がかかっているんだ?」
ピンチになるまで現れないのか。
「冗談は置いといて。リン殿もギルドが行き先とわかっておるじゃろう。しばらくして冷静になったら現れると思うのじゃ」
「もし待って、現れなかったら?」
その言葉にベクトラは腕を組んで考えはじめた。
「そうじゃのう。クエストは拙者と主殿でやるしかないのう」
無情にもリンを切り捨てる提案を出した。
確かに。
3人から2人となるから、戦力は減るが危ないクエストを受けなければいいだけだ。今日はクエストをしないという選択肢もあるが、それは今日一日を無駄にすることだ。ただでさえ、再建のせいで時間がとられたんだ、無為の時間は作らないでおきたい。
「……リンにはかわいそうだが、ちょっと待って現れなかったらそうするか」
「グッドアイデアですね。
リンさんが目に涙をためながら、『みんなどこー?』って、いるはずのない私達を探す光景が目に浮かびます」
「リサさんや他のギルド職員に伝言を頼めばいいだろうが」
「ちっ、アポロさんは風情を理解できぬ俗物ですか」
「芸人としては美味しいと思うのじゃがのう」
吐き捨てるようにアルは言う。
風情云々の前に、仲間にすることじゃないと思うのは俺だけだろうか。それにさらっとベクトラがリンのことを芸人扱いしている。
ギルドまで来ると、そこにはリンがいた。
所在なさげで立っている姿は少し寂しそうだ。リンは俺達の姿を見つけると、ぱぁっと顔をほころばせたが、それも一瞬で、すぐに表情を険しくしてツンと顔を逸らした。
「……遅いわよ」
自分が逃げたことの羞恥と罪悪感を誤魔化すため、わざと怒ったような声色だった。
だが、その声色には恥ずかしさが隠しきれずに存在した。
「……すまん」
それを指摘するのも野暮だ。
両手をあげ、降参のポーズをしながらリンの前へ。
「では、行きましょうか」
アルもニヤニヤするだけで、リンについては何も言わなかった。代わりに先頭の音頭を取り、ギルドへ。
「何か騒がしくない?」
「そうじゃのう。何事じゃろうか」
普段も静かとは言わないが、今日のギルドは騒がしいを超えてうるさかった。怒号、絶望、叫び声が聞こえてくる。
喜びとかの声が聞こえてこないので、いい話ではないのかもしれない。
声のする場所から判断するに、クエストが貼ってある場所が発信源らしい。
「……この場所から逃げるかどうか迷うな」
何やら面倒なことが起こりそうな気がする。
「まず、逃げるって発想が一番に出てくるのがおかしいわよ」
「なに、侍の心を持てばいかなる難題じゃろうと大丈夫じゃ」
「アポロさんの保身を第一に考える思考、私は大好きですよ」
俺の声に三者三様の声をあげる。
非難され、フォローのようなものをされ、褒められる。
誰にも理解されないというのは悲しいものだ。
「アポロさん、何か変なこと考えてますね」
「いつものことじゃない?」
リンは呆れの混じった声でアルに答える。
「拙者は何も言えんのじゃ。言えんのじゃ!」
ベクトラは両手で口を抑え、首を振った。
何も言えないというわりには、その意図は言葉より雄弁に伝わった。
「……諦めて見に行くか」
ベクトラって芸が細かいよなぁ。
そんなどうでもいいことを考えながら、クエストが貼ってある部屋に入って行く。
「うわ、人が多いですね」
「何が張ってあるか見えんのう」
中に入ると、冒険者が密集していた。クエストが貼ってある壁を中心にぞろぞろと隙間なく冒険者が集まっている。
「見えないどころか近づけないわよね。待つ?」
「それしかないか」
「おおーっと、私の出番ですね」
諦めかけたその時、アルが躍り出た。
「確かに。アルの大きさだったら、いけるわね」
「おぉ、アルのことが初めて役に立つとは」
「今までめっちゃ役立ってますからね!」
「頼むのじゃ、アル殿。絶望の淵から救って欲しいのじゃ。それが出来るのはアル殿だけじゃ!」
「そんな重大な局面でしたっけ!?
ツッコメばいいのか、乗ればいいかわからない!」
「いいから行け。シッシ」
アルはもう、と頬を膨らませたがすぐに群衆の中に入っていった。
器用に冒険者の隙間を縫うように進んでいく。
だが、集まっていた人数が多いためちょっと進んだと思ったら、押し流されて戻る。その繰り返しが数度行われた。
「ねぇ、気がついたんだけど。宙を飛べるなら上から行ったらいいと思うの」
「リン、それは言うな」
「くぅ、アル殿……」
アルは必死すぎて思いつかないのかもしれない。
それに、せっかく頑張ってるのに邪魔するのはしのびない。
「ねぇ、アポロ。何で笑っているの?」
「いや、アルが手間取ってるのが嬉しく……アルが俺達のために頑張ってるのを見ると自然に嬉しく思うのさ」
本音が漏れそうだったので、表情をキリッと引き締め厳かに言う。多分ごまかせたはずだ。
「…………はぁ、アルを呼ぶわよ」
対して、リンの返答はため息だった。
ごまかしきれなかったらしい。
「あれ?アポロさん。おはようございます。今日はどうしました?」
リンがアルを呼ぼうとした時、リサさんが話しかけてきた。
ギルド職員の仲で一番仲がいいと言える女性だ。ピンと立った狐耳はいつ見ても癒やされる。
「おはようございます。あの張り紙を見に来たんですけど人が多すぎて……」
今の状態をリサさんに説明する。
リサさんは冒険者の集団を見て、なるほどと頷いた。
「ちょっと待って下さいね」
リサさんはそう言って走って去っていった。
しばらく経った後、廊下でリサさんが俺達を手招きしていた。
呼ばれているようなので、行ってみる。
「どうしました?」
「はい、これどうぞ」
「ありがとうございます……ってこれって」
「はい、貼られてるクエストです。持ってっちゃってください」
「いいんですか?」
「本当は駄目なことでしょうけど、特別ってことで。プレオープンのお礼です。迷える羊の料理本当に美味しかったです。また食べに行こうと思います」
「ありがとうございます。予約が取れない時は言ってくださいね。ギルド職員の方には優先的に予約を取れるようになってますので。予約の際に言ってくださいね。それか、アルや俺に言ってくれれば確実に席を用意しますよ。本当は駄目なことでしょうけど、リサさんには特別ってことで」
親切は巡り巡って返ってくるものだなぁ。
ギルド職員は良い関係を保ちたいので、迷える羊の方でも上客として扱っている。迷える羊を私物化している気がするが、再建を成功させた役得としておこう。
そのままリサさんと近況報告を兼ねた雑談をする。
「リン殿、あれってリサ殿のことをくどいてるのかのう」
「え!? 普通に親切にしてるだけかと思った。でも言われてみれば…………」
「会心の笑顔にウインクじゃ!こうかはばつぐんじゃ!」
「うわ、あの言い方絶対誤解させるわよね。執事の癖が抜けてないからだと思うけど……アポロは女の敵ね。これから誤解させる言い方をしないように、しっかり監視しなくちゃいけないわね。ね、ベクトラ!」
「リン殿ういのう。羨ましいのじゃろう?」
「ち、ちがうわよ!パーティーの一員として私は……。
ってベクトラ笑ってないで聞きなさい」
「カッカッカ。リン殿の言うとおりじゃ。まっこと言う通りじゃ!カッカッカ!」
「絶対思ってないでしょ!もっーーーー!
全部、全部アポロのせいなんだからね!」
何かリンとベクトラが俺達から少し離れた所でこそこそと話してる。距離と声の大きさから何を話しているかわからないが、背中に突き刺さる視線は何なのだろうか。
しかし、最後は笑い声とツッコミらしき声が聞こえてきた。
なんだ。気のせいか。
あっちでも楽しく会話をしているのだろう。
「ただいまです。任務完了です」
貰ったクエストをベクトラとリンで見ていたら、アルが戻ってきた。
そのおかげで場の雰囲気が変化した。ふぅ。
何故か場の空気が針のむしろ状態なので救世主の登場のように感じる。
「って、何を皆さんは熱心に見てるんです?」
アルが俺の手の紙を覗きこむ。
「アルが見に行ったクエスト」
「なんですと!?」
「アルが遅すぎたからな」
「頑張ったのに。そして、何故か非難されてる!」
「リサさんがくれたのよ」
アルのことを不憫に思ったのか、リンが助け舟を出す。
「リン。ネタばらしがはやい。
ここぞと追い込んで土下座させようと思ったのに」
「どんだけ非難するんですか!頑張りましたよね、私!」
「君、世の中結果だよ。結果がなかったら駄目なんだよ。
頑張りましたですむなんて甘い世界じゃないのだよ」
「やめて、部下を説教する課長みたいなこと言わないでください!
社会で言われるようなこと聞きたくない!
ずっと遊んでいたいんです!」
ボケた俺が言うのもなんだが、アルの言い分もおかしいと思う。
「よし、アルがちゃんと任務を遂行できたか確認するか。
暗唱して、言い間違えた文字数の数だけ骨を折ろう!」
「なんの罰ゲームですか、それ!」
「アル殿、回復は任せるのじゃ」
「止めて!お願いしますから、アポロさんを止めて!」
「初っ端から21文字の言い間違えか」
「もう始まってるの!?」
「はぁ、何また遊んでるのよ。皆で見るわよ」
リンにたしなめられ、皆でクエストを見る。
そこには……。
前話『誰がための再建か』改定しました。
主人公とアルの会話にベクトラを足しました。
話の内容は変えてないので、未読でも大丈夫です。