閑話 やはりとある神様達の井戸端会議はまちがっている。
*本編とこの話は関係ありません。
あったかもしれないし、なかったかもしれない。
そんなお話。読み飛ばしOK。
*一部のキャラクターの人格は崩壊していますが、この話はフィクション?であり、実在の人物・団体・事件などとは一切関係ありません。
「ここからが本題だよ、響くん」
にこやかに笑い、神は言った。
今までの映像は何だったのだろうか。
「今までの羞恥プレイは何だったんだ?」
「必要だったからだよ」
神は言う。
だが、信じられない。
俺が苦しみ、悶えるのを楽しみたいだけだろう。
「あー響くん信じてないね。
僕が響くんをいじめるためにわざわざあの映像を流したと思ったのかい?ね、アーリィ」
神は首をひねり、アーリィさんの方向へ向く。
アーリィさんはその視線にビクッと体を震わした。
「ええ。か、神様の言うとおりだとお、思います?」
「アーリィさん、絶対思ってないよね。目が泳いでるよ」
「し、失礼な!そ、そんなわけないだろ。
レナス、お前からも言ってくれ!」
「ハイ!もう一回あの映像見たいと思います!」
駄目だ。
ここには味方はいないのか。
「響くん、この場は君のためを思って開いてるんだよ」
「俺のためと思うのなら、そっとしておいてくれ。それが一番なんだ」
「いや、でもさっきの見たらさ。凄いことを言う人もいるわけよ。
響くんはロリペドにも劣る畜生だと。本人の名誉のために誰が言ったか教えないけど」
神はちらりとアーリィさんを見る。
「それ言ったの、多分アーリィさんですよね!?」
「推測でモノを言うのは名誉毀損だぞ。
神様、このロリペド野郎に死の鉄槌を!」
「実際に言ってるよね!」
「おっと、私としたことが。
つい呼びやすくてな。許せ、この腐れロリペド野郎」
「謝ってるようで謝ってないよ!」
「ハイ!嫌疑を晴らすために響さんは私と結婚することがよいと思います!」
「さっきからちょくちょく、レナスさんが怖いんだけど!
冗談ですよね!?俺を助けるためにわざとそう言ってるんですよね!?」
「ええと……冗談ですよ?
冗談ですから一度私のお家に来てください!
ゼッタイキテクダサイ」
「助けて、アーリィさん!」
「なぜ、私に助けを求める!?」
あまりの怖さに藁にもすがるつもりでアーリィさんに頼る。
恐怖に震える俺を尻目に神は淡々と話を続けだした。
「で、だ。僕もちょっと心配になったのよ。響くんの周りにかわいい娘寄ってきてるじゃん」
「まぁ、それは……そうだな……」
言い方がアレだが、事実だ。
「とりあえず、胸は貧しいけど最初に出会ったということで、金髪美少女のエルフを半ば強引にパーティに加えて」
「事実をさも真実のように言わないでくれ」
「貧乳では満足できなくなったのか、巨乳のダークエルフとか最近パーティに加えたよね?」
「まるで俺が巨乳好きだからパーティに入れたっぽく言うのやめてくれないか。そして、リンに失礼だぞ」
「ギルドのアイドル、狐耳の人とか。この人も響くん好みの胸だよね」
「ねぇ、さっきから胸好きというレッテルを貼るのやめてくれる!」
「異世界に来ても一途に慕ってる君の幼なじみとか」
「ぐっ…………」
それは否定できない。
「でも、そんな彼女たちが寄ってこようが、響くんは目もくれない。本当に思春期の男子高校生なの?」
「大きなお世話だ」
「これは男色の気配がと皆が期待してたら」
「恐ろしいことを期待するな」
「アルに走っちゃったんだよねぇ」
「走ってねぇよ!」
「男色に賭けてた人涙目」
「俺の性的嗜好で賭けやってたの!?」
「どうりで周りの女性に手を出さないはずさ。
君の好きなのは、アルという妖精だったのさ」
「アルのことは好きだけど、そういう意味じゃねぇよ!」
「アルのことが好きだと!?
ついに本性を表したな、このクソ野郎!」
「後半の部分聞いてた!?そういう意味じゃないって言ったよね!」
「アルとは遊びだったのか、貴様!」
「アーリィさん、めんどくせぇ!
なんて答えたらいいんだよ!」
「ハイ!響さんは私と一緒に結婚するべきだと思います!」
「レナスさん、ここぞと入ってこないで!」
「しゅん…………」
しょぼくれた表情で俯くレナスさん。
かわいいと思ってしまうが、騙されてはいけない。
「わかってると思うけどさ、アルって妖精だよ?
体長20cmくらいしかないよ?
子供とかどんなに頑張っても無理だし、やめたほうがいいよ」
「やめて、親身になって言わないで!」
「人の恋愛に口を出すのは野暮だけどさ、その恋は人として間違ってるよ」
「その指摘が間違ってるよ!」
「せめて馬とかにしたら?」
「それこそおかしいだろうが!
俺はノーマルだ!女性が好きなんだ!」
「いきなり、俺は女性が好きなんだと叫ぶとは……変態だな貴様は」
「さっきの俺と神の会話聞いてた!?
そこだけ切り取らないで!」
「せめて馬とかにしたらどうだ?」
「なんでみんな馬を勧めるんだ!?
俺はノーマルなんですよ!普通に、女性が好きなんです!」
「もしや、響さんから私への遠回しのプロポーズ!?」
「違います!」
「しゅん……」
「少しでも真っ当な道に戻ろうよ。
ほ、ほらリンちゃんいるじゃん。彼女なら無理矢理襲っても2,3度なら泣き寝入りしそうじゃん?」
「すごく失礼なんだけど!
神が言う台詞なのか!?」
「ほら、彼女さ。喜んで借金背負ってるじゃん。
襲ったら、もしかしたら喜ぶかも?」
「神もそういう認識なの!?」
「リンちゃんってオークとかに捕まったら『くっ……殺せ』とか言いそうだよね」
「言いそうだけど!言いそうだけど、やめてあげて!」
「あ、口調が違うか。『くっ……殺しなさい』かな」
「どうでもいいよ!」
さっきから神のリンいじりが激しい。
「まぁ、冗談だけどさ。
実際のところ、借金のかたに強く言えば断れないと思うよ」
「本当に貴方は神なの?さっきから悪魔の誘惑に聞こえるんだけど」
「ベクトラちゃんも、侍の修業とかそういう風にうまく騙したらできるよね?」
「バレた時、信用がなくなるんですけど!」
「しかし、アルだけは駄目だよ。
いくら恋い焦がれても君とアルはカテゴリーが違うんだ。大きさが違いすぎるんだ」
「いや、そもそも前提がおかしい。俺はアルを性的な目でみてない」
「アルを口説いてたじゃん」
「ぐっ」
「何度も何度も可愛いって口説いてたじゃん」
「ぐはっ…………」
「顔を赤らめ、表面上嫌がるアルを執拗に、徹底して口説いてたじゃん」
「くっ……殺せ」
「他の女性に言わないでアルだけにあんな過激なことを言うなんて、疑わない人のほうがおかしいかもよ」
「違う、違うんだ。あれは、あれは……」
「特例として、メンタルに行かせることも考えたんだ」
「やめろ!病院に通ったらまるでそういう人に思えるから!」
「響くん、病院に行くことは恥じゃないんだ。
認めないことが恥なのさ。疑いを晴らす意味でも君は行くべきなのさ」
「正論だけど、正論だけど、間違ってるよ!」
「ハイ!病院に行く代わりに私と結婚するべきだと思います。私と温かい家庭を作るんです。私が出勤するときは行ってらっしゃいのキスをして、私が帰ってくるまで自宅の警備、そして、帰ってきたらお帰りなさいのキスをして甘えさせてくれるんです」
「ヒモ!?自宅にいるだけなの!?」
「響さんはベットで鎖に繋がれてますから、外に出れません!」
「レナスさんのほうが、メンタルに行ったほうがいいですよね!
さっきから怖いんですけど!」
「大丈夫です、響さん!」
可愛らしくウインクをして、胸を張るレナスさん。
その可愛らしさが怖い。
「病院には先週20回近く行ってます!」
「全然大丈夫じゃないんですけど!」
「最後にはお医者さんからもう来ないでくれと言われました!
お医者さんのお墨付きです」
「それ絶対違う意味ですよね!
アーリィさん、神、今の聞いてた!?」
俺より先に治療すべき人物がいる。
この場合、病院なのか隔離施設なのかわからないが。
神は俺の声が聞こえて、さも今気がついたとばかりに閉じた目を開いた。
「ハッ……寝てたか。最近激務だったからねぇ。響くん達を異世界に送ったりしたからだね。しょうがない」
「嘘をつけ、嘘を!
ならアーリィさんは!?」
「私は仲間を信じる!」
「使う場面間違えてるよ!」
「たとえ周りが敵になろうとも、私はレナスの味方だ」
「アーリィ……」
「いやいや、いいこと言った風ですけど、仲間ならまず止めましょうよ」
「それでアルを救えるのなら、レナスを犠牲にしてもやむなし」
「仲間売っちゃってるよ、この人!」
「さぁ、響さん。お墨付きをゲットしました。
愛のある家庭を作りましょう!」
席を立ちあがり。
それまで動かなかったレナスさんが一歩一歩近づいてくる。
その美貌は美しい人形のようだが、目が爛々と輝いてた。
レナスさんが歩いてくる。
「さぁ!さぁ!」
コツンと音がなった。靴がなる音だ。
レナスさんが近づいてくる。
手が伸びてくる。
俺に触れる。
その時だった。
「んじゃ、宴もたけなわなので」
神はパチリと指を鳴らした。
すると、それまでいたレナスさんとアーリィさんが消えた。
いなかったのが当然のごとく、自然と痕跡を残さず消えたのだ。
「うん。響くんをいじるのにも飽きてきたから終わろっか」
にっこりと笑い、神は俺を見た。
「やっぱりお遊びだったのか」
「まぁね。本当に君がアルに恋焦がれてるとは思ってないよ」
「心まで読んだくせに」
「ククッ……冗談だよ、響くん。
実際は心まで読んでないよ」
「そうなのか?」
「うん。あれはあまり使いたくない力だからね。
だから、君がアルを性的に見ているか。真実は闇の中さ」
「今からでも遅くない。心を読め!
俺の潔白を証明するために!」
「ククッ。落ち着こうよ、響くん。
せっかくアーリィやレナスを退出させたんだからさ」
「いきなり消えたな。一体なんだったんだ、あれ?」
「うん。最初から話せば長いのだけど」
また神はパチリと指を鳴らす。
また場が変化した。
白い世界はそのままに、丸いテーブルと2脚の椅子のみがその世界にあった。
テーブルを挟んで対面には神が。知らぬ間に場所移動をしていた。
「うん。飲み物もいるね」
そう言った瞬間、何もなかったテーブルに水の入ったグラスが出現した。
「じゃあ、話そうか」
そう言って神は語り始めた。
「響くん達をアルハザールに送った後に問題が起きたんだ」
「問題?」
用意された水を飲み、落ち着いて聞く。
「うん。まぁ、何の問題かは言えないけどさ。放置できないもので大変だったのさ。どうにかアーリィやレナス達と頑張って解決したんだけどさ。原因を探ったらね……」
そこで神は区切る。
俺をチラリと見た後。
「アルだったんだよ」
「うわぁ……」
それはなんというべきか。
ご愁傷様です?
「君と一緒になる前に頼んだ仕事で盛大にやらかしたのさ」
「あーーその、ドンマイ?」
「原因を解決してヘトヘトになって帰ってきたのさ。そして、お疲れ様ということで一緒に御飯を食べたんだ」
「…………」
「そこに提供されたお酒は『神殺し』」
「不吉なんだが、その名前。飲んで大丈夫なの?」
「度数が強く飲んだら酔いのせいで失態を演じてしまうから、その名がついたのさ。ちなみに酔ったら記憶を高確率でなくします」
「こえぇよ」
「で、飲んでたらさ。僕たちがアルの尻拭いで疲れてるのに、原因の本人は何をしてるんだろうって話になってね」
「え…………」
「で、覗いたのさ」
「…………」
「なんということでしょう!
そこには君といちゃついてるアルの姿が」
演技めいた口調で喋る神。
地味に似ているからイラッとくる。
「なら、八つ当たりに呼ぼうってなるのも当然の話」
「アルを呼べ!アルだけを呼べ!」
「君もノリノリで口説いてたじゃん」
「ぐっ……」
「今からでもアルを呼ぼっか?
でも、今アルはベッドで足をバタバタさせて、何かわめいたりしてるよ。他にも、君のベッドに近づいたかと思ったら、君の頬をツンツン触ったり匂いをかいだりしてるよ。正直、ちょっと気持ち悪いね」
「いや、いいです……」
アルは何をやってるんだ……。
「他にも……」
「やめろ!それ以上は言わないでいい」
「うん、まぁ、アルは幸せそうだからさ。邪魔するのが悪い気がしてね。代わりに君を呼んだのさ」
「はた迷惑な。誰も呼ばないという選択肢はなかったのかよ」
「ほら、アーリィとレナスがうるさくてね」
彼女達のことを思い出したのか、肩をすくめ少し疲れた表情をする神。まぁ、気持ちはわかる。でも、神の世界ってアーリィさんやレナスさんみたいな人しかいないのか。
「おっと、彼女達のことをフォローしとくと、普段は真面目だからね。お酒のせいでああなっちゃってるだけだよ」
「普段があれなら問題ありまくりだろう」
「あ、でもアーリィはあまり変わらないかも」
「えぇ!」
「アーリィはアルのことを可愛がってたからね。アルと仲良くする君に苛ついてたよ。つまり、アルの好感度があがるほど、君はアーリィに恨まれるわけだ」
「俺にどうしろと」
「アルに嫌われると、アーリィにも嫌われるから気をつけてね」
「俺にどうしろと」
「けど、恋仲になると意外と尽くすタイプだからおすすめだよ?」
「何の紹介をしてるんだよ。
会う機会もないだろうし、恨まれたままでいいよ。気にしたら負けだ」
「響くんが『ハッ、俺の前に来れねぇやつがゴチャゴチャ言っても、一片も気にならんわ。俺がアルを落とす瞬間をそのまま眺めていろ』と言ってたと伝えておくね」
「言ってねぇよ!」
「意訳しといた」
「捏造だろ、それ!
絶対伝えるなよ、伝えるなよ!」
「そして、レナスなんだけどね」
「おい、話を終わらすな」
俺の制止の声を無視して、神は続ける。
「で、レナスなんだけどね。彼女は夢見がちな乙女なんだ。漫画や映画とかの恋に憧れてるのさ。で、どこをどうなったのか酒のせいで響くんを理想の王子様と認識してしまっちゃったみたい」
「なんか怖いな、それ」
「漫画や映画のかっこいい台詞とかも君が言ったと認識してるみたい」
「レナスさんの中で俺はどうなってるの!」
「だから、理想の王子だって」
「聞きたくない。聞きたくない」
「ま、お酒の影響だから本人も明日には忘れてるさ」
「俺も忘れたい」
「ああ。それは大丈夫。君も忘れるから」
「そうなのか?」
いや、忘れたいけど。
忘れたいが、忘れるなら来た意味ほとんどないような。
本当に酒の肴に呼ばれただけなのか。
「君たち人間は神の手のひらで踊ればいいのさ!」
「ちょっ!」
前に言った俺のセリフを引用された。
監視されているのだろうか。
俺のプライバシーってないのか。
「ハハッ、楽しかったよ。
じゃあね、響くん」
「ちょっと待……」
「ハッ!」
何かに突き動かされ、ベッドから跳ね起きる。
「うわぁぁぁ!」
俺の胸のところにアルがいたのか、跳ね起きたせいで足元までアルが転がった。
「アル?どうしたんだ?」
「どうしたはこちらのセリフですよ!?
何か嫌な夢でも見たのですか」
「夢?」
混乱した頭で考える。
俺は今まで寝ていたはずだ。
だから今ベッドにいる。そして、目が覚めた。跳ね起きたんだ。
外を見ると、まだ日は昇っていない。
そこから判断するに、寝てから1時間も経ってない。
「いや、何も覚えてないんだが。
悪い夢でもみてたのか?」
「私に聞かれても……」
「覚えてないなら、気にするだけ損か……。
ってそういや、何でアルが俺のベッドにいるんだ?」
俺とアルは一緒に寝ていない。
寝返りでアルを踏みつぶす恐れがあるからだ。
俺はベッド。アルはテーブルの上に作ったアル専用のベッドでそれぞれ寝ている。
それなのに、何でアルは俺の所にいるんだ?
「え?え?それは……。
それはですね……ア、アポロさんがうなされてたからですよ!」
「そうなのか?」
「ええ!それは凄いうなされようでした。
私、心配。ベッド、近づく。当然の話」
アルが身振り手振りで俺がうなされていたと説明する。
その大げさな動作は変な感じをするが、嘘を言う理由もないと思われる。新手のボケなのだろうか。
「なんでカタコトなんだ?
まぁ、別にいいが」
「別にいいなら、終わりましょう、この話!
ほら、再建の朝が来ましたよ。頑張りましょう。
ほら、エイエイオー!」
「なんでそんなにテンション高いんだ」
「エイエイオー!」
アルは腕を振って勝鬨の声をあげる。
嗚呼……今日もアルのおかげで大変な一日になりそうだ。
アルのさぁアポロさんもご一緒に、の声を聞き流しながらそう思う。
でも…………大変だが、嫌な気はまったくしない。
「あの、うるさくしたの謝りますから、黙って頭を握りつぶすのやめてください」
「さぁ、今日も頑張りますか」
「力をこめないで!頑張れなくなるから!」
主人公が妖精とイチャイチャするって第三者から見たらやばくないか。ふと、そう思って作った話です。『リンのヒロイン力が足りないから!足りないから!』とあんまり間をおかずに投稿したいと思ってたら、仕事に忙殺され今の公開となりました。ごめんなさい。
世の中には2種類の人間がいます。
GWのある人とない人です。
私は後者です…………。休みがある人は充実した日々をお過ごしください!休みがない人はまぁ、その頑張りましょう。うん、それしか言えないです。