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キャラクターメイキングで異世界転生!  作者: 九重 遥
3章 ミシェロの町でのギルド活動
34/98

リン・エスタードの借金 倍プッシュ倍プッシュ倍プッシュ!!

 幸いすぐにリンは普段の姿に戻ってくれた。

 そして、オーガとウォードッグのもとに向かい、売れる箇所やギルドの提出に必要な箇所を取り出す。


「オーガの角はギルドで高く買い取って貰えるの。それにこのオーガは変異種みたいだから高値で売れるわよ」


「変異種?」


「通常のオーガと違って皮膚の色が赤かったでしょ。オーガの赤色はめったに出ないの。変異種は通常の種族より強いことが多いのよ」


「なるほどな。こっちのオーガの武器はどうなんだ?」


 ブラッディオーガは2mはありそうな幅広い剣を持っていた。手入れはしていないので刃がボロボロだ。持ってみるとずしりとくる重さだ。ブラッディオーガは片手でやすやすと操っていたが、俺には無理そうだ。


「武器持ちの魔物はピンきりね。強い個体ならいい武器が多いけど……」


 リンは言い淀み、顎に手を当てて何かを考え始めた。


「何か問題があるのか」


「この大きさだと扱える人が少ないから、ちょっと安く買い叩かれそう。いえ、むしろ持って帰ることができなさそうね」


「アイテムボックスに入れることができないのか?」


「あ、それがあったのね。忘れていたわ」


 通常のパーティはそんな便利なものを持っていないのですっかり記憶の海に沈んでいたらしい。

 アイテムボックスを出して、その大きな剣を入れてみる。


「ん、いけそうだ」


「ほんと便利ね。どうやったら手に入れるのかしら」


「それは俺にもわからない」


「なんで持ち主がわからないのよ」


 呆れ顔でツッコミが入る。その気持はわかるがこればっかりはなぁ……。


「それはアポロさんですからね、仕方ないですよ」


「おい、こらどういう意味だ」


 アルのいうことは間違ってはないのだが、そこはかとなく別の意味がするのは気のせいだろうか。


「よし、必要な物は回収しましたし、移動しましょうか!」


 死体の臭いにつられて、新しい魔物が寄ってくるのを避けるため場所を移動することにした。死体を焼いて処理すれば問題ないといえるが、死体は一箇所に集まってないので多大な労力がかかるだろうからやめておいた。

 一時間ほど歩くと、空は逢魔が時から夜の帳へと変化していった。

 これ以上の行軍は危険と判断。今夜は野宿をすることとなった。

 何かの戦闘のあとだろうか大木が倒れている。それは椅子代わりにちょうどいい。切り倒されて時間が経っているのでこの戦闘をしたやつはもういないだろう。

 アイテムボックスから鍋を取り出して、魔法を使って枯れ木に火をつけてスープを作る。

 しかし、魔法って便利だな。地球でサバイバルするなら火をつけるのは一苦労だ。いや、マッチやライターがないと考えると無理なような気がする。原始時代は木をこすって摩擦でつけたらしいが、現代人には至難の技だと思う。体験学習で原始時代だか何だかの火をつける道具でやったことあるが、温かくなるばかりで一向に火がつかなかった。

 それが異世界では魔法一つで済むのだからな。ありがたいことだ。

 干し肉や野菜を入れ、塩で味を整えてスープは完成した。あとはパンを袋から取り出して食事の用意は完成だ。

 異世界で作られたパンは意外にもおいしい。安いパンでも食べられるのだから王様が食べるようなパンは一体どんなものなのだろうか。


「ねぇ、今回の報酬の件なんだけど」


 リンが深刻そうな顔で話しかけてきた。

 よく見れば、食事にほとんど手を付けていない。


「ん?それがどうしたんだ」


「考えたんだけど、オーガの分は私は要らないわ」


「なぜだ」


「ほら、私ってオーガの時全然役に立たなかったから」


 アルの戯言を真に受けてしまったようだ。アルを見ると、手を振って自分は悪くないと必死にアピールする。


「さっきも言ったけど、魔法を唱えることができたのはリンのおかげだからな。報酬は折半するべきだ」


 あれは俺一人では倒せなかった。それは確実に言えることだ。


「けど……」


「それに、今度戦闘になった時に俺が役に立てなくて報酬削られるのは困るからな。ブラッディオーガの件はまぐれだ。普通なら、逆の立場になってる」


 ちょっと茶化しながら、別の切り口でリンを説得する。

 リンは一瞬呆けた後、にこやかに笑った。


「なら、ありがたく貰うことにするわ」


 方便というのは理解しているのだろうけど、それでものってくれた。


「けど、今回の戦闘で色々消耗しましたよね。それはどうするんですか?」


 アルが疑問を投げかけた。

 今回の戦闘で失ったのは結構ある。

 剣と槍一本ずつ。六級のポーション一つ。あと、リンの防具を修理に出さないといけないな。


「一般的に報酬から必要経費を取って、そこから折半。武器は自分の報酬から出すわ」


「なるほど。じゃあリンさんに使ったポーションはどっちに入るんです?」


「時と場合によるけど、今回は必要経費といえるわ。自分が馬鹿やった時は自己責任だけど、今回の場合パーティーのために必要な行為といえるものだったから」


「よかったですね、アポロさん。あれ高かったものですからね」


「え!」


 ああ、と同意しようとしたら、リンが驚きの声をあげた。


「高かったの?」


「ああ。六級ポーションだからな」


「六級!そこまでの怪我だったの!?」


 そういえば、ポーションとは言ったが等級は言ってなかったな。


「いや、戦闘中で確認できなかったからな。手持ちの中で一番効果があるやつをアルに投げ渡したんだ」


「あれ、キャッチするの大変でしたよ。一歩間違えたらリンさんが助からない可能性もあったのでヒヤヒヤものでした」


「それはスマン。悠長に渡してる時間無かったからな。で、怪我の方はどうだったんだ?」


「血がドバーっと出てましたね。かなり危ない怪我じゃないかと」


「ああっ…………」


 リンはショックを受けていた。理由を聞いてみると、槍にも当たったので威力の大部分は削がれたはずだから、血が出たわりに怪我は浅かったと思っていたらしい。それに、俺が六級ポーションを持ってるとは思わなかったと。

 本当に深い傷かどうかはわからないが、あの時点では致命傷の可能性もあったのだ。仕方ないと諦めてほしい。


「六級ポーションっていい値段してたわよね」


「金貨一枚ぐらいしたな」


「ウォードッグとゴブリンの分併せても足りないじゃない、それ……」


 金貨一枚が日本円で10万円ぐらいする。

 ゴブリンやウォードッグを結構な数倒したが、銀貨数枚ぐらいにしかならないらしい。オーガの報酬に期待したい。


「リンさん、槍もぶっ壊れましたよね」


「ええ、そうね……」


 リンが白く燃え尽きながら頷いた。


「一応持ってはきているが、直るのか?」


 折れてはいないが、それに近い形で折れ曲がっている。


「鍛冶屋に聞いてみないとわからないわ。けど、ここまでひどいと修理するのと新しい槍を買うのと値段は変わらないかもね」


「リンさん、お金あります?」


「うぐっ…………安い槍なら……」


「安い槍で大丈夫なんですか?」


「うぐぐ……」


 今回の報酬額がどれほどかはわからないが、六級ポーションで金貨一枚引かれ、それを折半するとなるときついかもしれない。


「もしもの時はお金貸すから」


「ありがとう、アポロ」


「リンさん、どんどん借金増えていきますね」


「うっ……そうね。ごめんなさい」


「いや、別にいいんだが」


「…………………………」


「…………………………」


 場の空気が暗くなる。

 別に取り立てようとは思ってはいない。

 むしろあげる気持ちで貸しているわけだが、リンにとっては返さないといけないものなのだろう。

 客観的に見たら俺はリンを助けた恩人なわけで、借りを仇で返すわけにはいかないということなんだろう。

 しかし、いくら返さないでいいと思ってはいても、リンが『ヒャッハー!儲けたぜェェェェ!』とか言い出したら嫌になるな。その場合、金返せと言いたくなる。

 この矛盾はなんだろう。世の中はままならないものである。

 そんなことを考えていたら、アルが場の空気を払拭ふっしょくするかのように明るい声をあげた。


「アポロさん、アイテムボックスにあの槍があるじゃないですか!」


「あのとは?」


「ほら、あの同郷の人の」


「ああ!!」


 忘れていた。

 いや、思い出さないようにしていたというのが正しいのかもしれない。この世界に来て、俺が殺した同郷の人の形見。死の苦しみから解放するために殺したといっても、同級生を手にかけたのだ。自分の手を見ると殺した時の感触が鮮明に思い出された。あの時助ける手段は無かった。どうすることも出来なかった。だから、責められることはないのだが、それでも、槍を見ると別の手段は無かったのかとつい思ってしまう。だからだろう、あの槍の存在を見ないようにしていた。そして記憶の奥底にしまっていたのだ。

 自分の弱さが嫌になる。

 親交がない人ですらこれだ。もし、もっと身近な知り合いと殺し合いになった時、俺はどうなるのだろうか。

 それに今回その槍があれば、リンは怪我をしない可能性もあったのだ。ブラッディオーガはイレギュラーな存在としても、何とか出来たのは俺しかいなかったのだ。


「アポロさん?」


「アポロどうしたの?」


 二人が心配そうに俺を見ていた。

 俺が暗い顔をしていたからだろうか。

 俺がこんなだから、彼女たちに心配をかけたのだ。そろそろ乗り越えないとな。いつまでも弱いままではいけない。強くならねばいけないのだ。幼なじみである楓に会わなくてはいけないのだ。会うための方法は考えてある。あとは実力をつけるのみだ。この世界に負けない程度に強くならねばいけない。

 そして、二人には笑っていて欲しいし、何よりそれが一番楽しいのだ。だから……。

 顔をパンと叩き活を入れる。


「アポロさん?」


「アポロ?」


 再度二人は問いかける。

 いきなりどうしたのということだろう。


「何ちょっと考え事をしててな。気合入れただけだ」


 答えになってない説明を二人に返す。

 リンはちんぷんかんぷんといった感じだが、アルの方は腕を組んで考えた後何かの答えにたどり着いたみたいだ。

 手を握り親指だけ上げた状態でこちらに突き出した。そしてニヤッと笑った。あくどい笑みだ。

 アル、その考えは間違っていると思うぞ。

 ツッコミを入れては時間がかかるので、内心だけに留めておいてちゃっちゃとアイテムボックスを出して、件の槍を取り出す。



 久しぶりに取り出した槍。

 ミントガーネットを彷彿とさせるような、透明感のある翠色。来たばっかりの頃ではわからなかったが、異世界に来て様々な武器に触れたからだろうか、この槍の凄さがわかるようになった。

 見るだけで目を奪われ、手にもつとその存在感が否応なしに伝わるのだ。そして、槍から力が湧き出るような錯覚を覚えてしまう。俺は槍を使えないのに歴戦の戦士のように自信が湧いてくる。この槍があれば何だって出来そうな気がするのだ。

 しかし、なんという名前の槍なのだろうか。


「凄い……」


 リンもこの槍に見惚れていた。


「ほら」


 リンに槍を渡す。

 リンは恐る恐るといった感じで、壊れ物を扱うように慎重に両手で受け取った。リンは槍の持ち手や刃を触ったりして性能を見極めようとしていた。


「本当に凄いわね、この槍。同郷の人に貰ったの?」


「いや。奴が盗賊に殺された時に俺が貰ったものだ」


「そう……形見なのね」


 そう言ってリンは黙りこみ、槍に視線を戻した。

 食い入るように槍を見ている。

 そして、何かを決心して槍を横にして俺の方に差し出した。


「さすがにこんな良い物貰えないわ」


「といってもなぁ、返されても困るのだが」


 差し出した手を押し返す。剣に慣れてきたのに、槍を一から始めるのもなぁ。それに、ゼペットさんの鍛冶屋に剣の修理を頼んだばかりだ。街に戻ったら剣の修理が終わっているはずなので楽しみにしているのだ。


「リンさん、この槍はどのくらい凄いのですか?」


「専門家じゃないからわからないけど、B級、いえA級はあるかもしれないわ……」


 アイテムのランクはS級~F級まである。これはギルドのランクと同じだ。かといってギルドのランクがC級の人がC級の武器を持つというわけではないらしい。

 武器の値段は高く、C級の武器でさえ金貨数枚いるとのこと。B級の武器になると金貨が二桁必要になるらしい。


「となると、A級は……」


「金貨が三桁必要になりますね」


 俺の声を継いでアルが言った。

 金貨数百枚というと日本円で数千万円。マンションが買える値段である。

 ポンとあげる金額ではないな。

 しかし、この槍は使い道がない。売ることも出来るがどうなのだろう。売ってそのお金で装備を整えることが出来るかもしれないが、それは勿体無い気がする。そこまでの品なら二度と手に入らない可能性もあるのだ。


「ね。だから、アポロが有効利用したほうがいいと思うの」


「けど……」


 リンは槍を返そうとする。こんな高価な物を受け取れないと。

 俺は俺で迷いながらもリンに渡そうとする。明確な理由は無いがリンに持っといた方がいいと思うのだ。

 押し問答がしばらく続く。

 その戦いを見ていたアルがポツリと言った。


「リンさんが預かっとけばいいのではないですか?」


 その一言で俺達の動きが止まる。


「私が預かる?」


「そです。アポロさんが持っていてもアイテムボックスの肥やしにしかなりません。最悪売ることもできますが、お金に困っているというわけでも無いです。ならばリンさんが預かってればいいじゃないですか。アイテムボックスにあるのとリンさんの手元にあるのと違いはありませんよ」


「でも……」


「まさかリンさん、ねこばばする気持ちがあるのですか?」


「なっ!そんな気持ちこれっぽちもないわよ!」


「なら問題無いじゃないですか。

 それに、リンさん。これほどの槍使ってみたいと思いませんか」


「それは……」


 リンは目を泳がせ、返答に詰まる。

 その様子は使ってみたいと言っているようなものだ。


「それにあのオーガの時にその槍だったらどうです?奴に勝てました?」


「………かもしれないわね。この槍ならば」


 しばらく思案して、答えをだした。

 その返答に胸にズキッとした痛みが走る。オーガとの戦闘の前に渡していればという考えが脳裏に浮かぶ。


「ならば、尚更リンさんが持っているべきですよ。あの戦闘でリンさんが死ぬ危険性がありました。そればかりか、戦闘経験が不足しているアポロさんが死ぬかもしれませんでした!」


「っ!」


「高価だからといった小さいことを気にしている場合ですか?」

 

「…………………………」


「私達はリンさんが頼りです。パーティーに必要不可欠なのです。命を落としたら、黄泉路にいくら金やアイテムを持っていっても意味がありません」


「…………そうね」


 俯いた顔を上げ、リンは決断する。

 目には光が宿っていた。


「なら、わかりますね?」


 アルは優しくリンに問いかける。


「ええ」


 そして、リンは俺の方を向いた。

 口元をきゅっと結び、目は強靭な意志を感じさせるほど力が入っていた。少し下を見ると、手はきつく握られていた。


「アポロ、お願いがあるわ。この槍を貸してくれないかしら。

 借金を返してない身でこんなことを言うのは図々しいけど、この槍が必要なの」


 そう言って頭を下げた。


「…………」


 あまりに真剣なお願いに言葉が出てこない。

 なんて言えばいいだろうか。


「こら、アポロさん。リンさんが頼んでるんです。返事しないといけないですよ」


「あ、ああ…………リンが槍を持っていると心強いよ。こちらこそお願いします」


 でてきた言葉がそれだった。

 我ながら微妙な言葉だ。

 だが、


「アポロ、アルありがとね」


「っっ!」


 

 俺の陳腐な言葉を受けて、リンは微笑んだ。一輪の花が咲き誇るように笑顔だった。

 真剣な表情をした後、その笑顔は卑怯だと思う。

 普段キリッとしているだけに、笑顔の柔らかさの攻撃力は凄まじいのだ。




 そうして平和な雰囲気が流れ始めた時、爆弾が落とされた。

 落としたのは勿論アルだ。

 やつしかいない。



「これで一安心ですね。私としても槍の代金でリンさんの借金がどんどん増えていくのが楽しみでもあります」


「え゛っ!」


 その言葉にリンの動きは止まった。

 貸すのではなかったのか。


「いや、それはどうなんだアル」


「え、私がおかしいのですか?」


「いや、俺はあげるつもりで貸す……」


「槍を貸すのですし、担保となるものは必要かと。銀行でも大金を貸すときには担保を求めるでしょう。それと同じです。なに名目上の金ですよ。槍を返せばなくなるお金です」


「む。でも……」


 何かが間違っている気がするが、指摘することが出来ない。

 リンの方を見ると、彫像のように石化状態になった。ピクリともしていない。目には光がなく虚空を見ている。


「リンさんも、その決意でお願いしたんですよ。彼女の意志を踏みにじるのですか?」


 そうなのかと思ってリンのほうを見ると、口元をガクガク震わせている。石化状態から回復したと判断していいのだろうか、これは。

 だが、その状態のリンを見てもアルの言ったことが正しいのかどうか判断できない。ただ、理解できるのは仮にその意志が無かったとしても、否定できないことだ。

 今そこまでの決意はないと否定すれば、パーティーの命よりお金をとるということになる。ブラッディオーガの時はパーティー全滅の危機があったのだ。それを無かったことにするわけにはいかないのだろう。



 そして、俺もアルに意見を封殺されている。

 もし、リンはそんなつもりで言ったのではないかと、アルに言っても『リンさんを信じないのですか』と返されたらどうすることも出来ない。

 最初の時はその気がなくても、言われた今はその気があるのかもしれない。

 何よりも強くなる決意が。

 再び全滅の危機を作らないため。借金をする覚悟が。

 


 この問題を解決する何かよい言葉がないか探すがみつからない。

 場の空気が俺に重りのようにのしかかる。

 俺達が何も言えないのを尻目にアルは言葉を継ぎ足した。


「それに、槍を使うとなると愛着がわくと思いますよ。愛着が湧いた槍を返すことができますか?惜しくないですか?」


 リンはその一言にピクリと反応した。

 虚ろな目に少し力がはいる。


「……お、惜しくなると思います」 


 言葉は小さく弱々しいが、そこには明確な意志が読み取れた。


「ならいいじゃないですか。使用にも緊張感が入るというものです。買うのが早いか遅いかの違いですよ。

 加えて言えば、借金は槍の価格なんです。高いとか安いとか”お金”というくくりで考えて欲しくないんです。この槍は他にないわけですから。例えば、高級なレストランで食事を奢る代金と社員食堂の定食を奢る代金とを比べるのはナンセンスなのです。これは極端な例ですが、まさにそういうことなんです。この槍で何が出来るか、ということが問題なのです。素晴らしい成果がでるのなら価格は問題じゃないと考えています」


「……そ、そうなのかしら」


 アルの言葉にリンがのせられていく。意味がわからない内容もあったようだが、アルの勢いに流されていく。

 そして、まるで絶望から救う救世主のようにアルの言葉に希望の光を見出そうとしている。

 アルは慈愛に満ちた表情で笑って答えた。


「それに、その槍があれば強い魔物と渡り合えます。借金を返すのも早いはずですよ」


「……そうね。言われてみたらそうよね」


「ええ。大丈夫です!私達と共に頑張っていきましょう!」


「ええ!」


 なんということでしょう。

 石像だったリンがきゃっきゃとアルとはしゃいでいるではありませんか!


「でも、この槍綺麗ですねー」


「でしょー」


「槍もですけど、それを持ったリンさんも絵になりますね」


「そう?嬉しいなぁ」

 


 二人は仲良く会話をしている、

 水をさすので意見を言わないでおくが、まるで詐欺の現場をみているようだった。話がすり替わり、貸すはずなのにお買い上げコースとなっている。本人は気がついてはいないが。

 まぁ、槍にしても借金にしても俺が関わっているので実害がないといえばないので問題はないがなぁ。

 リンがちょろいのかこの世界の人がちょろいのかどっちなんだろう。

 日本でも教育を受けた人がころりと騙されることを考えると両方なのかもしれない。

 パーティーの一員としてリンを見守っていこうと思った。他に騙されないか心配だから。




槍の持ち主吉岡くんの槍。最初の予定ではもうちょっと後に槍を渡す予定でした。借金がなくなったあたりぐらいで。けれど、なくなるどころか増加していきますね。あれぇぇ?


吉岡くんが槍に費やしたポイントは20pです。

20pのアイテムでも当たり外れがあったりします。

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