とある森にて準備運動 2 スキルを使ってみよう
次はスキルでも確かめるか。アイテムでもそうだが、基本的な使い方は頭に入っている。素晴らしい仕様だ。
「…………」
とりあえず索敵を使用してみる。体感的にはスイッチを入れるような感じだ。集中すると周りの気配を感じることが出来る。
周りに生き物の気配はないようだ。どの程度の距離までわからないので、スキルだけに頼るのは危険だろう。
次は魔法だ。精霊魔法を使ってみる。
「火の精霊よ、力を」
「ププッ…チュウニビョウ。ヒノセイレイヨ チカラヲ。ププッ」
指の先から、小さな火が灯る。
そして、笑っている妖精に火を近づける。
「あつっ、あついですよ。響さん」
「こんがり焼いてやろうか。精霊魔法は呼びかけが必要なんだよ」
「最初に言ってくださいよ。てっきり悪い病気でも発症したのかと思いました」
「この世界自体が厨二病みたいなものだけどな」
次々と違う属性を試してみる。試みはうまくいったが、威力は低い。さすがレベル1だ。
次は火魔法を試してみる。色々な呪文が思い浮かぶ。その中から、威力が低そうなのを選び、自身の魔力を練る。
設計図があり、それを魔力で描いていくイメージだ。失敗すれば、発動しない。
術式は完了した。あとは唱えるだけだ。
「ファイア」
指の先に直径5cmほどの火の玉が浮かび上がる。
「おぉ」
アルが感嘆の声をあげる。
何度か同じ魔法を使い、威力や速度を調節していく、それが終われば次の魔法へ移る。
「ここらへんにしておくか」
自身のMPの半分を割ったからだ。これ以上は避けたい。
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名前:新城響
種族:吸血鬼とのハーフ
レベル1
HP100/100
MP24/50
STR:60
DEF:60
INT:35
AGL:45
DEX:45
スキル
剣術 レベル1 熟練度15/50
調教 レベル1 熟練度0/30
鑑定 レベル3 熟練度0/150
隠蔽 レベル4 熟練度0/200
索敵 レベル3 熟練度0/100
火魔法 レベル4 熟練度0/300
精霊魔法 レベル1 熟練度0/50
精神異常耐性 レベル2 熟練度0/100
直感 レベル7 熟練度---------
吸血 レベル1 熟練度---------
装備
鉄の剣
布の服
皮のズボン
アイテムボックス
仲間
アルテミス(契約)
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このぐらいでは、さほど熟練度が上昇しないらしい。
戦闘でしか上昇しないのか。疑問は残るが保留しておく。
「吸血のスキルってあるけど、これスキルなのか?」
ダンピールなので、定期的に吸血しなければならない。生きるためだ。生きる糧となるものがスキルで表示されている。違和感を禁じ得ない。
「ステータスにのってますからねぇ。あ、タップしたら説明が出てきましたよ」
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吸血
相手に牙をつきたて血を吸う。
レベルが上がれば相手の血を吸うことで、HPやMPを回復できる。
また、吸血鬼の生命保持手段でもある。吸血鬼の種族特性により、血を吸うことで相手に快楽を与えることも出来るとか出来ないとか。
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そっと閉じた。
まぁ、レベル1だ。効果はでまい。
「しかし、響さん。レベルが高い場合。相手が男だったらどうなるんでしょう」
「考えたくないわ」
げんなりしながら、アルに答えた。
だが、覚悟を決めなければならないことを理解していた。
ここは地球ではなく異世界であり、これまでの倫理観、常識を捨てなければならない。
俺が知っているファンタジーの世界では、弱肉強食の世界であり、弱ければ死ぬのだ。当然、人を殺さなければいけない時がくるだろう。
覚悟を決める。大きく息を吸って、吐いた。何度か繰り返した。
「もしや、興奮してます? 響さんってホモですか?」
シリアスな空気が一変に削がれた。
返答せず、代わりににアルの頭を掴む。
力と愛を込めて。
「痛い、痛い。ギブです。ちょ、すいませんって」
力を緩める。そして、アルに小言を言おうかと思ったところで。
「……ん、誰かきた。隠れるぞ」
何かの気配を感じた。敵かどうかもわからない状況で出会うのはまずいと思ったからだ。
道をはずれ、木々の間に隠れ剣を抜く。
いつでも対応できるように。
遠くから何かが歩いて来る音が聞こえる。
しばらくすると、3人の男が話をしながら、歩いてきた。
「………ゥ」
そして……。
彼らの服は返り血で濡れていた……。