オイラ達を襲ってきたギャロップとドードリオは、災害で弟や仲間が亡くなったのをオイラ達のせいだと信じているらしい。無理のない解釈だけど――やっぱりホノオはその主張に腹を立てた。
いや、それだけじゃない。ホノオは、追っ手の2人を殺そうとした。もちろんオイラは止めにかかったけど、そしたらオイラが攻撃されて……。
なんとか追っ手から逃げられたからいいものの、気まずいな。
(語り:セナ)
赤色の章~オイラと決意と過酷な現実と~
第15話:波乱と衝突と──その4
ヴァイス、シアン、メル、ソプラ、アルル、ブレロ、ブルル──共に旅をする仲間達が、攻撃を放とうと力をためる。
「みんな、いくよ!」
ヴァイスが合図をすると、7人の攻撃が重なり、敵──救助隊“ボルト”の3人に迫る。
バトルが今、始まった。
強力な、メルの“ハイドロポンプ”をベースに力強い攻撃が重なった。数も相手の倍以上。この攻撃が当たると、皆が確信した。
しかし、突然攻撃が勢いよく押される。そして、7人の攻撃を引き裂き、正面から強力な電撃が襲いかかった。
「うわっ!?」
「キャーッ!!」
思わず悲鳴を上げる7人。電気タイプのソプラとアルルでさえ苦痛で顔を歪めていた。電気が苦手な水タイプで、なおかつ防御力に乏しいシアンは、ひときわ目立った甲高い叫び声を上げた。
電撃がやむと、ヴァイス達7人はふらふらと立つ。すでに不安定なシアンは、ヴァイスとメルに支えられていた。
「なんだ? その程度か」
レントラーが、蔑んだような眼差しを向ける。
「どんなに言葉でかっこいいことを言って、正義ぶってみても、負けるようじゃヒーローにはなれないぜ?」
挑発するようなエレキブルの言葉を聞くと、ヴァイスとメルは発言者を睨みつけながら策を練り始める。普通に勝負をしても、勝てる相手ではない。
「ここは“あの技”を使うか」
ポツリと呟くのはソプラ。彼女と目を合わせると、アルルは頷いた。
「“あの技”って?」
ソプラの意味ありげな言葉に引き寄せられるように、彼女に皆の視線が集まる。ヴァイスがソプラに問いかけたが、敵はソプラの返答を待ってはくれない。
「よそ見はダメだぜ。“10万ボルト”!」
“ボルト”の3人が、先ほどの7人の一斉攻撃を破った技を放つ。
迫る矢のような電撃にどう対処してよいのかわからず、“彼女”以外は目をつむる。
「“守る”!!」
とっさにメルが輝くシールドを作って7人を覆い、攻撃から身を守った。
「さあ、作戦タイムだよ! 手短にね」
シールドをはりながら、メルがヴァイス達に指示を出す。ドームのような形のシールドの周りを這うように、鋭い電撃が流れていた。
「あのね、ボクとソプラには“とっておきの技”があるんだ!」
「すごく強いんだけど、準備に時間がかかっちまうんだ」
アルルとソプラが、先ほどの意味ありげな言葉について説明した。
「そうかい。それであいつらは倒せそうかい?」
「あの技を食らって平気でいられる奴はいないぜ! あいつらに効果は今ひとつだけど、その方が殺さずに済むからちょうどいいさ」
メルに答えたソプラのセリフに身震いしたのは、ヴァイス、シアン、ブレロ、ブルルの男性陣だ。ひきつった顔を互いに見合わせる。
「こ、“殺さずに済むから”って……」
ブレロが苦笑いしながら呟くと、ブルルも「何をする気だ?」と呟いて苦笑。シアンは「怖いヨ」と言い、ヴァイスに抱きついた。
「そこっ! 私語は慎む!」
「は、はいっ!!」
ひそひそと話していたところをメルに怒鳴られ、びくりと跳ね上がった男性陣だった。
“ボルト”の3人はしつこく“10万ボルト”での攻撃を続けてくる。“守る”を続けるメルの顔が険しくなり、少し辛そうだった。
「作戦を言うから良く聞きな」
発言者のメルに視線が集まる。
「ソプラとアルルは“とっておきの技”の準備をすること。その間、2人を守るのがその他の仕事だよ。その他は臨機応変に攻撃にも回ること。──とにかくみんな、“とっておきの技”の発動に専念することだよ!」
「はい!!」
メルの指示を受けたみんなの返事が、きれいに重なった。
ソプラとアルルは技の準備を安全にするために、なるべく“ボルト”の3人から遠い位置に立つ。そして……
「“充電”!!」
2人で手をつなぎ、体に電気をためはじめた。
「そろそろシールドも限界だけど、あっちの攻撃がやみそうにないね……」
メルがそう呟くと不安がつのる、“ソプラとアルルの護衛係”。
「どうしよう……」
少しパニックになり弱音を吐くヴァイスだが、ここでメルが何か思いついたようだ。
「シアン! “バブル光線”を使ってくれないかい?」
「えっ……?」
体力的にも厳しく、先ほどのやりとりのせいもあり、ずっとヴァイスに抱きついていたシアン。メルの言葉に、小さな声で反応した。
「なるべくアタイ達の周りに泡をたくさん浮かべるんだ! いいね?」
シアンはコクリと頷き、息を吸う。
「“バブル光線”!」
シアンの体力が少ないせいか、特性の“激流”が発動していつもより多量の泡がでる。辺りにまんべんなく泡を浮かべるためには方向転換が必要なので、ふらつくシアンをヴァイスとブルルで支えた。
シアンが行動を始めたのを見届けたメルは、次の指示を出す。
「あとブレロ! “水遊び”を使って仲間の体を濡らしてくれないかい? 急いで!」
「あ、うん! “水遊び”!」
敵が電気技で攻撃してくるのに、どうしてわざわざ体を濡らすのか疑問だったが、ためらう時間はないようだ。ブレロは、まるでホースから出した水のような弱い水流で、仲間や地面を濡らした。
「わあっ! 濡れるのやだよー!」
ダメージにはならないものの、ヴァイスは顔をしかめた。
「我慢しな! 電気食らうよりましだからさ……」
いよいよ“守る”にも限界がきたようだ。メルはシールドを解除する覚悟をした。
(みんなの安全確保はできたね。アタイは“あの技”を使おう)
心に決めると指示を出す。
「“守る”を解除するから、ちょっと痛いだろうけど耐えてな!!」
ついにシールドが消え、“10万ボルト”が7人を飲み込んだ。シアンもブレロも技を中断し、目をつむった。
「“ミラーコート”!」
メルが叫ぶと、それまで“ボルト”からヴァイス達の方へと一方通行だった攻撃が、往復になった。──メルが相手の攻撃を強く跳ね返したのだ。
「なっ……!」
“ボルト”の3人の声が重なる。メルが返したエネルギー波が正面から衝突し、少し後ずさった。
連続で放電し続けていた“ボルト”の3人だが、予想外の反撃に驚き、ひるんでしまった。
“10万ボルト”もここでやんだ。
「あれ? あんまり痛くないよ?」
ヴァイスのその発言に、シアンも頷く。電撃が苦手な水タイプの彼が言うなら間違いない。
「シアンとブレロの技のおかげさ。空中を漂う泡や体を濡らす水にいくらか電気が流れたから、体そのものへのダメージは少ないのさ」
「なるほど!」
メルの解説にヴァイスが頷く。嫌々ながら、体を濡らした甲斐があったと思った。
「くそ……。小賢しい奴らだ」
“ボルト”のサンダースが、嫌悪の感情を込めて言う。彼らのダメージは多くはないのだが、頭にきたらしい。
「食らいなネエちゃん。“雷の牙”!」
帯電した牙をむき出しにして、サンダースがメルに襲いかかろうとした。
「ふふ……。いらっしゃい♪」
迫るサンダースに笑顔を向けるメルを見て、何か恐ろしいことを企んでいるのでは、と考えてしまうヴァイス。だが、彼の予感は当たるのだった。
「“メロメロ”!」
メルが、いわゆる投げキッスの動作をすると、可愛らしいピンクのハートが飛び出し、サンダースに当たる。
するとすぐにサンダースの突進が止まった。
「め、メルさん……」
常にたくましいイメージだったメルの意外な技──しかし割と様になっていて色気がある──に驚き、呆然とブルルが呟く。他のみんなも、珍しい光景に釘付けだった。
「駄目だ……。可愛いネエちゃんには攻撃できねえ……!」
魔法にかけられたように、普段は冷酷なサンダースがデレデレと笑う。頬を赤く染めて、うっとりとメルを見つめた。
「あら? アタイは攻撃できるけど?」
「是非してくださぁい! 是非ぃ!!」
完全に、恐怖の技“メロメロ”の餌食になってしまった哀れなサンダース。
そんな彼に、メルは容赦なき一撃を。
「“アクアテール”!」
水の力をまとった尻尾を思い切りサンダースの頭に叩きつけた。
「ぶへっ!?」
さすがに痛覚は正常らしく、サンダースは奇声を上げた。
「女性って……恐ろしいな」
傍観者と化したブレロがボソッと呟く。
「世の中鈍感な方が得するのかもな……」
ブルルがこう口にした途端、シアンやブレロの眼差しもヴァイスに降り注がれた。
このような騒動の中でも、ソプラとアルルは着々と準備──“充電”を進める。通常のそれよりも、はるかに時間がかかるようだ。
戦場が異様な雰囲気に包まれていたが、ついにそれが破られる。
メルがサンダースに、とどめの一撃“メガトンキック”を見舞おうとしたその時だった。
「調子こくなやクソ女ァ!! “破壊光線”!」
エレキブルが怒鳴ると、白く輝く強力な光線を放ち、味方のサンダースもろとも攻撃した。
「くっ……!」
「ぐあぁっ!!」
顔をしかめるが悲鳴を殺すメル。彼女とは対照的に、サンダースは悲鳴を上げた。
ダメージがたまっていたこともあり、攻撃が終わると彼は倒れた。──なんと、彼にとどめを刺したのは味方だったのだ。
「お姉ちゃん!」
しばらく攻撃をしてこなかったので、すっかり油断していた。そんな自分を責めながら、ヴァイスはメルに駆け寄った。
ブルルと、シアンを背負ったブレロもその後に続く。
「大丈夫!?」
体に傷を負い、うつぶせに倒れるメルに問いかけたのはブルルだ。
「アタイにかまうんじゃないよ! 仕事しな。ソプラとアルルを守るんだよ」
彼女らしい言葉を聞いて、ヴァイス達ははっとする。エレキブルは“破壊光線”を使った直後だから反動で動けないはずだが、レントラーは──。
ヴァイス達が気がつくと、レントラーはソプラとアルルを標的にしていた。彼女達を睨みながら、そちらに突進している。
「役立たずの男どもめ……!」
「ソプラ、いったん準備を中断しよう! 戦わなきゃ!」
ソプラとアルルのつないだ手が離れようとしたが、“彼”の一撃でその必要はなくなった。
「“炎の渦”!」
「ぐっ……」
ヴァイスがレントラーを炎できつく縛り、突進を許さなかったのだ。
身動きがとれなくなったレントラーは、その場で足に絡みつく渦から解放されようともがく。
「よし、やったぞヴァイス!」
ブレロとブルルが歓声を重ねる。そのままとどめを刺すのかと思いきや、ヴァイスはレントラーの元へ向かったのだ。
「ねえ」
自らより大柄なレントラーの顔を見上げながら、ヴァイスが問う。
「エレキブルがサンダースに攻撃したけど、あなた達のチームではこれが普通なの?」
「当たり前だ」
ヴァイスのまっすぐな眼差しと言葉を、レントラーは冷たくはね返す。
「あんな、“メロメロ”のせいで攻撃もできなくなった情けない状態じゃ、役にたたねえからな」
「いくら戦えないからって、仲間を捨てることないじゃない!」
ついにヴァイスが声を荒げた。
拳を強く握り、普段の穏やかな表情は捨て去っているものの、純粋な怒りだった。
ヴァイスの怒りに同調するように、レントラーに巻きつく炎の勢いが強くなる。
「ふ……。“捨てる”とは人聞きが悪いな」
少し表情を歪めたが、レントラーは不愉快な笑みを浮かべて話し出した。
「俺達が役に立たないと判断したのは、“メロメロのせいで攻撃ができなくなったサンダース”だ。奴の状態異常が回復しさえすれば、また共に戦うのだが」
「何、それ……」
ブレロに背負われているシアンの表情が変わる。それまで掴んでいたブレロの肩をさらに強く掴んだので、ブレロが少しだけ顔をしかめた。
「サンダースがかわいそうだヨ! 自分達の都合のいいように扱うなんて──」
「誤解をされちゃ困るなぁ、嬢ちゃん」
そう言ってこちらのやり取りに口を出してきたのは、“破壊光線”による反動が終わり、身動きがとれるようになったエレキブルだ。
シアンが“嬢ちゃん”という言葉に気を悪くしたのは言うまでもない。
「それが、俺達の救助隊のルールなんだよ。より依頼を達成しやすくするためのな。俺やレントラーだってサンダースの立場になる時はある」
「誰が決めたノ、そんなルール。切り捨てられて悲しくないノ?」
ちょうどシアンのそのセリフが終わる時だった。レントラーにまとわりついていた“炎の渦”が消滅したのだ。
「合理的な方法をとるのに、個人の感情など関係ないのだ」
そう言うと、レントラーはさらに続けた。
「まあ最も、仲良しお子さま集団のくだらない救助隊、“キズナ”のお前達にはわからないだろうけどな」
その鋭い言葉の威力を、エレキブルはさらに上げる。
「結局、“キズナ”なんて美しい言葉を掲げておいて、リーダーはこの世界を破滅させる生き物、人間なんだもんな! ガハハ、傑作傑作」
「リーダーだけじゃなく、もう1人いたよな。危ない救助隊だ」
エレキブルは下品で豪快な笑い声をあげ、レントラーは嘲笑じみた表情を見せる。
「黙れ……」
低い声をあげるのはブレロだ。
「お前達のような奴らに、“キズナ”をバカにする資格はない!」
こう断言する彼だが、この言葉を言うまでのわずかな時間内で、様々な迷いが生じていたのだ。
つい最近までヴァイスと敵対していたような自分達に、果たしてこの言い合いに参加する資格があるのか? 増してや、“キズナ”のメンバーのことも嫌っていたのに。
こんな思いが、今まで発言を控えさせていた。
しかし、レントラー達の話していることを聞くと、どうしても気持ちがおさえられなくなったのだ。
ブレロの後に、ブルルが続く。
「合理的とか利益とか、そんなことばっかり考えてるお前達とは、“キズナ”は違うんだ!」
「ブレロ、ブルル……」
手痛い言葉にしばし怯んでいたヴァイスとシアンが、安心したような表情でブレロとブルルを見た。
目が合うと、一瞬漂う穏やかな雰囲気。
しかし、もちろん敵は、穏やかになるどころではない。
「お前等みたいな現実を見ないクソガキ共を見ているのは気分が悪い……」
レントラーがそう言うと、エレキブルと共に蓄電を始め、バチバチと凶悪そうな音が轟く。
「くたばれ、クソガキ!」
その暴言と共に、ヴァイス達めがけて激しい電撃が放たれた。
お知らせです。
5月16日、この小説のプロローグから第1話その2までを修正致しました。
初期──というか最近もなのですが(汗)、かなり文章が幼稚なので、少しずつ修正していきたいです。
プロローグに関しては、これまでこの小説に空いていた大きな設定の穴の埋め合わせをしておきました。
“設定の穴”ともうしますのは、「どうしてガイアのポケモン達は人間を知っているのか?」という問題点であります。
このことについて、プロローグに明記しましたので(大した理由ではないかもしれませんが、一応以前から考えていた設定です)、お手数をおかけしますが、よろしければプロローグだけでも読み返してくだされば幸いです。
+注意+
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