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ミラーツインズ〜鏡の双子〜
作:天宮 瑞姫



最後の決戦


 エリアは悪くない。彼女だってわざと殺意があって刺した訳じゃない。
 なのに、怒りと憎しみがふつふつと湧き起こってきて制御しきれない。頭では理解していても心が整理出来ない。
 涙が零れた。
 ――命を懸けてエリアを救ってくれたのね。それを無駄にする訳にはいかないよね
 アリアは立ち上がり、クロウを睨みつけた。
 何もかもこいつのせいだ。世界が破滅に進んでいるのも、鏡の双子として自分とエリアの運命をこんな物にしたのも、そして愛する人を殺したのも全てこいつのせいだ!
 「貴方だけは絶対に許さない!」
 凄まじいチカラが湧き起こる。その突風でクロウは軽々と吹き飛ばされ、壁に激突する。
 咳き込みながらもクロウは立ち上がる。
 アリアを支配しているのは怒りだけだ。全てに対する怒りをクロウにぶつける。
 先程クリア達がやっていたようにアリアも掌にチカラを込める。膨大なチカラがみるみるうちに集まっていく。さすがに身の危険を感じたのかクロウが後ずさりする。
 渾身のチカラを込めてアリアは解き放った。
 凄まじい光と轟音が辺りを包む。あまりの眩しさにエリアも目を閉じる。
 視界が開けた時には広間の大半は破壊されていた。三分の二程の壁が瓦礫になっており、残っているのは残りの壁と床だけだ。
 吹雪がアリアとエリアを襲う。捕らわれていたため裸足にされていたアリアにとっては今にも凍え死にそうな気温だった。
 「全くとんでも無いチカラだ。ここまで吹き飛ばされたのは初めてだ」
 クロウは雪まみれになりながらもアリアとエリアを見据えていた。
 「どうやら、とんでもない者を敵としてしまったらしいな」
 「今更何を言う。彼女は恐らくこの地上に置いて精霊の次にチカラを持つ者に当たるのだ。そんな彼女に勝てるわけが無いだろう」
 「そうだな。だったらここからさっさと逃げ出して誰かの魂をよりしろに出直すとしよう」
 そう言ってクロウは移動魔方陣を発動させた。クロウの体が魔方陣へと吸い込まれていく。
 エリアが声の限り叫んだ。
 「主の命令だ、この地に留まり罪を償え!」
 その言葉そのものが魔方陣を消し去る。主人の命令は絶対だ。破る事は絶対に出来ない。
 逃げる手段を阻止されてしまったクロウは焦りを隠せない。このまま戦っても負けるのは目に見えているからだ。
 アリアは更に追い討ちをかけるように告げる。
 「お前には最初から勝つことなど出来なかった。それも運命。どう足掻こうと決して運命は捻じ曲げる事は出来ない」
 「くっ……」
 再びアリアは掌にチカラを込める。そして、そのチカラを解き放った。
 クロウは眩い光の中でエリアの微笑みが見えたような気がした。
 契約を交わした時から思っていた。我が主人は何故心からの笑顔を見せてくれないのだろうかと。
 その理由がやっと分かった様な気がする。結局自分は主人の望みを何一つ叶えていない事を悟った。それと同時にクロウの意識は深い闇へと堕ちていった。
 まるで何かが弾けるかのような音が小さくした。
 光が止んだ時にはクロウの姿は跡形も無く、下には黒い欠片だけが落ちていた。
 「終わった、これで世界は平和になる……」
 アリアは安堵のため息を着いた。しかし、クリアはふるふると首を横に振った。
 「クロウのせいで世界は大きく歪んでしまった。元凶がクロウであることに変わりは無い。しかし、クロウが死んだだけではもうこの歪みは直せない」
 「そんな……やっと私はクロウから解放されたのにこの世界は破滅してしまうの?」
 エリアがあまりの悲しみに泣き出す。アリアも悔しくて仕方が無かった。
 せっかく命を懸けて世界を守ろうとしてくれたリュウの犠牲がこのままでは無駄になってしまう。
 ギルで視たあの未来の光景を思い出す。そう言えばリュウは確かにエリアに命を奪われていた。そして場所的な位置も合っている。
 この命で世界が守れるなら。愛する人が救えるならばと決めた事を今するべきなのだ。
 ――お別れも言えないけれど、私は幸せだった。皆、ありがとう……
 アリアは未来の映像と同じ場所に立つ。
 そして両手を天に向けて掲げようとしたその時だった。
 エリアがアリアの手を掴んだのは。
 「やめて、これは私の責任よ」
 そう言ってエリアは天へ向けて手を掲げた。途端に柔らかな光が彼女を包み込む。
 光の粒子が彼女の体から剥離していく。姿がどんどん薄れていく。
 「どうして貴方が……」
 エリアは何も言わずに微笑んだ。きっと彼女も未来を視て、その未来を変えようとしていたのだろう。
 「さよなら、姉さん。姉さんのお陰で私は救われたわ。本当に有難う……」
 その言葉を最期にエリアの姿は消え去った。
 「エリア……」
 触れようと近づいたアリアだが、結局エリアに触れる事は出来なかった。












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