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ミラーツインズ〜鏡の双子〜
作:天宮 瑞姫



消せない罪を抱え


 アリアには何故そんな表情を見せるのかが分からなかった。
 皆はちゃんと訳を理解し、受け入れてくれた。それはリュウの罪が晴れたことでもあると言うのに。
 呆然と立ち尽くすアリアにリュウは告げた。
 「俺は例え人が許そうとも自分を許さない。どんな訳があろうと命を奪う事は決してしてはいけない罪。その罪は償わなければならない」
 「エルフ達はもう貴方への罪の意識なんて無いわ。むしろ、人間と心を通わせる事が出来たのを嬉しく思っている」
 「そうだとしても」
 「いい?その話は私の前ではもう二度としない事。私にだって責任はあるのよ。命を手放そうとしたし、そのためにリュウを暴走させて辛い目にあわせて……最低なのは私自身よ」
 何を思ったのかリュウは立ち上がる。そして、アリアの髪をそっと指先で撫でた。
 「お前が責任を背負う必要なんか無い、それよりもエリア姫の事を考えるんだな」
 「そうね、今日中には出発できる?」
 「ああ、出来るだろう」
 「……エルフ達には何か魔法がかけられていたように感じたわ。きっとこれも全てエリアが仕組んだのでしょうね。だとしたら急がないと」
 そう言ってアリアはテントを片付ける準備を始めた。これを片付け次第、皆には何も言わずに出発するつもりだ。
 どうせ何も言わなくていいとリュウに止められる事は予想できた。
 無理して心の傷を開かせる必要なんて無いのだ。別にエリアの件が終わってからでもこの問題には嫌でも直面する事になる。
 ならば責めて今は気負い無く旅を続けたい。
 「あっ!」
 突然テントの柱が倒れてきた。アリアは迫り来る影に動く事も出来ずに目を強く瞑った。
 ドオンッと鉄が地面に叩きつけられる音が響いた。だが、自分の身に衝撃が走った感覚は全く無かった。
 恐る恐る目を開けるとそこにはクリアの姿があった。
 倒れてきた方向とは別の方向に鉄の柱が横たわっている。たぶんクリアが魔法で方向を変えたのだろう。
 「助かったわ、クリア」
 「我が主人ご無事で何より」
 リュウはアリアに駆け寄り、無事を確認すると安堵のため息を着いた。突然の出来事で心配をかけたらしい。
 アリアはリュウに微笑んで見せた。だが、その表情はすぐに真顔に戻る。
 今の出来事は偶然にしてはおかしかった。別に柱に触れたわけでもないし、ちゃんと柱も地面に突き刺さっていた。それなのに柱はアリア目掛けて倒れてきた。どう見ても不自然だ。
 彼女の表情で意図を察したリュウはぼそりと呟いた。
 「今のは単なる事故じゃない、と言う訳か」
 「ええ、いくらなんでも倒れるわけが無かった。ちゃんと突き刺さっていたし、この穴だってかなり深い。理論的にはありえないのよ」
 「……油断大敵らしいな。あっちに近づく度何か罠があるかも知れない。用心を怠ったら命の保障は無いぜ」
 冗談っぽくリュウが言った。強張ったアリアを元気付けようとしているのだろう。
 アリアは精一杯の笑顔でリュウの気遣いに礼を述べた。
 やがてテントを片付け終え、道具も皆荷物にまとめる事が出来た。
 食料の点検、必要なものが揃っているかも確認し、二人は荷物を背負う。
 後ろを振り返り、アリアはエルフ達の住居を見つめた。アリアの目にはエルフ達の温かい笑顔が浮かぶ。
 ここでなら、平和に暮らす事が可能かも知れない。こんな運命を背負った自分でも。
 僅かな希望がアリアの足を軽くする。
 ――この旅が終わったらきっとここへ……
 特に何も言う事も無く、アリアは前へ向かって歩き出す。リュウは黙ってそれについて行く。
 こうして二人はエルフの里から再び運命の旅へと歩き出したのである。決して消える事のない罪と希望を抱えて。



 「やっと本来の旅路に戻ったのね」
 エリアは精霊の映す映像を見て満足した。たった一人の仲間のために対面する運命の時が狂ってしまったのだ。その分、早くここへ辿り着いてもらわねば困る。
 と、突然眩暈がエリアを襲った。これが何なのかは頭の隅で理解していた。
 体が、全てが闇に蝕まれているのだ。
 呑み込まれる前に、どうしてもアリアに会わなければならない。
 「早く、早くここに来て……姉さん」
 エリアの瞳が濁った。












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