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夢幻

 暗闇の中、ごとごと揺れる車内に座っていた。ネオンが放射線状に光を滲ませて、脇へと流れてゆく。
 Aは手に握られていた缶コーヒーに気付く。そこだけがあまりにも暗くなり、手を持ち上げると何も持たない左手だけが上がってきた。
 奇妙に思うともなく前の方に視線を移すと、Aは通学列車に乗って、まわりを見ていた。カバンを抱えた会社員らしき人々が多く乗っていた。のみならず、頭を下にしたまま、凹凸おうとつのあるコンクリートの床ばかり眺めていた。学生服姿の男は退屈そうな、気怠けだるい表情をしたまま、リモコンらしきものを、丁寧に押していた。――何かが嗅覚を覚ました。辺りは一変した。

 往来にいた。商店街の中の、カバン屋のショーウインドウを前にしていた。「お待たせしました」、アナウンスが流れて、目の前には小さな袋を持ったスーツ姿の女性がいた。その袋を、前に出す。何を考えるともなく、それを受け取る。――「ありがとうございます」、アナウンスが鳴る。商店街にはA唯一人しか見えない。街の人たちの気配だけが行き交っていた。
 小さな袋の中に、紙が入っている。ひらひら舞う。落ち葉のような形をしたその紙の裏に、絵があった。黒い水の上をタイヤだけが走っている。その道には赤信号が数限りなく並んでいた。その赤信号が光り出す。辺りはサイレンの音が響いた。タイヤが転がっている。白い霧が、視界を塞ぐ。

 塞がった布を押しのけ、空を見た。空はない。木目が漂った絵が一面に広がっていた。手の中に、くしゃくしゃの落ち葉が握られて、背中は水滴で濡れていた。
 部屋から外へ出る。仰げば、昼間の空に夕焼けの星を見た。

   2008.11.16

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