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花帰葬〜唯一の願い〜
作:黒鷹


君は、いつも私を裏切って、自ら命を捨てる道を選ぶ。
そのたびに私は、何度も、何度も、君を止めた。
なのに、どうしていつも・・・・・・・。
それならいっそ・・・・私も殺してはくれまいか・・・・?

なぁ・・・玄冬・・・・・・。



「黒鷹・・・。俺は、花白のところに行こうと思う。」
「遊びにかい?おすすめではないね。」
「違う。」
「じゃあ、買い物かな?あのちびっ子に荷物持ちは少々無理が・・・」
「違う・・・!」
台所にたって、いつものように私の朝食を作っていた玄冬が、そう切り出してきた。
後ろを向いているから顔は見えないけど、多分、いつものように無表情だろう。
「俺は・・・この世界を壊したくないんだ・・・・・。」
「まさか、死ににいくつもりかい?」
「・・・・・ああ。」
「それはまた、酷な事を言うねぇ。」
「な・・・何・・・・・」
「あのちびっ子も私も、君のことが好きなのだよ?まぁ、多少愛情の違いはあるけれど。そんな私に死ぬ事を宣言し、そんなちびっ子に君を殺させるつもりかい?」
玄冬は、ぴたっと包丁を止めた。
そして私のほうをゆっくり振り向く。
案の定、彼は無表情。・・・・・と、思いきや、少し悩んでいるようで、顔は歪んでいた。
「どうかしたかい?」
「じゃあ、この世界を見捨てろっていうのか?お前は。」
「立場的に、私はもともとそっち側だからねぇ。正直、この箱庭が続こうが壊れようがどちらでも構わないのだけど、私の可愛い息子がむざむざ殺されるのは忍びないだろう?」
「お前・・・・・絶対に間違っている。」
「そうかい?」
玄冬の瞳は、いつにも増して真剣そのものだった。
死ぬ、と言っていた人間のする瞳とは、ここまで力強いものなのだろか。
「俺1人の命と、この世界の人間全員を、同じ秤で計れるはずがないだろう。」
「元はといえば、殺しあった人間達が悪いんだ。その責任を、君1人に押し付けるなんて、図々しいにもほどがあるとは思わないのかい?」
「それは・・・・・・」
我ながら、意地悪い質問をしていると思う。
仮に、玄冬が図々しい、と思っていたとしても、玄冬自身、どうすることもできないだろう。嫌だ、といって誰かに責任転嫁することなんて、不可能だ。
「くーろと、遊びにき・・・」
「玄冬、いっそ、壊してしまわないか?この、汚れきってしまった世界を、白く清めてみようじゃないか。」
「無理だ・・・・俺には・・・そんなこと・・・・・」
「何だい、情けない。他にも、こう思っている人間がいるかもしれないのだよ?そう考えれば楽なものだろう?君は、ここで平凡に暮らすだけでいいのだから。」
そして、今も、滅んで2人きりになってしまったあとも、2人で暮らせばいい。
私たちには、何の影響もない。
そう・・・・何一つ・・・・・・。
「さぁ、玄冬。朝食を頼むよ。あ、野菜は抜いてくれよ?」
「・・・・・言うな。」
「ん?」
「もう・・・言うなっ!俺を・・・・俺を肯定なんかするなよ!!」
「どうしてだい?私は君を守る黒の鳥だよ?そんな事を言われちゃ、仕事がなくなってしまうだろう?」
「俺を守るだと・・・・?さっきからお前はっ・・・俺を守るわけじゃなく、この世界を壊すことを願ってるじゃないか!!」
「玄冬、落ち着いて考えなさい。君を守るということは、つまりこの世界を壊すということだろう?私は間違ってなどいないよ。」
「もう俺を苦しませないでくれっ!!」

・・・・・・ドッ・・・・・・

鈍い音が響く。
おや、玄関の扉が開けっぱなしじゃないか。誰だい?最後にあけたのは。
・・・なんだ?この感覚は。熱い・・・・痛い?
「・・・うっ・・・・・」
「この・・・・バカ鳥・・・・・・」
私の腹部を、後ろから、銀色の輝く剣が貫いていた。
そしてその剣の柄をしっかり握っているのは、赤毛のちびっ子。
「おや、ちびっ子・・・・・今は・・・・冬だ・・・よ・・・・・」
私は、がらにもなく崩れ落ちた。
「黒鷹!!」
先ほどまでは、私の言葉を聞くたびに頭を痛めていた玄冬も、今は蒼白して私に駆け寄る。
今、この瞬間でさえも、幸せに感じてしまう私は、おかしいのだろうか。
「おい!しっかりしろ!黒鷹!」
「・・・聞こえているよ・・・。耳元で怒鳴らないでくれ・・・・」
「バカ鳥・・・このくらいじゃ・・・死なないん・・・だよな・・・・?」
「何を言ってるんだい、ちびっ子・・・私は鳥だよ?死ぬに決まってるじゃないか・・・・。」
私はちびっ子の手を一瞬だけ強く握った。
「白梟を、あまり困らせないでやってくれ。わかったね・・・?」
「う、うん・・・・・。」
「お前、まさか死ぬ気なのか!?黒鷹!」
死ぬ気も何も、私は君とは違うのだよ、玄冬。
永遠では・・・ないんだ。
すみません・・・主よ・・・・・無理を言ってここに残ったというのに・・・・・・。


最後まで・・・・見届けそうにありません・・・・・。


「玄冬、君は、好きに生きるといい。」
「何・・・言ってるんだよ・・・・おい!おいっ!」

「黒鷹っ!!!」


全く、ちびっ子には困ったものだね。
ずっと、永遠に2人で生きるという願いも絶たれた今、私には、玄冬に殺される、という願いしか残されていなかったというのに、それさえも奪うとは。
本当に・・・・残酷な救世主だ。
君は・・・結局どうしたのかな。
多分君のことだから・・・・・やっぱり・・・・今までと同じ事をしたんだろうね。
でも君がそれを望むなら、きっと、それが1番正しかったんだろうと、私は思うよ。


いつまでも、愛しているよ――――玄冬。














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