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第1話
「よし、こんなもんか・・・皆お疲れさん」

(ほっほっほ、ご苦労だったのぅ。坊ちゃん)

「本当だよ・・・うぁー、疲れたぁ」

昼過ぎから始まった蔵整理は、夕方頃にようやく終了した。
しかし夕食後に親父が買って来たという古い鏡を移動しなければならない作業がある。

「飯まで少し休むか・・・じゃあまた後でな、蔵のじっちゃん」

(ほほ、またの)




※※※※※※※※※※




「ふぃー、疲れた・・・」

(おぉ、九十九。蔵の整理は終わったのかえ?)

「あー・・・桜華、今終わった」

声をかけてきたのは机に置いてある鉄扇。名を桜華という。(本人談)
こいつも親父が買って来たものだ、何でも戦国時代の武将が使っていたとか何とか。

(疲れておるのぅ、どれマッサージでもしてやろうか)

「おいおい、鉄扇がどうやってマッサージするんだよ」

(どうってと言われるとこうー・・・べしべしっと?)

「やめい、お前自分が鉄ってことを忘れてないか?」

(むむむぅ、人間になれたらのぅ・・・)

「まぁ気持ちだけ受け取っておくよ、ありがとな」

(うむっ♪)

そんな会話をしていると母親から「ご飯できたわよー!」と呼び声がかかった。

「そんじゃ、飯食って鏡運ぶかー」

(九十九九十九っ、わらわも連れてっておくれっ)

「ん、了解。でもお前重いからなぁ、腰のとこでいいか?」

(んむんむっ)




※※※※※※※※※※




「ふぃー、食った食った。」

(いいのぅ、母上の作るご飯はいつも美味そうだのぅ・・・。)

ふははは、うらやましかろうーっと言ってる場合じゃなかった。こいつを運ばなきゃな。

「親父ー!もう運んでいいのかー?」

奥でごそごそしている親父に声をかける。すると「おーう!丁寧に運べよー!」と返ってきた。

「はいはいっと・・・お、案外軽いな?」

どっこいしょ、と親父みたいな掛け声と共に持ち上げた鏡は思いのほか軽かった。

「もしかするとお前より軽いかも知れないぞ?桜華」

(えぇい、わらわを馬鹿にする出ないっ!鉄扇なんじゃから重くて当然じゃっ!)

べしべしと背中を叩いてくる鉄扇の彼女、案外しゃれにならない威力だ。いてて。

「いててっ、悪かった!叩くの止めてくれっ!」

(分かればいいのじゃ)

そんなやり取りをしていると蔵に到着した。両手が塞がっているのでじいさんに扉を自発的に開けてもらいつつ、中に入って予め作っておいたスペースに鏡を置く。

「ふぅ、改めてみるとかなりいい鏡じゃないかこれ。古いってことだから話せるんだろうか・・・よし」

鏡の上に手を掛け、軽く集中する。すると鏡全体に光が灯り一瞬にして消えた。
言葉や動かしたり、物自体が動いたりするためにはこの作業が必要だ。何でかは知らん。

「さてさて、起きてるかー?」

つんつんと鏡を突いて見ると、反応があった。

(ん・・・ここは・・・一体?)

「お、大丈夫みたいだな」

(声が、私の声が聞こえるのですか・・・?)

「あぁ、俺のちょっと変わった力でね。ちなみに動かしたりもできるし、お前自体動けるはずだぞ。」

するとゆっくりと鏡が動き出す、傍から見ると怪奇現象以外の何ものでもない。

(あぁ、本当です・・・貴方を・・・貴方様のような人を待っていました!)

興奮したように話す鏡に俺は少しひるんだ。

「え、ちょ、何だ急に!」

(私の国を救ってください!語り手様!)

「え、語り手?・・・ってなんだおい!引っ張るな!」

(おぉ、この鏡はかなりの力をもっておるぞ!九十九!)

「ちょ、おま!言うのおせぇよ!」

身体がどんどん鏡に吸い寄せられているのに、桜華は今更なことを言った。こいつめ。

(申し訳ありません、語り手様。どうか、どうか私の居た国を救ってください・・・!)

「とりあえず説明しろ!せつめ・・・うぉおおお!のまれるううううう!」

(こういうときはあーれー!って言えばいいのかの?)

「お前のんき過ぎるだろおおおおおぉぉぉ・・・・」


こうして俺とのんき鉄扇の桜華は、何の説明もなしに鏡の中へと吸い込まれていった。


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