ブックリスト登録機能を使うには ログインユーザー登録が必要です。
第四章『それぞれの裏、さまざまな真実』25
  ★飛矢折★
 「………今度会う時は、エレアさんも含めて、夜衣花の仲間を紹介してくれよ……………そうか………夜衣花。どうか無事で………」
 夜衣花ちゃんとの通話が切れ、黒樹君はしばらく目をつぶったまま微動だにしなかった。
 「夜衣斗ちゃん?」
 流石に心配になったのか、春子さんが黒樹君に声を掛けると、黒樹君は目を開け、携帯電話を春子さんに差し出した。
 「………色々と思う事、言いたい事はありますが………正直、自分の中で上手くまとまってません。混乱していると言うか、考えたくないと言うか………ですが、とりあえず、俺が済ますべき今の用件は済みました。後は、飛矢折さんと西島さん達の用件を済ませて、星波町奪還の話に移りましょう」
 え?あたしと西島さん達に?
 黒樹君の言葉に、何の心当たりもない私は、思わずさゆりさんの方に顔を向けると、同じく心当たりがなさそうなさゆりさんと目があった。
 「夜衣斗君。一体どういう事?私、いえ、私達には心当たりがないんだけど?」
 さゆりさんが代表して疑問を口にしてくれた。
 「………さゆりさん達になくても、退魔士側にはあるんでしょう。じゃなきゃ、世間一般に対して秘密であるはずの退魔士の話を、さゆりさん達に聞かせる理由がありません」
 そう言って、春子さんを見る黒樹君。
 見られた春子さんは、頷いて、
 「夜衣斗ちゃんの言う通り、私達は飛矢折巴ちゃん・西島さゆりさん・西島ひよりさんの三人に、『こちら側の事情』で用があります。ですから、こちらの正体・事情の説明を省く為にも、あえて何も言わず、この場に残って貰っていたんです」
 なるほど………
 「っで、夜衣斗ちゃんは、私達がこの三人にどんな用件があると思ってる?」
 もう話が振られる事はないと思って油断していたのか、ちょっと驚いた雰囲気になる黒樹君。
 「んふふ。油断してたでしょ?」
 「………意味が分かりません………」
 呆れた様にため息を吐く黒樹君。
 「だって、夜衣斗ちゃんならもう何も言わなくても分かってるかな?って興味本位?」
 興味本位って………どうしようもないなこの人………
 黒樹君も同じ事を思ったのか、深いため息を吐き、
 「………多分ですが、飛矢折さんと西島さん達への用件は、それぞれ別だと思います。飛矢折さんは、飛矢折家に関する………さっきちらっと夜衣花が言った射眼家に関係ある内容なのでしょう」
 確かに、射眼家と言う名前………どこかで聞いた事がある様な気がしていたのよね………
 「それで?」
 「………黒樹・操形・早見などの退魔士の名字が退魔士能力を表している事から考えて、射眼家は退魔士で、その退魔士能力は目に関する射撃系。そして、飛矢折さんが退魔士の実在を知らないのに、寸頸の様なとんでもない武術を使える事を含めて考えると………飛矢折家は何代か前まで射眼家の退魔士の護衛を引き受けていた………と予想出来ます。射撃系なら接近戦に弱いでしょうからね」
 あたしの家が………退魔士の護衛をしていた?………ん~曾お祖父ちゃんの話しだと、飛矢折家に伝わる技の中には、対魔物の用の技がいくつかあって、実際にあたしはそれを習得している………けど、退魔士の護衛をしていたなんて話は聞いた事がない………第一、射眼家と言う名字をどこで聞いたか未だに思い出せ…………?
 ふと気付くと、黒樹君に視線が集中している中、一つだけ、あたしに向けられている視線がある事に気付いた。
 反射的にその視線の感じた方に目を向けると、土の中だと言うのに帽子を被って、竹刀袋を両手に持って壁に背を預けている……制服からして、中学三年生の女の子と目が合った。
 目が合った女の子は、ぺこりと頭を下げ、春子さんの方を見る。
 女の子の視線に気付いた春子さんは、
 「可憐(かれん)ちゃんおいで」
 と名前を呼んで手を振った。
 可憐ちゃんと呼ばれた女の子は、小走りで春子さんの隣に移動し、軽く頭をあたし達に下げた。
 「んふふ。見て驚けぇ~」
 などと言いながら、可憐ちゃんの帽子に手を掛ける春子さん。
 可憐ちゃんは何か言いたそうだったけど、黙ってされるままに春子さんに帽子を取られた。
 「じゃぁ~ん。どうだこの野郎」
 などと言っている春子さんを尻目に、可憐ちゃんの素顔を見ると………物凄くかわいい女の子だったけど、驚くほどじゃ………あれ?この顔って………
 「あなた、乙女さんの妹さん?」
 気付いた事をあたしが口にした瞬間、春子さんだけでなく、可憐ちゃんまで顔が引きつった。
 ?……顔が引きつった意味は分からないけど………乙女さんは、うちの双子の弟の片割れ・朱雀の恋人で、何度か家に来た事が…………あ!思い出した。確か、乙女さんの名字、射眼だった。
 「乙女さん………退魔士だったんだ」
 そうつぶやくと、可憐ちゃんは何故か若干傷付いた感じで頷き、
 「射眼(しゃがん)乙女(おとめ)は私の姉です………いつも朱雀さんには乙女姉様がお世話になっています………あの、本当に、私の顔に憶えが、他にありませんか?」
 ?………他にって言われても………
 意味が分からず首を傾げていると、ますます落ち込んだ感じになる可憐さん。
 えっと………どうしよう………何でかわらなないけど、私のせいで落ち込ませてるみたいだし………。
 何だか申し訳ない感じになり、思わず助けを求めて黒樹君を見ると、黒樹君は可憐ちゃんの顔を凝視して驚いている様だった。
 「黒樹君?」
 あたしが声を掛けると、黒樹君は困った様な感じになってあたしの方に顔を向け、
 「………飛矢折さん。あまりテレビとか見ない方ですか?」
 「うん。全然見ない」
 そうあたしが正直に言うと、黒樹君は春子さんの方に顔を向け、
 「………さっきの携帯、ワンセグとか使えます?」
 「使えるけど?」
 「………なら、実際に見せた方が早いでしょう。確か今頃の時間にレギュラー番組があったはずです」
 「それもそうね。ちょっと待ってね」
 しまった携帯電話を出し、操作してあたしにその画面を見せる春子さん。
 そこに映るテレビ番組の司会の隣に…………可憐ちゃんがいた。
 「………可憐ちゃんて芸能人なんだ」
 「反応薄!もうちょっと驚こうよ。芸能人よ。(ひとみ)可憐(かれん)よ?今一番売れているアイドルよ?」
 「………そう言われましても………」
 正直興味ない。
 「もういいですよ春子さん。私が売れ出したのは最近の話ですし、それに、今、私はアイドルの瞳可憐としてではなく、五体退魔士家系が一つ射眼家次期当主射眼乙女の代理でここに居るんですから」
 そう言って、可憐ちゃんは微笑むが、若干元気ない。
 ………悪い事したかな?でも、知らないものは知らないし………ん~
 「巴さん。今言った通り、私は乙女姉様の代理で、これを巴さんの曾御爺様・小次郎様から預かっています」
 可憐ちゃんはそう言って、両手で持っていた竹刀袋の袋を開け、中に入っていた一振りの刀を取り出した。
 あれ?この刀って………もしかして!
 「瞬輝丸(またたきまる)!?」
 「はい。飛矢折家家宝にして、退魔十本刀と呼ばれる最強の退魔刀の一振りです」
 「退魔刀!?うちの家宝が!?………え?じゃあ、黒樹君が言う様に、あたしの家は、護衛をしていたの?」
 あたしの問いに、可憐ちゃんは頷き、
 「正確には相棒です。飛矢折家は小次郎様の代まで、退魔士だったんですよ」
 「曾お祖父ちゃんが退魔士!?」
 百歳近いのに化け物みたいに強いから、ただものじゃないとは思ってたけど………退魔士?………あれ?
 「でも、さっき、退魔士は退魔士能力を持っている人がなるって言ってなかった?」
 「数は少ないですが、小次郎様の様に、退魔士道具を使って退魔士になっている方々もいますよ」
 曾お祖父ちゃんが退魔士………黒樹君の話ほどじゃない気がしないでもないけど、あたし的にはかなり衝撃的な話ね………でも、その退魔士道具がどうしてここにあるわけ?曾お祖父ちゃんから預かったって言ってたけど………
 「………それで、どうして可憐ちゃんが、うちの曾お祖父ちゃんから瞬輝丸を預かったわけ?」
 「そいつはあたいが説明するぜ」
 不意に可憐ちゃんとは別の女性の声。
 反射的に声が発せられた方向に視線を向けると………可憐ちゃんが持つ瞬輝丸の柄に、小さな着物姿の女性が座っていた。


+注意+
・特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
・特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)
・作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。