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第三章『奪われたオウキ』76
  ★夜衣斗★
 美羽さんと飛矢折さんが見付からない。
 キバと頂喜武蔵が鍔迫り合いを演じている最中、俺はPSサーバントのオート射撃機能を使って襲ってくるサーバント達を撃墜しつつ、ため息を吐いた。
 トンネルの所から、ずっとスカウトサーバント達に二人を探させているが、一向に見付からない。
 見付かるのは、妙に整列し、何もせずに突っ立っている雨合羽の一団ばかりで…………さっぱり意味が分からず、不安ばかりが募り………そして、
 ………やっぱり大原亮はこないか………。
 そう思って俺は眉を顰めた。
 あわよくば、大原亮のブルースターに頂喜武蔵を襲わせ、奴の武霊を喰わせて………っと言う図式が頂喜武蔵と対峙する直前にあった。
 ………だが、町境のトンネル前で見たぼろぼろのブルースターの様子を思い出し、一抹の不安があり………そして、その不安は的中しつつある。
 これだけ頂喜武蔵を追い詰めていると言うのに、一向に現れる様子はない。
 聞いた話だと、高神姉弟の時も、直接見た五月雨都雅の時も、奪う対象が弱ってから襲っていた。
 美羽さんと飛矢折さんといい、謎の雨合羽の一団といい。
 そして、さっきは現れたのに現れないブルースター。
 ………一体、今の事態以外に、この町で何が起こってるって言うんだ?

  ★???★
 「くそ!このままではらちがあかない。一気に突破するぞ竜子!」
 亮達を邪魔する様に巨大な剣達を飛ばす武霊チルドレン。
 そして、刻々と進む状況に焦った亮は、亮を守る様に動いていた竜子を下がらせる。
 「来い!ブルースター!」
 空中で剣達の相手をしていたブルースターを自身の前に着地させ、その身体に飛び込む亮。
 同時にブルースターの身体が半透明になり、レベル3になる。
 それを見た武霊チルドレンは、笑みを深め、
 「武具王」
 初めて口を開いた。
 その瞬間、武霊チルドレンの背後に西洋甲冑の武霊が現れ、具現化する。
 「これが彼女の武霊の本体!?亮!」
 「分かってる」
 警戒する二人を余所に、笑みを深めた武霊チルドレンは、声を出さずに笑い、それに合わせて武具王と呼ばれた武霊が亮に飛び掛かる。
 亮は飛び掛かってくる武具王を迎え撃とうとした。
 だが、その瞬間、亮・竜子共に悪寒を感じ、飛び退く。
 二人が飛び退くと同時に、武具王の全身から巨大なあらゆる武器が生え、瞬時に武器の塊になった。
 武器の塊は、直前まで二人が居た地面を削り、その動きを止める。
 そして、ぼろぼろと全身から武器を落とし、武具王を再びその姿を現した。
 「その程度で!」
 動きを止めた武具王に向けて、亮はブルースターの炎のブレスを放つ。
 炎のブレスが武具王に当たる寸前で、直前に武具王の身体から落とされた武器達が浮き上がり、武器の壁となって防がれる。
 ブルースターのブレスが防がれたのを確認した竜子は、直ぐに反対側から龍王にブレスを放たせるが、今度は武具王の身体から様々な防具が飛び出し、龍王のブレスも防がれた。
 「………まさに武具王ね」
 様々な防具とあらゆる武器が浮き上がり、武具王と武霊チルドレンを守る様に浮遊する様子を見た竜子は思わずそうつぶやき、亮を見た。
 半透明のブルースターを身に纏いながら、荒い息を吐いている。
 意志力の消費によるものと言うより、ブルースターの能力の副作用による疲労に見えた。
 片や武霊チルドレンの方は、未だに全力を出している様には見えない。
 「亮!」
 竜子の呼び掛けに、竜子と視線を合わす亮。
 一瞬のアイコンタクトと同時に、武具王の武器達が二人に襲い掛かってくる。
 亮はブルースターの能力を使い地面を瞬時に隆起させ、武器達を防ぐと同時に武霊チルドレンとの間に壁を作った。
 その壁は直ぐに武器達により壊されるが、壁の向こう側には既に亮と竜子の二人は居らず、それを確認した武霊チルドレンは目を瞬かせて、首を傾げる。
 ほんの少し逡巡して、逃げた二人を追おうとした時、
 「もう十分です。戻ってきなさい麗衣」
 っと何処からともなく声が聞こえ、やや不満そうに武霊チルドレン・麗衣は追うのを止め、八つ当たりか、周囲の建物を切り裂き破壊した後、どこへともなく去って行った。

 誰もいない竜子の部屋に唐突に現れる巨大な鏡。
 その中から互いに抱き付いた亮と竜子が飛び出し、部屋の中に転がり、壁にぶつかって止まった。
 抱き付いたまま竜子は亮の様子を見る。
 亮は荒い息を吐きながら、小さな遠見の鏡を出し、何かを見て、焦っている様だった。
 「………竜子。直ぐにこの部屋から出るぞ」
 「え!?どうして?休まないと」
 「駄目だ!『あいつ』がこの混乱に乗じて動き出している。ここにいるのは危険だ」
 「何?何?どう言う事?あいつって!?」
 亮はよほど焦っているのか、竜子の質問に答えず、再び瞬間移動用の鏡を出し、訳の分からない竜子を抱き抱え、飛び込んだ。

  ★飛矢折★
 ようやく町のはずれにある星波病院に辿り着いた。
 背中には、暴れていた武霊達が全部消滅した途端、気が抜けたのか、コウリュウを無理に出してたせいか、意識を失った赤井さん。
 これで赤井さんの怪我を見て貰えるって思った矢先、さっきまで土砂降りの雨だったのに急に空が晴れた。
 ………あまりにも異常な晴れ方だったから………多分、武霊の力なんだろうけど………。
 何が起こっているか、暗い星空を見回そうとした時、不意に背後に気配を感じた。
 背後は病院の入口だったから、誰かが出てきたんだろうと思って振り返ると………そこには………どこかで見た事がある男性が、何か違和感を感じる笑みを浮かべて立っていた。何の違和感かまではよく分からないけど………。
 「やあ、君は確か、高等部二年。女性護身武術部所属の飛矢折巴君だったね」
 その男性があたしの事を正確に言ったので、あたしは反射的に身構えた。
 男性は面白そうにあたしを見て、
 「そう警戒しなくていい。俺は大学部三年。三島忠人。見た事はなくても、名前ぐらいは知っているだろ?」
 そう言われて、私はようやく思い出した。
 確か、武装風紀風紀委員長兼統合生徒会統合副会長をしている人がそんな名前だったはず。
 よくよく見て見れば、確かに生徒総会とかで見た事がある様な気がする。
 あまり接点がないから直ぐに思い出せなかったんだろうけど………この非常時に、何で武装風紀の人がここにいるんだろう?
 そう疑問に思った時、病院の中が妙に静かな事に気が付いた。
 「『最後の場所』で君に出会えるとは………とっくに帰っているとばかり思っていたからね」
 最後の場所?
 意味の分からない言葉を聞くと同時に、唐突に三島さんが背後に武霊を出した。
 ぞわっと悪寒を感じたあたしは、何の武霊で、何で出したか確認せずに、反射的に上段蹴りを三島さんに放った。
 「いい判断だ。だ

  ★???★
 「いい判断だ」
 三島忠人がそう言うと同時に、忠人が背後に具現化した武霊・まるでハーメルンの笛吹き男の様な武霊が笛を吹く。
 笛から放たれる音。
 「だが、遅い」
 忠人の顎にクリーンヒットするはずだった飛矢折巴の蹴りが、顎の直前でピタリと止まる。
 「足を下ろせ」
 忠人のその命令に、巴は素直に従う。
 その瞳は意志の輝きを失っており、虚ろな表情になっている。
 「さて、後は………あいつらの決着を待つだけか」
 先ほどとは打って変わって無機質な表情になった忠人は、その視線を晴れた星空・黒樹夜衣斗と頂喜武蔵の二人が戦っている場所に向けた。


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