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第一章『武霊のある町』4
  ★美羽★
 毎回思う事だけど、星波町の事を外から来た人に説明するのは面白い。
 私達にはほどんど常識になっている事だから、特に驚かないんだけど……。
 夜衣斗さんの反応は、特に面白いなぁ。
 本当にわかりやすい人だ。いちいち反応してくれるし。
 ちょっとおかしい。

  ★夜衣斗★
 なんだか笑われている。
 なぜ笑われているか分からないが……なあ、悪意ある笑じゃないのは分かる。だからか、特に嫌な気はしない。……俺が今まで向けられてきた笑いは、ほとんどが『悪意あるもの』だったからな……何と言うか、こそばゆい。
 「ごめんなさい。夜衣斗さんが、あまりにも素直に驚いてくれるから、つい」
 くすくすと笑いながら、そう謝罪してくれる美羽さん。
 何とも言えず、俺は後頭部を掻くしかなった。
 少し揺れた為か、俺の頭に乗っていた手乗りコウリュウが少し羽ばたくのを感じる。
 ひとしきり笑った美羽さんは、俺に携帯を差し出した。
 「携帯の中に、さっき撮った写真が無いか確認してください」
 そう言われて、俺はちょっと戸惑った。
 人の携帯、しかも、女の子の携帯を本人の目の前で操作する事に、かなりの抵抗を感じたからだ。
 まあ、だからと言って、このまま確認しない訳にもいかないよな……話が進まないし。
 意を決して、携帯を受け取り、中のデータを確認する。
 猫やら、見知らぬ女の子やら、叔母……春子さんやら、花などの写真がデータがあるが、さっき撮られた写真データがどこにもなかった。
 つまり、
 「武霊に関するあらゆる情報は、『星波町を出ると、消えてしまう』んです」
 と言う事だよな。
 ……まあ、武霊なんてものが存在する町だ。何が起こっても不思議じゃないと言えば不思議じゃないが……。
 「当然、人の記憶も消えます。と言っても、記憶の場合は、町に戻ると戻るんですけどね。私達は、この現象の事を『忘却現象』ってまんまな名前で呼んでいます」
 ……忘却現象ね……なるほど、確かにこれじゃあ町の外に武霊の情報が一切伝わっていないのには頷ける。……だが、そうなると、かなりの『歪み』がこの町にある事になるな……。
 「こんな現象が起こる様になったのは、武霊が星波町も現れ始めたのと同じ時期。『十年前』からなんです」
 十年前?


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