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第一章『武霊のある町』3
  ★夜衣斗★
 星波町の外に武霊の事が一切知られていない。
 確かに、それは最大の疑問と言える。
 あれだけ『派手な事』が起きたのに、ニュースにすらなっていない。普通なら日本中大騒ぎになるはずだ。
 しかも、美羽さんはそれがさも『日常』の様に振舞っている。
 つまり、星波町には、武霊関係の情報が『外に出ない何か』があるっと言う事だ。
 そして、その何かが、見羽さんが最初に案内してくれているこのトンネルにある。………らしい。
 見た目は、何の変哲もないトンネルに見える。と言う事は、トンネルにではなく、『町境』に何かがあるってことだろうか?
 ………それにしても、トンネルに近付くにつれ、物凄く『嫌な気配』を感じるな………この感じ、気のせいって気がしないな。俺はどちらかと言うと、鈍感な方だと思ったんだが……。
 美羽さんは、特に何の説明もなくトンネルに入った。
 仕方なく、俺も後に続く。
 「はい。ストップ」
 そう言って美羽さんはトンネルの中ほどで止まった。
 疑問に眉を顰める前に、トンネルの壁に『赤い太い線』が引かれている事に気付いた。
 なんだか、ここから先に行くのは『危険』。とでも言いたい感じにだ。
 「コウリュウ」
 美羽さんの呼び掛けに、半透明のコウリュウが美羽さんの背後に現れ、急に縮んで、具現化した。
 ちっちゃい。手乗りドラゴンだ………なんだか可愛く見える。
 ………それにしても、大きくなったり、小さくなったり………具現化に加減が出来ると言う事だろうか?……そう言えば、今更の疑問だが、オウキを具現化した時、どうやって具現化させたんだ?……まあ、追々教えて貰おう。
 手乗りコウリュウはパタパタと宙を飛び、トンネルの赤線を越えようと……唐突にコウリュウが消えた。
 俺が驚いていると、美羽さんの背後に、再び半透明のコウリュウが現れる。
 「武霊は、星波町を離れると、こうやって具現化が強制解除されちゃうです。しかも、この半透明の状態の時には、同じ武霊使いにしか見えないんです」
 ……なるほど、だから、星波町限定なわけだ。……だが、それだけじゃ、町の外に武霊の事が知られていない理由にはならないな。
 「勿論、それだけじゃないですよ。コウリュウ」
 再び手乗りコウリュウを具現化させる美羽さん。
 今度は赤い線とは反対方向に少し飛び、俺の頭の上に乗った。
 ……………。
 「はい。チーズ」
 いつの間にか取り出していた携帯のカメラで、俺とコウリュウを取る美羽さん。
 ……何してんの?
 「写ってますよね?」
 そう言って、俺に携帯の画面を見せる。
 当然、かわいいドラゴンと、相変わらず冴えない俺が写っている。
 「これを、こうすると」
 携帯を赤い線の上に一瞬だけ超えさせ、美羽さんは再び俺に携帯の画面を見せた。
 「こうなります」
 その携帯の画面には、『何も写っていなかった』。


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