第6話 「ふれあいリベンジャー」
こうして僕と武内の復讐の旅(?)が始まった。
基本的に一日一人ずつ今まで付き合ったクラスの男どもに復讐することになった。一度に何人もやれば僕の体がいくつあっても足りないし。
そして、いつも僕が黙って学校を出るのだが、なぜか武内が先回りしてて復讐に付き合うことにる。
ほとんど毎日下校途中で捕まった。
「で? どうするんだ今日は」
「じゃあ今日は熱湯で」
こういう会話が交わされれば、ターゲットの男の風呂は熱湯風呂に変わり。
またある日は、
「今日はバナナの皮で転ばせて」
と言われ、ターゲットを一回転する勢いで転ばせた。
もちろん、魔法を使っているので僕にも災難は降りかかるが、やってることが些細なことなので、実害はあまりなかった。
熱湯をかければ、冷水を浴びせられるし、バナナの皮で転ばせれば、剥かれた中身を食べて腹の調子が悪くなった程度のことだ。他にも生傷は絶えなかったけど……
そしてしばらくすると武内のネタも尽きてきたらしく、後半は僕がネタを考える始末だった。
ただ、嫌なことが起こるというのにそのネタを考えるなんて自分自身馬鹿馬鹿しく思えたが、ついついクラスの奴らが困ってる時間が楽しくて、後のことを考えずにネタを実行してしまう始末だった。
そんな時間を二人で過ごしていたからか、僕は武内と徐々にではあるがうち解けていったと思う。
ある時、僕は武内に聞いてみた。
「なんで声を掛けるのオレが最後だったんだ?」
最初から思っていた疑問をぶつけてみた。
このぐらいきわどい会話でもいえるような間柄にはなっていたはずだ。
すると武内は少し考えた後、答えた。
「広野君は怒るかもしれないけど、『何か似てる』って思ったの。だから、なんか嫌で……近親嫌悪ってやつかもしれない。でも、『似てる人にまで相手にされなかったら』ていう気持ちもあったの。最後になってごめん」
僕は正直、驚いた。武内も僕と同じことを感じていたのだ。
「謝る必要なんて無い。実は僕も少し、そう思ってたから」
「え?」
「似てるかなって」
「そ、そうなんだ……」
そう言うと武内は俯いた。どうしたんだ? と僕が武内の顔を覗き込もうとすると同時に彼女は勢い良く顔を上げた。
「はぁ〜、良かった! 広野君も同じこと考えてたんだ」
「ま、まあな」
なんだか僕は今頃あんな言葉を言ったことに恥ずかしくなってしまった。
「それにこうして仲良くなれて良かったしね」
僕は『仲良くなれて』という武内の言葉を肯定するか一瞬迷った。
しかし、僕の口は自然に動き、返答していた。
「そうだな。僕も仲良くなれてよかったよ」
こんな返事に躊躇する必要なんて無いんだ。武内の事を嫌なやつだと決め付けていた僕は考えを改めた。話してみなけりゃ、わからないなとつくづく思う。
一方、学校での二人の関係は何も変わらない。武内は僕に一切話しかけることはなかったし、それは僕が初めに頼んだことでもあった。
しかし、僕自体はもうそんな事どうでもよかったが、武内は「迷惑かけるといけない」と言って遠慮した。
だが、放課後になれば2人で笑い転げる。最初は武内と一緒にいるのも気分良くなかったが、いつのまにか僕にとってこの復讐が放課後のメンイイベントになっていた。
しかし、どんなものにも終わりが来る。
とうとう復讐するクラスの男が一人になったのだ。
だがそのことは僕も武内も口には出さない。
少なくともこの時、僕は寂しさを感じていた。だから今日で終わりということは考えたくはなくて、いつものように努めようとした。
「今日はどうする? タライか? それとも『志村ー!』(幽霊をちらつかせる事)か?」
しかし、武内は押し黙ったまま歩き続けている。それを見て僕は、彼女も今日で最後なので寂しいのかと思っていた。
でも、それは間違いだと後に気付く。本当に武内に関して間違いだと気づくことが多い。
最後のターゲットがいる本屋につくと、いつものそれと違うテンションで武内は様子を伺っていた。やがて、ターゲットを見つけると、意を決したように僕に言う。
「あいつを殺して」
その声のトーンは冗談で言っているのではないことを意識させるのに十分な低さだった。
僕は息を呑んだ。 |