遮光カーテンの隙間から漏れ出る柔らかな光。
僕はベッドの上で伸びをし、言葉のような音を発しようとした。
しかし、口から出てきたのはささやかな呼吸音だけだった。
僕は首をかしげ、自分の名前を呼んでみる。
だけど、頭の中で具現化された言葉が空気を振動させることはなかった。
カエルの呪いだと思った。
遡ること、昨日の夜。
帰宅した僕は、ベッドの上に緑色の小さなカエルを発見した。典型的なカエルだ。
僕はこの時も首をかしげてしまった。
この部屋はマンションの13階にあり、カエルはおろかアリすらも侵入したことがない。
しかし、僕は仕事終わりでクタクタであり、その事実について深く考える気にはなれなかった。
大切なことはカエルをどうするかだと思った。
その時の僕は疲れすぎていて、また一階まで行ってカエルを逃がしてくる気にはなれなかった。
でも、カエルをどうにかしないと落ち着かない。
僕はとりあえずベランダにカエルを放置しようとも考えた。
しかし、明日になれば夏の暴力的な日差しがベランダに降り注ぎ、カエルが焼かれていくイメージが浮かんだ。
それは、あまりにも残酷なように思えた。
僕は寝室からリビングへ、リビングから寝室へとウロウロ歩き回った。
僕は悩みがあると、いつもウロウロしてしまう。
リビングから玄関へ続く通路をウロウロしている時に、トイレが目に入った。
トイレに流せば直接殺すことにはならないし、もしかしたら下水道に出て生き延びるかもしれないと思った。
僕はすぐにベッドに向かった。
そこには、先ほどと同じ態勢のカエルがいた。
四つん這いになって、目をギョロつかせている。
特に珍しいところもない、普通のカエルだ。
僕はそっと右手の親指と人差し指でカエルをつまみ、トイレに連れて行った。
ネクタイが便器に入らないように気をつけながら、僕はしゃがみこんだ。
「もう来るなよ」と言い、カエルを水の中に落とした。
そして、僕はカエルを見ないようにして水を流したのだ。
その結果、僕は声を失った。
カエルは死んだのかもしれないなと思った。
そして、僕に呪いをかけたのだ。
「僕は精いっぱいの配慮をしたつもりだよ」と心の中で呟いた。
失ったものは戻らない。
カエルの命も僕の声も。
僕はため息をつき、カエルがどのように死んだのか想像してみた。
また、これからの声のない僕の生活についても想像してみた。
50/50という言葉が心に浮かび、すぐにはじけた。 |