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◆ 12話 真実はいつも・・・
「…あれ?」

 どこだここ?

 気が付くと俺は、だだっ広くて何もない所にぽつんと一人で立っていた。

 空と地面の区別さえつかない全てが灰色の世界だ。

 いやいやおかしいだろ。俺は昨日、普通に自分の部屋の自分のベットで寝たはずだぞ?

「シュウ」

 突然、後ろから声をかけられて振り向く。

「先輩? ここどこかわかります? てかなんですかその格好」

 無表情で目もうつろな先輩は、全身をすっぽりと隠すようにどう見ても大きすぎるロングコートを羽織って立っていた。

 しかも前が留まっていない、コートが大きすぎるせいかギリギリ中は見えないが、風でも吹けば一瞬にして中がまる見えになるだろうな。

 そしてなぜだかわからないが先輩は今、中に何も着ていない。という気が、いや、そんな確信がる。

「先輩、あの、ちょっとだけ頭の中整理したいんで時間もらってもいいですか?」

 先輩は俺の問い掛けにも無反応で、黙ったままそっと自分の着ているコートに手をかける。

「せ、先輩!? いったい何をしようと―」

 俺の言葉も全く聞かずに、先輩はまるで自分の裸を見せつけてくる露出狂のように勢いよくコートの前を開いた。もちろん中には何も着ていない。

「うわ!? ・・・ぇ、ぇぇえ!?」

 俺はすぐに目をそらしたが手遅れだった。視界の端で完璧に先輩の裸が見えてしまっていた。

 いくらなんでも裸はマズ・・・ん?

 そして、異変に気付いて二度見する。

「な・・・!?」

 胸にあるはずの物がない。代わりにあるのは無駄にガッチリした胸板だけ…

 マ、マッチョだ… 先輩がガチムチボディに…

 そして俺の視線は胸板からみぞおちに、腹筋に、そして股間に…

「ヒィィキモィィッィィ!!!」

 体が男だとか今はどうでもいい。化け物だ! 規格外にも程がある!! 当社比45%増しってやつか!?

 俺は錯乱しながら悲鳴を上げ、先輩(の顔をしたマッチョ)から逃げる。

「!」

 しかし走っても走っても先輩は追いかけてくる。

 全くの無表情で、無駄にガッチリした体で・・・

「ぃ、いい加減にしてくれぇぇぇ!!!!」





「ハァッ!!」

 目を開けると、俺はちゃんと自分の部屋の自分のベットで寝ていた。

 ・・・・・・ぇ、夢オチ?

 汗でビッショリの上半身を起こして、時計を見てみるとまだ朝の6時をまわったところだった。

 外は夏も近いせいか、日が昇るのも早くなってきたのでもうだいぶと明るくなってきている。

 なんだったんだ今の悪夢は・・・ なんか体だるいし頭も痛い。

 とりあえず熱を計ってみる。

「38度って・・・」

 高いな、急に熱がでるなんて… あの悪夢のせいか? くそ、先輩は夢でまで余計な事を・・・

 しかたない、今日は学校休もう。

 俺には毎日学校に行かなければならない。なんていう学生特有の使命感的なものは無い。だから学校を休む事に関してはなんの抵抗も無い。

 学校に今日は休むと連絡を入れて、もう一度ベットで横になる。

 俺はもうあんな悪夢を見ないようにと願いながら眠りについた。





「一さい」

「ん」

「一きなさい」

「んん」

「起きなさい!!」

 いきなりの怒鳴り声と共に、先輩の顔が目の前に現れた。

「ぅわ!? またか!?」

 俺は跳び起きて先輩から離れる。

「やっと起きたわね! ・・・またかって何よ?」

 不機嫌な顔で近づいてくる先輩。くそ、また悪夢か!? 今度はなんだ!? いったい何をしてくるんだ!?

「お姉ちゃん、シュウ君が怯えてるよ?」

 先輩の後ろを見ると、先輩の妹で俺の同級生であるモエが心配そうな顔をして立っていた。

 今度はモエも一緒か!?

「寝ぼけてるだけでしょ。 ほら、さっさと起きなさい!」

 先輩にほっぺたをつねられる。

「ぃ、いたいでふ」

 …痛い? ってことは夢じゃないのか? とゆーかホントに夢じゃ痛みを感じないのか? これも痛いと思ってるだけでホントは別に痛くもなんとも―

「お・き・な・さ・い!」

「ぐぇ」

 強烈なチョップを脳天に食らう。

「起きた?」

 あきらかに作り物の笑顔で先輩がたずねてくる。

「・・・おはようございます」
 
「ぉ、お姉ちゃん! シュウ君熱出してるんだからだめだよぅ!」

「ふん! シュウはそんなヤワじゃないわよ!」

 先輩はそう言いながら俺の頭をぽんぽんと叩く。

「違うよ! こーみえて実はシュウ君は傷付きやすいんだよぅ?」

「いや、強いわ」

「弱いの」

「強い!」

「弱い!」

 二人の言い争いをぼんやり見ているうちにだんだんと目が覚めてくる。

 何をしてるんだこいつらは?

「あの…」

「「なに!?」」

 過剰な反応を見せたあほ姉妹(俺命名)に聞いてみる。

「二人とも人の部屋で何してるんですか?」

 二人とも制服ってことは、学校帰りだよな。俺はそんな時間まで寝てたのか。確かに頭痛もないし、少し体がだるいくらいか。

「やっとちゃんと起きたわねポンコツ。 熱を出したって聞いたから、あんたの体温をもっと上げに来たのよ」

 あれ、今おれポンコツって呼ばれた? てか体温を上げに来た? よし帰ってもらおう。

「違うでしょお姉ちゃん! シュウ君が心配だから様子をみにきたんでしょ?」

「ぅ・・・」 

 そう言ってそっぽを向く先輩。

「そーなんですか?」

「そ、そーよ! あんたがいないとからかい相手がいなくてひまなの。 だから早く治しなさい!」

「えと、ありがとうございます。 明日は学校行くんで大丈夫です」

「ほ、他にやることがないだけよ! いいから寝てなさい!」

「わかりました」

「飲み物とってくる!」

 先輩はそう言うと顔を真っ赤にしながら部屋を出て行った。

 なるほどな、あれがツンデレか。

「え?」

「ぁぁいや、なんでもない」

 おっと声にでてたか。

 少し前に先輩に乙女心のことをもっと勉強しろと言われたときは、返事だけして適当に流してきたけど、あとでやっぱり気になって色々ネットで乙女心について調べてみた。

 そのおかげで俺は女の子の気持ちがだいぶわかるようになった。と思っている。

 先輩が俺のことを好きだとは思わないが、少なくとも友達としては気に入られていると思っている。

 それで出た結論、先輩はツンデレだと。

「ぁ、シュウ君これ」

 俺が一人の世界に入っていると、モエが何かを思い出したようにカバンに手を入れ、プリントを取り出して渡してくれた。学校からの配布物だろう。

「あれ、なんでモエが持ってるんだ?」

 モエとはクラスが違う。だからこーゆーのは同じクラスで家の近いカズマが持ってくるのが妥当だと思うんだが。

「ぇと、カズマ君がシュウ君に渡しといてくれーって言ってました」

 なるほどな。カズマのやつ、めんどくさいからってモエに渡しやがったな。

「わざわざ悪いな。カズマには今度きつく言っとくから」

「ぁ、いいんだよ別に!? おかげでシュウ君の家にもこれたし…」

 顔を真っ赤にしながら尻すぼみに声を小さくしていくモエ。

「ん? 俺ん家に何か用でもあったのか?」

「ぃやっ、そーじゃなくて… ぁの… ぅぅっ」

 もごもごと口ごもったモエは半泣きになり、そのまま部屋を出て行ってしまった。

「ぇ? ちょっと待っ一」

バタン

 俺の声がモエに届く前に部屋のドアは閉まってしまった。

 あれ、やっぱり俺は嫌われてるのか?

「あんた、またモエのこと泣かしたの?」

 一人で首をかしげていると、手にジュースののったおぼんを持った先輩が呆れながら部屋に入って来た。

「いや、俺は別に何もしてないんですが」

「ったく、毎度毎度よくやるわねぇ。いい加減ちょっとは乙女心ってもんを勉強したほうがいいわよ。はい」

 先輩はジュースの入ったコップを俺に渡す。

「一応調べたつもりなんですけどねぇ。ありがとうございます。なんだかんだいって先輩も優しいとこあるんですね」

「うるさい。黙って食べなさい」

 先輩は少し照れたような、怒ったような顔をしてそっぽを向いた。

 わがままで自由な先輩でも、少しは常識的なところはあったんだな。



「そーいえば先輩」

 一息ついた俺は、さっきから気になっていたことを聞いてみる。

「んー?」

 寝転んでマンガを読みながら返事をする先輩。

 お見舞いに来た人がとる態度じゃないですよねそれ。

「カギかかってたのにどーやって家に入ったんですか? 親もいないのに」

「合いカギ~」

「またですか!? 合カギはこないだ回収したはずですよ!?」

「ふふふ、真実はいつも一つとは限らないのよ?」

 ポケットからジャラっとカギの束を取り出して俺に見せ付ける先輩。

「やめてください。そんなどっかの探偵を否定するような発言は。とりあえずこれは没収です」

「ぁー」

 先輩からカギを取り上げる。

「うわ、これ全部うちのじゃないですか」

「当たり前よ、落としたとき用とかシュウに取られたとき用とか色々あるから全部スペアよ」

「・・・スペアも本体も全部一緒にしたら意味なくないですか?」

「・・・返しなさいっ!」

 飛び掛ってこようとする先輩の頭に手を置いて抑える。

「だめです。もうこのカギからは犯罪のにおいしかしないので捨てます」

「た、高かったのよ!」

「へぇ、お嬢様のくせに言うじゃないですか。ホントは値段なんて気にして無いんでしょう? そう言えば庶民の俺がびびるとでも思いましたか? 庶民をなめないでください」

「誰がお嬢様よっ!あたしは普通よ普通!」

「あんな二階建てのでかい家に住んどいてよく言えますね」

「ただの一軒家じゃない」

「ええ、高級住宅街にあるただの一軒家ですね」

「ぅぅ・・・」

 若干なみだ目で睨みつけてくる先輩を適当にあしらってカギをゴミ箱に放り込む。

 ぁ、カギって燃えないゴミか? まぁいいや。

 なんか今日は俺のペースで行けたな、これはこれでありかもな。

 なんて考えながら先輩をみるとまだこちらを睨みつけていた。

 まずいな、このままだと後でとんでもない復習をされかねない。よし、話題を変えよう。

「そーいえばモエどこいったんですかね?」

「あ、そーいえばあの子が出て行ってからもう結構たってるわねぇ」

「ちょっとみてきます」

「いいわよあたしが行くから、まだ熱あるんじゃないの?」

「熱はもう大丈夫だと思います。体も軽くなったし、それにたぶん出て行ったのの俺のせいなんで、俺に行かせてください。あやまりたいし」

「わかったわ。でも無理しちゃだめよ」

「わかりました。じゃあ行ってきます」

 さりげなく心配してくれる先輩に心でお礼を言いつつ俺は家を出る。



 
 アヤカよ! じゃあさっそく前回の続きいくわよ!

 今回はカズマのところに突撃よ! ていっ!

「ぉわ!? アヤカさん!? どしたんすか急に!?」

「ここがあんたの部屋? 結構広いのね」

「いや、教室っす」

「こんな時間に教室で何してんのよ・・・」

「普通に授業っすけど。ちなみに今は4限目っす」

「…帰る」

「ぇえ!? 何しにき一」

「えいっ」

「消えた!? どこ行ったんや!? …さすがアヤカさん」


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