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この、小さな勲章を
作:夢村



第4話 幸福な休息


ドスランポス討伐から数日・・・。

リンの右腕の調子がよくなってくると、二人で集会所に行くことにした。

「うわあ、久しぶりに来てみたら・・・うるさっ」

リンが言うように、集会所の中はいつものように騒がしかった。

この日は朝早かったので、ハンターたちは、これから依頼を受けてそれぞれ狩りに行く。

だが、朝早くから酒を飲んで盛り上がっている連中もいた。

『もしかしたら今、帰ってきたのかもしれないな』、とアッシュは一人思った。

「ええっと・・・」

「・・・?」

リンは小走りに掲示板のところへ移動する。

「え〜っと、あっ!あった!」

「・・・なにが?」

アッシュがリンの傍に寄っていくと、そこにはドスランポスを討伐した後に撮った写真が貼ってある記事があった。

この掲示板には、ある程度大物のモンスターを討伐すると、その記事を貼られる。

「ちっさいなぁ」

アッシュたちの記事はさほど大きいものではなく、文章も『アッシュ達がドスランポスを討伐した』程度のことしか書かれておらず、リンには不評のようだった。

その掲示板の隣にある、近隣の村で活躍したハンターの記事を貼る為の掲示板には、どこだかのハンターが一人でダイミョウザザミを3体討伐したことなどが貼られてあった。

「そりゃ、ドスランポス倒しただけだし」

アッシュが『当然だ』といわんばかりに言う。

よほどのモンスターを討伐でもしない限り、この掲示板には一時的にしか記事は貼られない。
この写真も、そのうちなくなるだろう。

掲示板の上には、この村で功績を挙げた歴代のハンター達の活躍がでかでかと貼られてあった。

「っていうか・・・あたしが写ってなぁい!」

リンが不満そうにいう。

「ははは、仕方ないだろ、倒れてたんだから」

アッシュが声だけで笑いながら言う。

アイルーに撮影してもらった写真には、ドスランポスの死骸と、後ろを向いて顔のハッキリしないアッシュ・・・。それと、なぜかガンドウィルとパグフィの二人が写っていた。

パグフィに至っては、カメラに寄ってピースまでしている。

「・・・」

リンが、じと〜っとした目で写真のパグフィを指差す。

「代役だそうだ」

「なによそれ?!」

「ははは、仕方ないだろ、倒れてたんだから」

「むぅぅぅ・・・」

リンは不満そうだったが、すぐに気を取り直した。

「まぁ、いいわ。そのうちもっと大物を倒してデカデカと、この掲示板に貼ってやるから!」

ふっ、と胸に手を当てながらリンが言う。

「意気込むのはいいけど、ほどほどにな・・・。さて・・・」

アッシュはそう言うと、ニナのところへよっていった。

「また・・・アイツは・・・」

リンがあきれて言うが、今回は愚痴を言う相手がいない。

「どうも、ニナさん」

「あら、アッシュさん!」

アッシュを見ると、ニナが、ぱぁっと表情を明るくした。

「心配したんですよ?ドスランポスの討伐に行ったって聞いたあと、ここに来ないんだから」

ニナが本当に心配そうに言う。

ハンター達は、村長から依頼を受けた場合も、報酬はこの集会所で貰うことになっている。

なのに、今までアッシュは報酬をとりにこなかったらしい。

「いや、ちょっと名誉の負傷をしまして・・・」

ははは、とアッシュが笑う。

(なによ、負傷したのはあたしじゃない!)

リンはそう思うが、同時にほっとしていた。

(なんか・・・苦手なのよね、ニナさん・・・。悪い人じゃないんだけど・・・)

リンは以前に、アッシュにそのことを少し話すと。

「お前とはつくりが違うからな、嫉妬しっとして当然だ」

と、アッシュが言ったので、とりあえず殴った記憶がある。

(あれはあれで、あたしに気を使ってくれてるのかな。・・・だったらいいけど・・・)

リンはそんなことを一人、考えていた。

「ところでニナさん、最近、なにか面白い情報はありませんでしたか?」

アッシュが遅くなったドスランポスの報酬をニナから受け取りながら言う。

「情報、ですか・・・」

言って、ニナがリンの方を見る。

(・・・!)

リンは、ニナに『また大声を出すんじゃないかしら』と言われたようで、少しいらっとした。

「あぁ、大丈夫、あれはちゃんとしつけましたから」

アッシュがははは、と笑う。

(後でぶっ飛ばそう)

リンは心の中で決意した。

「は、はぁ・・・」

ニナはそう返事をすると、手元の資料を調べ出した。

「あ、これもまだ、ただの目撃情報なんですけど・・・」

言って、ニナはアッシュに資料を渡す。

「・・・イャンクックか」

アッシュが呟く。

イャンクックとは、鳥竜種の中でも、飛竜種に近い、大型の怪鳥だ。

ピンク色の鱗に、化粧でもしたのか、と言うような、変わった外見をしているが、大きさも強さもドスランポス以上だ。

「ふぅ・・・む」

アッシュが何事か考えていた。

(まぁ、大方、あたしと一緒で大丈夫かな、とかそんなんでしょ)

リンが思うが、実際はどうなのか確認しようがない。

「いるとしたら、どっかの『森と丘』か」

アッシュが呟く。

「え?なんで『密林』じゃないってわかるの?」

イャンクックといえば、『密林』にも生息すると聞いていたリンは、アッシュに問いかける。

(これが長年ハンターをやっている人間の勘ってやつかしら?)

リンは少し感心していた。

「いや、ここにそう書いてある」

「・・・あっ、そう」

(がっかりね・・・)

「とりあえず、なにか続報があり次第、連絡します」

ニナが言うと、アッシュはその後、ニナと幾らか話をして、リンと二人で集会所を後にした。

「依頼、受けないの?」

帰路の途中、リンがアッシュに問いかける。

「今日は顔見せと、報酬を取りに来ただけだ。イャンクックの情報も入ったし、まずまずだな」

「・・・受けられるといいね。依頼」

イャンクックの討伐依頼は結構多いが、これも人気があるため、あまり受ける事ができない。

「ああ、イャンクックの行動は基本的には飛竜と似ているから、リンが飛竜との戦闘に慣れる良い機会だからな」

「・・・うん」

(・・・そういえば、リオレウスの情報はどうなったんだろ)

ニナはリオレウスの事については、何も言わなかった。

(まぁ、飛竜種の目撃情報は見間違いとか、他の場所に移動したとか多いらしいし・・・。それに・・・)

リンがちらっとアッシュを見る。

「ん?」

アッシュは『何だ?』と言いたそうな顔だ。

「ん、なんでもない」

(それに、まだアッシュは、あたしがリオレウスと戦う事なんて、許さないだろうし・・・)

「?・・・変な奴」

「アッシュに言われたくない」

二人は、その後、ぽつぽつといくつか他愛ない話をしながら家に帰った。



一度家に帰り、しばらく休むと、リンとアッシュは残りの時間を各々の判断で自由行動をとることにした。

リンは、鎧をドスランポスに変形させられ、穴まで開けられたため、鍛冶屋に修理をしてもらうよう頼んでおいたので、確認にいくことにした。

「おっ、リンちゃんじゃねぇか」

親しみやすそうな顔の、無精髭を生やした男がリンに話し掛けてきた。

「こんにちは、ディールさん。鎧、修理できた?」

「あぁ、もちろんだ。それと・・・」

ディールが修理した鎧と一緒に具足を取り出した。

「あっ!」

リンが、ぱっと目を輝かせる。

「ランポスグリーブだ。頼まれた通り、つくっといたぜ!」

「わぁ、ありがとう」

リンはそれを嬉しそうに受け取る。

ハンターにとって上等な武器や防具を装備する事は一流のハンターの証とされている。

そのために、少しずつでもランクの高い防具を装備していくことは、多くのハンターの楽しみになっている。

「鎧と具足は後でうちのアイルーにリンちゃんとこに送らせとくわ。ま、これに満足しねぇで、もっといいもん作れるくらいバンバン狩ってくれ!」

ディールはハッハッハと楽しそうに笑った。

「ええ。そのつもり」

リンは代金を払い、ディールとしばらく話をすると別れ、夕食の材料を買いにいくことにした。


「うーん」

「アッシュ様、なにをしてるんですニャ?」

本を片手に難しい顔をしているアッシュに、ペケが問いかける。

「ん〜、近々、イャンクックを討伐しに行くかもしれないからな、音爆弾の調合を・・・」

本から目を離さずにアッシュが言う。

「そうですかニャ・・・」

ペケは、アッシュの邪魔をしないように、黙っておくことにした。

「・・・くそっ、なんでこういう本って意味のない文章が多いんだっ?!」

多分、本の厚さを増すためだろうが、アッシュは苛立っている。

「音爆弾の歴史はまだ許せるが、なんで使用した時の個人的な感想まで書いてあるんだ?!」

アッシュが、目の前にはいない著者に突っ込む。

ペケがそっと覗くと、確かに『快音とはいうが、音が大きすぎて気分が悪くなった』ということを回りくどく書いてあった。

しかも、それが書いてあるのはサブタイトルが『すぐわかる!これが音爆弾の調合法!』だった。

(ニャるほど・・・)

ペケは、アッシュが怒る理由を理解するとともに、激しく共感した。


リンは買い物をすませると、ついでにジェインの道具屋に寄ることにした。

「あら、リンちゃんじゃないの」

ジェインが体をくねくねさせながら寄って来た。

「どうも。ジェインさん」

最初はリンも気味悪がったが、いい加減慣れていた。

「なにか入り用かしら?」

「そうですね。じゃあ・・・」

村長にも敬語で話さないリンも、ジェインの前では敬語で喋る。

「回復薬を5つと、砥石を5つ下さい」

「はぁい。730zねぇ」

代金を払うと、ジェインが『あっ、そうそう』と言って、店の奥に入っていった。

「?」


「おお・・・出来た・・・!!」

アッシュが調合で出来た音爆弾を掲げていった。

(そんなに珍しいことでもないんだけどニャ・・・)

声には出さず、ペケがそう思うが、アッシュは気づかない。

「散々不器用と呼ばれて以来、数年間調合をしなかったが、ふふふ・・・俺だってやれば出来るってことさ!」

アッシュが嬉しそうにしているが、ペケはあることに気づいた。

(『本書を用いての音爆弾調合の失敗率は5%未満』・・・)

ペケはその調合書をそっと隠すことにした。

「よし、気分もいいし、ちょっと散歩行ってくる」

「はいですニャ」

アッシュは今にもスキップでもしそうなほど浮かれて、出かけていった。


「ほら、これよこれ」

ジェインが店の奥から半円形の黒いものを持ってきた。

「これは・・・?」

リンがそれを渡され、ジェインに聞く。

「『シビレ罠』よ。いや、ほらね。リンちゃんもドスランポスを討伐出来たことだし。今度はイャンクックかなぁって思ってねぇ」

「はぁ・・・」

それとこれとどう関係があるのだろうか、と、リンは手元にある見たことの無い道具をまじまじと見た。

(結構軽い・・・)

「あ、それね。地面に設置して、真ん中のボタンを思いっきり踏んだりして押すと、数秒後に電流でコレの周りに入ってきたモンスターをシビレさせるのよぉ」

「へぇ・・・」

平らになっている裏の二箇所に、地面に刺し込むためのものと思われるデカい針が、折りたたまれてあった。

「でも、設置してモンスターがシビレてるからって、あんまり近寄ると人間もシビレちゃうから気をつけてねぇ」

「・・・」

(意味は・・・?それにモンスターが痺れるくらいだから、人間が電流の範囲に入ったらただじゃ済まないんじゃ・・・)

「あたしも昔は『クックイーター』と呼ばれるハンターだったから、色々調合してて余ってたのよぉ。だから、お代はいらないわ」

「え?いいんですか?」

「もちろんよぉ」

リンはちょっとありがた迷惑な気もしながら、シビレ罠をもらうことにした。

「ありがとうございます。ジェインさん」

「いいのよぉ」

リンは礼を言ってしばらく話をすると、荷物も多くなってきたので帰ることにした。



「お、リン」

アッシュは散歩の途中、今から帰るところと思われるリンの姿を発見した。

「あら、アッシュ」

「・・・重そうだな、俺が持つよ」

アッシュはリンが抱えていた袋を受け取る。

「・・・」

「・・・どうした?」

「・・・珍しく、アッシュが優しい」

「ははは、俺はいつだって優しいぞ?」

「はいはい・・・」

「・・・」

それから無言で、二人並んで歩く。

太陽は大分沈み、暑さも少しやわらいだ。

虫の鳴き声がよく聴こえる。

昼の喧騒けんそうがなかったかのように、辺りは静かだった。

「ねぇ、アッシュ・・・」

「ん?」

「あのさ、あたし・・・ハンターになってから、毎日毎日、色んな依頼をこなしてきて、こんな風に一日ゆっくり過ごすことってあんまりなかった」

「そうだなぁ・・・」

「でさ、別にハンターが嫌ってわけじゃないんだけど、こういう日もありかなって思うの」

「ああ・・・」

「なんか、こう・・・いちいち、殺すとか殺されるとか考えなくていいじゃない?」

リンは言葉が上手くまとまらないようで、少し詰まりながら言う。

「・・・ああ」

(・・・やっぱり、リンは・・・ハンターに向いてないんじゃないだろうか)

「こうやって、いつもと同じ人と話をして、いつもと同じことするのが、なんか大切に思えた・・・」

言った後で、『クサいかな』とリンは照れくさそうに笑う。

「そうか・・・」

それを見て、アッシュも少し微笑む。

「日常って、結構『幸せ』があるんだね・・・。こうやって、いつものように過ごしたり、空を眺めながらアッシュと二人で歩いたりするのが、あたしは幸せ」

「・・・それは、リンが・・・」

アッシュが何か言おうとして止める。

(やめておこう。さすがにこれはクサいな・・・)

「・・・なに?」

「いや、きっとそれはリンがバカだからだよ」

『良いこと言った』とでもいいそうな顔でアッシュが言う。

「・・・バカアッシュに言われたくないわよ」

リンが言うが、声に怒りはこもっていない。

「まぁ、つまり・・・なんだ」

「?」

「『幸せ』ってのは、誰かに『これが幸せなんですよ』とかいって教えてもらうものじゃなくて、自分で見つけるもんなんだってことだな。・・・まぁ、当然のことだけど」

「・・・うん」

「空を眺めてるだけで幸せな気分になったりするのも、すごい良いことがあっても仏頂面するのも、その人の心の持ちようなんだ」

「・・・うん」

「だから・・・こんな日常が幸せって思えるリンは・・・」

アッシュはそこまでいって、詰まる。

「・・・?」

「・・・バカなんだよ」

アッシュはなぜか照れた顔で言う。

「・・・なんで照れてんのよ!」

「あいたっ」

リンが微妙な空気に耐えられなくなったのか、アッシュを軽く小突く。

「まぁまぁ、アホなことやってないで、とっとと帰るぞ!」

そういって、アッシュは歩く速度をあげる。

「うん」

リンもそれを追う様に歩く。

そして、また無言で二人並んで歩く。

少しして、アッシュは自分の歩く速度がリンには少し早いと気づくと、歩く速度を落とした。


どうも。この小説を書いているヤツです。
既にお気づきの方も多いと思いますが、この小説の中に出てくる設定などには私が勝手に作り上げたものがあります。というか多いです。
なので、あまりそういった設定(人数無制限の依頼)やカメラとかを信じると、恥を掻く恐れがありますのでご注意ください。

また、私の勝手な都合で小説の内容を変える場合があります。
例えば、ジェインがドスランポスの情報料として300zを要求しようとした件についてですが、『あれ、これクーラードリンクと同じ?』と思ったんですが『でもドスランポスの依頼900zなんだよね』ということで、『じゃあ、依頼一日一回くらいしか受けないし、報酬を5倍くらいもらえることにしよう』と、勝手に変えて情報料を変えたりとかします。
ですが、小説の内容を大幅に変えることは(多分)ないと思いますので、ご了承ください。

また、『数日間更新しなかったにもかかわらず、読者が数人いるということは、愛読してくれている人がいるのか?!』などと思いつつ、書いております。もしそうなら更新が遅くなったのは申し訳ないです。
更新はいつするか決まっていませんが、ゆっくり書いていきたいと思います。

長くなりましたが、これからも『この、小さな勲章を』をよろしくお願いします。











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