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この、小さな勲章を
作:夢村



第1話 来訪者


アッシュが家に帰り着くと、すでに食事が用意されていた。

「あ、おかえり。どうだった?」

風呂に入った後らしく。リンは鎧を脱いで、普段着に着替えていた。

「ま、いつも通りだなぁ」

「当然か。いつもと同じ事だしね。あーあ、つまんないなぁ。せめてランポス狩りた〜い」

「ああいうのは新人ハンターに人気だから、あんまりないんだよ」

彼らは、ハンターといっても、依頼主がいないのでは危険なモンスターと戦う意味が薄れる。

又、依頼主がいたとして、その依頼主が認めない限りは1つの依頼に対し1グループ(4人)までしか受けられないので、比較的平穏なこの村では、危険なモンスターの討伐は競争率が激しい。

そのため、多くのハンターは、アッシュ達の様に比較的危険でなく、需要の多いモンスターを狩ることになる。

しかし、中には依頼主を待たずに目的のモンスターを狩りに出る者もいる。が。

「依頼待たずにモンスター狩りにいっちゃうとかさ」

「またお前は…。そういう事すると、周りから白い目で見られるんだって。しかもその狩ったモンスターが誰かのターゲットだったら、恨まれる可能性だってあるしな」

「つまんないなぁ」

と、いうわけで、何でも狩ってしまえばいいというわけでもないのだ。

「まぁまぁ、お話しはそこまでにしておかないと、せっかくの料理が冷めますニャ」

奥の部屋のキッチンから、コックコート姿で雇いアイルーのペケが出てきた。額にバツ印の傷痕がある。だから、ペケ。

「おっ、いかん、そうだった。よし、飯だ」

「いただきま〜す」



昼食をとった後、しばらく休憩をした。

アッシュは趣味の読書を。

ペケは、ご自慢のキッチンの整理に大忙しだ。

リンは、疲れたのか、椅子に座ったまま、うとうとしている。

暑い中、窓から涼しい風が流れて、アッシュのポポロングと呼ばれる形の黒髪が揺れる。なるほど、眠くもなる。

「眠いなら、ベッドで寝ないと、風邪ひくぞ」

アッシュが言う。この家には元々ベッドは一つしかなのだが、リンが転がり込んで来て以来、リンに占領されている。

「ん〜、大丈夫。ていうか、今、寝たら夜になって寝られなくなりそう」

「んじゃ、どっかいくか?」

「どこによ」

「集会所にでも。なんか面白いニュースがあるかもしれないだろ?帰りに飯の材料も買いにいくから、ペケも来るか?」

「はいですニャ」

キッチンから顔を出して元気よく返事するペケと反して、リンは胡散臭げにアッシュを見る。

「ただニナさんに会いたいだけなんじゃないのぉ?」

と、リンが茶化すように言う。

ニナというのは、集会所で受付嬢を勤めている女性のことで、美人で愛想もいいので、ハンター達に人気がある。

「ニナさん美人だもんね、アッシュも狙ってるんじゃないの?」

「いやいや、あの人は優しくて、美人で、料理も上手い。あんな女性、俺にはもったいないよ」

アッシュが、本気とも冗談ともとれるような口振りで言う。

「あら、それって、まるであたしのことをいってるみたいね」

リンがおどけて言う。

「あ〜、ウン、そうそう、ソレ」

アッシュが棒読みで返す。

「アッシュさん、ちょっとぶっとばしてもいいかしら?」

「…ご、ごめんなさい」

リンが来て以来、こんな下らないやりとりが多くなった。

そんな二人を、キッチンの整理を終えたペケがニヤニヤと目を細めて見ていた。

「なによ、ペケ」

リンがその視線に気付いて、ムッとしてペケを睨んだ。

「な、なんでもないですニャ!」

こういう日常も悪くないな、とアッシュは思った。


結局、することがなくなって、集会所になにか面白い話がないか、見に行くことになった。

集会所は、ここの様に小さな村にもある、ハンター達が村の外部からの依頼を受けることが出来る場所だ。

他にも、各地のハンター達の活躍や、モンスターの目撃情報など、様々な情報を得ることができる。
集会所の中は、昼過ぎとあって、アッシュ達のように早い内に依頼を終えたハンター達が、祝杯をあげたり、次の依頼を吟味、あるいは、目的の依頼をひたすら待つ者達で溢れていた。

野蛮とも言われるハンターだけあって、筋骨隆々きんこつりゅうりゅうとした男が多い。

この中では、女性であるリンはもとより、アッシュも、彼らと比べると、少々華奢に見えてしまう。

そんな二人とあって、奇異の目で見られる事もしばしばだか、二人には全く気にした様子がない。

「リン、なんかあったか?」

先程から掲示板に貼られた様々な記事を、吟味ぎんみするように真剣な顔で見ているリンに、アッシュが問いかけた。

「これ…」

リンは掲示板に貼られた記事を指した。

『伝説の古龍か!?ボボノ山に謎の影!!』

記事が書かれている紙には写真も貼られているが、その影とやらは小さく、竜の形をしているかさえも判然としない。

「うわぁ、うっさんくさいなぁ」

「確かに…こりゃ本物かどうか疑わしいな」

古龍とは、遠い昔から存在するとされる竜族だが、今まで目撃情報は極めて少なかった。

最近になって、目撃情報があちこちで浮上しだしたが、どれもはっきりしない情報ばかりで、それらは、ハンター達の間では、あまり信じられていない。

「古龍って、飛竜より強いんだっけ」

リンがアッシュに尋ねる。

世界には、竜と呼ばれるモンスターが数多く生息する。とはいえ、一口には個々の違いを説明できないほどの種類が存在する。

例えば、ランポスと呼ばれる青い小型の肉食竜は、鳥竜種と呼ばれている(ランポスは飛ぶことはできないが)。

凶暴ではあるが、ほかの種類の竜と比べると、危険度は低いとされる。

しかし、大したことないとあなどり、ランポスの集団に囲まれ、力尽きて命を落とす新米ハンターも少なくない。

飛竜とは、ランポスを含める鳥竜とは比べ物にならないほど危険とされる竜族で、見事討伐した暁には、一人前のハンターと呼ばれるに相応しいとされる。

一方で、彼らに戦いを挑み、多くのハンターが散った事をうけ、飛竜と名の付くものを耳にした途端、表情を強ばらせるハンターも数多い。

「噂では、な。なかには『戦ったことがないからそう思うだけだ』って言う奴もいるけどな」

「あー、それはあるかもね」

「ま、そう言った本人が戦った事があるのかも疑わしいけどな」

「なんたって『伝説の古龍』だもんね、一度はお目にかかりたいな」

「運がよけりゃいつか逢えるさ。俺は逢いたくないけど」

そこまでいうと、アッシュは受付の方へ移動した。

「どうも、ニナさん」

「あら、アッシュさん、もう仕事は済んだんですか?」

ニナと呼ばれた、ギルドから支給されている制服を着た女性が、アッシュを笑顔で迎えた。

「ええ、まぁ、俺にとって、あんな依頼なんて楽勝ですよ。はっはっは」

「うわ、なにあれ、紳士ぶってるつもりなのかしら?」

自分の時とは違うアッシュの態度に気を悪くしたのか、リンはペケにひそひそと話しかけた

「聞こえたらまずいから、返答は控えますニャ」

「へぇ、ペケ君は、聞かれたらまずいような事を考えてたんだ」

リンが意地悪い笑みを浮かべる。

「ニ゛ャッ!!い、いや、これは、その…」

二人のそんな会話をよそに、アッシュはニナと会話を続けている。

「ところでニナさん、最近、なんか面白い情報はありましたか?」

アッシュがかなり話を脱線させた後に、ようやく本題に入った。

すると、さっきまで笑顔だったニナの表情が少しひきつった。

「面白いとは言えませんけど、普段とは変わったものが一つ…」

「…へぇ、どんな?」

アッシュが興味深そうに尋ねる。

「あ、確か……ハイ、これです。これはまだ、依頼としてではなくて、伝言みたいなものなんですけど…。他の方にはまだ知らせていませんから、あまり大きな声は出さないでくださいね。」

ニナがガサゴソと依頼内容などが書かれた紙の入った棚の中から、一枚の紙を取り出して、アッシュに渡した。

「ん〜と、日付は昨日か…」

「ええ、今日、届いたんです」

この紙の日付が、届いた日付と近いということは、場所はそう遠くないはずだ。

アッシュはさっきとはうって変わって、真剣な顔で紙の内容を確認した。

「………!!」

アッシュは、しばらく紙に目を通していたが、その内容を理解した途端に、金縛りにあったみたいに、硬直した。

「なんか面白いことでも書いてあったの?」

暇をもてあましたリンは、アッシュがもってある紙を横から覗いた。そして…。

「……リオレウス…!!」

「!?…リ、リンさんっ!!」

「あ、おいっ!!」

リンは、内容を理解するとともに、集会所内のハンターに聞こえるには充分な声で、言った。

その瞬間、さっきまで笑顔で祝杯をあげていた者も、依頼内容が書かれた紙をまじまじと見つめていた者も、皆、一様に静まり、声の主であるリンに注目した。

皆、リンの声の大きさに驚いたのではなく、驚いたのは、リンの発した名前。 

飛竜『リオレウス』!!

大型の鳥竜より数段危険とされる飛竜のなかでも、もっとも多くのハンターが挑み、散ったとされる飛竜だ。

ハンターの中には、仲間をリオレウスに殺された者も多く、場所によっては、その名前を口にすることすら、タブーとされている。

「あ、皆さんっ、これは敢えてただの目撃情報で、現在、王国騎士団が調査中でして、…えぇと、もしかしたら、見間違い…かも…」

ニナが慌てて説明するが、その言葉で収まるような空気ではない。

誰もが沈黙し、中には、よほどの事があったのか、頭を抱えてガタガタと震える者までいた。

そんな中、二人の男が、座っていた椅子を倒すように勢いよく立ち上がった。

二人は、どちらも体つきがよく、正に野蛮とされるハンターの象徴とも思えた。

「貴様ら、それでもハンターか?!リオレウスの名前を聞いただけで恐れおののくくらいなら、ハンターなど辞めるといい!」

金髪と黒髪の二人の男の内、黒髪の男の方が言った。

ニナは、今の発言で『最悪の空気になるのでは』と、心配した、が…。

「全く、情けねぇ!リオレウスなんて大物、滅多にお目にかかれねぇぜ!てめぇらもハンターなら、ビビってねぇで喜ぶべきだろうが!」

と、黒髪の男に続けて、金髪の男が言った。

すると、今まで黙っていた男達が、口々に吼えだした。

「へっ!恐れる?リオレウスに?ふざけろ!願ってもない大物じゃねぇか!」

「おぉ、ねぇちゃん!場所はどこだ?!」

「へっ、これでやっと、アイツの敵を討つことが出来るぜ!」

結局、集会所の中は、リンがリオレウスの名前を口にする前よりも騒がしくなった。

そう、ハンターとは、こういうものだ。相手が強大であればあるほど、熱気を帯びる。例えそれが、完全に本心ではないとしても。

ここで恐れていては、他のハンター達から一生、チキンハンターとバカにされ続けることになるだろう。

「皆さん、落ち着いて下さい!ですから、まだ調査中でして…!」

ニナが皆を(なだめるが、それで静まる者はいない。

「ふぅ、なんとか最悪の空気にならずに済んだな。…おい、リン!」

アッシュは、『なんで、あんな大きな声を出したんだ』とリンを咎めようとしたが、リンはリオレウスの名前を睨み、固まったままだった。

「…リン?」

アッシュは今までに、リンのこんな様子を目にしたことがなかったので、少しの間、困惑した。

(やっぱり、リンはリオレウスに家族を…?)

アッシュはリンの過去を知らない。また、リンはアッシュの過去を知らない。

アッシュは、自分達の付き合いの短さを改めて実感した。

「どうした?そこのお嬢さん…さっき、大きな声を出した張本人みたいだが…」

その声にアッシュが振り返ると、先程、声を張り上げた二人だった。

元々長身ではあったが、近くで見ると、更にデカく感じる。

二人とも髪は短い。黒髪で褐色の肌をした男が、前に立って、金髪でどちらかというと色の白い男がその後ろにたっている。

「ああ、あんたらか、さっきはすまない、助かった。こいつ、リオレウスの目撃情報なんて、実際に見るの初めてだから、狼狽ろうばいしちまって…」

アッシュは、その場しのぎとはいえ、知りもしないことをべらべらと喋る事に、罪悪感を憶えた。

「あれは、俺の本心を言ったまでだ…。ところで…そこのお嬢さんも、ハンターなのか?みたところ…そうは見えんが…」

アッシュとリンは、風呂に入った後から鎧を脱いでいたので、普段から鍛えていて、肌の焼けたアッシュはともかく、色白で華奢きゃしゃにも見えるリンは、(はたから見ると、ハンターには見えない。

リンは、一瞬ハッとしたあと、黒髪の男を睨み付けた。

「なに?あたしみたいなのがハンターじゃ不満?」

「い、いや、そういうつもりで…言ったわけじゃないんだ…」

黒髪の男は、先程、声を張り上げた時とは、明らかに雰囲気が違った。

黒髪の男だけでなく、リンの様子も明らかに普段とは違った。

「あれな、ガンドウェルは女と話すのに慣れてないから、ああなっちまうんだ」

「ああ、それで…」

アッシュが一人で納得するのをよそに、リンは、まだガンドウェルと呼ばれた黒髪の男を睨んでいた。

「まぁ、なんだ…君の様な女性が…リオレウスなんかと戦おうなんて、思わない方が…その、良いと…」

ガンドウェルは別の国の言葉を話すように、片言で喋った。顔の色が心なしか赤くなっている様に見えなくもない。

が、この状況を見ている者からすると、その言葉は明らかに『火に油を注ぐようなもの』だった。

「『女性が』?!女だったら駄目だっていうの!?」

「いや、違う、そうじゃなくてだな…」

ガンドウェルは、自分の言葉の真意が伝わらずに、もどかしそうだった。

「なぁ、あんた、わかるか?ガンドウェルの奴、あれでも口説いてるつもりなんだぜ」

金髪の男は、ごつい体格をした割に、軽快な口調で言った。

「は?!あいつを?…というか…あれで?…いやいや、冗談だろ」

「いやいや、まじまじ」

金髪の男はニヤニヤと笑っているが、アッシュはいまいち男の話を信じられずにガンドウェルをまじまじと見つめた。

「とにかく、リオレウスは俺達が討伐する!だから、君はリオレウスのことは忘れろ!」

ガンドウェルが半ばやけ気味に言い放つ。

「…あんな事言ってるぞ」

アッシュが金髪の男に意見を求めた。

「ああ、要約すると、『あなたみたいな素敵な女性がリオレウスと戦うなんてバカな事を考えちゃいけない。ここは俺に任せろ』ってとこかな?」

「いや、そうじゃなくて…」

金髪の男と話が噛み合わないのと、彼が要約した台詞の胡散臭さに、アッシュは疲労を覚えてきた。

「ああ、元々、オレ達はリオレウスを討伐するつもりだったからな、問題ない」

「あのぉ、というか、まだいるって決まったわけでは…」

ニナが受付のカウンターから指と顔を半分だけ出して言った。



「なによ、それ…!バカにして!あんたみたいなのが、自分の腕を過信して、痛い目みるのよ!」

リンがガンドウェルを睨み付けながら言った。

今や、リンとガンドウェルの周りは、興味深そうに事の成り行きを見守る(あるいは煽る)者達で溢れていた。
「リン!いい加減に…」

言い掛けて、アッシュはリンが涙を流していることに気付いた。

「『女だから…戦っちゃいけない』…なんて…言わないでよ…。あたし…もう子供じゃ…ないん…だからぁ…っ!」

集会所の中に再び沈黙が訪れた。

リンは、頬を真っ赤にしたまま、集会所を走り去った。

「あっ、おいっ?!リン!!…ペケ!追ってくれ!」

「…?!了解ですニャ!」

先程まで所在なげにおろおろしていたペケが、リンの後を追って行った。

「すまない、あいつ、なんか取り乱しちまって…」

アッシュは、ガンドウェルに詫びたが、今度は適当な理由をでっちあげることが出来なかった。

「…いや…あれは、俺が悪かった」

「また振られたな、ガンドウェル」

「?!そ、そうなのか?!」

「いや、そこは気付けよ」

アッシュは二人のやりとりを眺めていたが、すぐにでもリンを追いかけたい衝動に駆られていた。

「悪かったな、オレの相棒がデリカシーなくて」

「いや、いいんだ」

「オレはパグフィ。もうわかってるだろうが、こいつがガンドウェル。オレ達は最近この村に着いたばかりだが、ここにはしばらくいるつもりだ。よろしくな」

パグフィと名乗った金髪の男が悠長に自己紹介するのを苛立ちながら聞き、自分も社交辞令的な言葉で返す。

「アッシュだ。ここには二年以上住んでいる。わからないことがあったら、何でも聞いてくれ」

「…よろしく頼む」

二人と握手を交わすと、アッシュはいてもたってもいられなくなり。

「すまない。それじゃっ!」

とだけ言うと、全速力で集会所を飛び出した。

「…ガンドウェル、今、振られて良かったな」

「…?」



「リン!ペケ!」

「アッシュ様、こっちですニャ!」

アッシュがペケに駆け寄る。

「リンは?!」

「あそこですニャ」

リンは、農場にある桟橋の上に立ち、魚を見るでもなく、うつむいていた。

「………」

アッシュは、右手を差し出し、リンの名前を呼び、肩を叩こうとしたが、心の中で、葛藤かっとうする。

(俺に彼女の何がわかる?)

(リンがリオレウスの名前を見ただけで、あんなに動揺していたのに、俺はその理由を知らない)

(リンの涙の本当の理由を、俺は知らない)

(そうだ、俺はリンの過去を知らない。それは、リンが聞かれたがらないし、俺自身もまた、自分の過去を聞かれたくないからだ)

アッシュはリンと出会い、今まで自然にしてきたことを、今は非常に後悔した。

(彼女にかける言葉が見つからない…)


結局、アッシュは、声をかけられないまま、桟橋に佇むリンを眺めていた。

しばらくすると、今までうつむいていたリンが急に振り返り、笑顔で、言った。

「アッシュ、退屈。どっかいこっ」

「…!」

急な出来事にアッシュは一瞬、戸惑ったが、すぐに返事をした。

「…ああ、どこがいい?」

「楽しいとこ」

「また短絡的な」

「いいでしょ、アッシュの方がこの辺の事、詳しいんだから」

「そうだな、じゃ、いくか。どっかに」

「…あっ、帰りに晩御飯の材料買うのを忘れちゃ駄目ですニャ!」

彼女の優しさは、今のアッシュにとって、胸が締め付けられるほど痛かったが、今、自分に出来る事を考えると、笑顔でいる事くらいしか出来なかった。

また、アッシュは集会所での事を振り返り、『いつか、リンと互いの過去を語り合う日が来るだろうか』と、一人、考えていた。

太陽は燦然さんぜんと輝き、虫達の鳴き声が耳障りだ。今が一番暑い時間だが、これから少しずつ涼しくなってくるだろう。












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