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君の優しさ見えたようで
作:紅葉




「はい、この問題わかる人!」

「はーい!!」

教師のいつもの言葉を合図に、子供たちは皆一斉に手を挙げた。

その様子を退屈そうに頬杖をつきながら見る少年と、その隣に座る少女を除いては。
それはそうだろう、見た瞬間に即答できる問題をわざわざ黒板に書きに行くなど馬鹿らしすぎてやってられない。

耐えきれず大きな欠伸をすれば、すかさず教師に指名されてしまった。

「江戸川君、これは?」

「31」

「…正解」

教師は『授業を聞いてなければ理解できない』ということを証明したかったのだろう。
即答されてしまい、少々悔しそうだった。


ふと隣に座る少女─哀が頭をこくりこくりとさせているのに気付き、その顔を覗きこむ。

と、その大きな瞳がぱっちりと開いた。

「……なに?」

未だ眠そうな怪訝な目で、コナンを睨む哀。

すると彼は苦笑した。



「いや、なんでも」




*君の優しさ見えたようで*



「博士ー、灰原は?」

──夜、
と言ってもまだ陽は落ちたばかりで。微かに部屋を照らしていた光は徐々に暗闇へと呑み込まれる。

「地下室にいるじゃろ。最近は調子が良いとかでずっとパソコンに向かっとるよ」

“無理しすぎないか心配じゃよ”と洩らす阿笠に相槌を打ち、地下室への階段を降りるコナン。

彼女がいるであろう部屋の前に立ったところで、ノックしようとしたその手が躊躇った。

なんとなく、哀と二人きりになる時は緊張してしまう。
何故だかは未だに解らないのだけれど。


意を決してノックを軽く二回、
「入るぞ」
と断ってから扉を開ければ、相変わらず暗い室内にパソコンの光だけが妙に明るく映えて、思わず目を細めた。

「たく、電気くらいつけろよな」
独り言のように小さく呟いたそれの返事は、意外にも早かった。

「あら、ありがとう」

哀のその言葉には『電気をつけろ』と言う意味が含まれているわけで。
コナンは不満気に眉をよせながらも、スイッチを入れた。


彼女は振り返りもせずカシャカシャとキーボードを叩く。


「お前、最近無理してんじゃねぇか?」

コナンの言葉に、哀の手が一瞬だけ止まった。

「別に、無理なんかしてないわよ」

再び動き出す起用な指たち。

「へー…」

それを見ながら、哀に気付かれぬようそっと近寄って。


「……工藤君、驚かせないでくれる?」

突然パソコンの画面を遮った影と、現れた彼の顔。

あまりにもその距離が近かったから。


「あっれ、もうちょっと驚いても良いのになー」

真面目な顔してそう言ったコナンに、哀は
「十分驚いたわよ」
と返すと“邪魔だ”とでも言いたげな表情で、自分の前からどくよう促した。

コナンは渋々哀から離れ、研究室の扉に手をかける。

「んじゃ俺そろそろ行くから、また明日な」

「ええ、明日」

パタン─と静かに閉まる扉。


「何しにきたのかしら…」


閉まる寸前聞こえた声。



─お疲れさん──



不覚にも嬉しく感じてしまった。
















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