【ショートショート】ラブレター
郊外に建てられた一戸建てに住むある家族の女の子は、夏休みのあいだ、毎朝郵便の配達員さんが手紙を届けてくれるのを心待ちにしていた。
朝になると窓から道を眺めだし、いつしか待ちきれなくなって玄関のポストの前に出てくる、その女の子を見て、近所の人達もいつも噂していた。
「いったい、だれの手紙を待っているんだろう?」
「きっと、ボーイフレンドからの手紙じゃないかな?」
晴れの日も曇りの日も雨の日も、女の子は毎日、家の前に出て、配達員さんの到着を待っているのだった。
やがて配達員さんも毎日立っている女の子の顔を覚え、郵便はポストではなく、その子に直接手渡すようになった。
女の子はひまわりのような笑顔で郵便を受け取り、届いた手紙をひとつひとつ確かめるのだった。
そうして夏休みも終わりになったころ、郵便屋さんは配達する手紙の中に、その女の子に宛てた小さな封筒が入っているのを見つけた。
その封筒には、男の子の名前で署名がされていて、口は大事に糊で閉じて、その上から小さなうさぎのシールで封がされていた。
女の子は今日も、家の門の前で待っていた。
「待っていたお手紙はこれかな? 僕も奥さんとの最初のきっかけはラブレターだったんだ。きっと幸せが訪れますように」
にっこり笑って手紙を差し出す配達員さんの言葉を受けて、女の子は手紙を受け取ると、恥ずかしいのか、手紙を胸に抱いて、家の中に走って入っていった。
郵便屋さんは知らないことだけれど、家に入ってから、女の子は泣いていた。
だって、女の子の恋は、たったいま終わってしまったのだ。