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魔術学院1年目
007 星暦549年 青の月 17日 学院祭 (1)企画
魔術師って真面目で静かな連中なんだと思っていたのだが・・・実はお祭り好きが多いようだ。
・・・盗賊シーフギルドに出入りするような魔術師って成功路線から脱落した、暗いタイプが多かったのかな?

◆◆◆


「学院祭の季節が来た!」
寮の食堂に集まった魔術師の卵たちの前で、寮長のフェンダイ・ハートネットが大きな声を上げていた。
「今年こそ、我らグリフォン寮が最優秀賞を取る!!!皆、アイディアを上げてくれ!」

「・・・学院祭ってなに?」
隣に座っていたシャルロに聞いた。

「年に一度、寮対抗で行われるイベントだよ。
色んな術の精度とか強度を競う競争が1日目にあって、2日目は魔術を披露する出し物をするの。」

なんじゃそりゃ?
「出し物って?競争で披露しているんじゃないのか?」

「いかに美しく、芸術的に魔術を披露するか!魔法剣士を目指すダレン・ガイフォードもいることだし、今年はきっと一般投票も一位に違いないわ!」
ちょうどいいタイミングで、前に立っている3年生の一人が声を上げた。

「一般投票?」
「1日目の競争は学院の教師陣が共同で投票するんだけど、2日目の出し物は生徒と教師だけじゃなくって一般のお客さんの投票もカウントするのさ。」
リンゴを頬張っていて返事が出来なかったシャロルに代わってその隣に座っていたアンディ・チョンピが答えた。

「『雪の姫君の魔法剣士』をやりましょうよ!」
別の女子生徒が声を上げた。

『雪の姫君の魔法剣士』というのは最近大人気の活劇だ。
『雪の姫』と呼ばれる貴族の娘と国一番と誉れの高い魔法剣士が恋に落ちて結婚しようとするのだが、政略結婚を計画している姫の父親が二人の仲を引き裂こうとする。父親を説得する為に魔法騎士が必死の思いで戦争で活躍したりモンスターを倒したり悪人を捕まえたりするのだが、結局父親は強引に戦略結婚を進める。最後に思い余って駆け落ちしようとしたところを戦場で魔法剣士に命をすくわれた皇太子が父親を説得して恋人たちは晴れて結婚するという話らしい。

ちなみに姫は貴族にありがちなことに魔術が使える。雪の魔術が得意だから(なんじゃそりゃ?)雪の姫と呼ばれると言う設定らしい。

ということは、ダレンが魔法剣士、戦う場面とかで魔術の特殊演出をしまくった演劇か。

だけどねぇ。

俺が先月コテンパンにやられたダレン・ガイフォードは実はアシャール魔術学院でも屈指の使い手で、ファンの多い人間だった。
・・・ただのひよっ子にこの俺様が負けるとはおかしいと思ったんだよね。
ま、それはともかく。

幾らダレンが腕がいいといっても、まだ学生としてだ。
しかもそれに対応する程腕のいい人間はいないし。
となったら幾ら一人で派手に魔剣を振り回しても、あんまり面白くないんじゃないかなぁ。

第一、ファンが多い騎士キャラに騎士の役をやらせても捻り無くって面白くないし。

「どうせベタに騎士キャラつかった演劇やるなら、もっと究極なベタを狙ってコメディにすれば良いのに。」
思わず、シャロルに愚痴った。

ベタな騎士モノなんてやっていても面白くない。しかも1年生なんてどうせ舞台道具作りとかだろうし。

「いいじゃん、それ!」
シャロルが反応する前にアンディが声を上げた。

「先輩~!ウィルが究極のベタでコメディをやってはどうかって言ってま~す!」
おい!

『目立たず、幽霊のごとく』が俺のモットーなんだぞ!
勝手に注意をこっちに引くんじゃない!

「うん?言ってみろ。」

ちっ。
「ええ~と・・・。
学院1の剣士であるダレン先輩が魔法剣士や騎士を普通に演じても、捻りが無いからあまり面白くないと思うんです。確かに女性陣ファンからの票が入るかもしれませんけど、学院の生徒も教師も男性比率の方が高いですし。」
注目されて緊張に喉が渇くのでコップの水で喉を湿らす。

「だから、物凄くベタに、それこそダレン先輩が登場するたびに後ろからバラのイリュージョンが飛び交うとか、相手の姫役は後光が指してるとか、悪役は後ろから黒い霞が出てるって言った感じに、『お約束』とひたすら詰め込んで笑いを取るっていうのはどうかなぁ~なんて思ったんです。」

がやがやと、食堂に集まった生徒の間から声が上がる。
「いいじゃないか。コメディの方が、大根でも許されるし。」
ダレンの横にいたダンカン・マックダーが声を上げた。

ぽこっとその男性の頭を殴りながら、ダレンが立ち上がる。
「ま、こいつが言ったとおり、俺は大根です。コメディの方がまだましだと思うけど・・・どうせなら、魔術を使って俺は口パクで、誰かが声を飛ばすって言うのはどうです?」

おおお~っと俺のコメントのときより更に大きく声が上がる。
「どうせなら、姫役の声を男の裏声で、騎士を女の声でやるって言うのはどう?」
誰かの声が上がる。

「いや、この際、男女反対にしよう!ダレンが救出される姫で、女性の誰かがダレンを助ける騎士になるんだ!声は別の誰かが魔術で飛ばすことにしよう。その方が技術点も入るだろうし。」
フェンダイが提案した。

「「「賛成~~!」」」

どうやら、コメディで話が決まったらしい。
「よし、ウィル!いいアイディアを出したお前は、とりあえず『雪姫』の脚本をコメディに変えてみろ。アリシアがあの劇の大ファンだから、アリシアに手伝ってもらえばいい。」

フェンダイが最初に『雪姫』を提案した女性の方を指して俺に指示した。

おやま。
脚本の変更なんてどうやってやれって言うんだ?

ま、1年生なんだし。
とりあえず、アイディアだけ出せば許してくれるよな?
タイトルの番号を一桁つけ間違えていた;


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