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魔術学院1年目
004 星暦549年 赤の月 20日 挨拶
世の中、コネは大切だ。

◆◆◆


魔術師になったって裏社会との伝手が有用になる時もあるだろう。
学院に入って最初の休養日は私物をねぐらから持ってきたり、学生生活に必要なものの入手で終わったが、次の休養日は盗賊シーフギルドの長に挨拶に行くことにした。

盗賊シーフギルドの本拠地へのルートは毎日変わる。
人の間をぬっていくルートや魔術・機械的な障害が強固にそろっているルート、金で情報を買えるルートなど。長の気まぐれと担当者の好みで色々バリエーションがでる。

毎日変わるルートを見極め、どれを選ぶかは盗賊シーフの能力の証明とも言える。
肉体的にはまだ成人男性に劣るものの、俺の腕は超一流だ。
心眼サイトのお陰で何でも見通せるので、複雑なルートを分析して誰にも見られないルートも判断できるし、どんな鍵やトラップも解析して解除できる。

だからこそ、盗賊シーフギルドの内部でも俺が『幽霊ゴースト』であると知っている人間は殆どいない。
二つ名は成功の証であるが、裏社会の二つ名はそれが誰であるのか知られるのはあまりいいことではない。
だからそう言った情報はいい値段で売れる。
敵を作るから、俺は売ったことはないけどね。

今回の訪問も、誰にも見つからぬルートを進み、妨害用の鍵も魔術も発動させることなく潜りぬけた。
やっぱ俺って腕がいいよなぁ。
学生生活の間に腕がなまらないように、気をつけなくっちゃな。

俺が音もなく部屋に現われても、長は驚いた様子ではなかった。
「魔術師になるそうだな。」

やはりもう話が伝わっていたか。
ま、当然だな。裏社会の最大ギルドの長なんだ。
「ああ。魔術の才能があったら奨学金で魔術学院に通えるんだそうだ。」

にっと笑った長は書類に戻った。
「折角の腕を無駄にしないようにな。」

挨拶に来たことで俺が盗賊シーフギルドとの関係を友好的な状態に保ちたいと思っていることが分かったから、余計なことを言わぬよう脅す必要もないというとこか。

「どれだけ能力があっても盗賊シーフで長生きするのは難しいと思っていたが、どうやら選択肢が増えたようだ。あんたも長として末永く頑張ってくれ。」

「借金の申し込みならいつでも無利子で受けるぞ。」
ふん、と鼻を鳴らす。
「タダよりも高いものは無いって俺に教えたのはあんただろうが。」

これからも、ドライに仲良くやっていこうな、長。


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