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アレクの視点になります
卒業後
189 星暦552年 橙の月 11日 防犯(3)
「普通の盗賊シーフでは日常品を売りさばくのは難しいのでは、と言われました。
店の商品を根こそぎ盗って行くとなると日常品を売るルートを持つ・・・ライバル商会の可能性が高いかもしれません」
部屋に集まった両親と兄達を見回しながらゆっくりと言う。

ホルザックと父は驚いた顔をしていたが、母とセビウスは驚きを見せずに考え込んでいるだけだった。

「お前の下町出身の友人が言っていたのか?」
セビウスが尋ねる。

「彼は『盗賊シーフはそんな盗み方はしない』と言っていました。それよりも、シャルロの方にまで一般品が盗まれたと聞いた時に『嫌がらせ?』と言われたのには驚きましたよ。部外者から見たら明らかに普通の窃盗ではないようですね」

「しかし・・・商会ギルドそのものを敵に回すような事はしていないぞ」
ホルザックが心外そうに文句を言った。

「商会ギルドそのものの陰謀というよりも、我々の成功のせいで経営が立ちいかなくなった商会が実益を兼ねた嫌がらせをしているのでは?もしかしたら自分たちの経営に関して危機感を感じた他の商会も見て見ぬふりをしているかもしれませんが」

「我々に嫌がらせをしようなんて夢にも思わない位に徹底的に他のライバルを叩き潰すか、もしくはまともな経営をしている商会ならば問題が困らない程度に我々のビジネスの提携を増やしていくか、きっちりと意思決定をして舵を切る時がきたようね」
母が父とホルザックを見つめながら言い切った。
元々、母は兄と父の経営手法を中途半端だと愚痴をこぼしていた。叩き潰すか、助けるかはっきりとしないと後で困ることになると。
セビウスも同じようなことを考えていたんだろうな。
彼の場合は叩き潰す方を推していたようだが。

「出来ることならば、叩き潰すよりは共存を諮りたいところだな」
父が小さくため息をついた。
商業ギルドでの付き合いは父がほぼ全て担っている。それなりにしがらみも付き合いもあり、叩き潰すのは嫌なのだろう。

「ホルザック兄さんはどうしたいんです?叩き潰す方が簡単ですが、将来的にライバルをずっと圧倒していかなければならないのは主に兄さんの責任になりますからね」
はっきり言って、私はどちらでも構わない。
私は経営方針を決めるよりも、決められた方針をいかに効率的に実行するかに興味がある人間だ。
叩き潰すのも共存も、私にとっては知的遊戯の一種でしかない。
だが、将来シェフィート商会を継ぐ兄にとっては生き方そのものとなるから、やはり一番重視されるべきはホルザックがどの決定とならば無理なくやっていけるかだろう。

「セビウスに汚れ役を負って貰えば叩きつぶすという選択肢も可能だろうが・・・私としては利益が最大化出来なくなっても共存の道を探りたいな」
暫く考えていたが、ゆっくりとホルザックが答えた。

ま、妥当なところかな?
母が年を取った後にもしものことがセビウスに起きたら、ホルザック一人では周りを圧倒し、ライバルを叩きつぶすような経営は維持できない。
そうなったときの反動が家を潰しかねないことを考えたら、利益の最大化を求めるよりも共存を探った方が無難だろう。


「とりあえず、現状の問題だけを考えるのだったら、魔石に発信機能を持たして追跡させる魔具の試作品を使っていいと言われました。王都の各店舗に10個程度の魔石の欠片を仕込むとして、金貨20枚程度の出費が必要。短期的な話であればそれだけの出費を考えれば各店舗に護衛をつけることも可能だけど、どうします?」

「護衛をつけて短期的に盗まれるのを防止しても意味が無い。だが、全く護衛を雇わなければそれも怪しまれるだろうから、中心の5店舗には護衛をつけよう」
警備担当のセビウスが決断を下した。

ふむ。
そうか、護衛をつければ盗ませる為に魔石を仕込まなければならない店舗が減るな。
「どうせなら、10店舗に護衛をつませんか?そうしたら各店舗に仕込む魔石をもう少し大きく出来る。あとで再利用がしやすくなるし、追跡も楽になります」

「分かった。どのくらいでその発信用の魔石が出来る?」

「ウィルとシャルロも手伝ってくれると言っていたので、今晩までには。夜に持ってきますので皆で手分けして閉店直後の店に行って見回りをしているふりをして適当に商品の中に隠しましょう」

「では、俺の方では10軒分の信頼できる護衛を手配しておくとしよう。願わくは今晩中に都合よく盗人が来てくれることを期待しよう」

確かに。
何日か間を置かれたら、毎朝魔石を商品から取り出してまた夜入れ直さなければならないから、大変だ。

考えたくないな・・・。


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