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卒業後
129 星暦552年 赤の月 10日 試飲
「悪くないじゃないか、これ。」
ティーバッグの試作品を味わってみた学院長が、驚いたように感想を漏らした。

「でしょ?近いうちにシェフィート商会あたりから売り出す予定なんで、よろしく。」

うっし。
お茶バカの学院長に悪くないと言われたと言うことは、味は十分実用に値するレベルだ。
アレク達が確実に技術院の特許を取ってくると言っていたので、これでティーバッグ戦略は準備万端になりそうだ。

「お前たち、何をやっているんだ?魔具を造ることにしたんじゃなかったのか?」

商品開発ってそんなに珍しい職業かね。一応それなりに説明して回っているはずなのに、分かっていない人が多い気がする。
「魔具を造って売ると言うよりも、新しいタイプの魔具を開発してそのデザインとか術回路を生産者や販売者に売るんです。最初の注文が湯沸かし器なんだけど、これの売り上げを生み出すためにはポットを使わなくてもお茶が飲める道具が必要かな・・・ということでシェフィート商会とティーバッグのアイディアを売り込もうとしているところなんです。
ついでに美味しいティーバッグをデザインしようと色々ストレス解消に試していて出来たのがこれ。」

もう一口お茶を飲みながら学院長が静かに笑った。
「なるほどね。魔具を売る為にそれを利用する商品をまず売るか。
元盗賊と侯爵の息子と大商会の息子が集まったにしては頭が柔らかくて現実路線だな。」

「人間、育った環境ではなく閃きと思考が重要と言う証拠ですよ。」

「学院の教育の賜物とは言わないのか?」

経済学の授業すらしなかった癖に、何を言うか。
ま、冗談なんだろうけど。

「ところで聞きたいんですが、術回路を新しく開発する際のコツって何かあります?」
昨日、何とはなしに考えたことも具体的な成果につながらず、いい加減煮詰まっていた。
何か新しいアイディアをくれ~。
このジーサンならそれなりに術回路の開発に成功した人間だって知っているだろう。

「術回路がコツをつかめば簡単に出来るものだったら、世の中もっとたくさん発明者だらけになっているよ。」
つれない・・・。(涙)

「だがまあ、うまく行くのは説明できない位ラッキーな人間か、何度も理論に基づいて術回路を試作し、徐々にそれを変え、効果を確認しながら術回路を組み上げていく根気と努力の出来る人間だな。」

根気と努力ねぇ。
うぐぐぐぐ。

まあ、湯沸かし器そのもののアイディアは大体練れているんだから、発熱と熱吸収の術回路に10日ずつぐらいかけられる。
根気よく執念でやっていくか・・・。

◆◆◆

ちなみに、アレクとシャルロは特許申請を受け付けた担当にすぐさま類似特許を調べさせ(『ティーバッグの特許なんて殆どないだろう。今すぐ調べろ。』とごり押ししたらしい)、当日中に特許の申請を認可させてきた。

その足でアレクの母親に売り込みに行ったところ、『怖いぐらい喜ばれた』(by シャルロ)らしい。

・・・怖いぐらいってどういう意味なんだろう?


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