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ニート革命軍 6 さすらいの風男
ニート特攻隊
作:六角オセロ


きょん姉さんが、3次元ビデオを観ながら、
フライド・ロックロブスターを食べながら、ブルーベリー・コーラを飲んでいると、福之助が帰ってきた。
『フライド・ロックロブスター、好きだねえ!』
福之助は、左足を引きずっていた。福之助の後ろに女性がいた。あけみちゃんだった。
「福之助さん、左足が壊れちゃったみたいなんです。」
福之助が、かばうように言った。
「あけみちゃんのせいじゃないんです。わたしが悪いんです。」
あけみちゃんは心配そうだった。
「ロボット救急車を呼びましょうか?」
『だいじょうぶ、自分で修理しますから!』福之助は、そそくさと自分の部屋に入って行った。
姉さんが、あけみちゃんに微笑みながら言った。
「だいじょうぶですよ。いつものことですから。」
「なにかあったら連絡してください。わたし、ロボットの部品屋ですから。」
あけみちゃんは、名詞を差し出した。

 【 あけみロボットメンテナンス 社長 北条あけみ 】

「ロボットの専門家なんですか。それは助かります。」
「それでは、お大事に。」あけみちゃんは、頭をペコリと下げ、ドアを閉めようとした。
「あっ、ちょっと待ってください。冷たい飲み物でも飲んでいってください。」
「ありがとうございます。でも、今日は用がありますので。」
「そうですか。今日は、わざわざありがとうございます。」
「いいえ、それでは失礼します。」
あけみちゃんは、さっそうと帰って行った。
姉さんは、福之助の部屋に向かった。
部屋に入ると、福之助が何やら作業中だった。手にはスパナを持っていた。
福之助の頭から、作業中の赤ランプが出て点滅していた。
「おまえねえ、年なんだから、ちったあ考えて行動しろよ!」
『まだまだ、若いロボットには負けませんよ!』
「無理だよ。偏平足じゃあ、過度な運動は。」
『偏平足を削れば、だいじょうぶです!』
「おまえの足は、けぇずりぶしか!」
『ほおら、もう直りました!』福之助は、得意げに歩いてみせた。
『けぇずりぶしって、何ですか?』
「けずりぶし!おまえ、本気で削ろうと思ってるの!?」
『ええ!あとは、足の土踏まずの部分を削るだけです。』
「おまえ、頭けずったほうがいいよ!」
『そぉりゃあないよ、姉さ〜ん!』
「どうやって削んだよ、そんなもの!?」
『・・道具が必要ですね。』福之助は周りを見た。『ありませんね・・、買ってきます!』
福之助は、部屋を出て行こうとした。
「ちょっと待て!」そう言うと、姉さんは、自分の部屋に行き、すぐに戻ってきた。
「これ、おまえの機能説明書だ。」
『それが、何か?』
「ここを読んで見ろ!」
『偏平足タイプのロボットは、全体のバランスを偏平足用に作られています。土踏まずタイプの足は取り付けられません。取り付けると、正常に歩行できなくなります。絶対に取り付けないでください。』
「ほらな!・・分かった!」
『・・そうなんだあ。・・でも、削ってはいけないとは書いてありませんよ。』
「そんな、想定外の馬鹿はいないよ。」
『・・そうなんだあ。』
「あらあら、こんなに傷つけちゃって。」
福之助のボディは、あちこち傷だらけだった。
「おまえさあ、アルミなんだからさあ、もっと用心しろよ〜!」


その頃、ニート革命軍の最高幹部りゅうじは、高野山こうやさんにいた。
高野山は、人間の聖地になっていて、独立統治区域になっていた。
村の集会所らしきところに、彼らはいた。

「八十二人目の新しい仲間を紹介します。」
りゅうじが手招きすると、中年に近い感じの婦人が出てきた。
「神奈川出身の、眠り姫さんです!」
拍手が起こった。
「眠り姫です。みなさんと一緒に大地に引きこもりたくって、ここに来ました。楽しく愉快に引きこもりましょ〜〜〜! そして、石のように自由に大地ををロックンロ〜ルしましょ〜〜〜!」
婦人は、こぶしを突き上げた。
りゅうじが笑顔で「終わり?」と尋ねた。 婦人は「ええ。」と答えた。
「彼女に質問のあるかたは、どうぞ。」
黒いTシャツの若い男性だった。
「どうして、眠り姫なんですか?」
婦人は、即座に答えた。
「どこでも、直ぐに寝れるんです。」
いちばん前の若い女性が「いいな〜〜、それ。」と言って、うなづいた。
笑顔のりゅうじを見て、他の者たちも笑顔になっていた。
「午後からは、集会所周りの草刈りです。わたしに質問のある方は、どうぞ。どんな質問でも結構です。」
いちばん前の若い女性が質問した。
「先生!・・友人が、ときどき自殺したくなるって言ってるんですけど、そういうときにはどうしたらいいんでしょうか?」
「それは、死神ってやつですね。」
「死神ですか?」
「死神ってやつは、もがけばもがくほど、絡み付いてくるんですよ。」
「どうしたらいいんでしょうか?」
「死神はしつこい、それにとても強いんですよ。たたりみたいなものです。」
たたり!」
「そう、先祖の恨みとか、前世の後始末とか。」
「どうしたらいいんでしょうか?」
「貧乏人は、どんなに貧しくても、自殺とかはしないでしょう。どうしてだと思いますか?」
「さあ?・・生きるのに精一杯だから、そんなことを考えてる暇がないとかですか?」
「暇のある者も沢山います。」
「分かりません。」
「貧乏神がいるからですよ。死神は貧乏神が大嫌いだからです。貧乏神と死神は仲が悪いんです。」
「え〜〜、そうなんですか!?」
「死神は、しつこく生きさせる貧乏神が嫌いなんです。見ただけで逃げてしまいます。」
「そうなんですか!」
「だから、貧乏神を味方にするか、貧乏神を持ってる人を友人にすれば、死神は近づいてこないことになります。」
「貧乏神を味方にするんですか?そんなことできるんですか?」
「貧乏神は、ねたんだりひがんだりすると、やって来ます。」
「妬んだり、僻んだり・・」
「でも、なかなかやって来ません。一年中、妬んだり、僻んだりしてる人は、なかなかいませんからね。」
「そうですね。そんなことやってたら、疲れて頭が変になっちゃいますよね。」
「妬んだり、僻んだりの真似をしても、神様だから直ぐに見破ってしまう。」
「そうですね。じゃあ、疫病神とかは駄目なんですか?」
「疫病神と死神は、大の仲良しなんです。大変なことになります。」
「怖いなあ。じゃあ、福の神とかは?」
「福の神も、死神が大嫌いな神様なんです。だけど、福の神は少ないし、なかなかやって来ません。」
「どうしたら、やってくるんですか?」
「よほど、徳を積まないとやって来ません。」
「徳?」
「人や動物を助けたり、他の人や動物を幸福にしてやることです。」
「あ〜〜、それって難しいなあ。」
「そうですね。人間は皆、エゴで生きていますからね。」
「そうですねえ。」
「福の神は、なかなかやって来ないけれども、妖精だったら直ぐにやって来ます。」
「妖精ですか?」
「微笑んで挨拶しただけでもやって来ます。動物と遊んだり、花や木を撫でたりしただけでもやって来ます。」
「妖精って、弱そうなんですけど。大丈夫なんですか?」
「たくさんいると大丈夫です。死神は近づいて来ません。」
「すぐできる効果的な方法って、ないんですか?」
「死神は、優雅な音楽が嫌いだから、そういう音楽をかけて寝ると近づいて来ません。」
「優雅な音楽ですか。」
「ただし、本人が優雅であると感じなければ逆効果になります。」
「難しいですね。」
「死神は、寝る前に人の心の中に土足でやってくるんですよ。」
「寝る前にですか。」
「そう、寝てから、睡眠に入る前の間に確実にゆっくりと。死神は歩くのが遅いんです。だから、睡眠に直ぐ入れる人の心の中には入ってこれないんですよ。」
仲間に入ったばかりの眠り姫の婦人が、横から大きな声で発言した。
「じゃあ、わたしは絶対に大丈夫です。1分で夢の中ですから!」
「そういうことですね。」
みんなは、大笑いした。
「寝つきの悪い人は、森の妖精を呼んで楽しいことを考えましょう!」
「妖精って、すぐに来るんですか?」
「心を開いて優しく接すると、すぐにやって来ます。心を閉ざすと、死神がやって来ます。」
りゅうじは腕時計を見た。
「今日は、ここまで!」
りゅうじは後方の男に、手招きをした。
「わたしは、これから村の役場に用があるので行きます。後は、ニート特攻隊の隊長で、ここの主任でもある、元原宿イケメンで現在ワンタンメンの鶴さんに任せてありますので、彼の指示に従ってください。」
ワンタンメンの主任が、スニーカーブルースを歌いながら出てきた。

 ベイビー スニーカー ブルース〜 ♪ おれたちは まっだ〜〜 せいしゅ〜ん じっだい さ〜〜〜 ♪
  ペアでそろえったぁ スニーカー 〜〜 ハール ナツアキ と駆っけ抜け〜〜ぇ はなれば〜〜なれの フウユーが来る〜〜〜 ♪

前のメガネをかけた青年が、歌を止めた。
「主任! まだ夏は終わっちゃいません!」
みんなは、大笑いした。ワンタンメンの鶴さんは、「あっ、そっか!」といい、歌をやめた。
彼のニックネームのワンタンメンの由来は、ワンタンとイケメンの合成語であったが、彼自身、抄手チャオショウという、山椒と同じみかん科の落葉灌木の実の花椒(ホワジャオの利いた辛い味のスープで食べる、本格的ワンタン料理の名人であった。
「主任、こんど本格的四川料理を教えてください!」
主任は、横に一回りしてみせ、右手の親指を立てた。
「今度な!」
「なんでも、本格的四川料理は花椒で決まるともいわれているそうですけど、ほんとうですか?」
「今度な!」
「わ〜〜〜、楽しみだなあ!言ってよかったぁ!」
鶴さんは、いきなりのマイナー口調で、
「じゃあ、行きましょうか!」と言って、さっさとドアを開け、出て行った。
みんなは、「主任〜〜、待ってくださいよ〜〜!」と言いながら、追いかけて行った。
主任の行動は、誰よりも早かった。さすらいの風男かざおとも呼ばれていた。エアガン蜂撃ちの達人でもあった。
外は、マイナスイオンの爽やかな森の風が、ちょろちょろと、さすらうように吹いていた。
鶴さんの「今度な!」は、当てにならないことを、誰かは知っていた。
その誰かは、遠くにいて、窓から遠い空を眺めていた。それは、十五歳年下の妹の愛であった。

☆☆☆

「今年の夏休みには帰ってくるって言ってたくせに・・・嘘つき!」
兄は、3年前に、遊びすぎたので、心を入れ替えて、いかした坊さんになると言って、高野山に行ったっきりだった。
「ほんとうに、お坊さんの修行してるのかしら?高野山には、パチンコも競馬もキャバクラもないんだよ。今もって信じられないよ。」
愛は、漫画家志望の、兄とは正反対の真面目な女子高生だった。
「きっと、変な女と遊んでるんだろうな。・・不潔!」
なにが、不潔だか分からなかったが、口から自然に出た言葉だった。
「あんなやつ、死ねばいいんだわ!」
愛は漫画を描いていたが、いっこうにペンが進まなかった。
「こう暑いと、外に出るには怖いし、インターネットでもしようかな。」
庭では、芝生の上を、ジャックラッセルテリアのアビとバビが走り回っていた。
「この暑いのに、馬鹿か、あいつら。」
愛は自転車に乗るのが好きだった。漫画のアイデアの出ないときには、いつも自転車に乗って、いいアイデアが出るのを待っていた。脚を動かしていると、いろんな考えが出てくるのだった。
「ちょっと暑いけど、自転車で一回りするか。」

愛が川沿いの遊歩道をポタリング(自転車散歩)していると、赤い空中マウンテンバイクに乗って、空中停止している若者がいた。
「わっ、ハローの空中マウンテンだ。かっこいい〜!」
愛は、ハローの空中マウンテンバイクを見るのは初めてだった。
マウンテンバイク一流メーカーのハローやマングースを乗りこなせる人は、ここら辺りには、いなかった。
感じの良さそうな若者だった。よく見ると、赤いシャツの背中に”甲賀しのぶ”と書いてあった。彼の前方には、3人のスタッフらしい人がいて、複眼の三次元カメラで撮影をしていた。
「えっ、ひょっとして、あの有名なラッパーの”甲賀しのぶ”かしら!?」
彼は、空中マウンテンバイクに乗りながら、器用に踊っていた。
「わ〜、ひょっとして、サインなんかもらえるかしら。」
スタッフの一人が「オーケーで〜す!」と言うと、彼らは上流の方に移動を始めた。
「なんか、いいアイデアが浮かびそうだわ。ついて行こう!」
自転車を降りて、自転車を押しながら歩いていると、向こうから、作家の六角毬藻が、いつもの今にも壊れそうなアルミの自転車に乗っかってやってくるのが見えた。彼も、やはり、自転車でアイデアを考える人間だった。
彼は、みるみる近づいてきた。そして、愛の前で止まった。
「どう、いい考え浮かんだ?」いつもの、アルミのように軽い挨拶言葉だった。
「おっかしんだ、今度の小説!」話が長くなりそうなので、
「すいません。今日は急いでるもので。」と言って、頭をペコリと下げた。
彼は「あっ、そう。」と言うと、口をとがらせ、静かに自転車をこいで去って行った。中年の哀愁が漂っていた。
「つれない挨拶で、ちょっと可哀想だったかしら。まあいいや。」
愛は、赤い夕陽をバックにして、アルミの自転車で、とぼとぼと走る彼の姿が、哀愁の二十世紀的で好きだった。
「アビをつれてくればよかったわ。一緒に撮影してくれるかもしれないから。」

♪♪♪
俺たちには明日は無い♪ 何がある♪ 今日がある♪
 俺たちには明日は無い♪ 何がある♪ 今日がある♪

「やってる、やってる! わ〜〜、感激!」

夢中になって見てると、横からロボットが現れた。
『ごめんなさい。ちょっと失礼!』
そう言うと、そのロボットは、遊歩道をドタドタと偏平足の足で横切って行った。
見覚えのあるロボットだった。
「弥生西公園でアビが追いかけたロボットだ。」
ロボットは、本らしきものを遊歩道に落として、川原に向かって整備された土手を下って行った。
愛は、その本を拾った。そしてタイトルを見た。
「簡単自殺教本・・」愛は、びっくりした。「まさか!?」
自転車を止め、急いでロボットを追いかけた。
「ちょっと、待ってぇ〜〜!」
ロボットは、立ったままの姿勢で、放心したように川を見ていた。
「やめなよ、自殺なんて!」
ロボットは、振り向いた。
『自殺?』
「自殺するんでしょう!川に飛び込んで。やめなよ!」
愛は、拾った本を見せた。
『ああ、これですか。これ、さっき拾ったんです。』
「ほんと?」
『ロボットは嘘はつきません。』
「ああ、びっくりした。」
『ロボットは、自殺なんてしませんよ。』
「そうだよね。聞いたことないもの、ロボットの自殺なんて。」
『生きてるんじゃなくって、動いてるだけですから。』
「な〜るほど。」
『あ〜〜あ、つまらない世の中だなあ。』ロボットは足元を見つめていた。
「どうしたの、ロボットさん?」
『わたしの名前は福之助と言います。はじめまして。』
「わたしの名は、愛。よろしく。なにかあったの?」
『別に・・』ロボットは足元を見つめていた。
ロボットの右ひじのところが、少しへこんで傷ついていた。
「右ひじ、どうしたの?」
『どうせポンコツですから、いいんです。』
「わたしの姉が、ロボットのメンテナンス屋なの。」
愛には、十歳年上の姉がいた。
「あっ、そうだ。名刺があった。」
愛は、財布から姉の名刺を取り出して、福之助に渡した。
「相談するといいよ。」
福之助は、仕方なく名刺を見た。

 【 あけみロボットメンテナンス 社長 北条あけみ 】

『あっけみちゃんだぁ〜〜〜!』

「姉を知ってるの?」
『はい。』
「ふ〜ん、世の中って狭いわねえ。」
『いろいろと、お世話になっています。じゃあ、あなたは妹さん?』
「そういうことになりますね。」
『ふ〜ん、そうなんだ。』
「ああ、そういえば、この前そんなことを言ってたなあ。」
『どんなことを?』
「旧式の偏平足鈍足ロボットがいるって。それでしょう!」
『はい、その旧式の偏平足鈍足ロボットです。』
「ローラースケートをつけるとか言ってたけど。」
『はい。』
「でもさあ、偏平足には偏平足のいいところがあるんじゃないのかなあ。」
『そうでしょうか?』
「たとえば、、お相撲さんみたいに安定してるとか。片足でも立っていられるとか。」
『わたし、片足立ちは得意です。何時間でも立っていられます。』
「そうでしょう!それって凄いよ。」

遠くのほうから「福之助〜〜〜!」と、呼ぶ声があった。きょん姉さんだった。
『あっ、姉さんだ。行かなくっちゃあ!』
「困ったことがあったら、わたしにも相談して。」
『元気が出てきました。ありがとうございます。じゃあ、失礼します。』
福之助は、ドタドタと全速で駆けて行った。

福之助は、なぜか幸せだった。人間の心のような真っ赤な太陽が輝き、熱い風が吹いていた。




【 第六話 おわり 第七話:ショーケン に続く 】
 







☆ 六角オセロゲーム

☆ 頭脳革命・ドラゴンリバーシ





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