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追放された少年  作者: 誰か
青年期
25/150

第十九話

あー後から大幅修正する気がする。文が多分一番酷い。

2話辺りとか割と大陸についてとか編集していたり。最初に比べればですが。


レオンハルト王国は三年前異世界から勇者を召喚したと発表した。

勇者といっても特になにかやったわけではない。

それなのに勇者と呼ばれるのにはわけがある。

代々異世界から呼ばれた者は並はずれた力を持ち、国にとっての重要な戦力となるのだ。

二百年前の魔物の大侵攻を止めた勇者も異世界人だったと言われている。

遥か昔は各国が異世界から勇者を召喚し、争っていたとの記述も残っているが約千年前を境に勇者の名前は出てこなくなっている。勇者召喚の方法もその時に失われた。

しかし、二百年前レオンハルト王国が異世界からの勇者に成功した、とされている。

その後王都が壊滅し結局うやむやになって消えてしまったが。

三年前の知らせには大陸中が驚いたものだ。

レオンハルト王国が勇者の召喚を発表したのは軍事的アピールだと当時は言われていた。

勇者という戦力を持っているというアピール。

しかし召喚から三年が経った今でも勇者らしき者は一切人前に出てくる事なく、今ではあれは嘘だったというのが一般の見解だ。

勇者召喚が嘘だったとしてもレオンハルト王国が大陸内でトップの大国である事には変わらない。

それゆえに勇者の召喚に成功したなど嘘をつく理由がなかった。

この点だけが各国の首脳陣の間で議論されたが結論は出なかった。

結局三年前の勇者召喚は大国の力を誇示するための嘘だった。

と、誰しもが思っていた。レオンハルト王国の民ですらも。


「レオンハルト王国の勇者が軍隊を率いて攻めてきたんだ。」

それゆえにこの言葉を聞いた時ソフィアは信じられなかった。

今まで存在から否定されていた勇者が居た事に。

言葉を失うソフィアにレイリーは続ける。

「いきなり宣戦布告してきた勇者軍は瞬く間にシュヴァイツ領内を制圧し始めた。俺たちの親はそんな現状に危機感を覚えて、俺たちを逃がしたんだ。自分たちはここに残って最後まで戦うとか言ってね。」

レイリーはどこか冷めたような目をしながら、寝てしまったスーラーの方を見る。

その目にどんな感情が込められていたのかソフィアには分からない。

(これ以上身の上話を聞くのは良くないかな…。)

「話は大体分かったけど、友好国のレオンハルト王国がなんで攻めてきたの?それに勇者なんて信じられないわ。」

心中で考えている事とは別の事が口に出てしまう。話題を変える事には成功したが、こんな言い方では不味いだろう。

(ていうか、こんな質問した所で子供に分かるわけないじゃない。)

口に出してから己の失態を恥じる。

あまり返答には期待していなかったが、予想に反しレイリーは答え始める。

「レオンハルト王国が攻めてきた理由までは分からないけど、勇者がいる事は間違いないって父さんが言ってたよ。」

「間違いないってどういう事?」

「勇者軍と戦った兵士が勇者を名乗る強くて三属性以上の魔法を使う奴を見たって言ってたらしいよ、基本的に一属性しか扱えないはずの魔法を使うなんて無理でしょ?勇者以外は。」

伝え聞きの話が多いらしい。

正直そんな事を知っているレイリーたちの親が気になるが、身の上話には突っ込まない。

「それだけで断定するのは早いと思うけど?只の兵士の見間違いで強いってだけかも。」

「でも事実として攻め込まれてる。そいつを主力にね。実際勇者かどうかなんて関係ないんだ。国がいきなり攻められて落とされそうになってる。それが現実だよ。」

「そうね…。」

まただ、またレイリーは冷たい目でどこか思いを馳せるように遠くを見つめている。

年齢には似合わない表情。

(この子たちは何者なんだろう?やたら国の状況にも詳しいし。)

気にはなるが触れることはしない。

(これ以上聞く事は無いかな。)

引き上げようとザイウスの方を見るといびきはかいていないものの、涎を垂らしながらアホ面を晒して寝ている。いびきをかくのは時間の問題だろう。

(はぁー、この馬鹿は…)

右手で頭を抱えあからさまに呆れる。

「じゃあ、とりあえず今日の所は帰らせてもらうわ。」

体制を整え手を振って別れを告げる。

寝ているザイウスの頭に拳骨を落とし部屋を後にした。


「どうしてこうなった…。」

呟くソフィアの手元にはすっかり軽くなった袋のような財布。

ほんの少し前まではずっしりと重みがあったはずの財布。

「こんな貧乏なわけないのにーー!!。」

思わず人目を憚らず叫んでしまう。普段は冷静なはずのソフィアが怒っていた。

教会から出て宿屋へと向かう途中。

村人は一斉にこちらを見るがよそ者だと分かるとすぐに視線を外す。

「あー、うっせーなピーピー喚くなや。」

こんな状況を作り出した元凶が話しかけてきた。

この瞬間一人の怒りは横を歩く馬鹿に向けられる。

「大体あんたが居なければあんなに払う必要はなかったのよ!?。」

教会を出る直前、神父に呼び止められ多額の寄付金を請求された。

それ自体は前もって言われていた事なのでよいのだが、問題は金額。

請求額85000コル。

普通の村人であれば1ヶ月分に相当する。Bランクのパーティーであるソフィアたちにとっても大金。

最初はぼられているのだろうと突っぱねたが、神父はしっかりと明細まで持ってきた。

どれもが正当な金額で不審な点も見当たらない。そして神父は一言付け加える。

「そちらの赤い髪の方が食べた分が半分程ですがね。」

この言葉で諦め全額支払ったのだった。


「食っちまったもんはしょーがねーだろ?」

悪びれた様子のないザイウス。

この態度がより一層怒りを加速させる。

「あんたはホントいっつもそうね!!他人の金使いには厳しいくせに!!メルト村の時も…」

長々と昔の事を列挙していくソフィア。他人から見れば只の夫婦喧嘩にしか見えない。

(そろそろ止めるべきか?村人の注目も集まってきたようだしな。)

いつの間にか周囲は大声で言いあっている男女の方を見つめていた。

(というか、あの二人もそろそろ気づくべきだろうに。)

収まる気のしない口喧嘩。視線に気づいた様子の無いメンバーを見て内心呆れる。

形勢を見るにソフィアの方が優勢か。ここからは一方的な展開だろう。

メンバーになってから何回も見てきた光景。

メギドはこんな状況に慣れてしまった自分にうんざりしながらも、止めに入る。

「二人ともそろそろ宿屋に向かわないと、こんなペースでは日が暮れてしまうぞ。」

「「あれ?メギドいたの(かよ)?」」

見事にハモリながら言葉が返ってくる。

これがこのパーティーの日常。


「今日はどうするんじゃ?」

狭い部屋の中に少年の声が響く。

部屋の中に人影は二つ。両方ともベッドの上に寝そべっている。

「うーん、今日は体が痛いから動きたくないんだよなぁ…。」

黒い髪をした青年は気怠るそうに答える。

そんな青年にジトッとした視線を送る少年。

「年よりくさいのぅ。若者がそんな事ではいかんぞ。」

「ドラにその言葉をそっくりそのまま返すよ。それこそ、少年の姿でそんな口調してるドラには言われたくないね。」

顔も向けようとしない青年。

「むぅ、そう言われると反論できんな。」

感心したようにうなずくドラ。その仕草は外見通りの年齢に見える。

「クロノよ、じゃあ今日もこの村に滞在か?」

ベッドから起きあがり背筋をピンと伸ばし座るドラ。

「まあそういう事になるかな。」

クロノは依然寝そべったままだ。

会話が途切れる。陽の光以外照らす物のない暗い室内を静寂が支配する。

「あ」

そんな状況がいくらか続いた時クロノが不意に声を上げた。

「なんじゃいきなり?」

ドラはその言葉に驚いたのかベッドに倒れる。

「そういえば昨日の人から話聞いてない…。」

クロノの脳裏に浮かぶのは朝の出来事。食事をしたかったから話も聞かずに子供たちの元へと向かわせた青い長髪の女性。

「ああ、朝の人間の事か。そんな気にする必要もないと思うがの。」

ドラも思いだしたようで、話に加わる。

「一応子供たちの事情とかも聞いておかないとね。倒れてた場所が場所だし。」

聞くとキラースコーピオンに襲われて倒れていたらしい少年たち。

「昔の自分と重なるか?」

からかうように聞いてくるドラ。本当にこの姿だけ見ると年相応の少年にしか見えない。

「重ねていないといえば嘘になるかもね。でも、それだけじゃないよ。あそこは国境に近い、シュヴァイツ帝国から逃げてきた可能性もある。良国で知られているあの国から逃げてきたとすれば、何かあったって事だ。その情報をクライス王に伝えて報酬を得るのも悪くない選択肢だろう?」

クロノは普段通りの口調で自分の考えをドラに伝える。

確かにクロノはそこまで考えてはいた。頭のほんの片隅でだが。

しかしドラはそんなクロノの言葉をバッサリと斬り捨てる。

「嘘じゃな。お主は自分の気持ちに合理的な理由を付けただけじゃ。本心ではそんな事考えておらん。」

やれやれといった調子のドラ。

「儂に嘘をつく必要は無いじゃろうに、お主はまだまだ子供じゃの。」

その言葉は子供を諭す老人のようで、知らない人から見れば違和感を感じるだろう。

「ドラには勝てる気がしないね、はぁ…。」

大きく息を吐き諦めたように呟くクロノ。

「そりゃあそうじゃろ、儂が何年生きてると思ってるんじゃ?」

「さてね、想像もつかないよ。」

「教えとらんからの。」

カラカラと笑う得意げなドラ。

「ドラに嘘をつくなんて無駄だったね。昔の自分と重ねるっていうのが本当の理由さ。」

「それでいいんじゃよ、たまには人間素直にならんとな。」

相変わらず楽しそうに笑う。五年間見てきた変わらない相棒の姿を見て、すっかり落ち着いたクロノは次へと思考を切り替える。

「さて、そうすると話を聞きに行かなきゃね。同じ宿に泊まってるみたいだし食堂にいけば会えるかな?」

「そうそうその意気じゃよ。若者がこんな狭い部屋に籠もっていてはいかんしな。」

「ドラはどうする?何なら先に王都に戻っててもいいけど?」

「そうじゃのう…。王都に戻ってもやることなどないし、主に付いていくかの。」

「じゃあ、食堂でも行こうか。」

話を一通りまとめ終えドラへと手を差し伸べる。

「んじゃいくかの。」

そういって手を握ったドラとクロノは狭い部屋を出ていった――


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