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その後
「松本せんぱ〜い。彼女さん、来てますよ〜。」
 体育館の入口で鞄を持って立っている美羽を見ながら、後輩の一人が俺に声をかけた。もうすぐ部活も終わる時間だ。
「健太君、お疲れ様〜。」
 顧問の話が終わって皆が散らばると、美羽は待ち構えていたかのようにタオルを持って俺の元に駆け寄ってきた。柔和な笑顔、優しげな声。やっぱり俺の美羽が一番かわいい。
 
 着替えが済んで仲間と別れてから、俺と美羽は手を繋いで視聴覚室に移動した。
 椅子に並んで腰掛け、買って来たジュースの蓋を開けた。ジュースを飲みながら他愛も無い話をしてしばらく時間を潰してから、頃合を見計らったように美羽は俺の足元に屈んだ。

「疲れたでしょ、健太君。美羽が今、マッサージしてあげるからね?」
 ちょっと照れたように微笑みながら美羽は俺を見上げた。そして俺の制服のズボンのチャックを下げる。美羽の手が下着の上から俺のムスコの様子を探った。俺の意思とはうらはらに、ムスコのほうは自動的にもうすっかりその気。
「あれ・・・・・、何かここだけパンパンにこっててとっても辛そう・・・・・。」
 台本通りの美羽のセリフに思わず俺は苦笑する。美羽がマッサージする場所はいつもここと決まっている。

「今、ラクにしてあげるからね・・・・・?」
 よしよしと言わんばかりに美羽は俺のムスコ、通称巨大ミミズを右手でしっかりと掴んだ。ほんの一ヶ月前はこれを見ただけで悲鳴を上げていたのに、今じゃにこにこと笑顔で見つめている。人間って成長するもんだな・・・。

 しばらく手で刺激したあと、柔らかい頭に美羽の長い舌が伸びてきた。そしてガップリと喉の奥まで飲み込んだ。あまりの気持ち良さに俺は我を見失わないよう、校庭をランニングする五人の柔道部員のごつい肉体を二階の窓から眺めて気を紛らわした。息で曇った声で美羽に訴えかける。

「美羽・・・・・上手だよ・・・・・・・・・・。」
 美羽は学業と同様にこっちのほうも飲み込みが早かった。俺の指導のもと、短期間ですぐに要領を得て抜群のテクニックを取得してしまった。ちなみに、俺が美羽に教えられることと言ったらこんなことぐらいしかない。
 横向きに構えた美羽のスカートの中に手を入れて、紐のような布をかき分け指を忍ばせた。そこは既に十分潤っていてぬるりと生温かい感触。

「美羽。もうこんなだし・・・・・・。」
 俺がにやけながら言うと、美羽は俺のムスコの世話で忙しいらしく唸ることしかできない。

 そのとき、視聴覚室の扉が重そうに開く音がした。うそっ・・・・・・・・・・。
 今日のこの時間は俺たちのバンドHYENAハイエナ)が練習に視聴覚室を使う日だった。中止になったから空いていると思ってここにしたのに・・・。

「あれ〜どこだっけぇ・・・・・・・・・・。」
 そいつは何やら探しものをしている様子。俺たちの存在に全く気付かないように、ワイルドな長髪をばさばさ左右に揺らしながら足元に目を走らせている。
 一目で分かった。あの頭はメタラーリオだ。ハナっから誰もいないと思っているらしい。普通に見れば俺の上半身くらいは見えるはずなんだけど・・・視野、狭すぎ。美羽は俺の脚にしがみ付き、縮こまって脅えたように俺を見上げる。

 俺たちのいる位置は座席の最前列の一番窓際。視聴覚室は机と椅子が一体になって繋がってるから、椅子に座っていると胸から上しか姿は見えない。足元を見ても膝下がちょこっと見えるくらいだ。だから俺の腹から下の位置に身を潜めている美羽は、リオからは見えないハズ。

「おっかしいな〜・・・・・。」
 リオは四つん這いになってケツを突き上げ、今度は机の下を探し始めた。いつもならギャラリーが喜ぶ光景なんだが、今日は俺しかしないから残念。しばらく姿が見えなくなると、
「あ、あったっ。」
 イェ〜と言いながら掌サイズの入れ物を上に翳して一人で喜んでいる。ああ、あのピック入れね。バーバパパのピンクの缶の。美羽はこの間、俺の膝の上に頭を横に押し付けてじっと息を殺していた。

「・・・あれ〜?松本じゃん。」
 別に気付かなくてもいいのに今更見つかってしまった。
「おっ、おぉ・・・。」
 俺は座ったまま首だけを向けリオを見た。
「何してんの〜?そんなとこで一人でー。」
「あっ・・・・えっと、今日これからHYENAのミーティング。」
「へえ。・・・あ、ねえ、昨日のMTV見た?ブレッド・フォー・マイ・ヴァレンタインの新しいPV。」
「え、あ?み、見てない・・・・・。」
「なーんだ、せっかくやったのにぃ。マジかっこ良かったよっ。」

 と言って、リオは手を伸ばして掃除道具入れからほうきを一本取り出した。それをギター代わりに構えて足を開き、踏ん張るようにして俺のほうを向いた。
「マシューね、あたし。」
 自分を指差して言う。どうやらなりきるらしい。リオは腕を大きく振り上げると、頭を前後に揺らし・・・ようするにヘドバンをしながらほうきギターを激しくピッキングし始めた。口では「ゴゴゴゴゴゴゴゴ」とリフを奏でる。そして思い出したように突然ヴォーカルに切り替わってスクリーム。「うぉぉぉぉぉぉぉぉ〜っ・・・・!」。

 分かった・・・・・。お前の熱い思いはよぉく分かった。だから頼む。もう、この場からとっとと消えてくれ。俺と美羽も今、熱いところなんだ。
 そんな俺たちの思いが今のリオに伝わるわけが無い。すっかりメタルの世界だ。何とかしなくちゃ・・・。

「あっ、今の赤い車、お前の彼氏じゃねぇ?」
 俺は窓の外を指差してわざと素っ頓狂な声を出した。するとリオのヘドバンがピタリと止まった。髪の毛が乱れてこっちまで使い古しの(ほうき)みたいになってる。

「・・・・・え?マジ・・・・・?」
 そう言いながらリオは吸い寄せられるように窓に張り付いた。俺は続けてはったりをかます。
「今、校門の前、通過したぞ。壁に寄せて停まってんじゃね?」
「・・・・・え・・・・・、マジ・・・?マジ・・・?リアル?」
 リオはすっかり興奮状態だ。いいぞ、そのまま突っ走れ。
「じゃあ、あたしちょっと見てくるからっ。」
 妙に慌てて言い捨てると、リオはほうきギターを掴んだまま視聴覚室を飛び出した。そんで、肝心のバーバパパのピック入れのほうは机の上に置きっぱなしだ。

「置いてっちゃったよ。あいつ・・・・・、何しに来たんだ・・・・・?」
 俺が苦笑しながら言うと、
ほうきを取りに来たんじゃない?」
 と美羽が俺を見上げて笑いながら言った。俺も笑った。
「・・・にしても普通、携帯で連絡取ってから行くだろ。」
 バカだな、リオも。恋する乙女は脳が機敏に作動しないらしい。
 そして俺たちはまた二人だけの世界に浸った。

 全てが済むと、美羽はハンカチを出して俺の額に浮いた汗をキレイに拭いてくれた。勿論他のところも。

「リオはねー、今Tバックの修行中なんだって。」
 自分のブラウスのボタンをとめながら美羽が言った。
「あ?」
「何かねー、Tバックを穿いてきたら合鍵あげるって彼氏に言われてるんだってさ。」
「・・・へえ。」

 くだらねえ・・・。しかもそんな単純な策略に素直に踊らされてるリオもアホだな。にしてもリオの彼氏、「学校でのリオの写メ送って」とか俺に言うし。カンベンしてくれよ。
「ところで修行って・・・?」
「だから・・・、Tバックを穿く修行だよ。リオはTバックがお尻にくい込むのが気持ち悪くてイヤなんだって。本当は穿きたくないんだって。」
「へえ・・・・・。」
 
 納得。それでアイツ授業中、何かもそもそケツ動かしたり突然立ち上がったりしてたんだ。修行中だったワケな、マジウケる。俺は思い出して一人ほくそ笑んだ。でもアイツの場合、Tバック穿く前に四つん這いにならない訓練しないとヤバいんじゃね?まず、それ直してからTバックだろ。まあ、本人が気にしてないんなら別にイイけど。

「ねえ、健太君。」
「・・・うん?」
「明日は美羽、バスケ部の部室でしたいな。」
「・・・あ・・・えっと・・・。」
「・・・・・ダメなのぉぉ・・・・・?」
 と言って美羽は甘えるように困惑する目で俺を見上げた。俺は言葉に詰まった。

 てか、ここんとこ毎日なんですけどっ。これってヤバくね?マジあり得なくね?毎日って俺ら新婚さんかよっ・・・・・。
 勿論、んなこと美羽に言えねえし・・・。

「・・・・いいよ・・・・・。」
 俺は笑顔で返した。すると美羽は白い花が咲いたように艶やかに微笑んだ。そんなかわいい顔でお願いされて断れる訳がない。そして美羽は目を閉じて俺に唇を突き出してきた。チュー・・・・・。

「どうしたの?健太君・・・・・。」
「ん?・・・いや?別に・・・。」
 俺は一人もの想いにふけった。一体、一ヶ月前の美羽はどこに行ってしまったのだろう。180度人間違うじゃないか。
 でも、それでもいい。女は「昼は淑女で夜は娼婦」が理想っていうじゃないか。今、昼だけど・・・まあ、いい。とにかく、実は君が変態・・・じゃなくてエッチだったと分かっても、俺の気持ちは変わりません。美羽、お前となら、エロスの世界だろうが地獄の果てだろうがどこまでも一緒に堕ちてやろう・・・。

 ガチャンという音を聞き、俺たちは視聴覚室の出入り口を見た。ドアが開き、ほうきを持ったリオが疲れた顔をして戻ってきた。俺は椅子から立ち上がって声をかけた。
「お帰り。会えた?」
「いなかったよぉ・・・。」
 と答えながら顔を上げたリオは、美羽の存在に気付くと意外そうな顔をしながら少し笑顔になった。

「リオ、一緒に帰らねえ?」
「・・・・・ミーティングはー?」
「もう、終わったよ。」
 俺は机に置きっぱなしになっていたバーバパパのピック入れを渡してやった。リオは「サンキュ」と言って受け取り、持っていた箒を掃除用具入れに仕舞った。走って行ったにも関わらず、彼氏に会えなくてしょげた顔。ごめん、リオ。ぬか喜びさせちゃったな。

「かわいそうなことしたから、帰りマックに寄ってシェイクでもおごってやろうか。」
 美羽の耳元で囁くと、「そうだね」と笑いながら美羽はリオに駆け寄り、腕を組んだ。



はい、というわけで、最後まで読んでいただきありがとうございました。

初体験、もう済んでる方もまだの方も、何か参考になりましたでしょうか。

感想とかいただけるととっても嬉しいんですけど。

本編のほうも読んでいただけるともっと嬉しいんですけど。ちょっと長いので根気が要りますが。

いつかこれが削除されていたらノクターンに移動したと思ってください。

本編のほうもです。

Bullet For My Valentine [Waking The Demon]⇒

http://www.youtube.com/watch?v=A14JkvnguJA&feature=related
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