春のまどろみの中、突然君は現れた
あたたかな日差しに誘われ、僕は公園のベンチでまどろんでいた。
君はあの日と同じ様に、やさしく微笑んで僕を見ていた。
桜の花が舞い散る中、君の白いワンピースの裾が風になびいた。
再び君に会えた喜びが、僕の全身を駆け巡る。
変わらぬ君に見惚れながら、僕の口から言葉がもれる。
「迎えに来てくれたのかい?」
小さくうなずいた君の、あの日のままの笑顔がまぶしい。
「僕はすっかり老いぼれてしまった」
そう呟いて立ち上がる僕に、君は白い手を差し出した。
君の手と僕の手が重なったとき、二人の世界も重なった。
春風に乗り舞い落ちる桜の花びらと、君の髪のほのかな香り。
春のまどろみの中、僕は旅立つ。
君の世界へ。
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