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今回は剣サイドの話がメインです。
そして今回はちょっとだけ長いです。
電王が好きな方、申し訳ありません。

過去の希望、未来の遺産
作:辰巳 結愛



その4:希望?絶望?


 人は、この仕組みから抜け出せるか。
 人で無い者は、どこから来るのか。
 人の行き着く先は、滅びか。それとも…

 キンタロスとリュウタロスが、橘朔也と会う少し前。ハナとウラタロスは凄まじい速さで走る男と、それをバイクで追いかける青年を見かけた。
「…バイクと同じ速さで走る人間なんて、いないよねえ。」
「怪しいわね…追いかけなきゃ。」
「ホント、真面目だねぇ、ハナさんは。」
 呆れたように呟きつつ、彼らの向かった方向にウラタロスは歩き出した。
「ちょっと!走るぐらいしたらどうなの!?」
「いくら僕がイマジンとは言え、バイクと併走できる自信は無いよ、キンちゃんならともかく。それに、一本道だから真っ直ぐ行けばいつかは見つかる訳だし。何より、汗かきたくないんだよね〜。」
 ハナの抗議の声に、しゃあしゃあと言い放つ。
「何かあってからじゃ遅いのよ!」
 何を言っても無駄と悟ったのか、それとも他に考えがあるのか。はいはいと呟いて、彼らの後を追い始めた。
 やがて人気の無い、廃港のような場所に着くと、そこには既に、真剣な顔をして話し込む2人がいた。
 いや…真剣な顔をしているのはバイクに乗っていた青年の方だけで、走っていた男の方は明らかに彼を小馬鹿にした態度であった。
「何か深刻な話みたいね。ここからじゃ良く聞こえないけど…」
 彼らに見つからぬよう、少し離れたコンテナの影から様子を窺う2人にとって、この距離は声を聞くにはあまり適していない。
「まあ、友達同士の会話って訳じゃあ、無いだろうね。」
 眼鏡の奥で、彼の青い瞳が2人の顔を見据えていた…。



「もう戦うのは止めないか?」
 バイクの青年…上城睦月は、ここまで自分が追ってきた男に声をかけた。
 廃港なのか、うまい具合に人気は無い。ひょっとすると男に誘い込まれたのかもしれないが、彼に話したい事があった身としては、むしろこの場所は好都合だった。
「俺は最近、封印したアンデッド達の声が聞こえて来るんです。戦いをやめろ…アンデッドもジョーカーも封印される事がなければもう何も起こらないって。」
 睦月が、誰もいない海を見つめながらそう言った。
 アンデッドは、その名の通り不死の存在。死なない代わりに、トランプに似たカードに封印されるだけである。
 彼には本当に聞こえているのかもしれない。かつて彼自身が封印した(しま)のぼると呼ばれていた男と、彼自身を取り戻すきっかけを作った(じょう)ひかると名乗った女の声が。そして、他の封印されし者たちの声も。
「戦いを止めて…それでどうする?仲間のクワガタムシ達と、森に暮らせって言うのかい?」
 小馬鹿にしたように、眼鏡の男が言う。
彼はダイヤのスートのカテゴリーキング。人の姿をしているが、ギラファアンデッドと呼ばれるれっきとしたアンデッドである。普段は金居と名乗っているようだが、その名はあまり使ってはいないようだった。
そして…ジョーカー以外に残った最後のアンデッドでもある。
 バトルファイトのルール通りならば、彼が最後の1体として残れば、この世界は彼の眷属…ノコギリクワガタの支配する世界となる。しかしジョーカー…相川始が残れば、この世界はリセットされ、全ての生物が存在しなくなる。
 どちらが勝っても、人間の世界は終わる。
 だが、決着がつかなければ、何も起こらない。人々は何も知らずに、今まで通りに生活していける。
 …何より…睦月は信じている。人間とアンデッドは分かり合うことができると。闘争本能のみに忠実なジョーカーであるはずの始すら、人の中で暮らしていこうとしているのだから。
「人間と共存すれば…」
「俺は、俺達の世界を作る。人間など1人もいない素晴しい世界だ。」
 皆まで言わせず、金居は自分の理想の世界を告げる。
 …金居にとって見れば、人間など自分の種にとって害悪でしかない。
同種間でも考えの違いで争いあう愚かな生物…金居は、人間の事をそう捕らえていたのかもしれない。
 それは本来なら地上の覇権を賭けて、自然発生的に行われるはずのバトルファイトが、今回に限っては、故意に引き起こされたものだと知っていたからだろう。
「…クッ…共存だと?」
 馬鹿馬鹿しいと言わんばかりに睦月の言葉を一蹴し、金居はその場を立ち去ろうとする。
だが。突如として現れた怪物に行く手を阻まれ、金居の足が止まった。
腰にあるベルトのような物がある事から、そいつがアンデッドだと分かる。
 両肩に顔のようなものが付いていて、あたかも三つ首のように見える。更に左肩の顔の後ろからはなにやらホースのようなものも生えているが、それが何を意味するのかは分からない。
「こいつは…!」
 見た事があるのだろうか、金居は舌打ちせんばかりに怪物を見てそう吐き捨てた。
 その言葉を理解しているのかどうかは定かではないが、怪物は金居に掌をかざすと、そこからビームのようなものを発射する。
が、睦月が金居を庇いその攻撃は難なくかわされた。
「お前が最後のアンデッドじゃなかったのか!?」
「人造アンデッドだ。」
「そんな…馬鹿な…」
「こいつも説得してみるか?」
 信じられないと言わんばかりの睦月に対し、皮肉気に金居はそう言い、怪物…ケルベロスとの距離を置くべくゆっくりと後退る。だが、それを許すケルベロスではない。
 金居に向かい再び掌をかざして攻撃を仕掛ける。が、その攻撃が当たるより先に、睦月が再び金居を庇う様に前に出る。
「変身!」
『OPEN UP』
 睦月が腰のベルトをスライドさせると同時に電子音が響き、蜘蛛の模様をしたエネルギーの壁が展開。それにケルベロスの攻撃は弾かれ、ケルベロス自身に跳ね返った。その一方で、エネルギーの壁は睦月の体を包み、彼を緑色の仮面ライダー…レンゲルへと強化した。その姿は、トランプのクローバーと、蜘蛛の両方を連想させる。
 レンゲルを敵と認識したのか、それを見るや否やケルベロスは攻撃の標的を金居からレンゲルへと変更。レンゲルの杖の攻撃を最小限の動きでかわし、絶妙のタイミングでレンゲルに対して攻撃を仕掛け、当てる。
 金居はその…と言うよりケルベロスの様子をじっと見詰めていた。まるで何かを観察し、理解せんとばかりに。
 …複数のアンデッドの細胞を合成している…。
「逃げた方が良さそうだぜ、坊や。」
 ケルベロスをそう認識し、睦月に言って金居はその場から離れようとする。が、奮闘するレンゲルを見てもう少し観察しても平気と判断したのか、少し離れた場所に身を潜めてレンゲルとケルベロスの戦いを見つめるに留まった。
「俺には新しいフォームは無い。けど…強い仲間がいる!」
 金居が見つめる一方で、レンゲルはそう言うと一枚のカードを宙に投げた。同時に自分の持つロッドに、何かのカードを読み込ませる。
 …投げられたカードはクラブのJ。描かれた動物は象。
 読み込んだカードはクラブの10。描かれた動物は獏。そしてその能力は…
『REMOTE』
 リモート。封印したアンデッドを解放、自分の意のままに操る事のできる特殊なカード。
 その力によって、今まで封印されていた象の始祖…エレファントアンデッドが封印から解放された。
「一緒に戦ってくれ。」
 レンゲルの言葉に、エレファントアンデッドが力強く肯いた。
 ケルベロスに、2人同時に攻撃を仕掛ける。が、ケルベロスはその攻撃をかわしつつ、確実な攻撃でレンゲルとエレファントアンデッドにダメージを与える。
 …ダメージが溜まったのだろう。エレファントアンデッドの体が、実体を保てなくなり、再びカードの中へと封印されてしまった。
 …本来なら、リモートで解放されたカードはもう一度封印されれば解放した者…レンゲルの手元へ戻るはずだった。だが…カードは、ケルベロスが肩から生えるホースのようなものが「吸い込んで」しまった。
「あいつ…アンデッドを取り込んでしまえるのか…!」
 その様子を影で見ていた金居が驚いたように…だが、どこか楽しそうに呟く。
 ケルベロスは動きの止まったレンゲルの首を締め上げると、再び肩のホースでレンゲルからカードを吸い取る。今度は、彼の持つカード全てを。
 それは即ち…「レンゲル」としての力を与えていたカードすらも失う事。つまり、「レンゲル」では無く、「上城睦月」に戻ると言う事。
 それを見届けたケルベロスは、睦月を放り投げ、壁に叩き付けた。生身でその衝撃を受けたせいか、睦月はただ、苦しそうに呻くだけ。
 ゆっくりと自分に近付いてくるケルベロスにさえ気付いていないようだ。だが。
「睦月!」
 ケルベロスが睦月の元に着くより先に、橘の声が響いた。そのすぐ後ろには剣崎もいる。
 一瞬ケルベロスの動きが止まったのは、単純に大きな声に反応しただけなのか、それとも2人を新たな獲物と認識したためなのか。とにかく、ケルベロスは橘と剣崎を一瞥した。
 一方で、剣崎は睦月を襲っていたアンデッドを見る。
 始が戦っていた時、アンデッドサーチャーはジョーカーともう一体、正体不明のアンデッドの存在を示していた。
 剣崎はかつて、最後のアンデッド…ギラファアンデッドに出会った事がある。しかし、今近付いている敵はそれとは全く違う。本当に…「正体不明」のアンデッド。
「やはりあいつはカテゴリーキングじゃありません!」
「何だと…!?じゃあ一体…行くぞ!」
「はい!」
 変身していない今の睦月は、ただの17歳の少年である。それがケルベロスに襲われればひとたまりも無いだろう。
 それを阻止するため、睦月のいる場所に向かうべく2人が駆け出す。
 やってきた車から降りた男が、彼らに声をかけたのはその時だった。
「無駄な事はやめた方が良い。」
「天王寺理事長…なぜ貴方が!」
 男…天王寺の登場が意外だったのか、その場で足を止め不思議そうに橘が問う。
 天王寺は薄ら笑いを浮かべながら、彼らに衝撃的な事実を言い放った。
「全ては計画通りだよ。トライアルシリーズも、ティターンも、ケルベロスを生み出すための実験に過ぎなかったのだ。」
「何…?」
「貴方があのアンデッドを作った…!?」
 人とアンデッドのデータを融合させた存在、トライアルシリーズも。
 2体のアンデッドを強制的に融合させた人工アンデッドのティターンも。
 全てはこの男の実験だった。
 しかも今また、目の前にいるカテゴリー不明のアンデッド…ケルベロスを使って何かをしようとしている。
 そこまで考えが及んだ時、睦月とケルベロスの事を再認識した。
 案の定そこには、ゆっくりとした足取りで睦月に向かうケルベロスの姿があった。…彼に止めを刺すべく。
「奴を止めろ!やめさせろ!」
「ケルベロスは、誰にも止められない。」
 天王寺の言葉を理解しているのかいないのか。ケルベロスは未だに呻く睦月の首を締め上げ、近くの壁に幾度と無く叩きつける。
 抵抗もできず、ただ叩きつけられるままの睦月を見て、橘と剣崎の2人が同時に睦月の…ケルベロスの方へと駆け出す。
『TURN UP』
 ベルトのバックルを回転させると同時に、電子音が響く。
それぞれの持つカードの力によって橘は赤い仮面ライダー…ギャレンに、剣崎は青い仮面ライダー…ブレイドへとそれぞれ変身した。



 変身した男達の攻撃を軽々とかわす怪物…彼らはケルベロスと呼んでいた…の様子を、ウラタロスは何も言わずに見つめていた。
「助けなくていいの?」
「それじゃ、この時間に干渉する事になるんじゃないかな?」
 ハナの言葉に、爪をいじりながら返すウラタロス。
 確かに、この時間の戦士達は苦戦している。しかしこの戦いは過去に「あった」事なのだ。
 下手に手を出して時間に干渉するような事は避けたい。
「…!強い!」
 そう呟いた赤い戦士が持っていた銃に読み込ませるべく取り出したカードは、彼が読み込むよりも先にケルベロスに吸い込まれた。
 先程見た杖使いの緑の戦士が、そうされた様に。
「橘さんのカードが!」
 その様子を見て、青い戦士が驚きの声を上げた。
「そっか、あの人達は初めて見るんだもんね。」
 見慣れた側としては今更だが、青と赤の戦士にとっては初めての経験。驚くのも無理はない。
 その隙を突くかのように、ケルベロスは赤い戦士を集中的に攻撃する。
 赤い戦士を助けようと、青い戦士は攻撃するが、ケルベロスは鬱陶しそうにその攻撃を払う。その衝撃で持っていた剣が遠くへと弾かれ、彼の援護となる事はできなかった。
 ケルベロスからのダメージが溜まりすぎたのか、赤い戦士…橘と呼ばれていた男の変身が解けた。その場に膝をつき、肩で息をしているところを見ると、見た目以上に疲労しているらしい。
 それを見て、心底愉快そうに笑う黒服の男…天王寺と呼ばれていたか。
「やはり貴様が…始のカードも!」
 カードが吸い取られたのを見て、青い戦士は怒ったようにそう言うと、1枚のカードを腕に付けている装置に読み込ませ、もう1枚のカードもセットしようと…した時だった。戦士の後ろで苦しそうに呻いていた橘が声をかけたのは。
「待て剣崎!」
 その声には、本気の静止が含まれているのを、ウラタロスもハナも感じていた。
 かつて、侑斗がカードを使う事を憂いていたデネブのような。
「今お前はジョーカーの影響を受けている。ここでキングフォームになれば、また…あの時のように…!」
 …あの時…?
 彼の言う「あの時」が何なのかはわからない。いや、「ジョーカー」や「キングフォーム」など、(ほとん)どの事が理解不能だ。だが、嫌な予感めいたものがあった。
 だが止める事はできない。時間に干渉する事ができない以上、彼らは見ているしかないのだ。
 ……それが、ハナにはもどかしかった。
『EVOLUTION KING』
 電子音が響くと同時に、青の戦士の姿が変化…いや、進化する。全身に様々な動物のレリーフが浮き上がり、青い戦士から金色の戦士へと。
 同時に弾かれたものよりも一回りほど大きな剣も彼の手に握られていた。
「始の…睦月のカードを返してもらう!」
「剣崎!」
 橘の声には、やめろと言う響きが含まれていた。
 その姿には、ゼロノスのような何か制限じみたものがあるのかもしれない。
「君達では…ケルベロスに勝つ事はできない。全てのアンデッドのデータを融合させた、究極のアンデッドだ!その力はジョーカーさえも(しの)ぐ。」
 まるで自分の子供を自慢するかのように、天王寺と呼ばれていた男は宣告する。
「何なのよあの男…!」
「しー。あんまり大声上げると見つかっちゃうよ、ハナさん。」
 怒り心頭のハナの口元を押さえながら、困ったようにウラタロスは言った。
 別に見つかっても構わないが、ケルベロスに襲われるのは厄介だ。
「すぐに封印してやる。ジョーカーもな!」
「そんな事は…させない!」
 宣言するかのように金色の戦士が言う。
 その足元には、先程ケルベロスによって弾き飛ばされた彼の剣があった。
 それを素早く拾い上げると、二刀流の要領でケルベロスに斬りかかる。
「始を…睦月を…橘さんを!これ以上、誰も傷付けさせはしない!」
 宣言すると同時に、拾った方の剣をケルベロスに投げつける。
 突然の出来事に対処し切れなかったのか、それともダメージが溜まっていたのか。ケルベロスはかわす事ができずにその剣を胸に受ける。
 それを見計らうと、戦士は5枚のカードを腰についているリーダーに読み込ませる。
『SPADE 10、J、Q、K、A』
 読み込まれたカードの名前が読み上げられる。
「ふうん…ポーカーだと、最強の技だねえ…。」
 ウラタロスの呟きに応えるように、電子音が宣告する。彼の言った通り、ポーカーでも…そして戦士自身においても、最強の技の名を。
『ROYAL STRATE FRASH』
 同時に、持っていた剣から投げつけた剣へとエネルギーの奔流が伝えられ…ケルベロスの体内で爆発した。
 …それをもって、ケルベロスは敗者となったのである…。



「天王寺さん、貴方の作ったケルベロスとやらは倒れた。」
「そのようだな。」
 もう少し悔しがるかと思いきや、思った以上にあっさりと橘の言葉にそう返すと、天王寺はケルベロスをカードに封じた。
 封じられたカードは封じた者…天王寺の手元に戻る。
 同時に今までケルベロスのいた場所には彼が吸収したカードが残っただけだった。
「カードが戻ってきました!」
 ようやく本調子に戻ったのか、睦月が嬉しそうな声を上げ、いそいそとカードを拾い集めた。
「確かに、君らがこれ程強くなっていたとはなぁ。」
 心底感心したように、天王寺が言う。
「だが、君たちには失望しているんだ。アンデッド封印と言う職務を完遂できずいつまでも手間取っている。しかもそんな素人まで巻き込んでいる始末だ。」
 確かに、睦月は戦闘のプロではない。一介の高校生だ。レンゲルになるためのカテゴリーエースとの融合係数が高かったが故にレンゲルとして変身、戦っているだけに過ぎない。巻き込んだ、と言われれば否定できないのは確かである。
「君達は…退職処分とさせてもらった。」
「それって、クビって事ですか?」
「何故ですか!?私達は今までアンデッドを封印してきた。それを今更…」
 剣崎と橘がそれぞれに問う。
 だがそんな問いを無視し、天王寺は言葉を続ける。
「君らの持つライダーシステム。封印したプライムベスタ。その全ては、BOARDの所有物だ。返還し給え。」
 それは即ち「仮面ライダー」である事をやめろと言う事。
「それは…できません。」
 橘が、静かな怒りを(たた)えて言った。
「貴方はトライアルシリーズやティターンを作り、今また睦月を冷酷に処分させようとした。俺の知っているBOARDは、人類の平和のために作られた組織だ。貴方のやっている事は、まるでその逆だ!」
「お前がケルベロスで何を企んでいたかは知らない。だがそれは葬られた。お前の負けだ!」
「俺達はこれからもアンデッドを封印する。それが、俺達の使命だ!」
 車に乗って去りゆく天王寺を見つめながら、橘はそう宣言する。
 天王寺に聞こえているとは思っていない。だが、彼の…彼らの信じる正義は、人間を守る事。例え相手が元・自分の雇い主であったとしても、人間の敵になるのであれば敵対する。
 …もはや、アンデッドの封印は彼らにとって「職業」ではなく「使命」となっていたのだ。
「…何なのよあの男!頭にくる!自分で仕掛けておきながらあの言い草はないんじゃない?」
「ちょっとハナさん…!」
「え?」
 自分たち以外に誰もいないと思っていた所に、声が聞こえた。思わず警戒しながら声の方向を振り返る3人。すると、コンテナの陰から、眼鏡をかけた青目の青年と10歳前後の女の子が渋々と言った風に姿を現した。
「ほらもう…ハナさんが大きな声出すから、見つかっちゃったよ。」
 少女を(たしな)める青年の方に、橘は見覚えがあるような気がした。
 始を山小屋に運ぶ際に現れた2人の青年。その姿によく似ていたのである。ただ、ここにいる青年の瞳は青。先程会った2人は金と紫の瞳だったので、その2人では無い事は明らかだ。
「何者だ?いつからそこにいた!?」
「いつからって…君が眼鏡をかけた男と話している時からよ。」
 睦月の問いかけに、少女が腰に手を当てて答える。
「そしたらさっきの怪物が現れて…僕達、怖くて出るに出られなくなってしまったんです。そのまま先程の方と深刻そうな会話をされていたし、部外者の僕達が出て行くと空気を壊してしまいそうで…盗み聞きする気は全く無かったんですけど、つい…聞こえてしまって。うるさくしてしまったみたいで、どうもすみません。」
 少女の言葉を継ぐように、青年はすらすらと謝罪する。
 だがその言い分はつい数時間前、橘が聞いたものによく似ていた。
 …こちらが話し込んでいたから、出るに出られなくなった、だと…?
「そんな前から…気がつかなかった。」
 僅かに眉をしかめた橘に気付かなかったのか、睦月が心底驚いたように言う。
 剣崎も、よく無事だったな、と2人に声をかけている。
「それじゃ、僕達はこの辺で失礼しますね。」
「ちょっと、ウラ!?」
「さっきのゴタゴタで魚も逃げちゃったし、これ以上ここにいても釣れないみたいだから。」
 これ以上係わり合いになりたくないのか、それだけ言うと、ウラと呼ばれた青年と、ハナと呼ばれた少女はその場を後にする。
 橘だけが、彼らの存在に疑問を抱いていたが…問いかける事はできなかった。


終わってみれば剣の第45話後半そのままになってしまいました。
…稚拙なバトル描写で申し訳ありません。
ご意見、ご感想、叱咤等、心よりお待ちしております。











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