「和葉。聞かせてくれるか?」
そう言うと、平次は和葉の大好きな顔で笑った。
和葉は、それで、決めた。もし、だめだとしても、それでもいい。
( あたしは)
「・・・へい・じ・・・すき・・・」
ついに和葉の瞳から涙が溢れ出す。
嗚咽が漏れながらも、何度も言う。
「・・へ・・っじ・・す・・き・・っ」
「・・へいじ・・・ずっと・・ずっと・・まえからっ・・」
あたしが風邪をひいて、その熱で溶けたチョコの上の文字は、今、あたしの口から平次へと伝えられていく。
「俺もや。」
和葉は平次の言葉に、息を止める。
「俺もや。和葉、好きやで。」
今度は、違う涙が溢れてくる。
「やっと解けたんや。ずっとモヤモヤしてた気持ちの真実が。」
「俺には、お前しかおらん。これからもずっと、ずっとやで。」
「バレンタインなんかめんどくさいって言うて、すまんかった。あれはな、めんどくさいんやない。自分でもきづかんかったけど、和葉のくれるチョコが今まで義理やって思っとったから、毎年、こんなもん無かったらええのにって思ってたんや。」
平次は顔を真っ赤にしながら、それでもやさしく笑い、続ける。
「これからは、義理やないんやろ?俺だけに本命チョコ、ずっとくれへんか?」
「和葉のおっちゃんや、オトンやオカン、大滝はんとは違う、恋人同士の本命やで?」
「っ・・・へーじ・・」
平次は和葉の頬に手をやると、顔を近づけていく。
「和葉。めっちゃ好きやで。愛してんで。」
そっと和葉の唇に触れる。
「あたしも」
もう一度触れる。
「平次。好き。、めっちゃ好き。愛してんで。」
和葉が泣き顔で笑う。
「今日から、恋人やな。」
平次は照れながらも、うれしそうにささやく。
「うん」
今、この瞬間から、あたしたちは「ただの幼馴染」から「幼馴染で恋人」に変わる。
いつも苦しかった「ただの」という言葉を、胸の痛みとともに平次が消してくれた。
お互いを見つめ、平次が気配を感じ、振り向くと・・・
「オ、オカン///////!!!!!」
15cmほど開けられた襖から覗く、切れ長の目。・・・・静香がいた。
「フッ。わたしの言うた通りやろ、平次。」
「お、おばちゃん//////」
慌てふためくあたしに、おばちゃんはやさしい笑顔で言ってくれた。
「和葉ちゃん。おめでとう。これでやっと、和葉ちゃんは本当に私の娘になってくれたんやね。ほんま、うれしい。」
「な//////!!!!!なに、言うてんのや!!!このオバハン!!!」
娘になるという言葉に、もろに反応する平次。
「平次、いつか、絶対、わたしの言うたこと、現実にするんやで。」
しれっと言い、おばちゃんは1階へと戻って行く。
(なんなんや、あのオバハンは。こうなることわかってたんか??お、恐ろしすぎるで・・・・。)
あとに残されたあたしと平次は、固まっていた。
そして、目が合うと思い切り笑った。
笑いがおさまった時、平次はあたしの耳元で言ってくれた。
「オバハンに言われんでも、俺はその気やで。」
「/////////ほんま?」
「あぁ、ほんまや。こんなこと冗談で言えるか!!!」
これからは、自分の気持ちを隠さなくてもいい。平次に、真正面から「好き」を伝えていける。
平次があたしへと向けるその瞳を、まっすぐに見つめ返すことができる。
幼い頃に繋がった鎖とは違う、あたたかい鎖で、未来へと繋がっていく。
それから、まだ熱が下がってなかったあたしは、横で平次が看病してくれることに安心して、目を閉じた。
次の日、一晩ぐっすり眠り、薬も効いたのか、熱は下がっていた。携帯を見ると、ゆりから心配しているメールが届いていた。すぐに、応援してくれた親友に返信する。
ゆりへ
昨日は熱出てしもて、メール返せんでごめんな。
ゆり、ほんまにありがとう。あたしの背中、押してくれて。
平次にチョコ、渡せたよ。
平次もあたしが好きやって、言ってくれたんよ。
頑張ってよかった。
全部、ゆりのおかげやで。
ほんまにありがとう。
和葉
「おう、もう起きても大丈夫なんか?」
「うん。お世話になってしもて、ほんまごめんな?」
「あらまらんでもええ。よかったな、元気なって。」
「うん。おおきに。」
「「・・・・・・」」
なんだか、昨日の夜のことを思い出してしまい、お互いなんだかぎこちない。
いきなり変わった二人の関係がくすぐったくて、二人して照れてしまう。
すると、少し顔を赤くした平次がやさしく笑って言った。
「和葉、はよ学校行くで。仕度せぇ。」
「うん!」
1階に下りると、静香が朝食を用意してくれた。
「オバチャン。おはようございます。昨日はお世話になりました。」
「あら、おはよう、和葉ちゃん。もう具合はええの?」
「はい。いろいろしてもろて。ほんまにおおきに、オバチャン。」
「あら、いややわぁ。ウチの嫁になるんやから、そんな遠慮せんといてぇな。フフッ。」
「あああああああほおぉぉ////!!またなにを言うてんのや!!このオバハン!!!」
「なななななななにを////!!もう!!オバチャン!!」
慌てふためく二人を静かは微笑ましく思う。
「二人とも。はよ食べんと遅刻するで。」
「あ!ほんまや!」
急いで朝食を取って、学校へと向かった。
教室に入ると、平次と和葉が来たことに気づいたゆりが走って来て、抱きついた。
「おめでとう〜!!!!和葉ぁ!!!!」
「・・ゆり。ほんまにおおきにな。」
「ほんまにほんまに、よかったなぁ!!!!!」
涙を浮かべて喜ぶゆりに、和葉も泣きそうになる。
「なに二人で抱きあっとんのや。」
隣りで抱き合う二人を呆れ顔で見ている平次。
「なんや、服部君。あたしにヤキモチやかんでもええやろ。心配せんでも和葉は服部君のものやろ?」
二人のことを知っているゆりは、ニヤニヤしながら平次に言ってやる。
「アホ。だれがヤキモチやくんや。」
「あんたや。」
ゆりが大声で喜ぶ声に、クラスメイトたちが反応しはじめていた。
「おい!なんなんや、泉!」
「なんかええことでもあったんか?」
「和葉、なんかあったん?」
三人の周りに続々とクラスメイトたちが集まってくる。口々に質問され、ゆりは和葉に確認する。
「和葉、言ってもええ?」
「ええよ。ゆりのおかげやもん。」
顔を赤く染め恥ずかしそうに笑う和葉は、嬉しそうに言った。
平次は向こうを向いている。おそらく、その顔は真っ赤だろう。
「あんな・・じつは・・」
「なんなんや??泉、もったいぶるなや。」
「そうや、そうや。早よ言わんかい!」
「・・・じつは、服部君と・・和葉が・・・」
ゴクッと唾を飲む音がする。
「付き合うことになりました――!!!!」
「「「「「「「「「「お――――!!!!!」」」」」」」」」」
クラスメイトたちは、拍手喝采。
「やっと言ったんかい!!!」
「和葉!おめでとう!!!」
「名物カップルやっと、成立〜!!」
「やるやないか!!服部〜!!!」
「散々、『ただの幼馴染』って言うてたのはなんなったやろ?」
「そら、照れ隠しにきまっとるやないか。」
「よかったな〜、和葉、服部君!!・・・ま、みんなわかってたけどな。」
「この〜はっとり〜くっそう〜(泣)」
「お前、本気で泣くなや。」
「なぁ、もう・・したんかな?」
「おっ!!」
「そら、したにきまっとるやないか。」
「そうや、そうや。服部がそんな我慢できると思うか?」
「じゃぁ、やっぱり・・。」
「「「キャー!!!」」」
「「「「「・・・(泣)」」」」」
「おい、・・・なにをや?」
「アホ!!!変な想像すな!!そら、キスに決まってるやろ!!」
「うらやましすぎるで、服部。」
平次と和葉が黙っていることをいいことに、クラスメイトたちは調子に乗っていた。
「・・・・・オイ。」
地の底から響いてくるような声が、クラスメイトたちを凍らせる。
二人がやっと、やっとくっついたという知らせに、興奮していたクラスメイトたち。
恐る恐る、声の主、服部平次の方を振り返ると・・・
「おまえら〜〜!!!なに、勝手なことぬかしとんじゃ〜〜!!!全員簀巻きにして、大阪湾に沈めたんで〜〜!!!(怒)」
「「「「「「ギャ―――――!!!!!!!」」」」」」
「待たんかい!!!!」
「「「ヒィ――!!!!」」」
「お、おい。おちつけ、服部。照れるのはわかるけどな、ってギャ――!!!」
「ちょっ、平次!!なにしてんの!!」
「お前は黙っとけ!!」
「なんやて〜!!」
「コラァ!!!お前ら、待たんかい!!!」
今のうちだと、サッサと逃げて行った男子を、平次は追いかけて行ってしまった。
「ま、服部君も照れ隠しやないの?」
ゆりは、物凄い勢いで走って行った平次を心配そうに見ている和葉に言った。
「そやけど、みんな大丈夫やろか。」
はぁっとため息をつく。
「それより和葉。どうなん?やっぱりしたんやろ?」
「なななななななにを//////」
(したんやね。)
見事に真っ赤になった和葉を見ればわかると、ゆりは一人納得する。
でも、よかったなぁ和葉。気づいとる?今のため息、幸せいっぱいやないの。
困った顔しながらも、幸せそうな顔して。ええなぁ。あたしも彼氏欲しなったなぁ。
親友の幸せそうな顔を、やさしく眺めるこの和葉の親友にも、幸せが訪れるのはきっと遠くない。
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