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SoulTaker Ruin 
作:フリーダム



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Request:1 Boy who accepted ABADON for revenge(復讐の為に黒き太陽を受け入れた少年)   
 
西暦3500年8月10日。暑い真夏の夜、かつて『日本』と呼ばれた国、『ジパング』の某海域でその惨劇は起きた。
『豪華客船ブリュンヒルド号、処女航海にて沈没』
『脱出間に合わず乗客・乗組員全員行方不明』
『生存は絶望的』
この惨劇は事故として処理されメディアもそう報道した。
しかし報道された事実と闇に葬られた真実とでは2つの相違点があった。
1つはこの惨劇は事故ではなく仕組まれていた事。
そしてもう1つは船が沈没する前に乗客・乗員が一人を除いて既に殺されていた事であった。

豪華客船ブリュンヒルド号は静まり返っていた。
船内の至る所には大量の血液と肉塊が飛び散っている。
それはこの豪華客船に乗り込んだ人々のなれの果てであった。
豪華客船であったはずの船内は凄惨極まる光景が広がる地獄と化していた。
その地獄の中を悠然と歩く者が一人。
シルクハットを被りタキシードを身に纏う漆黒のステッキを持つ痩身の男。
その姿を見た誰もがこの男を紳士と連想するであろう。
その紳士は船内の晩餐会場と思われる部屋で壁にもたれかかった一体の男の死体を見つけるとその前で立ち止まった。
その死体は膝から下の両足と左腕を失い腹部に複数の風穴が空いていたが、他に比べて人としての原型を留めていた。
外見から察するにその死体は男だった。
紳士は死体を見下ろし眺め始めた。
「OH!これはイケマセンネ。」
その者は大袈裟に額に手を当て突然喋り出した。
「ミーをこんなワンダフォーな場所に呼んで下さったユーにお礼をしようと思ったのですがネ。」
紳士風の男は改めて死体を見下ろした。
「これではお礼出来ませんネ。」
その声に死体は反応し、閉じていた瞳を開いて声の主を瞳に捉えた。
そう、この男はまだ生きていた。
もっともこの男が死体になるのは時間の問題であった。
突然紳士は男の頭の上に左手を置いた。
しばしの沈黙の後、紳士は語り始めた。
「楽しき宴は招かざれる異形のモノ達により殺戮の宴へ・・・・跡に残るは血と肉塊。それはかつて人であった者達のなれの果て。哀れなる力無き者達のなれの果て・・・・・。」
紳士は左手を通して男の記憶を覗いているようである。
男は唯一残った四肢である右腕を紳士向けて伸ばし始めた。
紳士はそれに気づくも語り続ける。
「真に哀れなるは生き延びし彼の者。生き延びし彼の者に刻み込まれし絶望の記憶。愛しき者の死に様と己の無力さを記す絶望の記憶。復讐の炎が燃え上がるは必然。しかし、この者に与えられしは生ではなく死・・・・・・・・。」
紳士は己の顔を男近づけた。
その距離、僅か数cm。
「実に哀れデスネ。」
男が伸ばした右腕が紳士の左手首を掴んだ。
「?」
「・・・・・・・・・・・。」
紳士は聞いた。憎悪が込められた声無き声を。
「ユーはまだ諦めていまセンネ。」
紳士は見た。憤怒の焔が灯った瞳を。
「生きる事を。そして・・・・・。」
紳士は感じた。溢れんばかりの殺気を。
「戦う事を・・・・・。」
紳士は突然拍手を始めた。
「ワンダフォー!ユーはミーが探し求めていた方の様デス。だからミーはユーを助けたいデス。」
紳士は右人さし指で男を指さしながら語り続けた。
「取引しまショウ。」
紳士の右人指し指に野球ボールサイズの漆黒の球体が現れた。
「これは『ルイン』と言いマス。これをユーのボディに埋め込む事でユーは死なずに済みマス。更にユーから全てを奪い去った者達、ソレを造りし狂気の者達とその狂気の技術の恩恵を得ようと支援する欲深き者達、それら全てをジェノサイド出来る絶対的な力が手に入りマース。正に一石二鳥デスネ。」
紳士は『ルイン』を男に少し近づけた。
「さぁドウシマス?このまま終焉の死を受け入れるか、それとも『ルイン』と契約して復讐の生を掴み取とるか・・・・・・・・・。」
紳士は更に『ルイン』を男に近づけた。
「選ぶのはユーです。」
「イ・・・キ・・・タ・・・イ。」
男は声が掠れながらも答えた。
「取引成立デスネ。ならばプレゼントフォーユー。」
突如『ルイン』は巨大化し男を飲み込んだ。
男を飲み込んでから数分後、『ルイン』に亀裂が少しずつ入り始めた。
亀裂が全体に入った瞬間、『ルイン』は粉々に砕け散った。
その中から現れたのは漆黒の衣服を身に纏った長身の青年。
艶のある黒髪に少々あどけなさが残る端整な顔立ちに加えて180は有ろうかという長身、文句の付けようのない美青年がそこに居た。
青年は確認するかの様に自分の体をまじまじと見ている。
「体の具合はどうデス?」
「問題ない。」
青年は冷静な声で答えた。
「どうやら問題は無いようデスネ。」
「・・・まだ名前を訊いてなかったな。」
青年は振り返り紳士の向き合った。
「俺の名は武神龍人タケガミリュウト。お前は?」
「グラーシャ=ラボラスと申します。グラシャで結構デスよ武神サン。」
グラシャは優雅に頭を垂れた。
「解った。じゃあグラシャ、俺の質問に正直に答ろ。」
突然龍人の眼光が鋭くなった。
その眼光はグラーシャに向けられている。
「何故此処に来た?」
「武神サンの声無きシャウトに呼ばれたからデス。」
「俺の声無きシャウト?」
「死を待つだけの武神サンはミーが来るまでずっと心の中でシャウトしてらしたハズデス。『死にたくない』、『力が欲しい』等とネ。そのシャウトがミー届いたのデスヨ。」
「仮にそれが事実だとすれば、世界中の声無きシャウトが絶え間なくお前に届く訳だ。そんな奴はこの世界にわんさかいるハズだ?」
「それは少し違いマス。確かにこの世界の何処にいてもシャウトはミーに届きマス。力あるシャウトであればですがネ。」
「力?」
「エグザクトリィ!普通の人間のシャウトなどミーには届きまセン。武神サンのシャウトが届いた理由は・・・・・・恐らく武神サンのご先祖の中にミーの同じ『魔族』がいるはずデス。その御陰デスかネ。」
『魔族』この世界においてそれは人外の者達の総称である。
お伽話に出てくるドラゴンやピクシー等の幻獣や妖精。
人々が信仰し敬う神々や天使。
人々が恐れる悪魔や妖怪や幽霊。
その存在が実在する事を知りうる一握りの人間達はそれら全てを『魔族』と呼んでいる。
「そうか。」
龍人の返答を聞いたグラシャは顔から地面に倒れ込んだ。
「何か変な事言ったか?」
「武神サン、反応がフランク過ぎますネ。ここは『そんな馬鹿な!』等と言って驚くところデスヨ。」
グラーシャは立ち上がりながら答えた。
「俺の死んだ母さんは『魔族』だ。それに俺の近所に住んでる奴等も大半が『魔族』だ。」
「ソウでしたか。いやいや世間は意外にナロウデス。」
『魔族』は通常『魔界』と呼ばれる異世界に住んでいる。
しかし中には人の目を盗んで、または欺いて『人間界』に住む者達も確実に存在する。
中には龍人の母親の様に人間と結ばれて子供を作る者までいる。
「次の質問、何故俺を助けた?」
「武神サンが『アバドン』を使いこなせる方だからデース。」
「『アバドン』?」
「『アバドン』とはミーがクリエイトした・・・自画自賛ではアリマセンが強力無比な魔武具の総称でしてルインもその一つデス。」
グラーシャはシルクハットを深く被り直した。
「ミーが作り上げた『ルイン』を使いこなす為の重要なファクター、肉体を凌駕する強靱な精神力を武神サンは持ってました。」
「だから助けたと?」
「エグザクトリィ!実を申しますと、ミーは『アバドン』を使いこなせる方を常々探していました。」
「何故?」
「ミーがクリエイトした『アバドン』を使って頂いてそのデータを収集・分析し、より良い『アバドン』作る事がミーのホビーなのデス。」
「じゃあグラシャが俺に『ルイン』を与えた事に対する見返りは『ルイン』のデータか?」
「エグザクトリィ!武神サンが話の解る方で良かったデス。」
「解るもなにも、『ルイン』が無ければ俺死ぬんだろう?まぁいい、好きなだけ収集・・・・」
途中まで言いかけた龍人はある事に気づいた。
「ちょっと待て、そのデータはどうやって収集するんだ?まさか四六時中、俺をピーピングするつもりか?」
「ご安心を。ミーのホビーに覗きはありまセン。『アバドン』は記録したデータを自動的にミーに送信するように設定されてマース。もっとも武神サンのご希望と有れば・・・。」
「遠慮する。最後の質問・・・『アバドン』とは何だ?」
「一言で言うと意志のある武具デス。契約者の能力次第では会話も可能デスヨ。ロンリネスな時等にご利用してみては?」
「遠慮する。端から見れば只の精神異常者にしか見え・・・。」
龍人の答えを遮るように晩餐会場の天井を突き破って何かが二人の目の前に現れた。
「!!!」
「おやおや・・・・アレデスカ、武神サンとその他大勢を襲ったモンスターというのは?」
二人の前に現れたのは身長3mを超える漆黒の肌と赤い瞳、1mは有ろうかという鋭利な爪を持った4体の怪物。
怪物は二人を発見すると二人を獲物と判断したのか、ゆっくりと向かってきた。
「ああ・・・・俺は運が良いな。こうも早く『ルイン』のテストを兼ねて復讐の第一歩が踏み出せるんだからな。」
龍人は歪んだ笑みを浮かべて答えた。
「ミーも運が良かったデスヨ。ようやく『ルイン』のデータを得る事が出来るのデスからネ。」
グラーシャも笑みを浮かべて答えた。
「グラシャ、『ルイン』はどうすれば使える?」
「『アバドン』は全て、契約者がその名をコールする事で起動しマス。」
「サンクス!」
龍人は迫り来る怪物に向き合うと腕組みをして叫んだ。
怪物との距離、約50m。
「ウェイクアップ!『ルイン』。」
龍人が『ルイン』の名を叫んだと同時に龍人の体を闇が包み、その闇は球状になった。
怪物との距離、約30m。
一体がスピードを上げ、襲いかかった。
先行した一体が残り5mまで近づいたその時、闇が突然砕け散った。
砕け散った無数の闇の欠片は刃となって先行していた怪物に突き刺さった。
怪物は雄叫びを上げながら床に倒れ絶命した。
残りの怪物達は約10mのところで立ち止まると、砕け散った闇の球があった空間を凝視し始めた。
「クックック・・・・ようやく彼が、ようやくミーの最高傑作がその姿を現しました。」
グラーシャと怪物達が凝視するその先には、漆黒の全身鎧を身に纏った龍人が腕組みをして立っていた。
丸みを帯びた形状の漆黒のボディ、機械的な漆黒のフルフェイスガード、怒りを湛えた様な紅い瞳、胸部にある紅い球体の中には黒く塗りつぶされた太陽のような紋章が浮かんでいる。
龍人は腕組みを解くと床を蹴り、一足飛びで呆然と立ち尽くす怪物達の間を駆け抜けた。
「残りは1匹。」
龍人が呟いた瞬間、龍人が駆け抜けた際に両側にいた怪物2匹が首から鮮血をまき散らしながら倒れた。
「シャアァァァァーーーーーーー!!!」
残った怪物が雄叫びを上げながら鋭利な爪を龍人目掛けて振り下ろした。
豪華客船ブリュンヒルド号の乗員・乗客を切り刻み、惨殺した鋭利な爪が龍人を切り刻む。
「パキィーーーン」
しかし、龍人を切り刻むはずの怪物の爪は粉々に砕け散った。
驚くべき事にルインには傷一つ付いてはいない。
「ユウスレスな事を。『ルイン』はミーがクリエイトした『アバドン』の中の最高傑作、同じ『アバドン』でもなければ傷すら付きまセン。」
爪を失うという予想外の事態に恐怖を感じたのか、怪物は龍人に背を向け逃げ出した。
しかし、龍人はそれを許さなかった。
「逃がさん。」
追撃をかけようとしたその時、龍人の頭の中に何かが流れ込んできた。
「?・・・・右腕・・・・デトネイション・・・・ルイン・・・・・」
龍人の独り言を聞いたグラーシャは声を上げた。
「この短時間で彼のボイスを聞いている?・・・・・武神サン、ユーはスペシャルデス!!!」
グラーシャの興奮をよそに、龍人は背を向け逃げ出した怪物のいる方向に右手を突き出した。
突き出した右手の先に黒い太陽のような紋様が出現した。
それはルインの胸部にある紅い水晶の中に浮かぶ紋様と同じモノであった。
「デトネイション・オブ・ルイン!」
龍人が叫び終えると同時に黒い太陽のような紋様から漆黒の弾丸が怪物めがけて発射された。
漆黒の弾丸は怪物に命中した瞬間、大爆発を起こし晩餐会場と思われる部屋の半分以上が跡形も無く吹き飛んでいた。
「ウェルダン!」
グラーシャの拍手が晩餐会場に響いた。
「サンクス。始まりを告げる狼煙に丁度良い一撃だ。」
「今回のケースではもう少し控えめにした方がグッドだとミーは思いますよ。」
「そうか?」
「オフコース。何故ならばここは船の中デスから・・・・」
グラーシャが話している最中、船が大きく傾いた。
「アタックのダメージが船体にまで及ぶ事で、船がシンクしてしまいマス。」
「スマン。以後気を付ける。」
「いえいえ。とりあえず、甲板に出まショウ。」
そう言ってグラーシャが指を鳴らした瞬間、二人はブリュンヒルド号の甲板にいた。
「テレポート?・・・・グラシャ、お前もスペシャルだ。」
ルインが突然粉々に砕ける。
中から龍人が何事もなかったかのように現れた。
「こうみえても逃げるのは得意なんデスヨ。」
グラーシャは笑顔で答えた。
「さて、これからどうするか。」
「あの船を追跡してみてはドウデショウ?」
「あの船?」
龍人はグラーシャが指さす方に目を向けた。
ブリュンヒルド号100mと離れていない場所に船が停泊していた。
しかし、その船は只の船ではなかった。
「あの船・・・・武装してるなぁ。」
「オフコース。何故ならあの船はセルフ=ディフェンス=フォースの船ですからネ。」
「自衛隊・・・か。」
「ライジングサン・フラッグを靡かせた武装船、それ以外考えられまセンネ。」
二人が見つめる中、日の丸を靡かせた武装船は突如陸地へ向けて動き出した。
「沈みかけている客船を前にして、救助もせずに陸地へ帰還とは・・・・職務怠慢だな。」
「でなければあの船も今回の一件に関わっているという事デスヨ。」
「だから救助に来ないと・・・あの船が怪物共を載せてやって来たと仮定すれば、追跡する価値はあるな。」
去り行く船を見ながら龍人は呟いた。
「その可能性は高いでショウネ。どちらにせよ、アテが無いのであればチェイスしてみてはドウデスカ?」
「そうだな。時に拙速は巧遅に優ると言うしな。因みに『ルイン』は飛行可能か?」
「そういったアビリティは無いデスネ。」
「そこまで都合良くは出来てないか・・・・・という事は、ここからどうやって脱出すればいいんだ?」
龍人は慌ててグラーシャに問いかけた。
「勿論、泳いで・・・・。」
二人の間を風が吹き抜けた。
「ウェイクア・・・・。」
再び『ルイン』を装着しようとコールする龍人をグラシャは慌てて制止した。
「ジョークデスヨ、ジョーク。」
「ジョークには聞こえなかったな。」
半信半疑の目で龍人はグラーシャを睨んだ。
グラーシャはそれを気にも留めず、右手を挙げて指を鳴らした。
するとグラーシャの目の前に漆黒のサーフボードの様な物体が現れた。
「サーフボード?」
「そう考えて貰って結構デス。これの名は『ネイムレス』と言いマス。いや正しくはこの中に収納されているソードの名が『ネイムレス』でして、これは鞘なのデス。」
「ほぅ・・・その中に剣があるのか?」
「エグザクトリィ!『ネイムレス』は仮の名を与える事で力を発揮するソードデス。名を与えられたネイムレスのパワーはスゴイデスヨ。」
「それもアバドンなのか?」
「元デスがね。実はあるアクシデントにより彼女は自らの意志で能力を封印し、眠りについてしまったのデス。」
「それでも仮の名を与えれば力は行使出来るんだろう?」
「エグザクトリィ!仮の名は彼女がレクチャーしてくれるでショウ。『ルイン』のボイスを聞く事が出来る武神サンであれば彼女のボイスも聞く事が出来るはずですからノープロブレム。」
「解った。しかし、オマケまで付けてくれるとは随分サービスが良いな。」
「ノゥ。サービスではアリマセン。『ネイムレス』と『ルイン』を離れ離れにさせたく無い、ミーの我が儘デスヨ。」
「・・・・それは『ネイムレス』が己の能力を封印した事と関係があるのか?」
龍人の問いにグラーシャは龍人に背を向けた。
「詳しいお話は武神サンが彼女から真名を聞き出す事が出来たらお話しまショウ。」
「別にそこまでして聞きたい程興味がある訳では無い。」
そう言って龍人は『ネイムレス』手に取り眺め始めた。
「それだけではアリマセン。『ネイムレス』は武神サンにとってライフラインなのデス。」
龍人の動きが止まった。
「それはどういう意味だ?」
「はっきり申し上げマス。『ルイン』を装着して行動出来るのは合計で最大一時間デス。また、再びルインを装着するには三十分のインターバルが必要になりマス。」
「・・・・・もし一時間以上の装着、もしくは三十分未満のインターバルで再装着した場合はどうなる?」
龍人はグラーシャに向き直り問いかけた。
「『ルイン』は契約者の精神と肉体を乗っ取り暴走しマス。契約者の肉体が朽ち果てるまで・・・・・。」
「諸刃の剣だな。」
龍人は己の胸に手を当てながら呟いた。
「エグザクトリィ!しかし、『ネイムレス』があれば『ルイン』が使用出来ない時でもノープロブレムデス。」
グラーシャは指を鳴らして『ネイムレス』を己の手の中に転移させた。
「この鞘には二つのアビリティがありマス。ファーストアビリティはフライト、これに乗ってフライトムーブメントする事が可能デス。」
「生憎、サーフィンの経験は無いんだが・・・・。」
「まぁボディの一部が鞘と接触していれば、逆さまでも落下する事はアリマセンのでご安心を。スキルとナレッジは努力して習得して下さい。もっとも、『アバドン』と契約した方は全てのアビリティが人間の限界以上まで向上していマスのでスキルとナレッジの習得はベリーイージィだと思いマスヨ。」
「解った、努力する。」
「そしてセカンドアビリティはシールド、『ルイン』ほどではアリマセンが大抵のアタックはデフェンドしマス。また、武神サンであれば広範囲にディフェンスフィールドを形成する事が出来るでショウ。」
「これだけ多機能だと、『ネイムレス』だけで大抵の事は何とか出来そうだな。」
「大抵の事は『ネイムレス』で対応し、『ルイン』は万が一の時のジョーカーとして使われるのがよろしいでショウ。ミーも武神サンとは末永くお付き合いしたいデスからネ。」
「そうだな。しかし鞘に名が無いのは不便だ。」
「ソウデスカ?ソウであればこの際、武神サンがネームをつけてあげてはドウでショウ?」
「・・・・・・・・・・そうだ、『ローアイアス』にしよう。今からお前の名はローアイアスだ。」
龍人はそう叫ぶとかつて鞘と呼ばれていたモノ、『ローアイアス』を空中に放り投げた。
放り投げられた『ローアイアス』は空中でターンし十数秒ほど高速で空を飛び回った後、龍人の足下へ戻ってきた。
「どうやら当人はその名前が気に入った様デスネ。バット、何故そのネームをチョイスされたのデスカ?」
「いや、『ローアイアス』という単語が急に頭の中に浮かんだんでそれにした。」
「!!!」
「どうかしたかグラシャ?」
「いえいえ、なんでもナイデスヨ。」
「そうか・・・それじゃあの船を追跡してみるか。と・・・その前に。」
龍人は船内へと向かって走り出した。
「武神サン。この船は間もなくシンクしマスヨ!」
「すぐ戻る。」
そう言いながら龍人は船内へと消えていった。
「ホワ〜ィ?」
グラーシャは首を傾げた。
数分後、龍人は右手に血塗れになったネックレスを持って帰ってきた。
「待たせた。」
「火事場泥棒デスカ?」
「違う!」
「ジョークデスヨ。・・・それは誰の遺品デスカ?」
「これは妹・・・・うららに俺がプレゼントしたモノでね。麗の奴はこれを気に入ってくれてね、毎日身に付けてくれてたんだ・・・・。」
龍人はネックレスを見つめながら語り出した。
「明るくて、優しくて、意地っ張りで泣き虫で・・・自慢の妹だった。」
「武神サン。」
「しかし・・・・麗は俺の目の前で殺された。まだ12歳だったんだ!!!」
龍人は怒声を発しながらネックレスを強く握り締めた。
「進学して、就職して、結婚して・・・・・そんな普通の人生を歩むハズだった!!!」
「バット、ソウはならなかった。」
「あんな惨い手段で殺された麗の無念、俺が晴らさずに誰が晴らす!!!。」
龍人は泣きながら叫び続けた。
「それが武神サンが生きたいと願った理由デスネ。」
「そうだ。その為に俺の全てを費やしたとしても、誰に何と罵られようが構わない。この一件に関わった連中は一人残らずこの手で・・・・殺す!!!」
そう言って龍人ネックレスを自分の首に身に付け、『ローアイアス』に飛び乗った。
「御武運を。」
「サンクス!また会おうグラシャ。」
「イエス、またお会いしましょう龍人サン。」
龍人は飛び立った。
直後、船はゆっくりと沈み始めた。
一人沈み行く船に残ったグラーシャは呟いた。
「全ては海の中へと消え去る。いずれは人々の記憶からも・・・しかし彼の中からは決して消える事は無い。強大な力を得て更に激しく燃ゆる復讐の炎・・・・それは相手だけではなく己自身をも焼く炎。」
グラーシャは懐から葉巻を取り出すと火を付けて口に咥えた。
「アルマ・・・・ユーとのプロミス、確かに果たしましたヨ。今日此処で死ぬハズだったご子息は・・・龍人サンは『ルイン』と契約する事で生き長らえましたヨ・・・・バット、果たしてこれで良かったのでショウカ?」
口から煙を吐き出しながらグラーシャの呟きは続いた。
「これから龍人サンは数多くのクロウなトゥルースを知ることになるでショウ・・・生き長らえた事をリグレッツする程に・・・。」
葉巻を吸い終えたと同時にグラーシャは姿を消した。
 
それから間もなく、船は深き海の底へと沈んでいった。


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