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掌編小説集1 (1話~50話)

クリスマス前夜

作者: 蹴沢缶九郎

夜、寝ていた健太少年は物音で目を覚ました。


そこには赤い服に立派な白ひげを蓄えた、優しそうな老人が立っていた。健太少年はその老人が一目でサンタクロースだと分かった。


「おじいさんはサンタさんでしょ?」


「おやおや、見られてしまったね。その通り、私はサンタクロースだよ、メリークリスマス。」


「やったー!!サンタさんだ!!」


「君はお父さんお母さんの言う事をよく聞いて良い子にしていたから、ご褒美におもちゃを持ってきたよ。」


サンタクロースは大きめの布袋から、健太少年が前から欲しがっていたラジコンカーを取り出し渡した。


「サンタさんありがとう!!」


その時、健太少年はふと以前から思っていた疑問をサンタクロースに聞いてみる事にした。


「うちには煙突がないけど、サンタさんはどうやって家に入ってきたの?」


「本当は内緒だけど、健太君は良い子だから特別に教えてあげよう。」


健太少年はサンタクロースに促されるまま後についていく。


健太少年からすれば、欲しかったラジコンカーを貰えた事もそうだが、それ以上にサンタクロースに会えた事、そして長く抱えていた疑問が解けるかもしれない、そんな嬉しさでいっぱいだった。


二人は洗面所にきた。


「いいかい?皆には秘密だからね。」


そう言うと、サンタクロースの体はドロドロに溶けだした。赤い服も、立派な白ひげも、背負っていた布袋も全てドロドロに溶けていく。例えるなら、それはまるでスライムの様だった。


健太少年は思わず、


「うわぁ!!気持ち悪い!!」


と悲鳴を上げた。


一瞬、液状化したサンタクロースの動きが止まった気がしたが、そのままサンタクロースは洗面台の排水口へと入っていったのだった。


健太少年は、しばらく呆然と立ち尽くしていた。見てはいけないものを見た気がした。


ショックは大きかったが、寝て忘れようと自室に戻る。先程、枕元に置いたラジコンカーが消えていた。


健太少年はその夜、


「『気持ち悪い』という言葉は人を傷つける、悪い子が使う言葉なんだ。」


という事を知った。

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