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倒れていた悠麻ちゃんも我に返り、素早く、茶の間の隅に立てかけてあった弓と矢を取りに走りました。
私も桜子さんの脇に付き、よろけるひろりんを壁に立てかけました。
そして、ふたりで片方づつ、腕を掴んで上に持ち掲げました。ひろりんは、万歳をした形になりました。
準備がすんで振り返ると、弓を持ち、弦に矢をかけた悠麻ちゃんが勇ましく構えて立っていました。
標的に焦点を定め、大きく弦が引かれました。
弦を離すと、矢が一気に飛翔しました。
「グエッ!!」
目の前を矢が一瞬にして通り過ぎました。
「あたーーーーーりーーーーーーい!!!!」
悠麻ちゃんは、大きな声を張り上げて叫びました。
見ると、矢は押さえていたひろりんの右手の平を貫通し、壁に突き刺さっておりました。
今度は左腕です。
矢が放たれました。眼に見えぬ速さで突き刺さりました。ブスッと鈍い音がしました。
「ギャーーー!!」
桜子さんが、叫びました。
見ると矢は、桜子さんの左耳たぶを貫通しておりました。手元が狂ったようでした。やはり、かなりの集中力を要する競技なのでしょう。勇ましくても、やはり高校生。心の動揺が影響したようです。
「ごめん・・・・」
悠麻ちゃんは、素直に謝りました。
桜子さんはそのまま、ズズズと壁づたいに倒れていきましたが、さすが年の功、自力で矢を引き抜きました。耳たぶが千切れました。
そして、その矢をひろりんの左手の平に付き刺し、壁まで貫通させました。
「グワッ!!」
ジーザス!!
ひろりんは壁に貼り付けになりました。
そして、最後に止めの一発です。
三本目の矢は寸分の狂いもなく、ひろりんの心臓に突き刺さりました。
「あたーーーーーりーーーーーーい!!!!」
悠麻ちゃんは、大きな声で叫びました。
「グエッ!!」
硫酸で爛れ垂れ下がった、上目蓋の隙間から、ひろりんは白目を剥き出し、口から茶褐色の吐瀉物を滴らせました。
粘着性の吐瀉物は口元から、だらだらと途切れることなく、ゆっくりと生き物のように身体を流れて行きました。
「グエーッ!ゴッ!グッグッグッ・・・・・グッ・・・・」
胴体を捩じらせ苦しみもがいた。矢が刺さった左の胸からは血がだらだらと流れました。自力で立っていたひろりんは力なくうな垂れました。
全体重を支えているのは、両手と心臓に突き刺さった3本の矢でした。ひろりんは、体重をすべて矢にゆだねていました。
硫酸で焼け爛れた皮膚がどろどろと顔から垂れ下がり、大きく口を開けていました。
口からもなにか茶色い液体が滴って降りました。そして、股間は・・・、すでに失禁状態でした。
身体はがっくりとうな垂れていましたが。時折大きくガタンっと揺れ、痙攣しました。
外見ではこの男がもう、ひろりんだとは誰も判断できないでしょう。
次は私の番でした。
その頃になって、私には罪の意識が芽生えてきました。決断するに至った動機が曖昧だったのでしょう。
約束を破られた一時的な腹いせの為に、2人の行動に参加したのですから。考えてみれば何も此処までするくらいなら、他にもっとまともな男を捜せばいいだけの話しですから。男は他にもいくらでもいるはずです。
「次だぁーーーーーー!やれいっ!!!!!」
桜子さんが私に向かって怒号しました。
悠麻ちゃんが何故かもう1本の弓を弦に掛け、直立していました。
私が躊躇っていると、その矢の先は私の方向へ向けられました。今さら逃げ出すことはできません。
仕方なく私はキッチンへ行き、テーブルに置いてあったコスメのバッグを持って来ました。
ひろりんの目の前に跪き、ネイルアート用の道具、化粧道具、リボン、コーム、ヘアピン・・・・そして、カット用シザー、etc...
時折、ひろりんの身体は大きく痙攣し、ガクンと揺れ動きました。そのたびに私はドキッとしました。
桜子さんと悠麻ちゃんが、私を見下ろして怖い顔をして立っています。私は泣きながら、ひろりんの頭に、成人式で使ったダチョウの羽を輪っかにし、冠のように載せました。
そのうち、痙攣もおさまりひろりんはうなだれたまま、ぴたりと動かなくなりました。
「逝ったよ・・・」
桜子さんが、ひろりんの頚動脈を指で押さえて言いました。
悠麻ちゃんが胸元で十字を切りました。
涙が止めどなく流れて、よく見えませんでしたが、私にはダチョウの羽の冠を被ったひろりんが、天使のようにも見えました。
最高の作品に仕上げてあげよう・・・。それがせめてもの私からの償い。私はそう思いました。
それから、全身に、ブルーメタリックのスプレーを噴射してやりました。次に、手足の爪には赤いネイルを塗りました。その上から金銀のラメを埋め込みました。
赤や緑や黄色のネイルを、肩から流してやると、胸元や腹部の方にどろどろと滴り落ち、サイケデリックな模様が出来上がりました。
そうこうしている内に、私の中で創作意欲がどんどん湧いてきました。成人式で使った、赤と金色の帯〆がありました。
股間のうなだれた突起物の根元に巻き、可愛いリボン結びにしてあげました。
「巻きが甘い!」
桜子さんがそれを見て、言いました。私の手を押しのけ、一旦リボン結びを解くと、それを両手の平に載せ、いとおしそうに見つめておりましたが、意を決したように、口元を引きしめ、もう一度帯〆でぎゅっと巻きなおしました。ぎゅっぎゅっと。不思議なことにうなだれていたものが元気よく生き返りました。
「う、ぅ・・・絶倫ひろりん・・・」
桜子さんが呟きました。
その眼つきは、常軌を逸しているようにも見えました。その後、桜子さんは何を思ったのか、シザーを取り上げると、両刃を大きく開き、股間の突起物に、持ってゆきました。
どんなに遅くなっても、どんなに仕事で疲れていても、使ったシザーの刃は、その日の内に必ず磨いておきます。シザーは美容師の命ですから。いつケースから取り出しても切れ味は最高です。
「やめてえーーーーっ!!」
私は叫びました。
「やめろーーーーっ!!」
悠麻ちゃんも叫びました。
私たちの叫び声も届かず、シザーの両刃は閉じられました。瞬間、私は目を閉じました。
ジョキッ!と鈍い音が聞こえました。
私は恐ろしさのあまり、そのまま顔をあげることができませんでした。
「完成だ!!!」
桜子さんが勝ち誇ったように言いました。
‥続く‥
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