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バディーズ フォーエバー!!
作:絵爾久万



7)


 倒れていた悠麻ちゃんも我に返り、素早く、茶の間の隅に立てかけてあった弓と矢を取りに走りました。
 私も桜子さんの脇に付き、よろけるひろりんを壁に立てかけました。
 そして、ふたりで片方づつ、腕を掴んで上に持ち掲げました。ひろりんは、万歳をした形になりました。
 
 準備がすんで振り返ると、弓を持ち、弦に矢をかけた悠麻ちゃんが勇ましく構えて立っていました。
 標的に焦点を定め、大きく弦が引かれました。
 弦を離すと、矢が一気に飛翔しました。
「グエッ!!」
 目の前を矢が一瞬にして通り過ぎました。

「あたーーーーーりーーーーーーい!!!!」
 悠麻ちゃんは、大きな声を張り上げて叫びました。

 見ると、矢は押さえていたひろりんの右手の平を貫通し、壁に突き刺さっておりました。

 今度は左腕です。
 矢が放たれました。眼に見えぬ速さで突き刺さりました。ブスッと鈍い音がしました。

「ギャーーー!!」
 桜子さんが、叫びました。
 見ると矢は、桜子さんの左耳たぶを貫通しておりました。手元が狂ったようでした。やはり、かなりの集中力を要する競技なのでしょう。勇ましくても、やはり高校生。心の動揺が影響したようです。
「ごめん・・・・」
 悠麻ちゃんは、素直に謝りました。 

 桜子さんはそのまま、ズズズと壁づたいに倒れていきましたが、さすが年の功、自力で矢を引き抜きました。耳たぶが千切れました。
 そして、その矢をひろりんの左手の平に付き刺し、壁まで貫通させました。
「グワッ!!」

 ジーザス!!
 ひろりんは壁に貼り付けになりました。

 そして、最後に止めの一発です。

 三本目の矢は寸分の狂いもなく、ひろりんの心臓に突き刺さりました。

「あたーーーーーりーーーーーーい!!!!」
 悠麻ちゃんは、大きな声で叫びました。
「グエッ!!」
 硫酸で爛れ垂れ下がった、上目蓋の隙間から、ひろりんは白目を剥き出し、口から茶褐色の吐瀉物を滴らせました。
 粘着性の吐瀉物は口元から、だらだらと途切れることなく、ゆっくりと生き物のように身体を流れて行きました。
「グエーッ!ゴッ!グッグッグッ・・・・・グッ・・・・」
 胴体を捩じらせ苦しみもがいた。矢が刺さった左の胸からは血がだらだらと流れました。自力で立っていたひろりんは力なくうな垂れました。
 全体重を支えているのは、両手と心臓に突き刺さった3本の矢でした。ひろりんは、体重をすべて矢にゆだねていました。
 硫酸で焼け爛れた皮膚がどろどろと顔から垂れ下がり、大きく口を開けていました。
 口からもなにか茶色い液体が滴って降りました。そして、股間は・・・、すでに失禁状態でした。
 身体はがっくりとうな垂れていましたが。時折大きくガタンっと揺れ、痙攣しました。
 外見ではこの男がもう、ひろりんだとは誰も判断できないでしょう。

 次は私の番でした。
 その頃になって、私には罪の意識が芽生えてきました。決断するに至った動機が曖昧だったのでしょう。
 約束を破られた一時的な腹いせの為に、2人の行動に参加したのですから。考えてみれば何も此処までするくらいなら、他にもっとまともな男を捜せばいいだけの話しですから。男は他にもいくらでもいるはずです。

「次だぁーーーーーー!やれいっ!!!!!」

 桜子さんが私に向かって怒号しました。
 悠麻ちゃんが何故かもう1本の弓を弦に掛け、直立していました。
 私が躊躇っていると、その矢の先は私の方向へ向けられました。今さら逃げ出すことはできません。
 仕方なく私はキッチンへ行き、テーブルに置いてあったコスメのバッグを持って来ました。
 ひろりんの目の前に跪き、ネイルアート用の道具、化粧道具、リボン、コーム、ヘアピン・・・・そして、カット用シザー、etc...

 時折、ひろりんの身体は大きく痙攣し、ガクンと揺れ動きました。そのたびに私はドキッとしました。
 桜子さんと悠麻ちゃんが、私を見下ろして怖い顔をして立っています。私は泣きながら、ひろりんの頭に、成人式で使ったダチョウの羽を輪っかにし、冠のように載せました。
 そのうち、痙攣もおさまりひろりんはうなだれたまま、ぴたりと動かなくなりました。
「逝ったよ・・・」
 桜子さんが、ひろりんの頚動脈を指で押さえて言いました。
 悠麻ちゃんが胸元で十字を切りました。

 涙が止めどなく流れて、よく見えませんでしたが、私にはダチョウの羽の冠を被ったひろりんが、天使のようにも見えました。

 最高の作品に仕上げてあげよう・・・。それがせめてもの私からの償い。私はそう思いました。
 それから、全身に、ブルーメタリックのスプレーを噴射してやりました。次に、手足の爪には赤いネイルを塗りました。その上から金銀のラメを埋め込みました。
 赤や緑や黄色のネイルを、肩から流してやると、胸元や腹部の方にどろどろと滴り落ち、サイケデリックな模様が出来上がりました。
 そうこうしている内に、私の中で創作意欲がどんどん湧いてきました。成人式で使った、赤と金色の帯〆がありました。
 股間のうなだれた突起物の根元に巻き、可愛いリボン結びにしてあげました。
「巻きが甘い!」
 桜子さんがそれを見て、言いました。私の手を押しのけ、一旦リボン結びを解くと、それを両手の平に載せ、いとおしそうに見つめておりましたが、意を決したように、口元を引きしめ、もう一度帯〆でぎゅっと巻きなおしました。ぎゅっぎゅっと。不思議なことにうなだれていたものが元気よく生き返りました。
「う、ぅ・・・絶倫ひろりん・・・」
 桜子さんが呟きました。

 その眼つきは、常軌を逸しているようにも見えました。その後、桜子さんは何を思ったのか、シザーを取り上げると、両刃を大きく開き、股間の突起物に、持ってゆきました。
 どんなに遅くなっても、どんなに仕事で疲れていても、使ったシザーの刃は、その日の内に必ず磨いておきます。シザーは美容師の命ですから。いつケースから取り出しても切れ味は最高です。

「やめてえーーーーっ!!」
 私は叫びました。

「やめろーーーーっ!!」
 悠麻ちゃんも叫びました。

 私たちの叫び声も届かず、シザーの両刃は閉じられました。瞬間、私は目を閉じました。

 ジョキッ!と鈍い音が聞こえました。
 

 私は恐ろしさのあまり、そのまま顔をあげることができませんでした。

「完成だ!!!」

 桜子さんが勝ち誇ったように言いました。


              ‥続く‥












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