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バディーズ フォーエバー!!
作:絵爾久万



6)


 
 それから、私たちは抵抗する丸裸のひろりんを、階下まで連れて行きました。それは、容易な事ではありませんでした。身長187センチ56キロの、やせ細ったひろりんでしたが、やはり男の力はすごいものでした。

「オラオラ降りろよう!脚ついてんだろぉ!」
 階段の踊り場で、抵抗して動こうとしないひろりんに、桜子さんが低いドスの聞いた声で言いました。
「ざけんなよ!ばばあ!」
 ひろりんが、桜子さんに脚蹴りを入れました。

「うわぁーーーっ!!!」
 バランスを崩した桜子さんは、そのまま階段をずり落ちましたが、溺れる者は藁をもつかむ、ひろりんの股間の突起物をつかみ、なんとか一命を取り留めました。

「やめろーっ!離せ!妖怪!」
 ひろりんが言いました。
「ふんっ!サイズが大きいからって、いい気になるなよ」
 桜子さんは、何かまだこだわっているようでした。

 階下に下り、ソファーの上に縛られたSM嬢の姿を見て、ひろりんは
「タマミ・・・」
 と呼びました。
 タマミは助けを求める必死な眼差しで、ひろりんを見つめ返しました。
 私たちは見詰め合う2人を引き剥がすように、まず、ひろりんを美顔器の前に連れて行きました。

「てめぇら、いったい何しようってんだよ。揃いも揃って。えーっ?オレがお情けかけてやったっていうのによ。恩を仇で返すつもりかい?ざけんなよ、てめぇら!!」
「あんたが私たちに与えた屈辱を、何十倍にもして返してやるのさ」
 桜子さんが言いました。
「お前みたいな不気味な妖怪相手にするのも、勇気のいる事なんだぜ。俺はもともとボランティア精神旺盛なもんでね」
「なにをーーーー!!貴様」
「やめな!こんな最低な男に、今さら腹を立てても仕方がない」
 悠麻ちゃんが、怒り狂う桜子さんを、なだめるように言いました。

「悠麻。お前だって、感謝されてこそ、恨まれる覚えはないぜ。自ら救いを求めて俺の所へ逃げ込んで来たんだろ?」
「無断で投稿しやがって!!」
「へえ・・・。でも、本当はうれしかったんだろ?知らない振りして盗み撮りされるの」
「やめてーーーーーーーーえ!!!」
 悠麻ちゃんは頭を抱え、その場にしゃがみ込みました。
「悠麻ちゃん・・・あんたこそ」
 今度は私が、悠麻ちゃんをなだめました。

「かおりん、お前だってそうだぜ。はっきり言ってお前みたいなタイプぜんぜん好みじゃねえし。お前が泣きついて、離れたくない・・なんて言うもんだから。お情けかけてやったってのに」
「ひ、ひどい。そんな言い方しなくたって」
「だって、そうだろ?恨まれる筋合いはないぜ」

「じゃ、ひとつだけ聞くわ。あの女の何処がいいの?」
 私は隣室のソファーの上を指差して言いました。
「ははは。ボディーだよ?」
「ボディー?」
 確かに、ソファーので両手両足を縛られているSM嬢は、私たちに無いものを持っていました。
 風船をふたつ並べたような胸、キュッと引き締まった腰、パンパンに膨らんだ尻と腿。
 桜子さんは本当にワニっぽかったし、悠麻ちゃんはスレンダーだが筋肉質、私はやせっぽち。

「たったそれだけ?心の繋がりはないの」
「心?あはははは・・・そんなの無い方がいいんじゃない?ムチムチな身体にオッパイとオマンコついてりゃ、なーんもいらないの」
「バカにしてるわっ!」

「わかった。もうそこまでだ。今日は、あなたにとってもいいものを持ってきたのよ。ほら美顔器よ。10年前に30万で買ったの。月々2千8百円の返済だから、まだローンが残っているけどね。かなり古いタイプだけど、スチームパックもできるからここに顔を入れればお肌もつやつや。色男は顔が命でしょ?」
 さすが年の功。桜子さんはすっかり冷静を取り戻し、冷酷な顔をして、スチームボタンを押しました。
 中の希硫酸からぶくぶく泡が出はじめました。同時に強い刺激臭が発生しました。目が痛くなりました。

「よっしゃぁー!行くでぇー!!」
 悠麻ちゃんが気合を入れて、大きな声で言いました。

 私がひろりんの後ろで、ガムテープに巻かれた両手を抑えている間に、悠麻ちゃんと桜子さんは、ひろりんの頭を両側から掴みました。
「何するんだ!やめろうーーー!!!」
 顔を液体に近づけて行くと、ひろりんはただ事ではないと思ったのか、身体を大きく揺すり、抵抗しました。
 離すものか・・・。私は渾身の力を込めて、後ろからひろりんの腕を掴みました。
 ふたりは両側からひろりんの髪を鷲掴みにし、煮え立つ希硫酸の中にひろりんの顔を押し込みました。

「ぐわっ!!ががががっ・・・」
 その瞬間、電流が流れたようにひろりんの身体はガタガタと痙攣し、すぐに自力で顔を持ち上げました。

 後ろからその顔は見えませんでしたが、ひろりんの顎から白い粘液状のものが、だらだらと滴り落ちました。
 悠麻ちゃんと、桜子さんは容赦はしませんでした。
 すでに、眼付きが尋常ではありませんでした。多分、私自身もそうだったに違いありません。
 ふたりは一旦顔を上げたひろりんの頭を、再度沸騰する硫酸液の中に沈めました。

「ぐわっ!!がらがらがらっ・・・」
 ひろりんは足をバタバタさせ、全身を震わせました。振り飛ばされそうになりましたが、私は背後から身体を抑え、ふたりは後頭部を押さえつけました。
 もうその頃になると、私たちはすっかり犯罪者になりきっておりましたから、何か脳内ではモルフィーネのような物質が、大量に分泌されたのでしょうか。
 激情する自分たちの行動に、酔ってさえいたのです。悠麻ちゃんと桜子さん私の3人は、本来持ってる以上の力を発揮する事ができました。

 どのくらい、そうしていたでしょう。必死で抵抗しようとしていたひろりんの身体が動かなくなりました。
 と、一瞬油断した所で、突然ひろりんの頭が跳ね上がりました。
「ぐわっ!!」
 同時に美顔器が倒れ、テーブルの上から床の上に落ちました。
 硫酸の飛沫がまわりに飛び散りました。桜子さんも悠麻ちゃんも私もひろりんも、皆、床の上に重なって倒れました。私たちも、硫酸液の飛沫を浴びました。
 手の甲が酷く痛みました。見るとケロイド状にただれていました。
 桜子さんは、右目の下がお岩さんのようにただれ、悠麻ちゃんは唇が腫れあがっていました。
 3人が怯んだ隙にひろりんは、助けを求めてタマミのいるソファーの方へ這ったまま逃げ出しました。

「ムググググムャア!!!」
 ひろりんの顔を見た、タマミはものすごい形相で、ガムテープ越しに悲鳴をあげ、恐怖のあまり、ひろりんの顔面を蹴飛ばしました。
 そこへ死んだように眠っていたペスが、よろよろと近づいてきて、ひろりんの脛に噛み付きました。

「ぐぉりゃぁーーー!!!」
 ペスはひろりんに思い切り蹴飛ばされ、宙を飛び、流し台のレンジの上に置かれた鍋の中に落ちました。ぐったりと死んだように動かなくなりました。
 計画外に硫酸の飛沫を浴びた私たちは、次の行動に出ることができず、テーブルのまわりで暫く倒れたままでいました。
 そんな私たちの隙をつき、ひろりんは両手のガムテープを剥がし、立ち上がったかと思うとこちらを振り向きました。

 その顔はケロイド状に解け、頬の肉が剥がれ、ぶら下がっておりました。白い頬骨が見えました。
 そして、恐怖にたじろぐ私たちの方へ、ゆっくりと歩いて来ました。その手にはワインのボトルが握られていました。

 ひろりんは、おぼつかない足取りで私たちの方へどんどん近づいてきます。眼のまわりの皮も溶けて、どろどろになっていましたので、眼はよくえないようでした。
 ボトルを振り上げると、私たち目掛けて突進してきました。
 そして、ボトルを思い切り振り下ろすと同時に、3人が倒れている所に、自分も倒れ込んできました。
 私たちは瞬時に転がって逃げましが、ちょっとだけ逃げ遅れた桜子さんの頭に、ワインボトルが当たり、グシャッと割れました。

 桜子さんは頭からワインを浴び、仰向けに倒れました。周囲に血の海が広がりました。しかし、キズは浅かったようで、またしぶとく立ち上がりました。
 さすが年の功、今度は怯むことも無く、そのまま、逃げようとするひろりんの背後から抱きつきました。
 そして、悠麻ちゃんに言いました。
「悠麻、今だ!やれいっ!!」

 いよいよ、計画実行です。


         ‥続く‥












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