5)
ウォーターベッドの上では、花粉症のひろりんが大いびきをかいて、眠っていた。
まず、私と悠麻ちゃんが両側にまわり、ゆっくりと布団をはがしにかかった。ひろりんは、生まれたままの姿で眠っていた。
桜子さんは、それを見て不覚にも発情してしまったようで、ひろりんの中心の突起物をいきなり掴んだ。計画外の行動だった。
ひろりんは、夢の中でSM嬢に触られているとでも思ったのか、桜子さんの手に、自分の両手を重ね、前後に動かしはじめた。
桜子さんはそれに合わせて、いとおしそうな顔をした。ひろりんは無意識のうちに腰を動かし、小犬のように、くぅ〜ん・・・と鳴いた。
桜子さんがひろりんに始めてあったのは、気仙沼漁港の近くのと或る場末の酒場であった。
ちょうどその頃、ひろりんの勤める会社で、秋刀魚の缶詰工場を立ち上げる事になり、ひろりんは現場主任として気仙沼に暫く赴任していたのだ。
そんな時、現地の職員に連れて行ってもらったのが、桜子さんの経営する
『さくら』という飲み屋だった。
桜子さんは以外にも料理が上手で、桜子さんの作る、お袋の味の惣菜や、現地の新鮮な魚貝を使った料理は地元でも大変人気だったらしい。
数年前に、母親を亡くしたひろりんもまた、桜子さんの手料理に夢中になった。たまたま母親と同郷だったからかもしれない、桜子さんの作るお袋の味は懐かしい母の味だった。それは、ひろりんの心を掴んだ。
気仙沼赴任中は、毎日のように通って来たらしい。そこでひろりんは桜子さんと懇意の仲になり、あるときベロンベロンに酔っ払ったひろりんを手厚く介抱をしてるうちに、一線を越え男女の仲になってしまったのだという。
その年齢差26才ということだ。
熊谷から遠く離れた気仙沼で、寂しさも手伝ったのかもしれない。若さゆえ欲望のままに関係は結んだが、ひろりんは事が済むと人格が変わったように暴力的になり、毎回桜子さんを罵り、殴ったという。
若く逞しい、ひろりんの持ち物に虜になってしまった桜子さんは、痣だらけになったが、どうすることもできなかった。そして、ひろりんの胃袋もまた、桜子さんの造るお袋の味に虜になっていた。
ふたりは別れるに別れられず、泥沼にずぶずぶとのめり込んで行ったのだった。
缶詰工場が完成し、ひろりんが熊谷に帰る時が、縁の切れ目だった。ひろりんは腐れ縁に終止符を打つ覚悟だった。
しかし、50半ばで狂い咲いてしまった、桜子さんはそれで終わりにすることはできなかった。ああ、哀しい女のサガ。
桜子さんはひろりんの帰熊と同時に店を閉じ、後を追ってきたのであった。
しかし、熊谷へ戻ったひろりんは決して桜子さんには会おうとしなかった。桜子さんは大宮でアパートを借り、スーパーヤマニのレジで働きながら、ひろりんへの想いを募らせる辛く哀しい日々を送っていた。
ひろりんへの想いが断ち切れないのなら、いっそ、ひろりんを殺すきしゃないとまで思い詰めたのであった。そんな時悠麻ちゃんと、運命的な出会いをしたのだった。
「やめろ!!」
ひろりんの突起物を咥えようとした、桜子さんの頭を悠麻ちゃんが叩いて叱咤した。
桜子さんは耳まで裂けた紅い唇を歪ませてニヤッと笑った。斜めから差すぼんやりとした月光りで、目尻の深いシワが、いっそう浮き立った。
身震いがした。まるで、地獄絵巻の脱衣婆のようだった。
その後、桜子さんは打ち合わせ通りひろりんの上に跨った。ようやくひろりんが眼を覚ました。
「ウワァーーーッ!!!」
ひろりんは、身体の上に圧し掛かっている桜子さんを見て、大声を揚げた。
魔物に、憑依かれたとでも思ったのだろう。ひろりんは眼をむき出し、何も抵抗できず金縛り状態になった。それも計画通りだ。
ひろりんが怯んで動けなくなったところで、私と悠麻ちゃんはひろりんの両腕を掴み、頭の上で素早くぐるぐる巻きにした。
「何するんだっ!!」
「はっはっはっは・・・。やっとお目覚めかい?」
「お、お前・・・」
「覚えていてくれたのかい?ありがたいねえ・・・」
桜子さんは、ひろりんの上に跨ったまま、両手で全身を撫でまわした。
「やめろぅーーーーっ!!!化け物!!」
怒った桜子さんは、ひろりんの股間を思いっきり握った。
「ウワァーーーッ!!!」
ひろりんは大声を出したが両腕はすでに縛られ、身体の上には妖怪が載っていたので、身動きができなかった。
「今から、楽しいゴッコしようねえ。今日はひろりんが私の言いなりになるんだよ」
「か、かおりん?・・・」
ひろりんが私の顔を見て言った。
「この、邪悪な害虫め!浄化してくれる!」
悠麻ちゃんが言った。
「悠麻ちゃんまで・・・。ああ、俺は悪い夢でも見ているのか・・・」
「夢じゃないんだよ」
脱衣婆の真っ赤な唇が耳まで裂けた。
‥続く‥ |