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バディーズ フォーエバー!!
作:絵爾久万



4)


 高校生の悠麻ちゃんを筆頭に、桜子さんと私の3人はひろりんの家を目指して、迷う事なく国道17号を北上した。勝手知ったる熊谷だ。

 弓道着姿の凛々しい悠麻ちゃんが、鬼征伐に向かう桃太郎なら、その後に続く桜子さんは雉、私は猿と言ったところだろうか。犬は使い物にならない老犬ペスがいる。
 途中、悠麻ちゃんがきび団子の代わりに、熊谷名物【御家宝】を買った。

 ひろりんの家に到着すると、悠麻ちゃんはまず犬小屋に挨拶に向かった。中をのぞき込むと、暗い小屋の中で毛並みの荒いやせ細った犬が倒れていた。
 悪臭を放っていた。何かが腐敗したような、いやな臭いだった。すでに死んでいるようだった。

「ペス・・・」
 悠麻ちゃんが呼ぶと、犬小屋の中から老犬ペスがヨロヨロと這い出してきて、嬉しそうに尻尾を振った。死んではいなかった。
「元気だったか?今日はお前の大好物を持ってきたぞ」
 御家宝をやると、ペスは老犬のくせにガツガツと食べはじめた。
「普段、ろくな物食わせてもらってないからな。虐待され、こんな、寒いのに家にも入れてもらえず、お前可愛そうになあ・・・」

 御家宝を食べ終わると、悠麻ちゃんは腐敗臭、いや死臭のする犬を抱き上げた。つやの無い毛がごっそりと抜け落ちた。気味が悪くて後ずさりする私と桜子さんに、悠麻ちゃんはついて来いと、目配せした。
 それから私達は裏庭に周り、打ち合わせ通り窓から順序よくひろりんの家に侵入した。

 第一関門は難無く突破した。
 ファミレスで悠麻ちゃんが、詳しい見取り図を書き、侵入経路を説明してくれたのだ。
 悠麻ちゃんは、ひろりんの家の構造に付いては、かなり詳しく把握していた。
 家出していた時に、一ヶ月間ひろりんの家でお世話になったらしい。

 両親医者の悠麻ちゃんは、家業を継ぐべく英才教育を受けたらしいが、悠麻ちゃんの希望は医者になることではなかった。
 悠麻ちゃんの希望は、立派な戦士になることだった。
 悠麻ちゃんは高校を卒業したら、NPO軍隊に入隊することを望んだが、両親の猛反対を受けたのだ。
 そこで悠麻ちゃんは、元々メル友だったひろりんに相談を持ちかけた。両親とは決別したいと言う悠麻ちゃんに、ひろりんは自分の家で暫く暮らせばいいと話しを持ちかけたのだった。

 そこで悠麻ちゃんは、屈辱的な体験をしたのだという。詳細は話してはくれなかったが、ある日ひろりんのパソコンのお気に入りフォルダーを開き、素人投稿作品の中に、自分のパンチラの寝姿や制服姿、入浴シーンなどが満載の画像を見てしまったのだ。
 悠麻ちゃんはひろりんとは、一度も男女の関係は持たなかった。それらは全て盗み撮りだったのだ。

 結局、悠麻ちゃんは両親の元に戻りはしたが、ひろりんへの恨みは一生消せないものとなった。一生消せないものなら、ひろりんを消す以外に方法はないと、彼女なりに決断したのであった。
 

 その後、私達は一階に処刑場のセッティングをした。
 桜子さんは、美顔器をリビングのテーブルの上に置いた。私はその周りに、シザー、コーム、ヘアピン、メイクアップ用品、ネイルの類をセッティングした。
 悠麻ちゃんは弓と矢を部屋の隅に立て掛けた。それから通学バッグから茶色い瓶を取りだし、瓶の中の液体を美顔器の中にどぼどぼと注いだ。
 鼻を突く異様な臭いがした。茶色い瓶にはH2SO4と書かれた紙のシールが貼ってあった。

「やっぱり女がいるわ・・・」
 桜子さんが、ソファーの上に置かれたコーチのバッグを指さして、声をひそめて言った。
 テーブルの上にはワインボトルが1本と、飲みかけのグラスが2つ。
「うーん、ここで2人は数時間前しばらく会話をし、2階へ上がっていった。相手は成金趣味のキャバ嬢か!田舎物め・・・」
 悠麻ちゃんは、テーブルの上を指差して探偵のように言った。

‥‥身代わりだ。
 私はそのキャバ嬢に心の中で感謝した。

「現在、午前2時ジャスト!よし!決行しよう!」
 準備が整うと悠麻ちゃんの合図で、私たちは足音を立てずに二階へ通じる階段を上っていった。

 築40年の古い木造家屋であるから、部屋のドアはぴたりと閉まらない。先頭の悠麻ちゃんはそこのところしっかり把握しているから、ドアをそーっと押すだけで、音を立てずに寝室に侵入した。入り口で後ろを振り返り、私たちに中に入れと合図をした。
 寝室と言っても、二階は四畳半と六畳のふた間だが、真ん中の襖は取り外され、大きなダブルサイズのウォーターベッドが中央に置かれている。
 部屋に入ると、最初にベッドが眼に入った。続いて間抜けなひろりんの寝姿。隣りにはコーチのバッグの持ち主。
 窓から差し込む仄かな月灯りが、布団からはみ出したむっちりとした女の太腿を浮き上がらせていた。
 ベッドの上でひろりんとプレイするときは、いつもふたりだけだった。いつもふたりだけだった部屋に、今、私と悠麻ちゃんと桜子さんの3人とひろりんと、ひろりんの隣りにはひろりんの女。なんだか不思議な光景だった。

 悠麻ちゃんは、迷うことなくベッドに近づいた。
 私と桜子さんは打ち合わせ通り、悠麻ちゃんの両脇に着いた。3人は女を取り囲む形になった。ゆっくりと、女に掛かっている布団をはがした。
 私たちは同時に、ベッドの上で眠っている女を暗がりの中で観察した。特別取り立てて述べる程もない、普通の女だ。
 なんで、今夜ひろりんは私の代わりに、こんな普通の女を選んだのだろうか・・・。
 自分で言うのもなんだけど、こんな女より、私の方が明らかに魅力的だ。私は不思議に思った。
 しかし、暗闇の中で眼を凝らして見ると、女は黒の編みタイツに、ガーターベルトをつけていた。上半身は黒い編み上げのキャミ。はちきれそうな乳房が、半分はみ出している。引き締まったウエスト。蜂に刺されたようにパンパンに腫れたおしり。当然、右手には鞭を握っていた。
 ひろりんとは様々なプレイを試みたが、SMごっこは未開の地だった。この女に、新境地を開拓されたのだろうか。。。。そうに違いない。

 でも、一歩間違えば、私がここに寝て、悠麻ちゃんと、桜子さんの標的になっていたかもしれないのだ。ああ、恐ろしや・・・。

 SM嬢は殺気を感じたのか、眼を開けた、私たちの顔を確認すると、女の顔は恐怖に慄いた。声を上げようとした瞬間、悠麻ちゃんが女の口をガムテープで塞いだ。ほぼ同時に私は両足、桜子さんが両手を強く押さえつけた。
 女は声も出せず、微動だにできなくなった。
 隣りでひろりんは呑気に、いびきをかいて熟睡していた。一旦眠りに落ちると、ひろりんはよっぽどのことがないと起きない。

 次に女を立たせ、まずガムテープで両手を後ろで、ぐるぐる巻きにした。その後階下の居間に運びソファーに座らせると、SM嬢姿の女は身体を捩じらせて抵抗したが、容赦なく両足をぐるぐる巻きにした。
 事前にファミレスで、とことんシュミレーションしたので、無駄なく効率的に事は運んだ。
 さすがNPO軍隊希望するだけのことはある。きちんとしたストラテジーを持っている。高校生のくせに、あなどれない。

 次はひろりんだ。
 その前に、私は桜子さんにメイクを施した。特殊メイクだ。桜子さんには顔をクシャクシャにしてもらい、パールの効いた白いファンデーションを分厚く塗った。
 顔を元に戻してもらうと、深いシワが更に深くなり、凹凸がくっきりとなった。唇には赤色No.1の口紅を耳の方まで塗ってやった。
 シャドーはブルーで眼の下まで真っ青に塗ってやった。最後にアイブロー・ペンシルで、ドットを沢山書き加えた。
 特殊メイクの経験はなかったが、自分ながらに最高の出来栄えだと思った。

 準備が済むと私たち3人は、コーチのバッグの女を居間に残し、また二階へと昇って行った。
 老犬ペスが見張り役だった。


          ‥続く‥













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