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バディーズ フォーエバー!!
作:絵爾久万



3)


…そうだ!本当は私も此処で降りる筈だったんだ。

 駅を出て、初めて気がついた。今となっては目的は違うけど、私はもう2人を見捨てる事ができなかった。
 2人は駅ビルを出ると、国道方向に歩いて行った。国道に出ると右へ曲がりファミレスに入った。
 ガラス越しに2人の座り位置を確認した。2人は窓側の席に着いた。暫く時間をおいて、私も店に入った。

 入り口で店員に、お1人様ですか?と聞かれ、はい。と答えるとカウンター席でよろしいでしょうか?と言うので、私は、窓側をお願いしますと言った。
 丁度、運良く2人の隣りの席が空いていた。
 私は2人の席が見える方向に腰掛けた。桜子さんが私に背を向け、テーブルを挟んで、向かい側に悠麻ちゃんが座っている。
 私と桜子さんと悠麻ちゃんは、同じ直線状に位置していた。つまり皆既月食状態だ。悠麻ちゃんから私は死角になるし、私がちょっと身体を動かせば悠麻ちゃんの動きもよく見ることができた。

 2人は和風ハンバーグステーキセットを注文した。私も同じものにした。真似したわけではない。こういう緊迫した状況で、身体が肉を求めていたのだろう。ドリンクバーは頼まなかった。

「あんた、ところで、あいつの家の鍵持ってるの?」
 桜子さんの声は、太く声量があるので後ろを向いていても、よく聞こえた。
「ない・・・」
「じゃ、どうやって入るのよ?あたしはご招待受けたことないんでね」
「鍵なんかなくても大丈夫。裏に回って窓から進入するんだよ。サッシの鍵壊れてるから、入れるんよ。古い木造家屋にひとり住まいだからさ。両親死んでるし。ペスっていう老犬一匹いるけど、私になついているから大丈夫」
「いなかったらどうする?」
「待つっきゃないだろ。ここまで来たんだ。何怖じけ付いてるんだよ!今になって」
「怖気づいちゃいないけどさ、もし、彼女としっぽり濡れてたらどないする?」
「ヒロキの事だ!!その、可能性は高い。尚更闘志が沸くってもんだよ。ふたり同時に逝かせてやるさ」

 な、なに?ヒロキ?ヒロキって・・・。心臓が口から跳びだしそうだった。
 ヒロキって、もしかして、あの、私のひろりん?ひろりんはヒロキだよ。そんなぁ・・・。そんな事ってある?そんな偶然ってあるの?
 うそ!たまたま、名前が一緒なだけでしょ?ヒロキなんてどこにでも転がっている名前だし。
 でも、ここ熊谷だし、ひろりんの家近いし。古い木造家屋にひとり住まい。寝たきりの老犬もいた。
 1階のサッシの鍵が壊れているのは知らなかった。両親死んでることも。私より高校生の悠麻ちゃんの方が詳しいじゃん。それはかなりショックだ。

「じゃ、準備してくるから!」
 ハンバーグを食べ終わると、悠麻ちゃんはそう言って席を立った。
 悠麻ちゃんは私のテーブルの脇を通り、トイレへ向かった。戻ってきたとき、私と目を合わす可能性がある。
 でも、あのふたりほとんど自分たちだけの世界に入り込んでいるから、多分気付きはしないだろう。悠麻ちゃんはなかなか戻ってこなかった。
 桜子さんはタバコに火を点け、ゆっくりと煙を燻らせた。

 だけど、さっきからの2人の会話、ひろりんならありえない事はない。いや、99パーセントありえる。ふたり一緒に逝かせてやるって意気込んでた。
 逝かせてやるって・・・。殺っちゃうってこと?まさか・・・。でも、あのふたりなら何するかわからない。
 私がひろりんの家に行ってたら・・・。
 ふたり一緒に逝かせてやるって、もしかして、ふたりの内のひとりは私になってたって事?

 身震いがした。
 ひろりんと2人で昇天?そんなのいやだ!それほど愛してはいない。あんな、私を虫けらのように扱う男、命かけて愛する価値はない。それはわかっている。
 今日だって、こんな熊谷くんだりまで呼び出しておいて、重たい荷物抱えてへとへとになって、やっと会いに来てやったっていうのに。帰っていいって。ひどすぎる。
 あんな男、いっその事、殺っちゃった方がいいのかもしれない・・・。
 そうだ!あんな害虫、駆除するべきなんだ。
 私はハンバーグの最後の一切れを、口の中に放り込んだ。勢いあまってガツンとフォークをまで齧ってしまった。何故か無償に腹が立ってきて、私はナイフとフォークを両手に持ったまま、テーブルを思いっきり叩いた。
 桜子さんがチラッと後ろを振り返った。

 トイレから悠麻ちゃんが戻って来た。袴を履き、額に鉢巻きを巻いている。肩には大きな弓を抱え、大股で颯爽と歩いてくる。まるで、これから獲物を捕らえに行く果敢な志士だ。私はその凛々しい姿に性別を超えて見惚れた。

「悠麻ちゃんの弓道着姿、初めて見たけど勇ましいね。ぐぐっときちゃうよ」
「いさぎよく生きるのが、真のサムライってもんだよ」
「あんた、いつからサムライになったのさ?」
「姿形は卑しい女だけれど、俺は生まれた時からサムライさ」
 悠麻ちゃんは言った。
 桜子さんの、タバコを持つ手から灰が落ちた。


 ついて行こう!あんな害虫駆除するべきだ!

 私は隣りの席へ行き、ふたりの前にひざまずいて言った。

「お供させてください!」

「あんた誰?」
 悠麻ちゃんは訝しげに私を見た。
「電車の中からずっとご一緒させて頂きました」
「あっ、この人電車の中で、私達の前に座ってた人」
 桜子さんが思い出してくれた。
「おふたりの話は最初からずっと聞かせて頂きました。偶然にも目的は一緒なんです」
 私は今日ひろりんと会う約束をしていた事は、言わなかった。この場の雰囲気では、私が射止められてしまうとも限らない。
「まさか・・・。あんたも?」
「はい」
「して武器は?」
 悠麻ちゃんの目付きは、もうたんなる普通の高校生のものではなかった。
「ここに持ってます。シザーとコームとヘアピンとネイル。商売道具ですけどね」
「そんなもんで。やれるのか?」
「りっぱな凶器です」
「ハサミとヘアピンか。なるほど、使いようによっては・・・」
「ところで、あんたはあの男にいったい何をされたっていうんだい?」
 私の顔を覗き込む、桜子さんを制するように、悠麻ちゃんが言った。

「いや!事情は今さら聞く必要はないだろう。私たちの話を聞いているなら、真の目的は心得ているのだろうな」
「もちろんです。今、標的も間違いなく合致しました」
「よし!それでは仲間に加えてやろう」
「ありがとうございます!」
「仲間がひとり増えれば、ますます心強いじゃないの」
 桜子さんが嬉しそうに言った。

 悠麻ちゃんが拳を握った。桜子さんもそれに習った。私も見よう見真似で拳を握った。

「バディーズ フォーエバー!!」
「バディーズ フォーエバー!!」
「バディーズ フォーエバー!!」

 拳を握った3人の腕は、真中で力強く重なり合った。

            ‥続く‥












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