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気がつけばいつもそこに君が
作:やくも



Second Day(2):夕飯戦争


 ポツリポツリと。
 灰色の空の隙間から、とうとう雨粒が降り出した。
「やだ、洗濯物取り込まなくっちゃ」
 週刊誌を読みふけっていた母さんが、急ぎ足で庭に向かう。
 降り出したばかりで、雨脚はまだそれほど強いものではない。
 空と同じ灰色のアスファルトの地面が、雨に濡れて次々に黒く変色していく。
「雨、かぁ……」
 窓ガラス越しに外の景色を見て、七星は呟いた。
 ぼんやりと空を見上げては、どこか憂鬱そうに溜め息をついている。
 俺はただ、そんな七星の横顔を眺めていた。
 一夜明けて、七星は普段どおりに振舞っている。
 俺は最初、それが無理して作っているものじゃないかと思った。
 けれど、こうして見る七星は普段の何一つ変わらず、俺の余計な心配もただの考えすぎだったんじゃないかと思わせる。
 それなのに。
 まだ、頭から離れないんだ。
 昨日の、七星の言葉が。

 『――うん。もう平気』

 平気なわけがない。
 そんな声じゃなかった。
 だけど俺は、それを確かめることができなかった。
 なんのことはない。
 ただ扉を開けて、七星の顔を見るだけでよかったのに。
 できなかった。
 心のどこかで、それを怖いと思っている自分がいた。
 眠れない夜は、その反動だったのかもしれない。
 もしかしたら俺は、未だに……。
 自分と向き合うこともできずに、今日までを生きてきたのかもしれない。
「…………」
 目を閉じれば、鮮明に思い出せる。
 だから夜は、嫌いだった。
 目を閉じなくては眠ることもできないのに、目を閉じれば何もかもが押し寄せてしまうから。
 一体、俺は……。
 いつからそれに、慣れてしまったんだろうか。

 ゆっくりと目を開ける。
 そのまま目を閉じていると、眠ってしまいそうだったから。
 と……。
「……え?」
 目の前に、何かがある。
 それが七星の指先であると気付くのに、ずいぶんと時間がかかった。
 しかし、それに気付くよりも早く。
「おりゃ!」
 そんな七星の声と共に、俺の額に軽い衝撃が訪れる。
 ズビシッ、と。
 あえて効果音を付けるなら、そんな感じだろう。
「な、なんだ……?」
 突然の衝撃に、俺はたじろいだ。
 その衝撃の正体が七星の手刀……ようするにチョップであることに気付くのに、やや時間がかかった。
「何してんだ、お前……」
「いや、何って言われても……」
 目の前の七星はどこか笑いを堪えているような様子だ。
「隼人があんまりボーッとしてるもんだから、いっちょ気合いを入れてやろうかなと」
 だから、どうしてそれでチョップが飛んでくるんだ、チョップが。
 気合を入れるって言えば、平手打ちだろ普通は。
 いや、だからといっていきなり平手打ちを見舞われてもそれはそれで大迷惑なんだが。

「で、どう?」
「どうって……何が?」
「少しは目が覚めた? あんまりボーッとしてると、脳が溶けるわよ」
 身を乗り出しながら七星は言う。
 今になって気付いた。
 俺と七星の体の距離が、ずいぶんと近い。
 まぁ、原因は七星がずいっと身を乗り出しているせいなのだが。
 そのせいで、わずかながらにも七星の胸元がはだけ、そこから肌が覗いていた。
 不可抗力というか、あくまで意識して見ようとしているわけじゃないのに、正直目のやり場に困る。
「い、いいから離れろ。危ないから!」
 俺は目を背けながら、七星から視線を外した。
 ああ、くそ。
 なんだって俺がこんなに緊張しなくちゃいけないんだ。
 口にした言葉とは裏腹に、俺の心臓は確かに鼓動を高鳴らせていた。
「む、なんか釈然としないんだけど」
 七星は俺の態度が気に入らなかったのか、わずかに眉を吊り上げる。
「釈然としないのはこっちだ、バカ! 少しは考えて行動しろ!」
「バ、バカって言うな! 昨日あんだけ忠告したのに、まだ分からないかアンタは!」
「うるせぇ! あれのどこが忠告だ! ああいうのは駄々をこねるって言うんだよ!」
「うー、言わせておけば!」
 ギャーギャーと。
 俺と七星は、一体何が原因なのか分からなくなるほどに野次を飛ばしまくっていた。
 そうしている間にも、時間だけが流れていく。
 だけど、それでよかったのかもしれない。
 胸の内でくすぶってた黒い気持ちはいつのまにか消え、口喧嘩しているこの瞬間さえも楽しいと、そう思えるようになっていたから。



 雨は次第に降る勢いを増していった。
 庭にもいくつかの小さな水溜りができ、降りしきる雨が一つまた一つと波紋を打ちつけていく。
 パチン。
 駒が盤を叩く。
 どういう経緯か、俺と七星はリビングの真ん中で将棋を指していた。
 それはというのも、母さんがどこからか見つけてきた将棋盤と駒をリビングまで運んできたのが発端だ。
 その頃ちょうど低レベルな争いを繰り返していた俺達は、その決着を頭脳戦に持ち込むことになったのだった。
 だが、しかし。
 対局もそろそろ終盤を迎えようとしているが、俺はかなり追い詰められている。
 俺の王将は守りをことごとく突破され、もはや丸裸に近い状態だ。
 対する七星は余裕どころか、俺の飛車と角をすでに奪い取っている。
 これでどう戦えというのだろう……。
「はい。王手銀取り」
「げ……」
 また負けた。
 わずか六十二手で詰みである。
「ふっふっふ、まだまだね隼人」
 勝ち誇り、七星は見下すように嘲笑う。
「ぐ……」
 言い返そうにも、俺はグゥの音も出ない。
 一時間の間に五回の対局、結果は俺の五連敗。
 そりゃ、将棋なんて基本ルールを覚えてる程度で戦略なんてものは何一つなかったが、まさか五連敗とは……。
 プライドとか尊厳とか、言葉ばっかで形になってない色んなものが俺の中で音を立てて崩れ落ちていく。
「もう一勝負しようか?」
「……いい。もう遠慮する」
 ドッと疲れが押し寄せる。
 よもや全敗するなどとは、思っても見なかった。
 得手不得手という言葉はあるが、そんなので慰められると余計に惨めになってくる。
「ふふん」
 コ、コイツ、今鼻で笑いやがった……。

 俺は将棋盤を運び、今はもう使われていない、過去に父親の書斎として使われていた部屋に入った。
 もう使われなくなってずいぶんと経つのに、掃除などの手入れはしっかりと行き届いている。
 どこか懐かしく感じる部屋の匂いが、少しだけ俺の後ろ髪を引くようだった。
 押入れの戸を開け、そこに将棋盤を戻す。
 俺の父親が死んで、もう十五年が過ぎようとしている。
 幼い頃の記憶なんて、あてにはならないけど。
 この部屋はあの日から……父親が最後にこの家を出て行ったあの日から、何一つ変わらないままだった。
 掃除をしているのは母さんだろう。
 部屋の大半を占める書物を整理すれば、もっと広く見えるんだろうけどな。
 本の匂いの染み付いた部屋。
 俺が父親と共に過ごした時間は、刹那的なほどに短い。
 面影すらまともに思い出せない父親。
 写真でしか知らないその顔は、母さんによく似合う笑顔で笑っていた。
 戸を閉めて、部屋を出る。
 また、この場所だけ時間が止まる。



 リビングに戻ると、時計は夕方の四時になったところだった。
「もう四時か……」
 とはいっても、起きてからまだ三時間ほどしか経っていない。
 今日はなんだか時間の流れ方が遅かったり早かったりで、時間感覚がおかしくなりそうだ。
 雨は相変わらず降り続いているし、勢いも少し強まっているようだ。
 さて、いよいよすることがなくなった。
 せめて天気が晴れていれば、外に出かける気にもなっただろうに。
「さて、と……」
 お茶を飲んで休憩していた母さんが、そう言って腰を上げた。
「んー。そろそろ買い物行ってこようかな」
 なんだかんだでもう夕方だ。
 夕飯の支度を始める時間もそろそろ押し迫っている。
「ああ、いいよ母さん。買い物は俺が行ってくる」
「あら? 頼まれてくれるの?」
「うん。何もしないでボーッとしてるよりはいいから」
「それじゃ、お言葉に甘えるわね」
 そう言うと、母さんはメモ帳に買い物のリストを書き始める。
 その間に俺は部屋に戻り、上着を取ってくることにした。
 夏とは言っても雨の中を半袖で歩くのは寒そうだ。

「はい。それじゃお願いね」
 母さんからメモの紙とお金を受け取り、俺はそれをポケットの中に突っ込んだ。
「んじゃ、行ってくる」
「はい、気をつけてね」
 靴を履き、玄関の扉を押し開ける。
「結構強いな……」
 軒先に立つと、思った以上に雨脚は強まっていた。
 風はないが、気温も肌寒さを感じるほどに冷え込んでいる。
「っと、いけね。傘は、っと……」
「はい」
「あ、サンキュ……って、ちょっと待て」
「何? まだ忘れ物?」
「そうじゃない。ってか、何でお前がいるんだよ七星」
「何よ。いちゃ悪い?」
「いや、別に悪くはねーけど……」
「なら問題ナシ。さぁ、さっさと行きましょー」
 そして一足先を歩き出す七星。
「はぁ……ま、いっか」
 考えるよりも諦める方が楽だと、俺は結論を出す。
 傘を広げ、道を歩く。
 バラバラと音を立てて降る雨の中、数歩先の赤い傘が、嬉しそうにくるくると回っていた。



「ジャガイモ、ニンジン、タマネギに牛肉……って、どう見ても今夜はカレーだよな、これ……」
 母さんに渡されたメモを見ると、そこにはカレーの定番の食材一覧が書き連ねられていた。
 いや、そもそもメモの一番上がカレールーになっている時点でモロバレなんだけど。
「ニンジンにタマネギ、っと。あとは牛肉だけ?」
 俺の隣でカートを押す七星が声をかける。
「いや、他にもあるな。トイレットペーパーと洗剤と、あと牛乳だな」
 メモを読み上げながら、俺と七星は並行して歩く。
 最寄のスーパーであるここは、時間帯的にも多くの客足が集中していた。
 品揃えを考慮すれば駅前まで足を伸ばした方がいいのだろうけど、大体の日用品や食材はここで揃う。
 それに今日は雨降りだ。
 雨の中、わざわざ遠出したくないと思う人も少なくないのだろう。
「よし、と。んじゃ、あとは牛肉だけだな?」
「そうだね。って、ちょっと待って」
「っと、何だ?」
 歩き出した俺の肩を七星が掴む。
「いいから、もうちょっと待って」
 そう言う七星は、なにやら熱心に携帯のディスプレイを凝視していた。
 なんなんだ、一体?
 と、そんな疑問を浮かべたとき。
「ダッシュ!」
「……は?」
 七星は突然走り出した。
 それも、肉売場に向けて一直線に。

『ただ今よりお肉売場にて、タイムサービスを行わせていただきます。数に限りがございますので、お早めにご利用くださーい』
 そんな店内放送が流れたのは、七星がダッシュした直後のことだった。
「まさかアイツ、これを狙ってたのか……」
 七星がジッと携帯を見ていたのは、そこにあるデジタル表示の時計でタイミングを計っていたのだろう。
 事実、七星の動きに合わせるようにして、周囲で目を光らせていた主婦の方々が押し寄せるように肉売場に集結した。
「……なんだ、これは……」
 すし詰め状態とはまさにこのことを言うのだろう。
 肉売場の正面はちょっとした戦場へと変貌し、無言の圧力が奥様方の士気を高揚している。
『はい、押さないで。押さないでくださーい。数は十分にご用意しておりますので、どうか押さないでー』
 売場担当の店員の人だろうか、メガホンを片手に構えて売り子をしている。
 俺はその人だかりが恐ろしく、中々近くに寄れないでいた。
 いや、誰だってこんな後継を目の当たりにすれば引くと思う。
 それよりも、我先にと突っ込んでいった七星は果たして無事なのだろうか?
 肉の有無よりも、本気でアイツの身が心配になってきた。
「お待たせ」
「うお!」
 と、七星はいつの間にか俺の背後に立っていた。
 しかもその手にはしっかりと、戦利品の割引シールつきの牛肉が握られていた。
「チョロいチョロい」
「……」
 俺は感心していいのか呆れていいのか、どちらにしても言葉が出ない。
「……お前、スゴイな……」
「そう? 慣れれば結構簡単だけど」
 慣れる、か。
 ……アレに、どうやって慣れろと?
 俺達の目の前では、未だに争奪戦が繰り広げられている。
 規模こそ小さいものの、あれは間違いなく戦場だ。
「……さっき携帯見てたけど、あれってやっぱりタイミングを計ってたのか?」
「そうそう。日によって微妙に誤差が出るんだけどね。まぁ、今日は平均より少し早かったかな。主婦の人達が一瞬で遅れてたし」
 一瞬、ねぇ……。
 あの、ミサイルみたいな勢いで飛びついたオバサン達の反応は、あれでも遅れていたということだ。

「ま、なんにしても私の敵じゃないけどね」
 勝ち誇り、七星は言う。
 ……もはや何も言うまい。
 俺は今日、あまりにも身近すぎて気付かなかった戦争を目の当たりにした。
 それでいいだろ?
「どうしたの隼人? なんか疲れてない?」
「いや、別に疲れてはないけど……」
 溜め息を一つついて、俺は続けた。
「お前、いい母親になると思うよ。うん」
「な…………」
 俺としては、特に意味もなく告げた言葉だった。
 けど、七星にとってはそうではなかったようで。
「……七星? どうかしたか? 顔、赤いぞ?」
「べっ、別に! な、何でもない!」
 何でもない割には、やたらとろれつが回っていない。
「……そうか?」
「そう! ぜ、全然おかしくない! おかしくない!」
 二度繰り返す。
 わけが分からない。
 俺、何か変なこと言ったっけ?

 雨の帰り道。
 行きとは違い、今度は俺が七星の数歩先を歩いている。
 が、なにやら七星の様子がさっきからおかしい。
「落ち着け、私……何も聞いてない何も聞いてない何も聞いてない……」
 そんな囁きがさっきから聞こえてくる。
 その表情は赤い傘が邪魔して読み取れないが、どこか慌てているのは確かだった。



 帰宅した途端に、今まで強かった雨脚が目に見えて弱まり始めた。
 何にせよ、雨が止んでくれるならそれに越したことはない。
 庭の草木に水をやる手間が一回だけ省けたと思っておこう。
「ただいま」
「ただいまー」
「はいはい、ご苦労様」
 エプロンをかけた母さんがキッチンからやってくる。
 俺はカレーの材料が一式詰まった買い物袋を母さんに預け、家の中に上がった。
 七星もそれに続く。
「お金、ここに置いとくよ」
「ええ。……あら? 思ったより安く上がってない? セールでもやってたの?」
「ああ、それは……」
 答える代わりに、俺は視線を七星に移した。
「タイムサービスやってたんで、それのおかげだと思います」
「あ、そうか。今日は木曜日だったわね」
 そこで素直に納得するということは、母さんもあの戦場を目の当たりにした、もしくは挑んでいるのだろう。
 この家の女性陣は、とてもパワフルだと改めて実感させられた。

 いつもと変わらない夕食の時間が過ぎていく。
 七星と母さんは食事よりも会話を楽しんでいるようだが、俺は会話よりも食事を優先する。
「母さん、おかわり」
「早っ!」
 隣にいる七星が驚きの声を上げる。
「喋ってばっかいるからだろ。別に極端に早いわけじゃねーって」
「何言ってんのよ。会話と食事があるから団らんになるんじゃないの」
「そうか? 食いながら喋ると、かえってマナー違反な気がする」
「食事の手を止めればいいじゃないの」
「それだと腹が減るだろ」
「はいはい、そこまでそこまで」
 小さく笑いながら、母さんは俺に皿を渡す。
「そういう会話だって、立派な団らんよ。二人とも、気付いてる?」
 言われて見ればその通りだった。
「でも、七星の気持ちも分かるけどね」
「さっすが明美さん。分かった、隼人? 食うだけが脳じゃないのよ」
「……すごい言われようだな、おい……」
 そんな俺と七星のやり取りを見て、母さんはどこか本当に嬉しそうに笑みをこぼした。
「そっか……もう、十年になるんだね。この三人が家族になってから」
 その言葉に、俺も七星も食事の手を休めた。
「いつの間にか、こうしてるのが当たり前になってたもんね。振り返ってみれば、本当に色々なことがあったけど……」
「何だよ母さん。いきなりさ……」
「あら? おかしい?」
「いや、そんなことはないけどさ」
 俺はグラスの水を一口含む。
 隣の七星は、どこか真剣な表情で母さんの話に耳を傾けていた。

「十年、か……あっという間でした。少なくとも、私にとっては」
 七星が口を開く。
 どこか嬉しそうに、楽しそうに。
「元はといえば、全部私のわがままから始まったんですよね」
 カチャリ、と。
 スプーンが皿の上に置かれる。
「私が一人になったとき、本当なら親戚に引き取られるはずだった。それを私が無理言って、そうしたら、明美さんが私を引き取るって」
「……ええ、そうね。そんなこともあったわ」
 母さんはゆっくりと目を閉じ、開く。
「それが今から十年前、か……本当に、月日が経つのは早いものね」
「ホント、そうですよね……」
「衝突もあったし、すれ違いもあった。でも、今となってはいい思い出ね。二人目の子供が、意外な形で授けられたんだもの」
 その言葉に、七星は微かに頬を赤らめて笑った。

「でもまぁ……」
 そこで母さんは一度言葉を区切り、なぜか俺に視線を向け直して続けた。
「七星がこの家にいたいって言った本当の理由は、別にあるんだろうけれど…………ね?」
 最後にまた、視線を七星に戻す。
 俺は母さんの視線に倣って、隣の七星に視線を移した。
 するとなぜか、七星はさっき以上に頬を……いや、顔全体を真っ赤にして固まっていた。
「な、な、な、何言い出すんですか明美さん! わ、わ、わ、私は別に隼人が……」
「あら? 私、隼人がどうこうなんて言ったかしら?」
「あ、う、それは、その…………」
「…………」
 おいおい……。
 俺は今聞こえないフリをしているけど、当然会話は筒抜けだ。
 その、なんだ。
 なんだかとんでもなく恥ずかしくなるような会話をしてないか、この二人……。
「……ごちそうさん。俺、先に風呂入ってくるわ」
 ここは逃げの一手だ。
 この様子じゃ、母さん悪ふざけの矛先が俺に向くのも時間の問題だろうし。
「ちょ、ちょっと待ちなさい隼人! アンタ、絶対に誤解してるから!」
 誤解するような会話じゃなかっただろうと、内心で呟いて立ち去る。
「こ、こら! 待て、バカ隼人!」
 七星の罵声も母さんの笑い声も無視して、俺は階段を上がる。
 ああ、もう。
 うるせぇな……。
 恥ずかしいのは、お前だけじゃないんだよ。












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