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作業が完成するまで読みにくい箇所が多々あるかと思いますが、ご了承いただけますよう、お願いいたします。
1.澄香と仁太 その1
終業の知らせを告げるチャイムが鳴ると同時にデスク回りをざっと片付け、向かいに座る主任に軽く会釈をして会社を出る。
時計を見ればきっちり五時四十分。
澄香は、判で押したような変わり映えのしない毎日に多少の嫌気はさしていていても、この生活から抜け出そうとは思っていなかった。
仕事を家に持ち帰ることもなく、残業もほとんどない。
事務用品を扱うこの会社は、地元では結構その名が知れ渡っているが、全国的にはまだまだ認知度は低い。
ただし景気の良し悪しにも左右されず地道に今の地位を築いてきた功績は、認められて然るべきであると澄香をはじめ大抵の社員がそう思っている。
ある意味優良企業だと言えるのかもしれない。
もともと官公庁や教育機関への商品の納入が売上のほとんどを占めていたのだが、昨今の自治体の財政難が影響して注文は年々減っている。
にもかかわらず業績を伸ばし続けているのは、奇跡に近いとまで巷でささやかれるのだ。
ネット販売に目をつけた上層部の機転で独自性を前面にだし、発展の著しい中国やインドへの需要も見越した方向転換が、功を奏したというわけだ。
この不況の中、年末のボーナスもきちんと支給され、社員全員がほっと胸をなでおろしたのも記憶に新しい。
ここでも会社を辞める理由は見つからない。
たとえ平凡な毎日であったとしても、ここで働くことに何の支障もないのは容易く証明できる。
もちろん結婚後も仕事を続けている女性社員は多い。
澄香に結婚の予定があるわけではないのだが、この環境はやはり捨てがたいものがある。
変化のないことが逆に最高の幸せであるのだとそうやってどうにか自分を納得させ、寄り道をすることもなくただひたすら駅を目指す。
歩道の意地悪な隙間にヒールを挟まれないように細心の注意を払いながら。
さっきから薄々、背後に人の気配を感じていた。
誰かに見られているような、後をつけられているような、そんな感覚……。
とにかくその得体の知れないモノから少しでも離れようと、歩幅を広げ速度を上げる。
それに合わせるように、ヒールのコツコツという音の間隔も、次第に狭くなる。
「池坂。いーけーさーかーっ。待てよ!」
池坂澄香、二十四歳。独身。
後ろで叫ぶ、聞き覚えのある声に。足を踏み鳴らし、立ち止まった。

(HPです。)
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