決戦8
礼儀との話を終えて、制羽の所へ向かう。
「制羽」
「園典を落としてからの帰還かと思ってましたが?」
「事情が変わった」
「目の前の奴等をここに引き付けて置く間に落とす事など容易い事でしょう」
お前がいなければな、とは言えない。
「園典を落としても王族がいれば同じ事。伯明を討ちその上で園典を落とすさ」
「なるほど、では伯明は私にお任せを。明日首を持って参りましょう」
くくく、と喉の奥で笑う。
「その事なんだが、楽の背後から部下の部隊が迫っているんだ。それと連携を取れば確実だと思うが」
「明日の攻撃準備はもう終わっているのです。それを伸ばすとなると士気にも関わるし、それにその部隊が戦闘出来る状態であるかも分からないでしょう」
痛い所を突くな。
しかし、蓬樹がそんなお前みたいな戦闘をする訳ないし、仁都や程地も付いてるから万に一つの事も無いだろう。そう言いたいが言うと話が拗れる。
「では、どの様に戦う」
「敵は強いといっても数はわれ等の三分の二程度、それに遠征の疲れもあるでしょう。隊を三つに分け、まず二方から時間をずらして攻めれば敵は混乱する。そこをもう一隊で攻めればそれで終わります。心配でしょうが、明日は我が隊に功を立てさせて下さい」
それで話は終わり。
姫辰相手では役不足。数で押せる相手ではない。
略奪ばかりしてきた部隊が精鋭相手に作戦通りに動けるものか。
あの制羽の態度に思わず出る舌打ち。
言葉を出す事無く自分の陣へと戻る。
翌日、夜明けと共に鳴り響く出陣の合図。
城門に登り指示を出している制羽。
俺は螢送内で展開している自陣で随時入ってくる報告を聞いている。
「王子。敵が出陣してきますぞ」
「何?」
「思ったより、速かったですな」
かか、と笑う姫辰。
「笑っている場合か、どうするんだ?」
「当然反撃します。王子はここで待機していて下さい」
「いや、私も」
「ここは敵の真意を探るだけで良いかと。未麻中佐を」
傍に控えていた兵に未麻中佐を呼んで来るように伝える。
「王子は後方に警戒を。もしかしたらこちらの予測速度を上回る進軍かもしれませんから」
「分かった」
「お呼びですか」
「あぁ。中佐の怪我の具合はいかがかなものかと」
「それは実戦でお見せするのが一番かと」
「分かった。王子、中佐に一隊を預けても」
頷く。
「中佐、頑張ってくれ」
ぱあぁん、と音が聞こえてきそうな敬礼。
「盗賊上がりが何を兵隊ぶっている!!」
槍を振り回し、敵兵をなぎ倒す。
怪我は完治しているのだが、軍医が納得しない。
しかし、これで納得しただろう。
「さぁ、次は誰だ!!!」
答えなど待たない。躊躇している兵を恫喝し道を開けさせる。
一旦崩れれば持ち直すのは至難の業。それを待ち直せるのは名将の証。
しかし跋維の名将は佳乃一人。
その佳乃は前線では無く今螢送市内にいる。
逃げる跋維兵を追撃する。
「深追いはするなっ!!」
逃げる跋維兵はまっすぐに螢送に向かう。
ある程度距離を開けて、同じスピードで追う。
そして、
「中佐、帰還命令が」
「あぁ」
螢送まで後一キロの所で追撃を中止。
「こっちが追い討ちを受けない様に注意しろ」
後方を警戒しつつ陣へと戻る。
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