ブックリスト登録機能を使うには ログインユーザー登録が必要です。
  En-gi 作者:
首都攻防戦4
 静まる間。
「私は民を守る為にここにいる」
「私も将軍と同じくその気持ちを持っています」
 私の声に続いて響く声。
声の主は『未麻みあさ』中佐。
先の戦いでも殿を務めて、被害を軽減した勇士。
「私も王族の一員としてこの国を民を守る為に命を懸けよう」
 王子も決意を込めて声を張り上げる。
「王族は逃げたじゃないか」
 呟きが聞こえた。
声の聞こえた方を睨みつける未麻中佐。
それを手で制す王子。
「それは」
「今はそれを行っている時では無い。事態をこれ以上悪化させない為にはこの事を国民に知らせるほうが先決だ」
 私の提案に静まった間がざわつく。
「何を!?」
「そんな事をすれば軍の威信が」
「暴動が起きるぞ」
「敵によって知らされるよりはマシだ!!」
 声の限り叫ぶ。
「今回の事は隠しきれる事では無い。それならこちらから公表して敵の先手を打った方が良い」
「誰がそれを?」
 適任者は一人しか居ない。
王子の方へと向き直る。
「王子。貴方しかいません」
 一瞬、たじろいだが、
「分かった。私から話そう」


 準備はすぐに整えた。
「楽に住む国民にお伝えしなければならない事が起きました。……現在、我が楽は反乱を起こした跋維党と名乗る組織と戦闘を繰り広げております」 
 王子は前見て話している。
原稿など無い。自らの言葉で話してこそ伝わる。
伝わって貰わないと、戦争どころではない。
「昌機平野における我が軍の敗走により……」
 俯いて、唇をかみ締める。
これ程屈辱的な報告は無いだろう。ある意味敗北宣言なのだから。
意を決し、顔を上げて、
「王は……後事をわれ等に託し……ここ園典より……離れられました」
 フラッシュが眩く光る。
王子は顔を伏せる事無く正面を向いて、
「王の取った行動については以上です」
 次々と質問が飛ぶ、何故逃走したのか? 何処へ? 市民達を見捨てたのか? 等。
それらの質問に王子は王族として一人の国民として答えていく。
そして最後に、
「楽の王族として私の命は楽と共にあります。この戦争が終われば王の取った行動に対する責任を取らさせて頂きます。それまでの間、この命。生かしておいて欲しいのです」
 頭を下げる。
この気持ちが国民に伝わるといいのだが……。


「先手を打たれたな」
 夕音の宿舎。
傷ついて前線に出られずに療養中のベッドの上で放送を見る。
「どうしますか?」
 副官の『白亜はくあ』がテレビを見ながら聞いてくる。
「とりあえず王の逃走ルートに伏せた兵は引き上げだろう。もう意味が無いしな」
「了解。その様に伝えておきます」
 指示を出しに部屋を出る白亜。
あの戦いの後、才蔵達は姿を消し、あの『蒼空乃極』も無くなっていた。
どうやら上手く使われていたようだ。
そう考えると腹立たしくもあるが、貴重な体験をしたと思う自分も居る。
ま、このまま終わる気は無い。仙士と言っても手が届かない相手では無いと分かった、
再び見える事があればこの借りは返そう。


 園典。
王子の放送の後、将校や兵達に選択の時間を与えた。
残るか、去るか。
去るのなら追わないし罰を与えるような事もしない。
残るのならこの国を守る為に戦って欲しい。
考える時間は夜明けまで、とそれだけを伝えた。
政治家や軍の主戦派、非戦派。地位や名誉を着飾った連中は殆ど逃げ出した。
「将軍は残りますか?」
「お前は?」
 藤邑と部屋で紅茶を飲んでいる。
相変わらず、のんびりしたものだ。


+注意+
・特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
・特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)
・作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。