ブックリスト登録機能を使うには ログインユーザー登録が必要です。
  En-gi 作者:
夕音の決闘6
 座り込んでいる私達の前に二人の男が居る。
雰囲気、というか先程の行動から考えて敵では無いとは思う。
「さて、まずは自己紹介からだな。俺は『詩月しづき』史紀と同じ師匠に師事していた。で、こっちが『大蛇丸おろちまる』『地仙ちせん』の仙士だ」
「よろしく」
 詩月と名乗った方は左手に史紀ちゃんの盾より一回りほど大きな盾。華奢で穏やかな雰囲気が漂っているが、どことなく史紀ちゃんに雰囲気は似ている。
 大蛇丸と呼ばれた方は長柄の斧に筋肉質な体格。戦闘時に目は獰猛な野獣の様に輝いていたが今はその輝きは無く値踏みするかの様な目をしている。……なんとなく胸元を隠してみる。
「で、あっちで倒れているのは?」
 二人の仙士が逃げた事で緊張が途切れたが、ここは紛れも無く危険地帯。
「と、とりあえず、ここから離れませんか?」
 向こうで倒れているのは跋維党の幹部らしき男。
流石にこの街の兵隊さん相手に大立ち回りをする訳にはいかない。
「それもそうですね」
「じゃ、行くか」
 二人を先頭に史紀ちゃんを抱えて後に続く。


 夕音の街からの脱出は思いのほか簡単だった。
もっと抵抗、というか兵隊がわらわらと出てくるかと思っていたのが恥ずかしくなってくる程に。
二人の後に続いてきたのは私達が車を隠した場所の反対側。
「さて、ここならいいでしょう」
 私は史紀ちゃんを寝かせて、簡単な治療を行う。
「まずは……」
 史紀ちゃんとの出会いから今までの事を話す。
それほど長い付き合いでないのが不思議なほどに史紀ちゃんに惹かれている自分に驚いた。
私の中でこの子は大きな存在になっていたんだな。


「この無鉄砲さは誰に似たんだか」
「お前じゃないの?」
 大蛇丸がからかう様に声を出す。
「俺に似たらもっと思慮深く行動するよ。怪我も治ってないのに勝手に飛び出すなんてする訳が」
 声に反応したのか、懐かしい気配に反応したのか、私の膝の上で史紀ちゃんが目を開けた。
「あ、れ。詩月。何してんの?」
 ぼんやりとした声と視線。
「お前を迎えに来たんだよ」
「そう……まだ、帰らないよ」
 腕で顔を覆う。
「まだ、する事があるから」
「才蔵達を追うか?」
 小さく顔が動いた。
「力の差は歴然だっただろう」
 沈黙。風が通り抜ける音だけが聞こえる。
「それに『蒼空乃極』は取り戻せた。これで師匠達も」
「師匠達、じゃ無く負けたままは嫌だ」
「仇討ちは終わりか?」
「誰、お前?」
 大蛇丸は詩月を顔を見合わせて、
「こっちに来て知り合ったんだ」
 詩月が大蛇丸との出会いを簡単に説明する。
「そ。後は一つ。あの二人をぼこぼこにするだけそれが終わったら帰るよ」
「話を聞いてたか?」
「聞いてるよ。差は分かった、後は埋めるだけ」
 声に力が乗っていない。
それでもここまで言えるのは、負けず嫌いだけじゃないだろう。
「埋められるか?」
 大蛇丸は試すように聞いている。
「才蔵をぼこぼこにする事で証明してやるよ」
 大蛇丸を指差して答える。
詩月は大きくため息を吐いて、
「分かった。とりあえず俺達は『蒼空乃極』を持って風仙界に戻る。それまでは決して軽はずみな事は控えろ。体を治す事に専念していろ。分かったな?」
「私が史紀ちゃんを見張ってます」
「見張るって」
「すみませんがよろしく頼みます」
 詩月は私に向かって一礼して、治療費と滞在費をしてそれなりのお金を残してくれた。
「いいな、史紀。理緒さんに迷惑掛けるなよ?」
「うるさい。いくつだと思ってるんだ。早く帰れ」
 この状態で悪態を吐けるのは流石史紀ちゃん。

 夜が白み始めた頃には、二人の姿は遠くに消えた。
私達も車に戻って史紀ちゃんを後部座席に寝かし、近くの街を目指して出発進行。。


+注意+
・特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
・特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)
・作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。